リーンスタートアップとアジャイル開発の違いとは?関係性についても解説
こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
リーンスタートアップとは、最低限の資源で利益を最大化させる経営手法です。
近年、よく耳にする言葉ですが、具体的なプロセスや特徴を知らない方もいるのではないでしょうか。
また小単位で実装とテストを繰り返し、開発にかかるコストや時間を削減するアジャイル開発と混同されるケースもあります。
自社に適した開発手法を見極めるために、リーンスタートアップとアジャイル開発の違いを把握しておきましょう。
本記事では、リーンスタートアップとアジャイル開発の違いを詳しく解説します。
それぞれのメリット・デメリットを交えて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
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リーンスタートアップの基本概念
リーンスタートアップとは、経営資源を最低限に抑えて、最大限の利益を得る経営手法です。
リーンスタートアップの目的はコストカットでなく、最小限の経営資源で利益を最大化させることです。
ビジネスシーンでは、資源を抑えて高い利益を得ることで収益を拡大できるため、リーンスタートアップが注目されています。
リーンスタートアップの基本概念について理解を深めるために、次のポイントを確認しておきましょう。
- リーンスタートアップの意味
- リーンスタートアップの起源
なお下記の記事では、リーンスタートアップのフレームワークや事例について詳しく解説しています。
リーンスタートアップを実施する際の参考として、ぜひチェックしておきましょう。
リーンスタートアップの意味
リーンスタートアップは、「リーン(Lean)」と「スタートアップ(Startup)」を組み合わせた言葉です。
リーン(Lean) | 無駄がない |
スタートアップ(Start up) | 新規事業 |
つまり、経営資源である時間や資金・資材・人材などを抑えて、顧客価値や利益を最大化させることがリーンスタートアップの目的です。
経営資源を余分に消費すると、企業の損失が増えて生産性が低下します。
損失を抑えて企業の利益を高めるために、リーンスタートアップが活用されます。
リーンスタートアップの起源
リーンスタートアップの起源は、2008年にシリコンバレーの起業家エリック・リース氏が無駄をなくした経営手法を提唱したことから始まりました。
新たにビジネスを始める際に、無駄をなくし成功の有無を早期に見極めるために、リーンスタートアップが考案されました。
トヨタ自動車が生産管理手法として導き出した「トヨタ生産方式」や「5S」を改善して、「リーン生産方式」が生み出されており、生産現場でも「リーンな考え方」が推奨されています。
「リーンな考え方」については、1990年にマサチューセッツ工科大学のジェームズ・P・ウォマック氏が、日本の自動車産業を分析するために「トヨタ生産方式」を研究したことで世に広まりました。
参照:『The Lean Startup』、トヨタ自動車株式会社「よく分かる「トヨタ生産方式」」、『リーン生産方式が、世界の自動車産業をこう変える』
リーンスタートアップとアジャイル開発の違い
リーンスタートアップとアジャイル開発は混同されやすいですが、次のような違いがあります。
用語 | 目的 | 重視する項目 |
リーンスタートアップ | 顧客開発 | 検証結果 |
アジャイル開発 | 製品開発 | 進捗 |
そもそもアジャイル開発とは、従来のウォーターフォール開発とは異なり、プロジェクトを小単位に分割し開発を進める開発手法です。
機能ごとに分割した小規模な開発工程(イテレーション)の開発を進め、完成したら次の工程に移ることで、最終的にシステム全体を構築します。
アジャイル開発の目的は、ユーザーニーズに適した製品開発です。
対してリーンスタートアップは、最低限の機能を有した試作品(MVP)を制作し、市場に投下することで顧客のリアルなフィードバックを得られます。
リーンスタートアップの目的は、顧客ニーズを満たせる製品を開発し、現状の課題や目標を達成することです。
アジャイル開発は進捗を、リーンスタートアップは検証結果を重視するため、双方を組み合わせればより効率的に開発を進められます。
リーンスタートアップとアジャイル開発は相性が良い組み合わせなので、双方の関係性を理解しておくことが大切です。
以下の記事では、アジャイル開発のステップや成功させるコツを解説しています。
リーンスタートアップとアジャイル開発を組み合わせてスムーズな開発を実現するために、アジャイル開発の理解を深めておきましょう。
リーンスタートアップのプロセス
リーンスタートアップを実施する際の適切なプロセスを知っておけば、経営資源を最低限に抑えて新規事業を始められます。
リーンスタートアップのプロセスは、次の5ステップです。
- 仮説
- 構築
- 計測
- 学習
- 意思決定
リーンスタートアップを実施したい方は、それぞれのステップを確認しておきましょう。
仮説
リーンスタートアップは、ターゲット層や市場のニーズなど仮説を立てることから始まります。
製品やサービスの市場価値、ユーザーが抱える課題や求めるニーズの仮説を立て、どのような新規事業を始めるべきかアイデアを創出しましょう。
アイデアを思い浮かべるだけでは、ビジネスとして成功するか判断できません。
アイデアをビジネスとして成立させるために、課題やニーズなどの仮説を立てて、新規事業の内容を決めましょう。
構築
仮説を立証するために、MVP(Minimum Viable Product)を構築します。
MVPとは、ユーザーに必要な最低限の機能だけを備えた製品・サービスのことです。
初めからシステムにすべての機能を備えていると、仮説が誤っていた場合の損失が大きいです。
必要最低限の機能を備えたMVPを作成すれば、急な仕様変更や仮説と現実のズレに対応できます。
仮説を基にMVPを構築して、ユーザーのフィードバックを得ましょう。
計測
開発したMVPを市場に投下して、ユーザーから得たフィードバックを計測します。
ターゲット層となる消費者のリアルな意見を収集すれば、より市場のニーズに適したシステムを開発できます。
MVPを使用したユーザーに対して、アンケートやインタビューなどを活用して、消費者のリアルな声を収集しましょう。
学習
市場のフィードバックから得たデータを基にして、MVPを改良してください。
ユーザーの課題や市場ニーズに沿って改良を繰り返すことで、より市場で求められる製品・サービスを開発できます。
思い通りの成果を得られない場合は、改善策を模索して仮説を修正しましょう。
意思決定
MVPの結果、仮説が正しければ開発を進め、誤っている場合は方向性を修正する必要があります。
検証結果を基に、開発の継続か、方向転換・路線変更(ピボット)かを判断してください。
<h2>アジャイル開発の主な手法6選
アジャイル開発の主な手法は、次の6つです。
- スクラム
- エクストリーム・プログラミング(XP)
- ユーザー機能駆動開発(FDD)
- リーンソフトウェア開発(LSD)
- カンバン
- 適応的ソフトウェア(ASD)
それぞれの特徴を確認して、自社に適した手法で開発を進めましょう。
スクラム
スクラムは、アジャイル開発の中でも主流な手法です。
スプリントと呼ばれる1〜4週間の小規模な開発工程を複数繰り返すことで、1つの成果物を仕上げます。
スクラムは、ラグビーで肩を組みチーム一丸となってぶつかり合うフォーメーションを意味し、アジャイル開発においてもチームワークが重要視されます。
スクラムを円滑に進めるために、以下の役割をチームメンバーに与えましょう。
プロダクトオーナー | 開発の方向性やゴールを決める役割 |
スクラムマスター | 進捗管理を主導する役割 |
開発者 | 各開発タスクをこなす役割 |
上記のチームメンバーを揃えて、次のプロセスでスクラムを実施してください。
プロセス | 実施すること | 内容 |
1 | スプリントプランニング | スプリント開始時に実施する開発内容や進め方を決めるミーティング |
2 | デイリースクラム | スプリント進行中に毎日実施する、進捗や当日の目標・課題を共有するミーティング |
3 | スプリントレビュー | スプリント完了時に実施する、成果や今後の流れを共有するミーティング |
4 | 振り返り | スプリント完了時に実施する、課題や反省点を確認するミーティング |
スクラムは、日々進捗を確認しながら開発を進められるため、方向性を修正しやすいメリットがあります。
1つのスプリントを短期間で計画し、開発を進められるため、スケジュール・進捗管理をスムーズに行えます。
エクストリーム・プログラミング(XP)
エクストリーム・プログラミング(Extreme Programming)は、開発途中で仕様変更が起きることを想定したアジャイル開発の手法です。
初めにプロジェクトの全体像を決めず、顧客ニーズを確認しながら小規模の開発サイクルを繰り返します。
エクストリーム・プログラミング(XP)は、「ペアプログラミング」と呼ばれる2名のプログラマーが共同で開発を進める手法であり、開発者に一定のスキルが必要です。
仕様変更が起きても柔軟に対応できる反面、ペアプログラミングでの共同作業やコミュニケーションが重要視されるため、開発者のスキルとチームワークに依存します。
ユーザー機能駆動開発(FDD)
ユーザー機能駆動開発(Feature Driven Development)は、ユーザー視点で機能を分割し開発を進める手法です。
顧客にとっての機能価値(Feature)に焦点を当て、必要な機能を選定し設計・構築することで、顧客満足度の高いシステムを開発します。
機能重視で開発に取り組むため、大規模なプロジェクトや開発環境が複雑なシステムにも対応できます。
ただしユーザー視点での設計・構築が必要となるため、ユーザーニーズの把握に時間とコストがかかりやすいです。
リーンソフトウェア開発(LSD)
リーンソフトウェア開発(Lean Software Development)は、「リーンな考え」をソフトウェア開発に取り入れた開発手法です。
リーンソフトウェア開発では、以下の7原則に沿って開発を進めます。
- 無駄を削減する
- 不具合を早期発見し、高品質な製品を開発する
- フィードバックから得た知識を蓄積し、開発に活用する
- 熟考して結論を出すために、重要な意思決定を急がない
- 早くフィードバックを得て改善するため、迅速にリリースする
- メンバーを尊重し現場に意思決定権を与える
- 開発プロセス全体を見て最適化する
無駄を省き高品質な製品を開発するリーンソフトウェア開発には、決まったプロセスやノウハウが定められていません。
上記の7原則に沿って「リーンな考え」でソフトウェア開発を行う必要があります。
カンバン
カンバンは、開発プロジェクトの状況を可視化する開発手法です。
標識や看板が由来であるカンバンでは、行動指標を視覚的に把握できるようカンバンボードで管理します。
カンバンボードには、下記の3領域を用意し、各タスクの状況を配置します。
- To Do
- 進行中
- 完了
進行状況をカンバンボードで確認できるため、スケジュール管理やリアルタイムでの進捗確認がしやすいです。
適応的ソフトウェア(ASD)
適応的ソフトウェア(Adaptive Software Development)は、継続的な仕様変化に対応することを目的とした開発手法です。
下記のサイクルを繰り返し、状況の変化に対応します。
- 思索(スペキュレーション)
- 協調(コラボレ―ション)
- 学習(ラーニング)
思索(スペキュレーション)では、要求事項の確認やチームの編成などを行い、どのような手順で開発を進めるべきか計画を立案します。
協調(コラボレ―ション)は、開発チームでコミュニケーションを取りながら、実際に開発を進めていくプロセスです。
学習(ラーニング)は、成果物の品質を検証し、ユーザー視点・技術的な視点からフィードバックを得て、改善点を探します。
フィードバックを基に改善を繰り返すため、ユーザーニーズに沿った高品質な製品を開発できます。
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リーンスタートアップのアジャイル開発それぞれのメリット
リーンスタートアップのアジャイル開発を実施するべきか悩んでいる方は、それぞれのメリットとデメリットを確認しておきましょう。
以下で解説する内容を、ソフトウェア開発の参考にしてください。
リーンスタートアップのメリット
リーンスタートアップのメリットは、次の通りです。
- コストや時間を削減できる
- 市場での優位性を獲得できる
- 顧客ニーズに沿った開発ができる
リーンスタートアップは、最低限の経営資源で利益を最大化させる経営手法なので、コストや時間を削減できます。
限られたコストと時間内で、MVPを作成し市場からのフィードバックを得るため、市場の優位性を獲得できます。
さらにフィードバックを基に開発の方向性を修正できるため、顧客ニーズに沿ったシステムを開発可能です。
リーンスタートアップのデメリット
リーンスタートアップのデメリットは、次の通りです。
- 開発コストが高いケースには不向き
- 目的を見失う可能性がある
リーンスタートアップは、時間やコストを削減して開発を進めるため、開発コストが高いプロジェクトには不向きです。
またユーザーからのフィードバックを基に改善を繰り返すことで、本来の目的を見失う可能性があります。
リーンスタートアップの課題を理解した上で、新規事業に採用するべきか検討しましょう。
アジャイル開発のメリット
アジャイル開発のメリットは、次の通りです。
- 仕様変更に柔軟な対応ができる
- 開発スピードが速い
- 開発者の成長を促せる
- ユーザビリティが向上する
アジャイル開発は、小規模な開発工程(スプリント)を複数繰り返すことで、1つのシステムを開発する手法です。
そのため、機能ごとに実装とテストを繰り返すため、仕様変更に柔軟な対応ができます。
従来のウォーターフォール開発では、トラブルが発生した際の対応に時間とコストがかかります。
しかしアジャイル開発では、機能単位で開発を進めるため、リリースのタイミングが早く、修正が必要な場合も迅速な対応が可能です。
また、アジャイル開発は開発者が複数の工程を担当し、複数回にわたって作業を繰り返す必要があるため、開発者の成長を促せます。
ユーザーからのフィードバックを基にシステムを改善できるため、ユーザビリティの高い成果物を開発できます。
アジャイル開発のデメリット
アジャイル開発のデメリットは、次の通りです。
- スケジュール管理が難しい
- 開発の方向性が定まりにくい
アジャイル開発は、小規模なサイクルを複数繰り返すため、プロジェクト全体のスケジュール管理が難しいです。
スプリントごとにスケジュールを設定しますが、実装とテスト・改善を行うため、予定通りに開発が進みません。
また、改善を繰り返す過程で、当初の方向性からブレる可能性があります。
開発の方向性が定まりにくい点も、アジャイル開発のデメリットです。
リーンスタートアップとアジャイル開発の活用事例
リーンスタートアップとアジャイル開発を活用する際は、他社の成功事例を参考にしましょう。
それぞれの成功事例は、次の通りです。
リーンスタートアップの成功事例
- 株式会社テックピット
- Dropbox
またリーンスタートアップで活用するMVPを利用した成功事例として、次のようなものがあります。
- X(旧Twitter)
- Dropbox
- 食べログ
- Airbnb
- Uber
- Amazon
- Oculus
下記の記事で、リーンスタートアップとMVP開発の事例について詳しく解説しています。
新規事業を低コスト・短期間でリリースするために、それぞれの事例を確認しておきましょう。
リーンスタートアップとアジャイル開発の違いを理解して有効な手法を採用しよう
リーンスタートアップとアジャイル開発の違いを理解すれば、自社の新規事業に適した有効な手法を選択できます。
リーンスタートアップとアジャイル開発は、それぞれのユーザーからのフィードバックを基に仕様を変更できる手法です。
そのため相性が良く、組み合わせることでコストと時間を削減しながら、高品質なシステム開発を実現できます。
しかし、リーンスタートアップとアジャイル開発はそれぞれメリットとデメリットがあるため、双方の特徴を理解した上で開発を進める必要があります。
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