事業展開の考え方とは?経営戦略やモデルケース、注意点を解説

2023.01.16
DX・システム開発
中垣圭嗣
事業展開の考え方とは?経営戦略やモデルケース、注意点を解説
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こんにちは。Wakka Inc.のベトナムオフィスラボマネージャーの中垣です。
「事業展開をしたいけれど、具体的にどのように考えれば良いのかわからない。」
「成功しやすい事業展開の方法が知りたい。」
というような思いをお持ちの企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
事業展開は企業にとっても非常に重要な経営判断で、その成否が存続を占うといっても過言ではありません。本記事では、事業展開の基本的な考え方となる5つの戦略から、既存事業を分析するためのフレームワークや成功しやすいビジネスモデルまで詳しく解説していきます
新規事業展開の支援実績もある弊社だからこそお伝えできる確かな情報です。今後新たな事業展開をお考えであれば、ぜひ最後までお読みください。

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目次

企業経営における事業展開の考え方とは

大前提として、事業展開とは、企業が主力領域以外の分野で事業を立ち上げたり、海外などの異なる地域へと進出したりすることを指します。
流れが早く変化の著しい現代では、事業状況が激変するケースも少なくありません。市場や顧客の変化に対して柔軟に対応できなければ、利益の拡大はおろか維持でさえ厳しくなります。
つまり、企業経営において事業展開は、さらなる成長や持続可能な企業の存続のために必要な経営判断であると言えるでしょう。

事業展開で考えるべき5つの戦略

事業展開の基本的な戦略としては、主に以下の5つが挙げられます。

  • 市場浸透戦略
  • 市場開拓戦略
  • 製品開発戦略
  • 多角化戦略
  • 事業転換戦略

具体的な事業展開の方法を決めていくためにも、まずは基本的な戦略を定めることが必要です。各戦略の詳細を知り、どのように事業展開していくのかを想定できる状態にしていきましょう。

既存事業を拡大する市場浸透戦略

現在進出している市場において、既存の製品やサービスのシェア拡大を狙っていくのが市場浸透戦略です。
既存事業の規模を拡大するために実施している施策は市場浸透戦略に該当するため、一般的に企業が進める事業推進は市場浸透戦略であると言えます。
具体的に言えば、市場浸透戦略には、以下のような施策があります。

  • 顧客の購買数を増やす
  • 顧客1人当たりの購買金額(客単価)を上げる
  • 顧客の購入頻度を上げる

マーケティングや販売方法の工夫によって、認知度や利便性を高める方針が多いでしょう。

既存製品で異なる分野に進出する市場開拓戦略

市場開拓戦略は、既存の商品に工夫を加えて、新たな顧客層の獲得を目指す戦略を指します。
すでに現状の市場では多くの顧客を獲得できていたとしても、製品に新たな機能を少しだけ実装したり、ブランディングやマーケティングの施策を変更したりすると、今まででは考えられなかった消費者がターゲットとなるケースもあるでしょう。市場開拓戦略において実行される施策には、以下のものが挙げられます。

  • 若年層をターゲットに変更したマーケティング実施
  • 安くて機能性が高い業務用の製品を、個人向けにも販売
  • 海外市場への進出

市場開拓戦略を実行する際には、特にターゲットの再設定とマーケティング施策の変更が重要なポイントとなります。既存の製品やサービスを客観的に分析して、開拓できそうな市場を検討しましょう。

自社プロダクトを創造する製品開発戦略

既存の市場において、新たな製品やサービスを開発してシェアを拡大する手法を、製品開発戦略と呼びます
新規で製品を開発するコストは高いため、市場浸透戦略や市場開拓戦略と比較すると、難易度の高い戦略です。
しかし、既存製品との組み合わせや顧客の利便性向上が影響して、マーケットシェアを拡大し、市場において絶対的な地位を築ける可能性もあります。具体的には以下のような施策が挙げられるでしょう。

  • 健康志向に合わせたヘルシー食品の開発
  • オンライン販売サービスの実施
  • 既存ソフトウェアと関連性の高い新システムの開発

製品開発戦略は既存の顧客が抱えている悩みの解決が主となるため、顧客の声に耳を傾けることが成功のカギになります。

完全新規の事業に参入する多角化戦略

多角化戦略は、既存のプロダクトやサービスではなく、自社が参入している領域ともまったく異なる市場で事業を展開する戦略です。
新領域での挑戦となるので、失敗するリスクも高くなりますが、成功した際に生み出せる収益や知名度の獲得など、大きな成果を期待できます。
多角化戦略で重要なポイントは、既存のプロダクトやサービスと直接的に関係していなくても、製造に活用している技術や販売などのノウハウの面で共通点がある事業を展開することです。

リスクを負って新規事業に重点を置く事業転換戦略

既存事業に代わり、新たな市場において新しいプロダクトやサービスに注力して事業を展開するのが、事業転換戦略です。
完全に新しい領域で勝負する点では多角化戦略と同じですが、事業転換戦略では、新規事業への注力度がより強くなっています。既存事業を縮小しながら進める戦略であるため、多角化戦略よりもリスクの高い戦略と言えます。
そのため、多角化戦略を取れるのであれば事業転換戦略はあまりおすすめしません。事業転換戦略は、ハイリスクハイリターンの博打要素を持つ戦略です。
既存事業が大きなリスクを抱えている場合や、少ない経営リソースの中でチャンスに挑戦したい場合は、事業転換戦略を考えても良いでしょう。

事業展開の方針決めに役立つフレームワーク

自社の既存事業について客観的に把握すれば、事業展開の方向性は決めやすくなります。とはいえ、自社事業の客観的な分析は簡単ではありません。そこでおすすめなのが、以下の5つのビジネスフレームワークです。

  • ビジネスモデルキャンバス
  • アンゾフの成長マトリクス
  • PPM分析
  • ポーターの3つの基本競争戦略
  • プロダクトライフサイクル

これらのフレームワークを使えば、自社事業を客観的な目線で分析できるため、事業展開の戦略を決定しやすくなります。

ビジネスモデルキャンバス

ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデルで重要な要素を可視化できるフレームワークです。ビジネスモデルキャンバスでは、以下の9つの要素を洗い出して整理することで、事業の全体像を可視化できます。

顧客セグメント価値を提供する顧客のペルソナ像
価値提案製品やサービスによって顧客が得られる価値
収益の流れ価値提供による収益発生の仕方
チャネル顧客に届けるための流通や情報伝達
顧客との関係顧客と関わる時間や密度、コミュニケーション方法
主要活動価値提供するために必要な活動
リソース製品やサービスに必要な自社の経営資源
パートナー協業や提携の関係にあるパートナー
コスト構造事業運営にかかるコスト

各項目を洗い出して関係性を整理すると、自社の事業の全体を俯瞰でき、事業内で起きている問題や改善点を見つけやすくなります。

アンゾフの成長マトリクス

アンゾフの成長マトリクスは、市場と製品の2軸から、事業戦略を考えるフレームワークです。冒頭で説明した5つの戦略は、主にアンゾフの成長マトリクスをもとに提唱されているため、基本的な事業展開の方向性を決定するには最適なフレームワークと言えます。

既存市場新規市場
既存製品市場浸透戦略市場開拓戦略
新規製品製品開発戦略多角化戦略

市場と製品がそれぞれ既存なのか新規なのかを判断すれば、4つのうちどの戦略を取るべきなのかわかります。具体的な事業展開を考える前に、まずは大まかな事業戦略を決めるためにも活用したいフレームワークです。

PPM分析

PPMとはProduct Portfolio Managementの略で、自社の経営資源の投資配分を決定するための分析手法です。
市場成長率とマーケットのシェア率の2軸から自社の事業を分析し、現在の事業状況を客観的に把握できるため、今後の事業戦略の決定に役立ちます。PPM分析で使用するマトリクスは、以下のとおりです。

高シェア低シェア
高成長花形
(Star)
問題児
(Problem Child)
低成長金のなる木
(Cash Cow)
負け犬
(Dog)

自社事業が「問題児」に該当した場合、シェアを獲得できれば大きな収益源となる可能性が高いため、市場浸透戦略や製品開発戦略を実施するべきと言えます。
一方で、「金のなる木」に該当している場合は、マーケットの成長が期待できないため、市場開拓戦略をもとに既存製品の別の売り方を考えることをおすすめします。
「花形」にある場合は別の収益源を確保するための多角化戦略、「負け犬」にある場合は事業転換戦略を進めるのが経営的には好判断です。

ポーターの3つの基本競争戦略

アメリカの経営学者であるマイケル・ポーターによって提唱されたのが、競争における3つの基本戦略です。

差別化戦略自社の製品やサービスの差別化を図ることで、競合優位性を確立する戦略
コストリーダーシップ戦略競合よりも価格を抑えて提供することで、競争力をつける戦略
集中戦略競合相手が少ない領域において特化した事業を展開する戦略

3つの基本競争戦略のうち、自社がどこで違いを生み出しやすいのかを分析すれば、強みを生かした事業展開を実行しやすくなります。特に、競合他社が存在する市場で事業を展開するなら、競合優位性を明確に示せる戦略を取ることがカギです。

プロダクトライフサイクル

プロダクトライフサイクルとは、製品が市場に出てから衰退するまでの経過を可視化したグラフのことです。基本的には縦軸に売上高、横軸に時間の経過をとった座標上に示され、S字型の曲線として図示されるケースが多いです。

※プロダクトライフサイクルのイメージ図

プロダクトライフサイクルは、大きく分けて以下の4段階に分類できます。

  • 導入期
    ……製品やサービスができたばかりで市場として認識されていない段階
  • 成長期
    ……市場として認識され、顧客が急激に上昇していく段階
  • 成熟期
    ……大幅な成長はないが、多くの顧客を獲得できている段階
  • 衰退期
    ……徐々に顧客が減少していき、市場が消滅していく段階

自社の既存事業がどのような状態にあるのかをプロダクトライフサイクルで把握できれば、その後の事業展開の戦略を立てやすくなります。
例えば、成長期にある製品やプロダクトであれば、新たなターゲット層を獲得する戦略や海外進出などの戦略で、事業展開を進めるのが有効です。
一方で、市場が成熟期に入っているのであれば、競合他社との機能面やコスト面での競争戦略や、新たな領域での多角化戦略が、事業展開の基本的な考え方となるでしょう。

事業展開で成功しやすい7つのモデルケース

事業方針が決まれば、具体的に展開する事業の内容を決めるフェーズに入ります。そこでここからは、事業展開の成功例でよく見られる7つのモデルケースを紹介していきます。

物販

物販は、製品やサービスを開発・製造して、顧客に提供することでお金を得る事業モデルです。従来的なビジネスモデルとも言えます。製品の開発や製造の費用、流通・店舗運営の費用など、多額のコストが掛かるのが特徴です。
物販においては、差別化戦略もしくはコストリーダーシップ戦略を展開して、プロダクトの優位性を明確にすることが重要になります。
近年では、物販の方法も多様化しており、製品自体がデジタル上で取引できるようになっていたり、ECサイトを通じたオンライン販売が流行していたりします。
消費者の行動に柔軟に対応するためには、新たな事業展開としてECサイトの構築を考えるのも面白いでしょう。
自社のECサイト構築にご興味がある場合には、ぜひ開発経験が豊富な弊社へご相談ください。貴社の課題を解決する最適な方法をご提案いたします。

小売

自社の製品やサービスではなく、他社から仕入れたものを販売するビジネスモデルが小売です。
製品自体で差別化を図ることが難しいため、コストリーダーシップ戦略に基づいた事業展開になりやすいという特徴があります。
逆に言えば「アフターサービスが充実している」「特殊な商品を入手できる」などの差別化要因があれば、成功する可能性も高くなります。
需要がある商品であれば、仕入れ値に数%程度の利益を上乗せすれば売れることが多く、着手しやすい事業モデルであることも確かです。

広告

何かしらのサービスを提供し、媒体の中で広告を掲載することで広告収入を得るのが、広告のビジネスモデルです。
従来はテレビやラジオ、新聞雑誌などのマスメディアを中心に展開されていたモデルで、近年ではWebサービスに広告を掲載する形態の事業も急増しています。
SNSなどのプラットフォーム型のサービスや、スマートフォンのアプリケーションとの相性が良いモデルです。

ライセンス

製品やサービスを利用する権利を販売するモデルを、ライセンスと呼びます。
すでに開発されているWebシステムやキャラクターなど、知的財産に関わる様々な事業で導入されているビジネスモデルです。一度広い認知を獲得できれば、追加のコストが少なく、高い収益性を確保できる特徴があります。

サブスクリプション・フリーミアム

現在、流行しているビジネスモデルであるサブスクリプションやフリーミアムも、事業展開の成功モデルのひとつです。
サブスクリプションとは定期購入のことで、主にコンテンツの閲覧やWebサービスの利用を提供する代わりに、月額料金を取る形式のビジネスモデルです。
一方で、フリーミアムとはプロダクトやサービスの一部を無料開放し、さらに追加の機能やサービスを利用したい場合は有料で提供する形式のモデルを指します。
サブスクリプションやフリーミアムは、コンテンツを消費するサービスやソフトウェア系のサービス(SaaS)の提供と親和性が高く、多くの企業が導入しています。

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マッチング

マッチングモデルは、個人間や企業間のユーザーをつなぐ仲介役を担い、その手数料を回収することで成り立っています。特に、人材の紹介や個人のカップリングなどのサービスが目立っており、原価が掛からないため収益性も高いのが特徴です。

DX

DXとはデジタルトランスフォーメーションの略称で、既存事業にデジタル化を取り入れることで、新たな形態の製品やサービスを提供することを指します。
DXの方向性としては以下の3つが挙げられ、デジタル化によって新たな価値を提供できることが特徴です。

  • 新たな取引場所の創造
  • 通常では不可能だった顧客へのアプローチ
  • 需要拡大に対応した提供数の限界撤廃

特に、既存事業において一定の顧客数を確保できている場合には、DXによってさらなる顧客獲得を目指すことも可能です。

新規事業の展開を進める際の注意点

ここまで事業展開における考え方や、具体的な戦略やビジネスモデルを紹介してきましたが、その内容を取り入れるだけでは事業展開が成功しない可能性もあります。
というのも、新たな事業を展開するときにはいくつかの注意点があり、誤った方向性で事業を進めてしまうケースも少なくないからです。
間違った方向へ進んでしまうリスクを抑えるには、以下でご紹介する3つのポイントが重要です。しっかりと確認していきましょう。

自社の経営資源の選択と集中を明確にする

事業展開には、多くの経営資源を投入する必要があります。「大きなリソースを割くだけの余裕が、自社の経営資源にあるのか」を必ず確認しましょう。
経営資源が不足している場合、内容が良くても事業が続かない恐れがあります。とはいえ、既存事業が滞るほどに事業展開に注力すると、失敗した際に倒産のリスクが発生します。
事前に事業展開に必要な経営資源を予測し、現状の自社の経営資源と照らし合わせて「どこに資源を集中させるのか」を選択することが重要です。

事業内容と市場や消費者とのマッチ度を確かめる

展開する事業が本当に市場や消費者に求められているのかは、入念に確認する必要があります
自社の強みを生かせる事業を思い付いたとしても、消費者が求めている製品やサービスでなければ、成功は収められません。
また、競合との違いを生み出せるような事業でなければ、採算が取れるだけの収益を生めない可能性もあります。事業展開を開始する前に、定量的かつ定性的な市場分析を実施して、実現可能性を検証しましょう。

行動計画を綿密に策定する

事業展開を行動に移す前には、入念な行動計画の策定が必要です。
事業を進めていく上で必要な資金や人材などの経営資源の予算を立て、具体的な業務や行動の内容と期限を定めていきましょう。
行動計画の策定で重要なのは、「誰が、いつ、どこで、何を、どのように進めるのか」をすべて明確な状態にすることです。
行動計画が具体的かつ現実的であればあるほど、事業展開が成功する可能性も高まるので、手を抜くことなく計画を立てることをおすすめします。

事業展開の考え方を身につけてビジネスを成長させよう

一から考えるのは難しい事業展開ですが、フレームワークを活用しながら事業戦略を考えていけば、方針は定まりやすくなります。
自社の既存事業の状態を正しく把握し、どのような事業を展開すれば良いのかを考えていただければ幸いです。「何から手を付ければ良いかわからない」場合には、まずは事業構築やシステム開発の実績が豊富なベンダーに相談するのが良いのではないでしょうか。

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この記事を書いた人
中垣圭嗣

WebメディアでPGから管理職まで幅広く経験し、Wakka Inc.に参画。Wakka Inc.のオフショア開発拠点でラボマネジャーを担当し、2013年よりベトナムホーチミンシティに駐在中。最近では自粛生活のなかでベトナム語の勉強にハマっています。

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