5フォース分析とは?目的、事例で分かる事業戦略の立て方

最終更新日:2025.07.28
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Wakka Inc. メディア編集部
5フォース分析とは?目的、事例で分かる事業戦略の立て方
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こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。

「5フォース分析とはどのような分析手法か」
「分析結果をレポートや戦略にどのように活用すればよいのかわからない」

企業のマーケティングや経営企画に携わる中で、このような悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。
5フォース分析は、事業環境を理解し、的確な戦略を立てるための強力なツールです。
しかし、その本質や正しい使い方を理解しないままでは、分析結果をもとに競争優位性を築けません。

この記事では、5フォースの概要と目的、5大脅威の内容について詳しく解説します。
5フォース分析の実践的な進め方や分析活用事例・失敗しないためのポイントもあわせて解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

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5フォース分析とは

5フォース分析(ファイブフォース分析)とは、ハーバード大学の経営学者マイケル・E・ポーターが著書『競争の戦略』で論じた業界の構造と収益性を分析するためのフレームワークです。
つまり、「その業界が収益を上げやすい構造なのか、あるいは競争が厳しい環境なのか」を客観的に評価するためのツールです。

自社を取り巻く5つの『Force(脅威)』を分析することで、競争環境や業界の状況を把握し、自社の戦略を立てるうえでの機会と課題を明確にできます。

5フォース分析を正しく活用するために、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 5フォース分析の目的
  • 5フォース分析の主な活用シーン

5フォース分析の目的

5フォース分析の主な目的は、下記の3つです。

主な目的説明
業界全体の収益性や魅力度の把握これから参入しようとしている、あるいはすでに事業を展開している業界が、構造的に利益を上げやすいのかどうかを判断します。
自社にとっての機会と脅威の特定5つの力のどこに機会があり、どこに脅威が潜んでいるのかを明確にし、事業戦略上のリスクとチャンスを洗い出します。
具体的な競争戦略の立案分析結果に基づき、自社の強みを活かし、弱みを克服するための具体的な戦略(差別化、コスト削減など)を立てるための土台とします。

5フォース分析の主な活用シーン

5フォース分析は、ビジネスのさまざまな場面で役立ちます。主な5フォース分析の活用シーンは、下記の通りです。

活用シーン分析によって得られるメリット
新規事業・新規市場への参入検討市場の将来性や収益性を予測し、参入すべきかどうかの判断材料を得られる。
既存事業の競争力見直し自社の現在の立ち位置を再確認し、競争優位性を維持・強化するための課題を特定できる。
M&A(企業の合併・買収)の検討買収対象企業が属する業界の魅力度を評価し、投資判断の精度を高める。
中期経営計画の策定業界構造の変化を予測し、長期的視点での事業戦略や資源配分を計画できる。

5フォース分析を行えば、感覚や経験だけに頼らず、客観的な根拠に基づいた意思決定を実現できます。

5フォース分析の5大脅威の力

5フォース分析では、業界の収益性を左右する5つの競争要因を分析します。業界内で利益を奪い合う「脅威」を分析することで、競争環境分析・業界分析を行えるのです。

5フォース分析の5大脅威とは、下記の5つです。

  1. 業界内の競争(競合の脅威)
  2. 新規参入の脅威
  3. 代替品の脅威
  4. 買い手の交渉力
  5. 売り手の交渉力

以下では、この5つの力について詳しく解説します。

1. 業界内の競争(競合の脅威)

業界内の競争(競合の脅威)では、業界内に存在する競合他社との直接的な競争の激しさを指します。
この脅威が大きいほど、価格競争や広告合戦が激しくなり、業界全体の収益性は低下する傾向にあります。

脅威が高まる要因脅威が低くなる要因
競合企業の数が多い競合企業の数が少ない
業界の成長率が低い、又はマイナス業界の成長率が高い
製品やサービスの差別化が難しい製品やサービスが高度に差別化されている
撤退障壁が高い(設備投資が大きいなど)撤退障壁が低い

2. 新規参入の脅威

新規参入の脅威は、業界外から新しい企業が参入してくる可能性のことです。
新たな競合が増えれば、市場シェアの奪い合いが激化し、価格が下落する圧力が高まります。この脅威の大きさは「参入障壁」の高さによって決まります。

脅威が高まる要因(参入障壁が低い)脅威が低くなる要因(参入障壁が高い)
必要な初期投資額が少ない巨額な設備投資が必要
ブランド力が重要でない既存企業のブランド力が強い
流通チャネルの確保が容易独自の流通チャネルが必要
政府の規制や許認可が少ない厳しい政府の規制や許認可がある

3. 代替品の脅威

代替品の脅威は、自社の製品やサービスとは異なる方法で、同じ顧客ニーズを満たす代替品が存在する度合いを指します。
例えば、カフェにとっての代替品は、他のカフェではなく「コンビニの淹れたてコーヒー」や「自宅で飲むインスタントコーヒー」などが挙げられます。代替品の性能が高く、価格が安く、乗り換えコストが低いほど、脅威が大きくなるため注意が必要です。

脅威が高まる要因脅威が低くなる要因
代替品のコストパフォーマンスが高い代替品のコストパフォーマンスが低い
顧客の乗り換えコストが低い顧客の乗り換えコストが高い(学習コストなど)
顧客が代替品の存在を認知している顧客が代替品の存在をあまり知らない
代替品によってもたらされる価値が高い代替品では満たせない独自の価値がある

4. 買い手の交渉力

買い手の交渉力とは、製品やサービスを購入する顧客(買い手)が、価格引き下げや品質向上を要求する力のことです。
買い手の力が強いほど、企業は利益を確保しにくくなり、顧客に求められるハードルが高まります。

脅威が高まる要因脅威が低くなる要因
買い手が少数に集中している(寡占状態)買い手が多数に分散している
購入する製品が標準化・コモディティ化している購入する製品が差別化されている
買い手が製品情報を容易に入手できる製品情報が専門的で入手しにくい
買い手にとって乗り換えコストが低い買い手にとって乗り換えコストが高い

5. 売り手の交渉力

売り手の交渉力とは、原材料や部品などを供給する業者(サプライヤー、売り手)が、価格引き上げなどを要求する力のことです。
売り手の力が強いと、企業のコストが増加し、収益性が圧迫されます。

脅威が高まる要因脅威が低くなる要因
売り手(サプライヤー)が少数に集中している売り手が多数存在し、競争している
供給される製品がユニークで代替が効かない供給される製品が標準的で、代替が容易
企業にとってサプライヤーの変更コストが高いサプライヤーの変更コストが低い
売り手が川下(顧客側)への垂直統合を進めてくる売り手が川下統合の力を持っていない

5フォース分析の実践的な進め方3ステップ

競争戦略論は、理論を理解したうえで、実践的な進め方を知っておくことが大切です。
誰でも着実に5フォース分析を進められるよう、3つのステップに分けて具体的なやり方を解説します。

5フォース分析の実践的な進め方は、下記の3ステップです。

  1. 分析の目的と範囲(どの業界か)を明確にする
  2. 5つの要因について情報収集し、客観的に評価する
  3. 分析結果から自社の戦略課題を抽出し、対策を立てる

STEP1:分析の目的と範囲(どの業界か)を明確にする

5フォース分析を始める前に「何のために分析するのか」「どの業界を対象にするのか」をはっきりと定義することが不可欠です。
分析の目的と範囲が不明確な状態で進めてしまうと、分析が発散し、的を射ない結果に終わってしまいます。

項目具体的な定義の例
目的自社が新規参入を検討している「国内の法人向けSaaS市場」の収益構造と競争環境を把握するため。
範囲日本国内における「勤怠管理SaaS」業界。対象は中小企業向けのサービスに絞る。

STEP2:5つの要因について情報収集し、客観的に評価する

次に、定義した範囲にしたがって、5つの要因それぞれについて客観的な情報を収集します。思い込みや主観を排し、信頼できるデータに基づいて分析することが重要です。

情報収集源としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 業界団体が発行するレポートや統計データ
  • 政府機関の統計調査(例:経済産業省「工業統計調査」など)
  • 民間の調査会社が発行する市場調査レポート
  • 競合他社のWebサイト、IR情報(決算短信、有価証券報告書)
  • 業界専門誌やニュースサイト

集めた情報をもとに、各要因の脅威が「高い」「中」「低い」の3段階のうち、どのレベルにあるかを評価・判断していきます。

STEP3:分析結果から自社の戦略課題を抽出し、対策を立てる

最後に、5つの要因の評価を総合して、業界全体の魅力度を導き出します。分析結果から自社の戦略課題を抽出する際に重要な点が、分析結果を具体的な戦略に結びつけることです。

「分析して終わり」では意味がありません。脅威が「高い」と評価された要因に対しては、その影響をどのように軽減するかを考えましょう。

逆に脅威が「低い」要因は、自社にとっての「機会」と捉え、それをどう活用するかを検討します。このプロセスを経て、自社が取るべき具体的な戦略課題と対策が明らかになるのです。

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スターバックス、ユニクロに見る代表的な5フォース事例

5フォース分析の活用例として、スターバックスとユニクロを例に挙げてご紹介します。

例えば、スターバックスの場合、コンビニコーヒーという強力な「代替品」や、多数のコーヒーチェーンという「競合」の脅威にさらされています。
ユニクロは、「新規参入」の障壁は高いものの、しまむらや無印良品といった「競合」や、衣類レンタルサービスなどの「代替品」の脅威が存在します。

両社とも、顧客という「買い手」の交渉力が強い市場にいるため、ブランド力や商品開発力で差別化を図り、競争優位を築いています。

IT・ラボ型業界における5フォース分析の活用事例

ここでは、より実践的な理解を深めるために、私たち株式会社Wakka Inc.が事業を展開する「IT・ラボ型業界」を例に、5フォース分析の活用事例をご紹介します。
一般的な事例ではなく、業界のリアルな力学を感じることで、ご自身の分析に応用するヒントを見つけてください。

IT・ラボ型業界で、競争環境分析・業界分析を行う参考として、下記の5フォース分析活用事例をチェックしておきましょう。

  1. 業界内の競争:激化するSIer・ラボ型市場
  2. 新規参入の脅威:技術革新と新たなプレイヤー
  3. 代替品の脅威:ノーコード/ローコードツールの影響
  4. 買い手の交渉力:顧客のITリテラシー向上と要求の変化
  5. 売り手の交渉力:深刻なエンジニア不足とオフショアの価値

1.業界内の競争:激化するSIer・ラボ型市場

IT業界、特にシステムインテグレーション(SI)やラボ型開発の市場は、競争が非常に激しいのが特徴です。
大手SIerから、私たちのような特定の技術や開発手法に強みを持つ専門企業、さらには海外の競合企業まで、多種多様なプレイヤーが存在します。

IT業界で競争優位性を築くには、単なる価格競争にとどままらず、技術力やプロジェクトマネジメント能力、特定業界への知見など、多角的な差別化が求められます。

2.新規参入の脅威:技術革新と新たなプレイヤー

クラウドサービスの普及により、かつてのように大規模なサーバー設備への初期投資が不要になりました。
これにより、革新的なアイデアを持つスタートアップが以前よりも容易に市場へ参入できるようになっています。

しかしその一方で、金融機関の基幹システムのような大規模・ミッションクリティカルな案件では、豊富な開発実績や高度なセキュリティ体制、プロジェクトを完遂する組織的な信頼性が不可欠です。
これらが実質的な参入障壁となり、新たなプレイヤーの参入を一定程度抑制しています。

3.代替品の脅威:ノーコード/ローコードツールの影響

近年、専門的なプログラミング知識がなくてもアプリケーションや業務システムを構築できる「ノーコード/ローコード」ツールが急速に台頭しています。
これらは、従来であればシステム開発会社に発注していたような一部のニーズを代替する脅威となり得ます。
ただし、複雑な業務ロジックや外部システムとの高度な連携、独自の要件を満たすカスタマイズ性など、スクラッチ開発でしか実現できない領域も依然として大きく、現時点では棲み分けが進んでいる状況です。

4.買い手の交渉力:顧客のITリテラシー向上と要求の変化

かつては、IT部門が主導していたシステム導入が、現在では事業部門主導で行われるケースが増えています。
それに伴い、顧客(買い手)側のITリテラシーは向上し、単に「システムを作ること」だけでなく、「ビジネス課題の解決」や「事業成果への貢献」といった、より上流の価値を求める傾向が強まっています。
この変化は、要件定義などの上流工程から顧客と伴走し、最適なソリューションを提案できる開発パートナーにとっては、むしろ絶好の機会です。

5.売り手の交渉力:深刻なエンジニア不足とオフショアの価値

国内では、少子高齢化を背景にITエンジニアの不足が深刻化しており、これが売り手であるエンジニアの交渉力を著しく高めています。
優秀な人材の採用コストや人件費は高騰を続けており、多くのIT企業にとって大きな経営課題です。

この課題に対する有効な解決策の一つが、ベトナムなど海外の人材とともに行うラボ型開発です。
豊富な人材を確保できる海外に開発拠点を置くことで、売り手の交渉力の影響をコントロールし、コスト競争力を維持できます。

5フォース分析で失敗しないための3つのポイント

分析の精度を高め、より実践的な戦略につなげるために、下記の3つの重要なポイントを確認しましょう。

  1. 客観的なデータに基づき、定期的に更新する
  2. 長期的な視点で分析を続ける
  3. SWOT分析など他のフレームワークと組み合わせる

上記のポイントを意識することで、分析が形骸化する事態を防げます。

ポイント1:客観的なデータに基づき、定期的に更新する

5フォース分析を行う際、もっとも陥りやすい罠が主観や思い込みです。
「きっとこうだろう」という感覚ではなく、信頼できる第三者のデータや事実に基づいて評価しましょう。

また、市場環境は常に変化します。
一度分析して終わりではなく、「四半期に一度」や「半年に一度」など定期的に情報を見直し、分析を更新する習慣をつけましょう。
PDCAサイクルを回して、分析・改善を繰り返すことで、5フォース分析の結果をより実践的な戦略につなげられます。

ポイント2:長期的な視点で分析を続ける

5フォース分析は短期的な戦術ではなく、中長期的な戦略を立てるためのものです。
目先の競合の動きだけに一喜一憂するのではなく、業界構造そのものが今後どのように変化していくのかを予測する視点が欠かせません。
例えば、規制緩和や技術革新など、将来的に参入障壁を大きく変えうる要因にも目を光らせておく必要があります。

ポイント3:SWOT分析など他のフレームワークと組み合わせる

5フォース分析は、自社を取り巻く「外部環境」を分析するのに非常に優れたツールです。
しかし、最適な戦略を立てるには、同時に「内部環境」、つまり自社の強み(Strength)と弱み(Weakness)を正確に把握する必要があります。
そこで有効なのが、内部環境と外部環境を整理する「SWOT分析」との組み合わせです。

分析フレームワーク分析対象主な目的
5フォース分析外部環境(業界)業界の魅力度と競争要因を特定する(機会・脅威の深掘り)
SWOT分析内部環境・外部環境自社の強み・弱みと、外部の機会・脅威を整理し、戦略を導き出す

5フォース分析で業界の「機会」と「脅威」を深掘りし、その結果をSWOT分析に組み込むことで、より精度の高い戦略オプションを洗い出せます。

また、他にも下記のフレームワークは、5フォース分析と組み合わせることで、外部・内部環境の双方を分析できます。

分析フレームワーク概要5フォース分析との相乗効果
PEST分析下記の4つの観点から業界に影響する要素を洗い出す
・P(政治)
・E(経済)
・S(社会)
・T(技術)
5フォース分析は「業界レベル」に特化しているため、PEST分析でマクロ環境の変化(規制、トレンド、景気など)を補完することで、より長期的な視点を加えられる
3C分析下記の3点から顧客目線での分析を行う
・Customer(市場・顧客)
・Competitor(競合)
・Company(自社)
5フォースが競合や業界全体を分析するのに対し、3Cはより「自社目線」かつ「顧客目線」での実行戦略に結びつけやすい。特に競合要因の深掘りに効果的
バリューチェーン分析自社の業務プロセス(製造、販売、マーケティング、サポートなど)を機能別に分析する5フォースで見えた業界の競争要因に対して、自社の内部活動のどこに競争優位性を持たせるべきかを具体的に落とし込める
VRIO分析自社の資源が下記の4つのポイントを満たすかを評価する
・Value(価値)
・Rarity(希少性)
・Imitability(模倣困難性)
・Organization(組織体制)
5フォースで明らかになった競争環境において、自社の資源がどれだけ「長期的な優位性」を保てるかを検証するのに役立つ

5フォース分析で競争優位性を築く第一歩を

5フォース分析の基本から実践的な進め方、そしてIT業界のリアルな事例を確認しておくことで、適切な分析を通じて競争優位性を築くことができます。
5フォース分析に関する重要なポイントは、下記の3つです。

  • 5フォース分析は、業界の「儲かりやすさ」を客観的に評価する強力なツールである
  • 「業界内の競争」「新規参入」「代替品」「買い手」「売り手」という5つの力の意味を正しく理解することが出発点となる
  • 分析は客観的なデータに基づいて行い、その結果を具体的な戦略課題の抽出につなげることがもっとも重要である

5フォース分析は、複雑に見えるビジネス環境を構造的に理解し、自社が競争を勝ち抜くための指針となる競争戦略論です。
ぜひ、この記事で得た知識を活用し、ビジネスにおける競争優位性を築くための第一歩を踏み出してください。

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