ECサイトの構築は初心者でも大丈夫?最低限知っておく業務や機能を徹底解説
こんにちは。Wakka Inc.のテクニカルディレクターの安藤です。
昨今の巣篭もり需要を考慮し「我社でもECサイトをオープンしたい」とお考えの方も多いのではないでしょうか?
「楽天やAmazonなどのモール型サイトには出品しているが、さらなる販路を確保するために自社でECサイトを運営してみたい」
「ECサイトの構築ははじめてなので、どこから手をつけていいかわからない」
といったご相談を受けるケースが増えてきています。
そこで本記事では、ECサイトの構築の手法、オススメの4パターンを徹底解説します。きっとあなたの企業にピッタリのECサイト構築が見つかるはずです。ぜひご参考になさってください。
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目的や売上規模に応じたEC種別選定や最適な構築手法についての診断を受けたい方は、「料金目安もわかるECサイト構築ガイド」をご確認ください。
ECサイト構築とは?
ECサイト構築とは、顧客に向けて商品やサービスを提供するサイトを作成することを指します。自社の事業に合わせたECサイトを構築するには、ECサイトに関わる業務を把握することが重要です。
ECサイトを構築せずに通販を行いたい場合には、手っ取り早く大手通販サイトのECモールに出品するという手があります。代表的なECモールは、Amazonや楽天などです。
大手のECモールは高い知名度と集客性を誇り、手数料を払えば出品できるというメリットがありますが、独自の顧客リストを抱えられないというデメリットもあります。
顧客の感じ方としても、自社の店舗を理解してもらい商品を購入したというよりも、大手のECモールで商品を買ったという印象が強く残ってしまうでしょう。
新たな販路やリピートして購入してくれる顧客を確保するためには、自社でECサイトを構築し、顧客リストを作成して自社のファンを獲得する必要があるのです。
しかしやみくもにECサイトを構築するだけでは、顧客リストを作成するのは難しい課題として残ってしまいます。そのため、ECサイトに関わる業務を把握し、自社の課題や対応可能な業務を洗い出すことが重要です。
ECサイトを構築し、顧客に満足してもらえるようなサイトにするためには、大きく分けて2つの業務を把握する必要があります。
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フロント業務の構築
フロント業務とは、顧客が商品やサービスを選ぶ瞬間までのすべての行動に関わる業務のことです。たとえば
- 「ECサイトで何を売るのか?」という商品企画
- 売るための商品をプロモーションするためのWebマーケティング
などがフロント業務に分類されます。ここで重要なのが、ECサイトの構築もフロント業務に分類されるということです。
顧客が商品を選ぶのに手間がかかるサイトを構築してしまうと、購入まで至らない場合もあるため、ECサイト構築も重要なフロント業務にあたります。
バックグラウンド業務の構築
バックグラウンド業務とは、顧客が商品やサービスを手にとって満足するまでのすべての行動に関わる業務のことです。
顧客に商品を届ける包装・搬送業務だけでなく、商品の問い合わせに対応するためのカスタマーサポートまでがバックグラウンド業務にあたります。
フロント業務の販促により想定以上の反響があったときに、適切な量の在庫がないと顧客に商品をお届けできません。適切な在庫量は、機会損失を防ぐためにも重要です。
ECサイトの構築といえばフロント業務だけに目が行きがちですが、顧客の満足度の向上を目指したり、継続的な自社の利益を追求するためには、バックグラウンド業務もしっかり構築することが重要なのです。
外部システムとの連携の構築
「自社で運用している基幹システムと連携できるか?」を確かめることは、サイト構築をする上で重要なポイントです。
既存システムの中には、ECサイト自体は無料で構築ができるものもありますが、物流システムなどとの連携ができない場合があります。
ECサイトが大規模になればなるほど、生産管理システムなどの基幹システムとのスムーズな連携を行うことで、機会損失を防げます。
また、連携を行うことで商品発送の自動化など、業務プロセスのオートメーション化が可能となり、生産性の向上も図れます。ですので、基幹システムとの連携の有無は必ず確かめましょう。
フロント業務からバックグラウンド業務までスムーズにおこなえるサイト構築が必要
自社でできる、または足りないフロント業務やバックグラウンド業務が把握できれば、「どのようなシステムが自社に必要か?」は比較的容易に把握できるでしょう。
自社がやりたいことを把握せずに、やみくもにサイトをオープンさせると、結局思うような成果が得られず、サイトの引っ越しなどの作業が新たに発生してしまうかもしれません。
まず自社の取り巻く環境や、目指す事業内容を把握し、「将来に渡ってどのような規模で事業を展開したいのか?」計画を立てることが重要です。
綿密な計画に沿ってシステム構築の手法を検討することで、スムーズなサイト構築を図れるでしょう。
ECサイトに必要な機能とは?
ECサイト構築にはフロント業務とバックグラウンド業務のスムーズな連携が必要ですが、具体的にどのような機能が必要なのかを解説します。
フロント業務に必要な機能
フロント業務に必要な機能は、実際に商品やサービスを選ぶ瞬間までのすべての行動に関わる意思決定を、顧客がスムーズにおこなえるような機能です。
大手のECサイトをご利用されたことがある方ならば、イメージしやすい機能ではないでしょうか。
商品検索機能
ECサイト内で、商品を検索する際はサイト内検索を使うのが一般的です。自社で扱う商品が多い場合には、サイト内検索に加えて、絞り込み検索などができる機能があると目的の商品が探しやすくなります。
具体的には価格帯、商品ジャンル、送料無料などのECサイト側でカテゴライズされている情報を検索できる機能です。顧客のニーズにあったものを絞り込む機能があれば、顧客満足度のさらなる向上につながるでしょう。
マイページ機能
マイページ機能とは、ECサイトに会員登録した個人情報の確認や変更、または注文情報を確認できる機能のことです。
具体的にはお気入り商品の登録や、注文情報の確認、注文履歴などの機能がそれにあたります。
会員登録機能も併せ持つことで、顧客はスムーズに商品を購入・記録管理できるようになり、企業は顧客情報の管理がしやすくなります。
カート機能
カート機能とは、顧客が購入したい商品を一度にまとめるために必要な機能です。商品検索機能で絞り込んだ商品を選択することで、カートに追加できます。
顧客がカートに商品をいれても購入に至らない、いわゆる「カゴ落ち」という状況が発生してしまうため、顧客が選びやすいショッピングカートを設置することが重要です。
決済機能
商品をカートに入れて最終的に購入に至る場合、顧客が使いやすい決済機能を持たせないと、購入に至らないケースがあります。代表的な決済機能はクレジットカード、銀行振込、コンビニ払い、代引きなどです。
クレジットカードを持っていない顧客もいるため、様々な決済方法を用意するのがよいでしょう。
バックグラウンド業務に必要な機能
バックグラウンド業務に必要な機能は、
- 顧客が商品をスムーズに受けとれる
- 企業側の商品を適切に管理できる
- 顧客に満足してもらえるような業務をスムーズにおこなえる
ような機能です。大手のECサイトを利用されただけでは分かりにくく、どちらかといえば裏方のような業務になりますが、顧客満足度のカギを握っているのがバックグラウンド業務です。
必要な機能をECサイトに盛り込むことで、さらなる商機にもつながるでしょう。
受注・配送管理機能
受注・配送管理機能とは、「どのタイミングで顧客から受注があったのか?配送に問題が起きていないか?」を管理する機能です。
顧客がせっかく発注してくれたのに、発送漏れで商品が届かない場合、顧客満足度の低下につながってしまう場合があります。
「適切に配送がおこなわれているか?」を管理することで、発注漏れを防げるため、バックグラウンド業務には必須の機能といえるでしょう。
自社で物流システムを導入している場合には、受注・配送管理の機能と連携できると、高い生産性を維持できます。
また「どのタイミングで発注が入ったか?」などを分析できるので、商品の発注傾向、人気の商品の分析などにも利用が可能です。
売上管理機能
売上管理は、効率的な経営を行うためには必須の機能です。
在庫管理なども合わせて行うことで、人気の商品、不人気の商品などの洗い出しもできるため、今後の経営方針を定めるためにも備えておくべき機能といえるでしょう。
商品問い合わせ機能
顧客が商品を手にとって、万が一不安を覚えてしまった場合に、不安を解消するために備えるべき機能が商品問い合わせ機能です。
ECサイトへのメールや、チャット、電話などで対応するのが望ましいでしょう。メールに関しては、問い合わせフォームを作成する必要があります。問い合わせフォームを作成することで
「顧客の不安がどこにあるのか?」
「企業からどのようなアプローチをしてほしいのか?」
などが把握できるため、サイト運営者としても管理がしやすくなります。
よくある質問をQ&Aをまとめたり、最近ではチャットでリアルタイムの受付を行うサイトも増えてきました。
ECサイト構築の4つのパターン
ECサイトを構築するには、大きく分けて4つのパターンがあります。どのパターンでやらなければならないという決まりはありませんが、
- 自社でやりたいことは何なのか?
- 構築するための費用はいくらか?
- ランニングコストがどれぐらいかかるのか?
は必ず確認するようにしましょう。サイトの中には月額費用が必要なもの、または売上に対する課金などがあり、利用するサービスごとに必要な金額が異なるケースもあります。
ASP(Application Service Provider)
ASPとは、事業者がアプリケーションを通じてサービスを提供することを指します。ECだけでなく、販売管理、会計サービスなど多岐にわたり、企業は必要なサービスを選んで運用できるのが特徴です。
ECサイト構築にあたっては、必要最低限の機能がそろったサービスを提供している事業者が多いです。
代表的なASPは国内で出店数が増えているBASEや、現在急速にアカウント数を増やしていている海外ASPであるShopifyなどがあります。
ASPのメリット
ASPのメリットは初期投資、ランニングコストが安くすむことです事業者の提供するサービスの中には、初期費用も月額も無料で、ECサイトを構築するハードルが低いものもあります。
ECモール型のものも初期費用、ランニングコストが安く済むものもありますが、ASPは顧客情報(リスト)を自社で保有できるのがモール型ECサイトとの大きな違いです。
費用を抑えられるので「チープな機能しかないのでは?」と思われるかもしれません。
しかしASPの中には、販促のためのクレジットカード決済やキャッシュレス決済などの連携機能など、売上をあげるためのさまざまな機能が備わっているサービスも多くなってきています。
無料ASPと有料ASPの大きな違いは、ECサイトの独自ドメインの取得の有無でしょう。将来ECサイトの規模を拡張したいときには、「独自ドメインを取得できるか?」が大きなカギを握っています。
自社の事業規模にあわせてECサイトを引っ越しする際、独自ドメインを取得できない場合は新たにドメインを取得する必要があります。
そうするとECサイトへの検索エンジンからの評価がリセットされてしまい、検索結果に影響をあたえる可能性があるからです。
メインの取得ができるASPも大きな費用が発生するわけではありませんので、「まずは有料のASPを利用し、ECサイト運営のノウハウをつかみたい」という企業にはオススメできるサービスといえます。
ASPのデメリット
ASPのデメリットは、拡張性に乏しいことです。あらかじめ事業者が提供しているシステムを使うため、自社で実装したい機能がでてきたとしても、対応が難しい場合があります。
またデザイン面の詳細なカスタマイズもできないため、凝ったサイトを作りたい場合にはあまり向かないかもしれません。
またASPは外部機能との連携を想定していないサービスが多いため、自社の基幹システムと連携したい場合にも不向きでしょう。
外部連携が必須の場合は、ASPではなく、パッケージ型のサービスや、フルスクラッチ開発でのECサイト構築も検討するべきでしょう。
パッケージ型
パッケージ型のECサイト構築は、構築に必要な基本機能が用意されているのが特徴です。在庫管理、顧客管理、決済機能など、おおよそECサイトを構築するにあたって必要な機能を兼ね備えています。
パッケージ型とASPとの違いは、パッケージ型はある程度のカスタマイズ性があるということです。
パッケージ型のメリット
パッケージ型のメリットとして、導入までの期間が短いことがあげられます。ある程度の機能は実装されていますので、ゼロからシステム構築をする必要はないのです。
自社のサーバーにECパッケージをインストールすれば、すぐにでもECショップを構築できます。自社でサーバーを運用している企業ならば、パッケージ型を導入するメリットは大きいでしょう。
また、さまざまなニーズに対応するためのカスタマイズ性に優れているのも特徴の一つです。
現在は国内規模のECしか展開していなくても、「今後越境ECを展開したい」などのニーズにも柔軟に応えてくれます。
ASPが外部システムとの連携を前提として作られていなくても、パッケージ型ならば連携を前提とした機能を提供してくれるため、生産性の向上に大きく寄与するでしょう。
パッケージ型のデメリット
パッケージ型のデメリットは、ASPと比べると導入費用が高額である点があげられます。パッケージを提供するベンダーによって値段はさまざまですが、イニシャルコストで数百万円かかるのが一般的です。
またサーバーにソフトをインストールするため、サーバー自体の維持費や、メンテナンス費用なども必要となってきます。
ASPなどと比べて、イニシャルコスト、ランニングコストが大幅にかかるため、気軽にECサイトを開設してみようという企業には不向きかもしれません。
またせっかくECパッケージを導入したとしても、システムが陳腐化してしまい、再度パッケージを提供してもらわなくてはいけない場合があることも念頭に置く必要があります。
オープンソース
オープンソースとは、外部に無料で公開されているソースコードを使い、ECサイトを構築していく手法です。
無料で公開されているとはいえ、ECサイトに必要な基本機能は備わっており、プラグインなどを組み合わせてECサイトをオープンできます。代表的なオープンソースといえばWordPressやEC-CUBEがあげられます。
オープンソースのメリット
オープンソースのメリットといえば、初期費用とランニングコストが極端に低いことです。必要なものといえば、レンタルサーバー代やドメインの取得料、決済手数料などです。有料のASPやパッケージ型に比べれば、大幅にコストを下げることができるでしょう。
また無料のプラグインが多く提供されているので、ある程度の拡張性は担保されています。
追加開発は必要ですが、社内の基幹システムとの連携も比較的容易なため、ECサイトを運用しながら問題点を改善していくという点では、ASPより優れているかもしれません。
オープンソースのデメリット
オープンソースのデメリットは、ソースコードに対する理解が求められる点です。自社でコードを組み込んだり、サイトのメンテナンスをする必要があるため、プログラムについて精通している人材が求められます。
エンジニアの採用ハードルが上がってきている昨今、社内で優秀なエンジニアを確保できない場合は、オープンソースでのECサイト運営は難しいかもしれません。
またソースコードは公開されているため、ハッカーに情報が筒抜けになってしまう場合があり、セキュリティを高く保つのが難しい場合もあります。
ECサイトでは、個人情報は商機につなげていく大切な情報ですが、漏えいしてしまうと一気に企業の信頼を失います。セキュリティに万全の体制を整えられない場合は、オープンソースでのECサイト構築は避けたほうが無難です。
フルスクラッチ開発
フルスクラッチ開発とは、既存のシステムやサービス、パッケージを使うのではなく、新しい状態でECサイトを構築していく手法を指します。
フルスクラッチ開発をおこなっている企業は大企業が多く、UNIQLOなどの国内大手の企業は、売上を最大化するためにECサイトを独自の手法で構築しています。
ASP、パッケージ、オープンソースと比べて最も拡張性が高く、カスタマイズがしやすいので、「これからEC事業をさらに大きくしていきたい」とお考えの企業には、ぴったりのECサイト構築手法といえるでしょう。
フルスクラッチ開発のメリット
フルスクラッチ開発のメリットは自由度の高さです。自社の思い描く通りのデザインや機能を、自由に構築できます。
また顧客の反応などに合わせてECサイトを自由に改善できる、つまりPDCAサイクルを迅速に回せるのもメリットのひとつではないでしょうか。
ECのトレンドの移り変わりは非常に早いため、施策を次々に打ち、改善できる点はフルスクラッチ開発の大きなメリットといえるでしょう。
ECサイト内部の改善だけでなく、法改正や保守業務など、外部の環境も大きく変わることで修正を求められる可能性があります。
フルスクラッチ開発ならば保守業務にも柔軟に対応できるため、市場の動きなど敏感なトレンドにも即時に対応することが可能なのです。
フルスクラッチ開発デメリット
フルスクラッチ開発のデメリットは導入までの時間が長いことと、導入費用が高額になることがあげられます。フルスクラッチ開発は企業の要望により、
- 要件定義
- 設計
- 開発
- 運用テスト
をおこなっていく必要があるため、どうしても導入期間は既存のシステムと比べて長くなってしまいます。
構築におおよそ半年から1年程度の時間が必要となってくるため、「ECサイト運営を今すぐ始めたい」という企業には向いていないかもしれません。
またフルスクラッチ開発には、高い専門性を持つ人材がチームを組んで開発にあたる必要があります。
さまざまなジャンルの専門家を自社で雇い入れる必要がありますので、すべての企業がフルスクラッチ開発に適しているわけではありません。
しかしある程度企業規模が大きく、今後企業としてどのようなECサイト運営をおこなっていきたいかがはっきり定まっている企業では、フルスクラッチ開発が売上規模を最大化できる手法といえるでしょう。
ECサイト構築に必要な知識やスキルとは?
ECサイトを新たに構築する場合、ASPなどを利用する場合はあまり専門的な知識は必要ないかもしれません。
しかし、構築後の運営を考えると、しっかりとした知識を身につけることで、ECサイトの要件定義がスムーズにおこなえます。フルスクラッチ開発などの場合は納期の短縮などにもつながり、結果的に導入コストをおさえられるでしょう。
ASPでECサイトを構築する場合でも、スムーズに運営するためにも習得しておきたい知識やスキルについて解説していきます。
ITリテラシー
0からECサイトを構築していく場合には、プログラミング言語への理解が必須です。とくにパッケージ型やフルスクラッチ開発の場合、ベンダーとのやり取りをスムーズに行うため、社内のITエンジニアやシステム担当を専任の担当者としてアサインするのが望ましいです。
顧客が目にする画面と、サーバーで処理されるプログラムは異なるため、担当者には複数の言語についての理解が求められます。
顧客が目にする画面については、画面を装飾するマークアップ言語であるHTML、CSSや、表示されている画面に動きをつけるときに必要な言語であるJavaScriptが代表的です。
発注処理などのサーバー操作で必要な言語は、PHP、Java、Ruby、Pythonなどです。
ECサイトのデザインは売上に直結しますので、Webデザインのスキルも非常に重要になってきます。サイト全体のデザインだけでなく、ボタンの配置からレイアウト、フォントなどにも徹底的にこだわることで売上の向上が見込めるからです。
Webマーケティングスキル
ECサイトでの売上を高めるために必要なスキルが、Webマーケティングスキルです。ECサイトを要件定義通り作成し、テスト運用も問題なく導入できたとしても、集客ができなければ売上にはつながっていきません。
顧客がECサイトを訪問しても決済まで至らないケースもあり、「ECサイトのどのあたりを改善すれば売上につながっていくのか?」を判定するのは重要なスキルです。
Webマーケティングスキルには様々なものがありますので、具体的に求められるスキルを解説します。
広告効果の実証
ECサイトへの訪問をうながすのに最も効果的なのがWeb広告です。ECサイトの訪問の回数をはかる指数としてPV(ページビュー)があります。
PVを増やすためには、自社ホームページのコンテンツやECサイトのコンテンツを充実させていき、ドメインパワーを高めていく手法が一般的です。
しかしドメインパワーを高めてPVを獲得していく手法は時間がかかり、効果がでるまで1年以上かかることもあります。ECサイトの売上に直結させるためには、Web広告に予算を費やすことが必要です。
広告にはリスティング広告、ディスプレイ広告、アフィリエイト広告などがあります。
「広告に予算を使ったあとはPVがどれぐらい向上したか?」
「CVR(コンバージョンレート:訪問者のうち、購入までつながった割合の指標)がどれほど改善したか?」
などを解析することが重要です。
ECサイトの構築の際には、目標とする指標が簡単に分析できるような機能が盛り込まれていることが望ましいでしょう。
各種SNSとの連携
ECサイトと各種SNSとの連携も、集客効果の高い手法です。SNSは気軽にはじめられ、情報発信力が強く、また企業のブランディングを高めるのにも非常に役立ちます。
顧客と直接コミュニケーションをとることもできるため、自社のファンを獲得するのにも有効なのです。
「じっくりパソコンを使って商品を検討したい」というユーザーもいれば、「スマートフォンでさっと情報を集めたい」というユーザーもいます。
ECサイトとSNSを連携することで、両方の顧客にアプローチできるため、ECサイトのみで運用するよりも幅広い顧客に認知してもらえるでしょう。
ECサイトにはSNSボタンの設置、投稿埋め込み、SNSの自動投稿などの機能を盛り込むことが望ましいです。
コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングとは、読者にとって読む価値がある記事を、自社WebサイトやECサイト内で提供することを指します。有益なコンテンツを提供し続けることで、読者が自社のファンになり、LTVの高い永続的な顧客となる可能性を秘めています。
一度コンテンツを公開すればそれ以上の費用はほぼかからないので、非常にコストパフォーマンスに優れている施策といえるでしょう。
コンテンツマーケティングの弱点は、Web広告と違い、PVの改善には時間がかかるという点です。記事を公開しても、すぐに閲覧してくれる人が増えてくるわけではないからです。
Web広告は短期的、コンテンツマーケティングは中長期的な戦略と位置づけ、両方を適切に運用することでECサイトでの売上改善が期待できます。
またいくら有益な記事でも、GoogleやYahoo!の検索で上位表示されないと、なかなか読者には届きません。検索の上位に表示させようとすると、SEO(Search Engine Optimization)の観点から記事を作成する必要があります。
SEOを用いて検索の上位表示を実現するためには、キーワード分析などさまざまな知識が必要です。非常に時間と手間がかかるため、オウンドメディアの制作をプロに一任する企業も少なくありません。
ECサイトにはコンテンツを配信できる機能を持つものも多いので、うまく活用してPVやCVRを改善させることが望ましいでしょう。
コミュニケーションスキル
ECサイトのような顧客の顔が直接見られない状況で、顧客に満足してもらうために必要なスキルがコミュニケーションスキルです。商品の要望やクレームなど、幅広いご意見を適切に処理する必要があります。
クレーム対応はネガティブな印象を受けがちですが、適切に処理することで自社の熱心なファンを獲得できることも少なくありません。
コミュニケーションスキルは顧客満足度の向上につながるだけでなく、ECサイト構築の要件定義などにも役立ちます。
企業がやりたいことと、ベンダーに発注する業務を円滑にとりまとめることも、ECサイトの構築には必須になるからです。
ECサイト構築の実際の手法
ECサイトの構築は、
- 自社で構築する
- 社外に構築を依頼する
2パターンに分けられます。また社外の専門家に依頼する場合、「ベンダーに依頼するのか?」「フリーランスに依頼するのか?」によっても、条件やメリットなどが変わります。
それぞれの構築手法について、パターンを分けて解説していきましょう。
自社で構築
「小規模かつ、まずはECサイトを立ち上げてみよう」と考えている場合は、自社で構築することをオススメします。
自社でやりたいことを把握し、予算の確保ができたら、ASPで運用しながら問題点を把握する手法を取る企業も少なくありません。
ECサイトのプラットフォーム構築も大事ですが、集客を行うノウハウを身につけるほうがはるかに難易度が高いからです。構築するためのモデルもある程度用意されているので、自社のイメージにあったサイトを構築できます。
最短30分で構築できる例もありますので、「とりあえずやってみよう」と考えているなら、自社で構築するのがオススメです。
ベンダーに依頼
ベンダーとは、ECサイトの立ち上げに必要な作業を請け負ってくれる業者を指します。
「ASPでは売上を最大にできなくなってきた」など、課題が明確になってきてからベンダーに依頼するのがいいでしょう。
ECサイトのベンダーにも企業の売上規模感や得意ジャンルなどがあるため、ベンダーに依頼する場合は、その企業のホームページにあるECサイトの構築例を参考にするのがオススメです。
自社が思い描くECサイト像と近い成果物を納品しているベンダーは、そのジャンルの制作が得意である可能性が高いです。構築例のサイトに実際にアクセスし、使い勝手などを調べてみるのもよいかもしれません。
「自社に必要な機能が搭載されているか?」
「自社のイメージに近いサイトに仕上がっているか?」
などを確かめてからベンダーを選定すると、より理想に近い構築をおこなえます。また発注前に、
- イニシャルコストはいくらか?
- ランニングコストはどれくらいかかるか?
- 事業規模の拡大にあわせてアップグレードが可能か?
などを確かめるのも大切です。
ECサイトは構築しておしまいというわけではありませんので、セキュリティの問題や専任の担当者の存在など、「運用をはじめてからもしっかりとフォローしてくれる体制があるか?」も確認する必要があるでしょう。
フリーランスに発注
フリーランスとは会社に属さず、個人で仕事を請け負う個人事業主を指します。最近ではLancersやクラウドワークスなどWebで仕事を請け負えるようになってきたため、広く浸透してきました。
フリーランスへの依頼が向いているのは、「ASPでは独自色が出せなくて、自社独自のECサイトを開発はしたいけど、あまりコストをかけられない」とお考えの企業です。
フリーランスは自宅や小規模オフィスを構えて作業することが多いため、固定費、人件費、開発費があまりかかりません。そのためEC構築費用がベンダーより安いのです。
またフリーランスが仕事を請け負う場合、複合的な作業を一人で請け負うことになるため、チームで取り組む作業よりもかえってスムーズに作業が進む場合があります。
構築の改善依頼がすばやく通り、満足行くECサイトが納品される可能性もあるでしょう。デメリットとしては、フリーランスの方のスキルが見えにくく、発注のクオリティ管理が難しいことです。
発注する前に「想定の成果物が自社のイメージに合うか?」を綿密にチェックする必要があります。
ベンダーのようにECサイト構築後の運営に伴走してくれるようなこともないため、構築後は自社でメンテナンスを継続する必要があるのもデメリットとしてあげられます。
年商別おすすめのECサイト構築
ECを構築する場合、自社の年商規模から構築パターンをあてはめる手法もあります。今までの年商規模からECサイトでの売上などを予測し、プラットフォームを定めていく手法が一般的です。
個人
個人の場合、ECモールに出店するのがオススメです。ECサイトは初期費用や、登録費用、構築費用などが格安なため、「まずはとりあえずやってみたい」という個人には最適です。
また大手ECサイトはブランディングが確立されているため、ECショップ運営の要である、出品、販売、納品のノウハウを身につけやすいのもメリットでしょう。
Amazonなどではあまり商材を多く販売しない方向けのプランもあり、その場合は商品1点につき100円程度の基本成約料と販売手数料などが課金されます。おおよそのコストについては、初期費用は無料のものから数万円程度、ランニングコストは月額数千円程度になります。
1億まで
年商1億円程度の企業の場合、ASPでECサイトを構築するのがオススメです。ASPの中には、初期費用や月額費用がかからないサービスもありますが、その分決済手数料がかかります。
国内大手のBASEでは決済手数料が3.6%+40円、サービス利用料が3%のプランがあり、「まずは小さくはじめてみたい」という企業には向いているプランといえるでしょう。成長してきたら月額プランにも切り替えられますが、使える機能は無料、有料と差がありません。
海外ECであるShopifyは月額25$から利用できます。ほぼフルスペックの機能を利用できるのはもちろん、デザイン面でも優れたECサイトを構築できるため、利用者が急増しています。
おおよそのコストについては、無料ASPは初期費用、月額費用はかかりません。購入に至った場合に決済手数料が発生するケースが多いです。
有料ASPで初期費用は1万円、月額費用も数千円程度です。販売手数料が別途必要となるケースもあるので注意しましょう。
1億~30億
1億~30億円程度の企業規模になると、オープンソースかパッケージの両軸で検討する必要があるでしょう。オープンソースでの構築は
- 専門性の高い人材を社内で雇用している
- 現在外部に委託できるような取引業者がいる
ような場合に検討しましょう。一度オープンソースで構築したとしても、継続的にメンテナンスができる環境を整えることも重要です。
とくにオープンソースはセキュリティに問題がある場合もあるため、構築したままにせず専任の担当者を立てて、ECサイトを維持していきましょう。
「社内に専門性の高い人材はいないが、EC事業で実績があり、今のECサイトをリニューアルしたい」という企業には、パッケージ型という選択肢もあります。
ECサイトを構築するベンダーにはそれぞれ特色があり、
- 定期通販に強みがあるベンダー
- 他社のシステムとの連携を得意としているベンダー
- 広告分析の提案に強いベンダー
など得意ジャンルはさまざまです。費用もベンダーによって異なるため、まずはECサイト構築に割ける予算を決めてから構築をおこなったほうが無難でしょう。
パッケージ型に関しては、一般的にパッケージ販売価格が500万円程度、またサーバーを自社で維持するために月に10万円程度の保守費用などが発生します。
100億以上
ECの売上が100億円以上となると、国内でも有数の規模感となってきます。この規模感になると「本来のパッケージ型をカスタマイズした程度では、自社のやりたいことに追いつかない」場合があります。
たとえば購入予約などは、ECサイトでは必要のないものとして、パッケージ型では実装されていないケースもあります。
実装する場合には費用をかけてパッケージ型をカスタマイズする必要がありますが、要件が通常業務外になるため、費用が跳ね上がることもめずらしくないのです。
そのためパッケージ型を導入するよりも、フルスクラッチの方がかえって安く構築できるケースもあります。またこのEC規模では、専任の担当者が部門毎に配置されているケースもめずらしくありません。
Webマーケティング部門の担当者と商品開発の担当者、EC構築のための技術部門の担当者などです。部門間で密にコミュニケーションを取れている場合は改善点が見つかりやすいので、常に改善し続けることで企業の売上規模を最大化できるのもフルスクラッチ開発の強みです。
フルスクラッチ開発には数千万円程度かかる場合もあるので、
「専門の担当者がアサインできるか?」
「予算はしっかり確保できるか?」
などを検討して、ECサイトの構築に取りかかりましょう。
自社に最適な方法でECサイトを構築しよう
ECサイトを構築するならば外せない業務の把握と4パターンの構築例、企業規模でどのプラットフォームが適しているかを解説いたしました。
「ECサイトを利用したい」という顧客のニーズは今後さらに需要を伸ばしていくと予想されています。とりあえずECサイトの運用をはじめたとしても、どこかで足りない部分が出てくるかもしれません。
EC事業を長期的に発展させるために何より大切なのは、信頼できる開発企業を選ぶこと。
実績だけでなく、万全のサポート体制がある最適の企業を選んで、EC事業を成長させましょう。
学生時代にWebサイトを自作したことがきっかけでWebの世界に。制作会社でデザイン、WordPressテーマ開発の実務を経て、テクニカル・ディレクターとして大規模サイト構築のディレクションを経験。2021年からWakka Inc.の日本拠点でWebディレクターとして参画。最近はブロックエディタになったWordPressをもう一度、勉強しています。