【2024年最新】オフショア開発の人月単価の目安は?最新動向から今後の見通しを解説
オフショア開発に期待することは、開発力や開発効率、優秀な人材の確保などさまざまですが、やはり一番気になるのは利益に直結するコストです。システム開発において、コストの大半を占めるのは人件費です。
となれば、ITエンジニアの人月単価はプロジェクトの成功を左右する重要な要素となります。オフショア開発の委託先としてよく名前の挙がる各国の人月単価は、現在どのような状況なのでしょうか。
今回はオフショア開発における各国の状況と人月単価の比較、今後オフショア開発で目指すべき方向などについて解説していきます。
オフショア開発のうち、Wakka Incでは準委任契約のオフショアラボ型開発サービスを提供しています。
ラボ型開発に興味がある方は「【保存版】成長企業が導入するWakkaのラボ型開発」に詳しいサービス内容を掲載しているのでご覧ください。
日本発オフショア開発の動向
最初に日本発オフショア開発の動向について紹介します。オフショア開発を依頼する企業の傾向は以下の通りです。
- スマホアプリ開発
- 事務系Webシステム開発
- サービス系Webシステム開発
- 基幹系システム開発
- HPやECサイト制作
- AI開発
オフショア開発企業への委託案件は、ソフトウェア本体の開発部分を委託する場合が多いです。逆に、オフショアへの委託案件として不向きなのが、研究開発系の案件です。ノウハウの流出が心配であったり、機密性が高かったりする案件はオフショア開発が向かない傾向にあります。
日本におけるオフショア開発で現在最も人気の高い国は東南アジア圏ですが、その中でも好評を得ているのは「ベトナム」です。
「オフショア開発白書2021年版」の調査で判明したオフショア開発の検討先の国別割合は以下の通りです。
この結果を見ると、約半数の企業がベトナムでオフショア開発を行うことを検討していることが分かります。かつては中国が最も高い人気を集めていましたが、近年では東南アジアや南アジアをはじめとした国々がオフショア開発に活用されているようです。
オフショア開発国の比較ポイント3選
それでは、オフショア開発国を検討する際には、どのような点を注視して比較すれば良いのでしょうか。比較ポイントは以下の3つです。
- 比較ポイント1.人月単価
- 比較ポイント2.ITスキル
- 比較ポイント3.コミュニケーション・文化
比較ポイント1.人月単価
最初に見ておくべきなのは「人月単価」です。1人あたりが1ヶ月に作業をする量にどのくらいの費用がかかるのかを把握するようにしましょう。例えば、ベトナムでは30~60万円が目安、中国では30~50万円が目安です。
インドではもう少し安くなる傾向があります。ただ、単価が安いからといって安易に飛びつくのではなく、他の要素とも照らし合わせて考えてみるとよいです。
比較ポイント2.ITスキル
オフショア開発の動向が、WebシステムやスマートフォンアプリなどのIT系のサービスを外注する傾向にある以上、自社でも同様な扱い方が考えられるはずです。人月単価と同じぐらい重要になるのが「ITスキルはどの程度であるか」という点です。
ITスキルが高くなければ、せっかく良い開発設計書を描いたとしても実務に移すことができません。オフショア開発国を選ぶ際にはその国で働いている人材の平均ITスキルがどの程度であるかを確認しておきましょう。
比較ポイント3.コミュニケーション・文化
海外の現地人とやり取りをする以上、日本人である自分たちといかに円滑なコミュニケーションが取れるかは重要です。いくら技術力が高かったとしても、円滑なコミュニケーションが取れないのでは認識のズレや手戻り作業が増える恐れがあります。
自社に現地の言葉を堪能に話せる人材が居れば話は別ですが、そうでない場合の方が多いでしょう。依頼を検討しているオフショア開発国の平均的な日本語レベルも見ておくとより良いです。
おすすめオフショア開発国を3つポイントで比較
おすすめのオフショア開発国に関して、「人月単価」「ITスキル」「コミュニケーション・文化」の3点から詳しく説明していきましょう。
ベトナム
人月単価 | PM 65万円前後 ブリッジSE 50万円前後 SE 45万円前後 PG 40万円前後 |
ITスキル | 3.31 |
コミュニケーション・文化 | 日本語学習が積極的に行われている |
現在オフショア開発の委託先で人気No.1となっているベトナム。社会主義国家でありながら、ドイモイ政策により市場経済を導入したことで、近年は著しい経済発展を遂げています。
また、ベトナム政府が積極的にICT関連の人材育成や企業育成に関わっていることもあり、毎年多くの人材を輩出し、ICT関連企業も急増しています。
国外から多くの開発案件が入ってきているため人月単価(平均人月単価は)は上昇傾向ですが、国内のIT人材は豊富でまさにオフショア開発の普及期と言えます。
開発コストとパフォーマンスのバランスに優れた委託先です。
バングラデシュ
人月単価 | PM 65万円前後 ブリッジSE 60万円前後 SE 30万円前後 PG 25万円前後 |
ITスキル | データなし |
コミュニケーション・文化 | ベンガル語、英語 |
オフショア開発において、ポストベトナムの最有力候補といわれているのがバングラデシュです。1991年の民主化以降は国策としてICT産業の育成に注力し、企業誘致や人材育成も積極的に行われています。
その結果としてIT人材も豊富になりつつあり、オフショア開発先として今後の成長が期待されています。平均人月単価は比較的安価ですが、インターネット環境や都市交通などインフラの整備にはまだ課題が残っています。
ミャンマー
人月単価 | PM 65万円前後 ブリッジSE 40万円前後 SE 35万円前後 PG 30万円前後 |
ITスキル | データなし |
コミュニケーション・文化 | 日本語学習に積極的に力を入れているため、話せるエンジニアも多い |
バングラデシュに次いでポストベトナムと言われているのが、ミャンマーです。国民性は勤勉で日本人との相性も良いといわれています。オフショア開発における人月単価は比較的安価(平均人月単価は27万円程度)ですが、ミャンマーの大きな問題は政情不安です。
ミャンマーは2010年に総選挙が行われ実質的に民主化されましたが、2020年には軍事クーデターにより再び軍事政権となりました。ミャンマー国内にあった日本企業は多くが撤退しており、オフショア開発に関しても稼働はしているものの今後が見通せない状況となっています。
人材の育成やインフラ整備にも課題を抱えていますが、何より政情の安定がミャンマーには求められています。
フィリピン
人月単価 | PM 75万円前後 ブリッジSE 70万円前後 SE 50万円前後 PG 35万円前後 |
ITスキル | データなし |
コミュニケーション・文化 | 英語・タガログ語。日本語が話せる人材が少ない |
英語でのコミュニケーションが可能で、日本企業も多く進出しているのがフィリピンです。フィリピンは現地の言葉であるタガログ語のほかに英語が公用語となっており、ほとんどの国民は義務教育の段階から英語の教育を受けています。
この影響でフィリピンには以前から日本企業を含む海外企業が多く進出しており、人月単価としては平均で35万円程度と若干ベトナムより高くなっています。また犯罪の発生率は低下傾向にあるものの、重要犯罪(殺人、強盗等)の発生率は依然として高いとも言われています。
IT人材の数やインフラ整備などに問題はありませんが、都市部でも治安に不安が残るのがフィリピンの弱点と言えます。
インド
人月単価 | PM 80万円前後 ブリッジSE 55万円前後 SE 50万円前後 PG 35万円前後 |
ITスキル | 3.9 |
コミュニケーション・文化 | ヒンディー語・英語 |
欧米企業のオフショア先として、インドは十分な実績を持っています。
1990年以降、インド国内では多くのIT企業が創業し、経済が自由化された2000年にはすでにIT大国と呼ばれていたほどオフショア開発では歴史のある国です。
高い技術力を持ち、人材も豊富。その背景には、13億人以上と言われる人口があります。平均人月単価は35で地域による差がありますが、ジョブホップが多いのが弱点と言えます。
中国
人月単価 | PM 90万円前後 ブリッジSE 75万円前後 SE 55万円前後 PG 45万円前後 |
ITスキル | 3.58 |
コミュニケーション・文化 | 中国語 |
2000年頃から、それまでオフショア開発で人気だったインドを猛追、2010年頃にはオフショア開発先No.1となっていたのが中国です。IT人材の技術力はとても高く先端技術開発も委託できるのが中国の特徴ですが、国民性としては自己主張が強く協調性に欠ける面があるとも言われています。
人口も多く(約14億人)人材は豊富ですが、インド同様ジョブホップが多くオフショア開発を依頼した際にメンバーの入れ替わりが激しい可能性があります。平均人月単価は35万円〜40万円程度で、内陸部(成都、武漢等)と沿岸部(上海、北京、大連等)で差があります。
オフショア開発の動向や、ベトナムがオフショア委託先の人気No1となっている理由について知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
ベトナムにおけるオフショア開発の人月単価
ベトナムの平均人月単価は32万円程度ですが、IT開発における役割別の人月単価はどのようになっているのでしょうか。
ここでPM(プロジェクトマネージャー)、SE(シニアエンジニア)、ブリッジSE(ブリッジシステムエンジニア)、PG(プログラマー)の単価を見てみましょう。
実際には現地企業の経営状態や需要と供給のバランス、為替相場などによっても変化するので、あくまで目安と考えてください。
- PM 65万円前後
- ブリッジSE 50万円前後
- SE 45万円前後
- PG 40万円前後
役割別の人月単価は、先述のようにさまざまな要因で大きく変化します。なかでも大きく影響するのが需要と供給のバランスで、人材が少なければそれだけ単価は高騰してしまいます。
ベトナムの現在の傾向は、PM以外の人月単価が上昇傾向にあることです。特にSEとPGの上昇幅が大きく、これは実際の設計やコーディングに関わる人材が不足していることを表しています。
日本のIT人材不足の影響でオフショアの委託量は増加傾向ですが、毎年5万人程度と言われるIT人材の供給をどこまで増やせるかがベトナムの課題となっています。
人月単価の動向と今後オフショア開発で目指すべき方向性
ベトナムは日本におけるオフショア開発国として人気ですが、人月単価は東南アジア・南アジアのなかで最安ではありません。ただし役割による人月単価は各国とも上昇しつつあり、IT人材の過不足に大きく影響を受けます。
単に人月単価の安さだけでオフショア先を決定するのではなく、高い能力を活かして工数をかけずに開発することができれば、結果としてコストメリットが得られるという考え方も重要です。
オフショア開発における各国の状況でも触れたとおり、それぞれの国には政治や政策による事情が存在しています。政情や治安、IT人材の豊富さ、人月単価のバランスが取れているベトナムが、やはりオフショア開発では一番のおすすめになります。
ベトナムにおけるIT産業の特徴、魅力について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
オフショア開発ではサポート企業選びも重要
オフショア開発は自社だけで完結できるものではありません。例えば通訳をサポートする派遣企業や現地での配送を司る企業との連携など、さまざまなシチュエーションでサポート企業の力を借りる必要が出てきます。
このため、オフショア開発ではサポート企業選びも非常に重要であると言えるでしょう。サポート企業を選ぶ際にも、オフショア開発国を選ぶときと同様に、ただ単純に安いからといった理由に囚われないことが必要です。
自社のニーズに合ったサポートをしてくれるかどうか、コミュニケーションは丁寧かなど、複数の視点を持って選定しましょう。
●開発リソースの不足にお悩みなら●
>>>Wakka.Inc独自の海外子会社設立サービスがおすすめ!
無料でサービス資料をダウンロードできますのでぜひご覧ください。
自社に適したオフショア開発企業の選び方
それでは、自社に適したオフショア開発企業はどのように選べば良いのでしょうか。頭では理想の企業を思い描けていても、実際に探すとなると難しいものです。
この章ではそのような時に迷わないように、選び方をしっかり言語化しておきます。選び方は以下の3つです。
- 自社が目指す開発領域に適しているか
- 依頼内容に関連した実績が豊富か
- アフターフォローが充実しているか
自社が目指す開発領域に適しているか
自社が目指す開発領域に適しているかを重要視しましょう。特に自社が開発したい領域と相手企業の得意分野がマッチしているかは確認したいポイントです。
ここでミスマッチが起きてしまうとイメージと差が出てきたり、クオリティに納得がいかなかったりといった事態が起こり得ます。
依頼内容に関連した実績が豊富か
依頼内容に関連した取引実績をある程度持っているかもチェックしておきましょう。依頼内容に関連した実績がないのに依頼することには大きなリスクが伴います。
知らない外国の土地でのプロジェクトになるため、多少コストがかかってしまっても、信頼できる開発企業を選ぶのが最も得策といえます。
アフターフォローが充実しているか
「プロジェクトが完了したらそこで終了」、と契約が切れてしまうのはおすすめできません。なぜなら完了後も想定外のトラブルはつきものであり、対処してくれるサポーターがいなければプロジェクトが本末転倒になることもあるからです。
上記のような事態を防ぐためには、やはりアフターフォローまで充実している開発企業を選ぶようにしたいものです。
まとめ:大切なことは人月単価だけに目を奪われないこと
プロジェクト全体の管理を任されている立場なら、人件費も含めたコストが気になるのは当たり前のことです。
ただし短期のプロジェクトならまだしも、長期にわたるプロジェクトでは開発効率がコストに大きく影響してきます。オフショア開発では人月単価だけを気にするのではなく、トータルのコストパフォーマンスで委託先(国)を選んでいきましょう。
WebメディアでPGから管理職まで幅広く経験し、Wakka Inc.に参画。Wakka Inc.のオフショア開発拠点でラボマネジャーを担当し、2013年よりベトナムホーチミンシティに駐在中。最近では自粛生活のなかでベトナム語の勉強にハマっています。