オフショア開発成功のコツは?相性の良い案件タイプと注意点を徹底解説

最終更新日:2025.11.20
ラボ型・オフショア開発
中垣圭嗣
offshore
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日本でも開発リソースやコスト面のメリットからオフショア開発を検討する企業が増えています。

一方でオフショア開発は、「文化の違い」や「言葉の壁」による「低品質」など、マイナスイメージが浮かぶことも少なくありません。
事実としてオフショア開発には向いている案件と向かない案件があります。これをうまく理解して、相性の良い案件で、かつ委託先のエンジニアたちをうまくマネジメントできれば、オフショア開発は非常にメリットの多い手法です。

そこで、ここではオフショア開発に成功するための条件や、プロジェクト実行の際に相性の良い案件の例を紹介します。

オフショア開発のうち、Wakka Inc.ではオフショアラボ型開発サービスを提供しています。
ラボ型開発に興味がある方は「【保存版】成長企業が導入するWakkaのラボ型開発」に詳しいサービス内容を掲載しているのでご覧ください。

目次

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オフショア開発はなぜ難しい?よくある失敗の原因

オフショア開発は、コスト削減やリソース確保など多くのメリットがある一方で、失敗事例も少なくありません。

なぜ多くの企業が、オフショア開発で失敗してしまうのか、難しいと言われる理由を確認しておきましょう。

オフショア開発のよくある失敗の原因は、下記の通りです。

  • 言語・文化の壁による認識ズレ
  • 不十分な仕様共有・ドキュメント不足
  • 想定外の手戻り/納期遅延

言語・文化の壁による認識ズレ

オフショア開発で多いトラブルが、言語・文化の違いから生じる認識のズレです。
仕様や要件を伝えたはずが、相手国の開発チームが別の意味に解釈してしまうケースは少なくありません。

また言語の壁だけでなく、文化の違いによって、業務の進め方や価値観が異なり、認識にズレが生じる可能性もあります。

このような認識ズレを解消するためには、定期的なミーティングや両国の言語を併記した仕様書の用意、通訳・ブリッジSEを介した意思疎通が効果的です。

不十分な仕様共有・ドキュメント不足

オフショア開発では、仕様の共有不足やドキュメントの不備もよくある失敗要因です。

対面でのコミュニケーションが難しい分、ドキュメントが貴重な情報源となるため、内容が不十分だと致命的なミスにつながります。

アジャイル開発のように要件が変化しやすいプロジェクトでは、仕様変更の履歴管理や共有プロセスを徹底しなければ、進行に不具合が生じます。

仕様変更の際は、ドキュメント更新や変更履歴を管理・共有するために、設計書・画面仕様・API定義書をクラウド上で一元管理しておくと便利です。

想定外の手戻り/納期遅延

オフショア開発でよくある失敗は、手戻りの多発や納期の遅延です。主な原因は、コミュニケーション不足や進捗管理の不透明さにあります。

開発フェーズ中の中間報告が不十分だったり、テスト段階で初めて仕様ミスに気づくケースも多く見られます。

また、時差や休日の違いによって意思決定が遅れ、「確認待ち」で1日が過ぎることも珍しくありません。

当初の納期から大きく遅延しないよう、毎日の進捗報告を徹底し、タスク単位でKPIの設定・評価を行うことが大切です。

成功しやすいオフショア開発案件の条件

オフショア開発が失敗する原因を把握した後は、成功しやすい条件を確認しておきましょう。

下記の条件に当てはまる場合は、オフショア開発が成功につながりやすいといえます。

  • 海外(委託先の国)でも共通して仕様がイメージできるシステム・製品
  • 変化に柔軟に対応できる「アジャイル開発」
  • データ分析や計算が中心となるロジックがシンプルな案件

委託先(海外)でも共通して仕様がイメージできるシステム・製品

委託先の現地で使われていないシステム・製品の開発は、エンジニアが仕様をスムーズに理解しにくかったり、実装も手探りになったりするなど、手間や時間がかかるためにかえって日本よりもコストが高くなってしまう可能性があります。

一方、世界的に有名な定番プロダクトや委託先の国や地域でも使われているシステム・製品であれば、仕様がイメージしやすいため成功しやすいです。

具体的には、ECサイト、予約サイト、コーポレートサイトなど、誰が見ても理解がしやすい定番の仕様書を基に開発されるシステム・製品などです。

もし、日本の環境や独自のルールのもとで運用されている業務システムなどのプロジェクトを依頼するのであれば、業務フローなどを入れた仕様書を作り込み、現地のエンジニアが業務フローにしたがってコードを書くだけという状態にまで持っていきましょう。

変化に柔軟に対応できる「アジャイル開発」

オフショア開発は一般的に大規模・長期的なプロジェクトの方が、コスト面でのメリットを得やすくなります。

一部機能をリリースし、開発の途中で仕様を変更・追加する「アジャイル開発」を行うシステム・製品に対しても、契約期間中の追加費用など柔軟に対応することができます。

データ分析や計算が中心となるロジックがシンプルな案件

開発を依頼するシステム・ソフトウェアのロジックがシンプルなものは、海外のエンジニアも理解しやすいためオフショア開発に向いています。

データ分析や計算が中心となるAIのプロダクトやR&D(研究開発)などは、やるべきことがシンプルで数学的な知識があれば開発できることが多いため、齟齬(そご)が生じるリスクも抑えられます。

これら3つのタイプの案件は、オフショア開発の課題である「仕様が理解されない」「(手戻りの頻発による)納期の遅延」「文化の違い」などが、発生しづらくプロジェクトを成功に導ける可能性が高いです。

以上のように、オフショア開発を成功に導くためには、案件ごとの向き不向きをあらかじめ理解して使い分けることを意識しましょう。

リンク:「オフショア開発とは?メリット・デメリットと失敗しないための進め方を解説」をご覧ください。

続いて、オフショア開発で相性の良い案件を紹介します。

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オフショア開発で相性の良い案件とは?

ここではオフショア開発に向いている案件例を具体的に紹介していきます。

<オフショア開発に向いている案件例>

  • 構造がイメージしやすいWebサービス
  • 海外向けのサービスや多言語サイト
  • AI(人工知能)・機械学習
  • テスト工程
  • 既存システムのリプレイス、運用・保守
  • R&D

構造がイメージしやすいWebサービス

すでに委託先の現地でもメジャーなサービス形態だったり、オフショア開発でも開発実績のあるコーポレートサイト、ECサイトや予約サイトなどであれば、特殊な仕様を持たない限りは現地のエンジニアが仕組みをイメージしやすく相性が良いです。

ただし、日本と海外ではデザインの好みや文字の配置などが異なります。

そこでUIの開発が得意なオフショア開発企業を選んだり、UI部分のデザインは自社対応したりするパターンが成功しやすいです。

海外向けのサービスや多言語サイト

グローバル展開を見越して英語で構築されるサイトは、英語を使う委託先であればスムーズに実装できます。

委託先のキャッチアップが必要な内容が複雑でない分、説明も簡素化されるためコミュニケーションコストが抑えられることもメリットと言えます。

AI(人工知能)・機械学習

AI・機械学習の開発が注目されていますが、日本では特にこれらの分野における人材が不足しており、それに伴って国内での開発コストの高騰に悩まされている企業が多くあります。

オフショア開発ならば、海外の開発経験豊富で優秀なエンジニアを低コストで確保することができます。

テスト工程

オフショア開発では、テスト工程を専門的に受託している企業もあります。
テストを専門に扱う委託先は信頼性が高く、コスト削減が期待できます。

オフショア開発のうちラボ契約という形態であれば、長期的なコストメリットもあり、自社のエンジニアの負担を減らすことも可能です。

既存システムのリプレイス、運用・保守

既存システムのリプレイス、運用や保守の仕事は、日本国内の委託先に頼むとコストが高くなる傾向があります。
システムの仕様の引き継ぎには時間がかかりますが、長期的に考えるとコストを抑えられます。

オフショア委託先に丁寧に引き継ぎができれば、次第にシステムの運用・保守のノウハウが蓄積してくるためコストや共同作業の時間を抑えられ、さらに時差やコミュニケーションの問題も発生しにくいです。

R&D

R&Dは「Research」と「Development」の頭文字をとったもので「研究開発」と訳されます。

事業の成長のためにはR&Dは不可欠なものでありますが、R&Dは試行錯誤が多いため国内の開発企業に委託した際の、コストが高くなるという悩みもつきものです。

オフショアラボ開発であれば、柔軟な対応が可能で優秀な人材を日本より低コストで調達できるメリットもあります。また、準委任契約のオフショアラボ型開発を選ぶことで、市場ニーズを探査しながら進めるR&Dも進めやすくなるのです。

このように、定番のWebサービスやシステム、比較的新しい分野のAIなどもオフショア開発と相性が良い案件です。

なかでも、運用保守やR&Dは案件が長期化すること、システムや製品といった明確な成果物がないことが多いため、ラボ契約でプロジェクトを推進するという選択肢もあります。

委託先と一定の期間契約を結び、低コストで継続的に自社専用の開発チームを持てることも、ラボ契約のメリットです。

ラボ契約について詳しく知りたい方は「ラボ型契約とは?請負契約との違いとメリット・デメリットを解説」をご覧ください。

オフショア開発に失敗しないためのポイント

オフショア開発を成功させるには、単に「コストが低い国を選ぶ」だけでは不十分です。
成功させるためには、現地チームと自社が一体となって開発を進める仕組みを整える必要があります。

オフショア開発で失敗を防ぎ、プロジェクトを成功に導く4つのポイントを押さえておきましょう。

  • 仕様書・業務フローの充実
  • 定例ミーティングとドキュメント共有体制の確保
  • コミュニケーション窓口の一本化
  • 現地との信頼関係構築(できれば訪問)
  • 一律の判断ではなく、相性の良し悪しで成否が分かれる

仕様書・業務フローの充実

オフショア開発を成功させるポイントは、まず仕様書・業務フローを充実させることです。

国内開発であれば、口頭の補足で済む部分も、海外チームに依頼するオフショア開発では、すべてを明文化・ドキュメント化しなければなりません。

仕様書を用意し、業務フローを確立させることで、認識ズレや手戻りを防止できます。

具体的には、画面設計やAPI仕様などの技術仕様書、要件定義からテストまでの業務フロー図を用意・共有しましょう。

また、仕様だけでなく、リアルタイムで更新履歴を共有し続け、誰でもアクセスできる状態にしておくことも大切です。

完了条件・検収条件を明文化しておけば、途中から参加したメンバーもスムーズに開発に加われ、プロジェクト全体の透明性が高まります。

定例ミーティングとドキュメント共有体制の確保

オフショア開発を成功させるには、定期的な進捗確認と情報共有が欠かせません。
距離や時差のあるチームとスムーズに連携するためには、定例ミーティングとドキュメント共有体制を確保することが大切です。

具体的には、下記のような仕組みを整えれば、オフショア開発におけるコミュニケーション不足・情報共有不足の弊害を解消できます。

  • 毎日や週数回の定例ミーティング(オンライン会議)を設定
  • 進捗・課題・対応方針をまとめた議事録をクラウドで共有
  • チャットツール・チケット管理・ドキュメントの連携を自動化

「会議で話した内容が記録されていない」「同じ質問を何度も受ける」などの問題は、議事録の共有やミーティング内容をアーカイブで残しておくことで解決できます。

定例ミーティングを実施するだけでなく、ドキュメント共有体制を確保して、オフショア開発における情報連携不足の課題を防止しましょう。

コミュニケーション窓口の一本化

オフショア開発では、離れた拠点でコミュニケーションを取る必要があるため、「誰が何を伝えたのか分からない」状態に陥りやすいです。

担当者が複数いると、情報が分散し、誤解や二重対応が発生するリスクが高まります。

オフショア開発でコミュニケーションを円滑化するために、双方の担当窓口を一本化しておきましょう。

具体的には、以下のような体制を整えるとスムーズにコミュニケーションを取れます。

  • 自社側のプロジェクトマネージャー(PM)を主担当として明確化
  • 相手側にはブリッジSE(Bridge SE)やリーダーを配置
  • 問い合わせ・仕様変更・承認などの連絡ルートを統一

窓口を一本化すれば、伝達スピードが上がるだけでなく、情報の正確性と責任範囲を明確にできます。
結果的に、手戻りや対応漏れを大幅に減らし、開発スピード・品質の向上につなげられるのです。

現地との信頼関係構築(できれば訪問)

オフショア開発を成功させるためには、現地との信頼関係構築が欠かせません。

現地と信頼関係を構築できていない状態では、意識や認識のズレ、コミュニケーション不足に陥るリスクがあります。

オフショア開発を成功させるために、オンライン上だけでなく、定期的な現地訪問やワークショップの実施を検討しましょう。
直接顔を合わせて会話すれば、相互理解が深まり、チームとしての一体感が生まれます。

訪問が難しい場合は、以下のような方法で信頼を積み重ねましょう。

  • オンラインでのカジュアル面談・成果共有会を開催
  • メンバーの誕生日や成果に対して感謝を伝える
  • 契約以上の誠実な対応を心がける
  • チャットやメールだけでなく、感情が伝わりやすい電話での連絡も活用する

オフショア開発は「外注」ではなく、「共創」でプロジェクトを進めていく意識が必要です。
「共創」という考え方は、単なる発注者と受注者の関係を超えて、パートナーとして協働する姿勢を意味します。
相互信頼を築くことで、チームの士気が上がり、結果的に開発品質・スピード・成果のすべてが向上します。

一律の判断ではなく、相性の良し悪しで成否が分かれる

オフショア開発を成功させるためには、自社との相性や連携体制が合う依頼先を見極めることが大切です。

どれだけ優秀な開発拠点でも、文化・業務フロー・開発スタイルが噛み合わなければプロジェクトは難航します。

例えば、スピード重視のスタートアップ企業が、文書主義の堅実なオフショアチームと組むと、意思決定スピードの差でストレスが生じます。

オフショア開発の依頼先を選定する際は、技術力だけでなく、マネジメント方針・文化的フィット感を重視しましょう。

また、小規模プロジェクトで試行(PoC:Proof of Concept)を行い、相性を確認しておくと安心です。

まとめ:オフショア開発の活用は相性の見極めが大切

ここまで紹介したように、オフショア開発と相性の良い案件には、Webシステムやアプリ開発、システム運用・保守などがあります。

これらの案件には、「柔軟な開発体制が求められる案件」、「オフショア委託先の文化や言語にかかわらず、仕様が理解しやすい案件」、「継続的な開発リソースが求められる案件」などの特徴があります。オフショア開発を成功させるためには、成功しやすい条件と相性の良い案件を把握しておくことが大切です。

オフショア開発、ラボ型開発について少しでも気になることがあれば、以下リンクからお気軽にお問い合わせください。

WaGAZINE読者さま限定!

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この記事を書いた人
中垣圭嗣

WebメディアでPGから管理職まで幅広く経験し、Wakka Inc.に参画。Wakka Inc.のオフショア開発拠点でラボマネジャーを担当し、2013年よりベトナムホーチミンシティに駐在中。最近では自粛生活のなかでベトナム語の勉強にハマっています。

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