販売力のある医薬品ECの特徴とは?注意点や成功のポイントも解説
こんにちは。Wakka Inc.のベトナムラボマネージャーの中垣です。
本記事では、医薬品EC事業に興味をお持ちの方に向けて、医薬品ECの特徴や市場の動向を解説します。
また、医薬品を取り扱う際の法律や注意点、販売力のある医薬品ECサイトを構築するためのポイントも詳しくまとめました。
ぜひ医薬品EC事業の構築や改善にお役立てください。
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医薬品EC市場の現状
2014年6月12日の改正薬事法の施行以降、一般用医薬品のオンライン販売が解禁されました。
オンライン販売が解禁され、顧客のニーズや社会の変化に適応しながら医薬品EC市場は拡大しています。市場規模や需要の変化など、医薬品ECの現状についてさらに詳しく見ていきましょう。
参照:政府広報オンライン『医薬品のネット販売を安心して利用するために』
医薬品ECの市場規模
矢野経済研究所が2021年に実施した調査によると、2020年の医薬品EC市場規模は、前年比12.2%増の562億円でした。
出典:矢野経済研究所『OTC医薬品のEC市場に関する調査を実施』
医薬品市場全体の成長は停滞していますが、医薬品EC市場は今後3年間で約8%増加し、さらに拡大を続けると予測されています。
専門家への相談から処方箋受け取りまでオンラインで完結できたり、医療情報をWeb上で確認できたりするなど、EC独自の便利なサービスも増えており、今後さらに需要は拡大していくでしょう。
感染症の流行で需要が拡大
医薬品ECの需要が拡大している背景に、感染症の流行も当てはまります。
感染症の流行による外出自粛で、医薬品を店頭に買いに行かず、ECを利用する層が増えました。
感染症の予防に使われるアルコール消毒用品の消費が増加したことも、医薬品EC市場を拡大させた一因です。生活様式が変化した現在では、今後も多くの層が医薬品ECを利用する流れは続くと予測されています。
越境ECの需要が増加
医薬品EC市場では、越境ECが注目されています。
越境ECとは海外向けにEC事業を展開するビジネスモデルで、事業者には以下のようなメリットがあります。
- 海外拠点に店舗を構える必要がない
- スモールスタートで始められる
- コスト削減やリスク回避になる
実店舗を構える場合と比較すれば、参入する心理的なハードルは低いでしょう。しかし、越境ECには定められた規定も多く、販売国のガイドラインを遵守しなければなりません。
越境ECを始める際には、事前に規定を確認しておきましょう。
参照:日本貿易復興機構『医薬品輸出における日本での許可事項』(PDF)
DX進め方ガイドブック
>DXプロジェクトを検討している担当者の方に向けて、失敗しない社内体制の構築から開発リソース確保までを網羅して解説しています。
医薬品ECの課題
急速に導入が進む医薬品ECですが、多くの課題も残されています。
主な課題は以下の3つです。
- 実店舗の利便性が高い
- インターネット購入の不安要素が多い
- Web集客の難易度が高い
詳しく見ていきましょう。
実店舗の利便性が高い
2022年1月現在、国内には23,000店以上のドラッグストア(チェーン)があり、ほとんどの地域で手軽に医薬品を購入できます。
薬剤師から直接医薬品の飲み合わせを確認できたり、自分の症状に効果的な薬を教えてもらえたりする安心感や利便性の高さが実店舗の強みです。
医薬品ECの利用者を増やすためには、デジタルコンテンツの導入や実店舗とECの連携など、ECサイト独自の強みを活かした工夫が求めらるでしょう。
参照:日本ソフト販売株式会社『【2022年版】ドラッグストアの店舗数ランキング』
インターネット購入の不安要素が多い
従来医薬品はドラッグストアでの対面販売が基本であるため、インターネット購入に不安を抱く方も少なくありません。
ただし医薬品ECでも、薬剤師や登録販売者からの情報提供が義務化されています。「いかに利用者の不安を解消し、安心感を与えられるか」が今後の課題でしょう。
Web集客の難易度が高い
Web集客の難易度が高い点も、医薬品ECの大きな課題です。Web集客とはインターネットのサービスを通してお客様を集める方法です。
Web集客の方法は次のとおりです、
- 自然検索
- SNS
- メルマガ
- その他広告
特に利用者が多いのは自然検索であり、自身のECサイトを検索結果の上位に表示させ露出を増やすには、SEO対策が求められます。
SEO対策には、専門性の高いコンテンツを継続的に作成したり、外部サイトからの被リンクを獲得したりする方法があります。
しかし、医療分野は人の幸福や健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、Googleが定める検索品質評価ガイドラインにて、YMYL(Your Money or Your Life)として位置付けられ、通常より厳しく評価基準が適用されています。
Googleが定める検索品質評価ガイドラインで特に意識したいのが、E-E-A-Tです。
- E…Experience(経験・体験)
- E…Expertise(専門性)
- A…Authoritativeness(権威性)
- T…Trust(信頼性)
E-E-A-Tを満たしたサイトがユーザーにとって価値が高いコンテンツと評価され、検索上位につながります。
医薬品ECを始める際には、実店舗の経験や信頼性、専門性などの強みを活かしたサイト作りを意識しましょう。
参照:Google公式『検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド』
医薬品ECを行う際の注意点
医薬品のネット販売が解禁され、直接店舗に出向かなくても購入が可能になりました。
しかし医薬品のネット販売には厳密なルールが定められており、取り扱いには細心の注意が必要です。
- EC販売を行えるのは一般用医薬品
- EC販売を行えるのは許可された有形の店舗
- 専門家の関与が必要
今回は上記3つの規約について解説します。
EC販売できるのは一般用医薬品
EC販売が可能なのは、一般用医薬品です。
一般用医薬品は、年齢や体質も異なる多くの人が使えるよう、効き目を調節して安全性を高めて作られています。
一般用医薬品は副作用のリスク度合いにより、次のように分類されています。
区分 | 第1類医薬品 | 第2類医薬品 | 第3類医薬品 |
リスク程度 | リスクが高い | リスクが比較的高い | リスクが比較的低い |
対応できる専門家 | 薬剤師 | 薬剤師または登録販売者 | 薬剤師または登録販売者 |
販売時の情報提供 | 義務 | 努力義務 | 努力義務 |
扱える薬の例 | 胃薬・毛髪用薬 | 風邪薬・解熱鎮痛薬・胃腸薬 | ビタミン剤・整腸薬 |
第1類医薬品は副作用リスクがあるため、特に注意が必要です。
一般用医薬品の区分による違いを理解し、EC販売を行う際にはルールを遵守しましょう。
参照:東京都福祉保健局『【薬局・薬店向け】一般用医薬品の特定販売(インターネット販売)について』
EC販売できるのは許可された有形の店舗
EC販売できるのは、許可された有形の店舗に限られます。
ガイドラインには、
- 週30時間以上を目安に実店舗の営業
- 購入者の見えやすい場所に標識を設置
- 対面や電話での相談体制を整備
など細かく明記されています。
医薬品ECを始める際には、ガイドラインに目を通して条件を満たしているか確認が必要です。
参照:厚生労働省『一般用医薬品のインターネット販売について』(PDF)
専門家の関与が必要
医薬品ECを扱うには、専門家の関与が必要です。
一般用医薬品であっても、副作用のリスクはあるため、必要な知識を持った専門家が販売を行います。
具体的には、テレビ電話やインターネット環境を整備し、薬事監視が確実に行える仕組みの構築が求められます。実店舗の営業時間内なら、対面での相談体制も整えましょう。
参照:厚生労働省『一般用医薬品のインターネット販売について』(PDF)
医薬品ECサイトの開発手法
医薬品ECサイトの開発には様々な手法があり、それぞれメリット・デメリットがあります。
今回は医薬品ECサイトの代表的な開発手法であるECパッケージとフルスクラッチ開発についてご紹介します。自社の環境や課題に合った開発手法をお選びください。
ECパッケージ
ECパッケージとは、あらかじめ必要な機能が備えられたパッケージ製品をカスタマイズしてECサイトを構築する手法です。
後述するフルスクラッチ開発と比べるとサイト構築の期間が短く、費用も安価な点が特徴です。
オープンソースのように外部にソースコードを公開していないため、外部からの攻撃に対するセキュリティが高い点もメリットと言えるでしょう。
ただし、製品によってはシステムの最新性を保てない恐れがあるため、定期的なメンテナンスやアップグレードを行い、変化するトレンドやニーズに応える必要があります。
フルスクラッチ開発
フルスクラッチ開発とは、既存のテンプレートやサービス、部品などを利用するのではなく、システムの機能をゼロから構築するオーダーメイドの開発手法です。
フルスクラッチは自由度が高く、備えたい機能やデザインを柔軟に導入できるため、理想のECサイトを構築できます。
医薬品ECが完成した後も、トレンドに合わせて外部システムを導入したり、デザインを変更したり、柔軟な対応も可能です。
ただし、フルスクラッチでECを構築するには、セキュリティやマーケティングなどの知識も求められ、専門性を備えたIT人材を多く確保しなければなりません。
もし自社のリソース不足や採用に課題を感じている場合には、海外の優秀なIT人材を活用できるラボ型開発がおすすめです。
医薬品EC成功のポイント
最後に医薬品EC成功のポイントについて解説します。
成功のポイントは次の4つです。
- スムーズな発送を行う
- 受け取り窓口を増やす
- 相談対応の体制整備を行う
- 購入しやすいEC設計を行う
それでは見ていきましょう。
スムーズな発送を行う
医薬品ECを成功させるには、スムーズな発送がポイントです。
医薬品ECには、実店舗とは異なる利便性の高いサービスが求められ、配送スピードも購入の決め手となる傾向があります。
例えばスギ薬局では、ネット注文から最短2時間で、OTC医薬品(一般用医薬品)を含む商品を自宅まで届けるサービスを提供しています。
スムーズな発送を実現するには、円滑なオペレーションや適切な情報の連携が必要でしょう。
受け取り窓口を増やす
医薬品ECを成功させるために、受け取り窓口を増やしましょう。自由に窓口を選択できるシステムなら、好きなタイミングでスムーズな受け取りが可能です。
感染症対策の観点で、非対面の受け取りに対するニーズに対しては、認証機能がついている受け取りボックスやロッカーなどの導入が有効でしょう。
一部のドラッグストアでは、ネット注文した医薬品を店舗で受け取れるサービスを開始しており、受け取り窓口を増やす取り組みは広がっています。
相談対応の体制整備を行う
相談対応の体制整備は、医薬品ECの成功には欠かせません。
医薬品に対する不安や疑問点を相談しながら安心して購入できる環境が、ECの利用増加につながります。
チャットシステムを導入し、薬剤師が24時間常駐してリアルタイムで問診するサービスを開始した事例もあります。
相談対応の体制整備は、顧客と深く・長期的な関係を築ける糸口になり、今後さらに重要性は増すでしょう。
購入しやすいEC設計を行う
医薬品ECを始める際には、購入しやすいEC設計が大切です。
購入しやすいEC設計を行えば、ターゲット層に強く訴求ができ、売上の増加につながるでしょう。
例えば、ターゲット層や売り方を決め、ECサイト全体のコンセプトを決めていきます。
さらにサイトに統一感を持たせてUIを向上させれば、購入導線も最適化されます。ユーザーの使い勝手が向上することを念頭においたEC設計が大切です。
魅力的な医薬品ECを構築して需要の増加に備えよう
今回は医薬品EC市場の特徴や市場の動向、事業のポイントを解説しました。医薬品EC市場は、顧客のニーズや社会の変化に適応しながら確実に成長しています。
顧客が抱える様々な不安を解消できる利便性の高いサービスを設計し、理想的なEC事業を実現していきましょう。
●料金目安もわかるECサイト構築ガイド
>新規事業などでECサイトを構築する場合のガイドを作成しました。目的や売上規模に応じたEC種別選定や最適な構築手法についての診断を受けることができます。
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WebメディアでPGから管理職まで幅広く経験し、Wakka Inc.に参画。Wakka Inc.のオフショア開発拠点でラボマネジャーを担当し、2013年よりベトナムホーチミンシティに駐在中。最近では自粛生活のなかでベトナム語の勉強にハマっています。