デザイン思考とは？フレームワークや5つのプロセスについて解説

こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。

「デザイン思考」はクリエイティブな仕事に関わる方なら、耳にする機会が多い用語です。
昨今はデザイナーに関わらず、さまざまなビジネスでデザイン思考を取り入れる企業も増えています。
デザイン思考を適切に活用すれば、事業拡大を実現するヒントが見つかるためです。

しかし、「デザイン思考を具体的にどう活用すれば良いの？」「どのようなメリットがあるの？」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。 

本記事ではデザイン思考の基本から、メリットやデメリット・ 具体的なプロセス・ 役立つフレームワークまでを解説します。
デザイン思考を実践する際の注意点も紹介するので、学ぶ際の参考にしてください。

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デザイン思考の概要

デザイン思考は「デザインシンキング」とも呼ばれ、デザイナーがデザインを行う際のプロセスを応用し、ビジネスにおける課題解決や新たな価値創造を目指す思考法です。
ユーザーのニーズを深く理解し、潜在的な課題を発見することで、革新的なアイデアを生み出すことを目的としています。

デザイン思考の最大の特徴はユーザーの立場に立った思考法により、ビジネスにおける課題を発見したり、新たなアイデアを創出できたりする点です。
マスターすれば、さらなる事業拡大を実現するヒントが見つかる可能性が高まります。

そのため、近年はデザイナーだけでなく、さまざまなビジネスでもデザイン思考が取り入れられるようになりました。

デザイン思考が注目される背景

デザイン思考が注目を集めている背景には、以下の要因が挙げられます。

参照：DXレポート ～ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開～｜経済産業省

昨今は、技術の発展やニーズの多様化によって市場の予測が困難です。
その影響もあり、ユーザーの視点に立ってアイデアを創出できるデザイン思考に注目が集まるようになりました。

システム思考との違い

デザイン思考と混同されやすい思考法として、システム思考があります。

システム思考は複雑な問題を全体像として捉え、要素間の関係性を分析することで、根本的な解決策を見出すことを目的とする思考法です。
一方でデザイン思考は、ユーザーのニーズから共感を通じて課題を特定し、創造的な解決策を生み出すことを重視します。

両者の主な違いは以下の通りです。

システム思考は複雑なシステム全体の理解に役立つ一方で、デザイン思考は具体的なユーザーのニーズに基づいた製品やサービスの開発に役立ちます。
両者は場面に応じて使い分けるものですが、併用も可能です。

デザイン思考でユーザー視点から課題を発見した後、システム思考でシステム全体を見直して課題の解決策を探る方法です。
互いの観点を補完し合えるため、より効果的な施策を創出できます。

デザイン思考の4つのメリット

デザイン思考は単なる問題解決の手法ではなく、組織や事業に以下のような恩恵をもたらします。

• アイデアの提案を習慣化できる
• ユーザーに評価される開発につながる
• 多様な意見を集約できる
• さまざまな従業員の参加を促せる

以下では、デザイン思考がもたらす4つのメリットについて解説するので、実際に取り入れる際の参考にしてください。

アイデアの提案を習慣化できる

デザイン思考はメンバーの積極的なアイデア提案を習慣化し、組織全体の創造性を高めます。

従来のトップダウン型のアプローチとは異なり、デザイン思考はすべてのメンバーがアイデアを出し合い、議論し、改善していくことを重視する思考法です。
このプロセスを通じてメンバーは自らのアイデアが尊重され、実現する可能性があることを実感し、積極的に提案を行うようになります。

特に若手社員にとって、アイデアの提案はハードルが高いと感じられるかもしれません。
しかし、デザイン思考のプロセスではすべてのアイデアが歓迎され、建設的なフィードバックが与えられるので、安心して提案できます。
アイデアを提案しやすい環境が醸成されれば、組織全体のアイデア創出のサイクルが加速し、イノベーションが生まれやすくなります。

ユーザーに評価される開発につながる

ユーザーに評価される開発につながる点も、デザイン思考の魅力です。

デザイン思考はユーザーのニーズを深く理解し、そのニーズを満たす製品やサービスを開発することを重視します。
そのため、開発されたものはユーザーにとって価値が高く、高い評価を得やすくなります。 

また、デザイン思考は開発の初期段階からユーザーを巻き込み、プロトタイプを作成し、テストを繰り返すことでユーザーのフィードバックを反映させながら改善を重ねる手法です。
このプロセスを通じて開発チームは、ユーザーが本当に求めているものは何か、何に不満を感じているのかを深く理解できます。

その結果、ユーザーの期待に応え、高い満足度を得られる製品やサービスを開発できる可能性が高まります。

多様な意見を集約できる

多様な意見を集約するうえでも、デザイン思考は有用です。

デザイン思考は異なるバックグラウンドや専門知識を持つメンバーが参加し、多様な視点から意見を出し合うことを奨励します。
これにより、偏った視点に陥ることなく、より包括的でバランスの取れた解決策を見出せます。

デザイン思考のプロセスは、メンバーが互いの意見を尊重し、批判的な視点だけでなく肯定的な視点からも検討を行うのが特徴です。
また、アイデアの可視化に役立つツールやフレームワークを活用することで、意見の共有や議論を円滑に進められます。

さまざまな従業員の参加を促せる

議論にさまざまな従業員を参加させたいなら、積極的にデザイン思考を活用しましょう。

デザイン思考は特定の専門家だけでなく、さまざまな部署や階層の従業員の参加を促します。
これにより組織全体の知識や経験を結集し、より幅広い視点から問題解決に取り組めます。

デザイン思考のワークショップやプロジェクトには、営業・マーケティング・開発・人事など、さまざまな部署の従業員の参加が可能です。
また、経営層や管理職だけでなく若手社員や新入社員も積極的に参加すれば、組織全体の活性化にもつながります。 

このような多様なメンバーが参加することで、組織の壁を超えたコラボレーションが生まれ、新たなアイデアやイノベーションが生まれる可能性が高まります。

デザイン思考の4つのデメリット

デザイン思考は多くのメリットをもたらしますが、導入にあたっては以下のデメリットも考慮しましょう。

• ゼロベースの開発には向いていない
• コストが高騰する恐れがある
• メンバーの多様性に左右される
• 企業風土との相性が影響する

本章では、デザイン思考の主なデメリットについて解説します。

ゼロベースの開発には向いていない

デザイン思考は既存の製品やサービスを改善したり、新しいアイデアを創出したりするのに効果的ですが、まったく新しいものをゼロから開発するのには向いていません。
なぜなら、デザイン思考はユーザーのニーズや課題に基づいてアイデアを発想するため、既存のものが何もない状態ではニーズや課題を把握することが難しいからです。

デザイン思考は、あくまで既存の枠組みでより良いものを追求するのに適した手法と捉えましょう。

コストが高騰する恐れがある

デザイン思考はユーザーへの共感やプロトタイプの作成、テストなど多くのプロセスを経るため、時間とコストがかかる場合があります。
特に、ユーザー調査やプロトタイプの作成には、それなりの費用がかかるリスクがあることを認識しておきましょう。

また、デザイン思考は試作品を何度も作り直すことが前提となっているので、その過程でコストが膨らむ可能性もあります。
デザイン思考を導入する際には予算を十分に確保し、コスト管理を徹底することが重要です。

メンバーの多様性に左右される

デザイン思考は多様なメンバーがそれぞれの専門知識や経験を持ち寄り、アイデアを出し合うことで、より良い解決策を見つけ出すことを目的としています。

デザイン思考を実施する際にメンバーの多様性が不足していると、アイデアが偏ったり、新しい視点が生まれにくかったりする可能性があります。
また、メンバー間のコミュニケーションがうまくいかないと、デザイン思考の効果が十分に発揮されません。

デザイン思考を成功させるためには、多様なバックグラウンドを持つメンバーを集め、活発な意見交換を促しましょう。

企業風土との相性が影響する

企業風土との相性も、デザイン思考を実践するうえで無視できない要素です。

デザイン思考は従来のトップダウン型の組織文化とは異なり、メンバーが主体的に考えて行動することを重視します。
そのため企業風土が保守的であったり、上意下達の文化が根強かったりする場合には、デザイン思考が浸透しにくいことがあります。

加えてデザイン思考は、失敗を恐れずに新しいことに挑戦することを奨励する思考法です。
仮に企業文化が失敗を許容しない場合には、メンバーが積極的にアイデアを出しにくくなる可能性があります。

デザイン思考を導入する際には企業文化との相性を考慮し、必要に応じて組織文化の変革に取り組むことも検討する必要があります。

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デザイン思考の5つのプロセス

デザイン思考は、以下の5つのプロセスを経て進められます。

1. 共感
2. 問題定義
3. アイデア創出
4. プロトタイプ
5. テスト

これらのプロセスは必ずしも順番に進むものではなく、必要に応じて行き来することが重要です。

1.共感

最初のステップは、解決しようとしている問題に対して、ユーザーの視点に立って深く共感することです。

ユーザーのニーズ・感情・行動を理解するために、観察やインタビュー、アンケートなどの手法を用います。
この段階では、先入観を持たずにユーザーの言葉に耳を傾けることが重要です。

2.問題定義

共感の段階で得られた情報をもとに、解決すべき問題を明確に定義します。

単に問題を言い換えるのではなく、「ユーザーが本当に困っていることは何か」「解決すべき本質的な課題は何か」を深く掘り下げることが重要です。
問題を明確に定義することで、アイデア創出の方向性が定まります。

3.アイデア創出

定義された問題に対して、さまざまな解決策を自由に発想する段階です。

ブレインストーミングなどの手法を用いて、質よりも量を重視し、多様なアイデアを創出します。
既存の枠にとらわれずに斬新なアイデアを生み出すことで、より良いアイデアが創出しやすくなります。

4.プロトタイプ

アイデア創出の段階で生まれたアイデアから、実現可能性や有効性の高いものを選び、具体的な形としてプロトタイプを作成する段階です。

プロトタイプは必ずしも完成度の高いものである必要はなく、アイデアを検証するための試作品で構いません。
実際に触れることができるプロトタイプを作成することで、アイデアの改善点や新たな発見が得られます。

5.テスト

作成したプロトタイプを実際にユーザーに試してもらい、フィードバックを得る段階です。

ユーザーの反応を観察し、プロトタイプの改善点や課題を洗い出します。
テストの結果をもとにプロトタイプを修正したり、新たなアイデアを創出したりすることで、よりユーザーのニーズに合った解決策を見つけられます。

デザイン思考に役立つ5つのフレームワーク

デザイン思考を効果的に進めるには、さまざまなフレームワークを活用することが重要です。
本章では以下のフレームワークについて解説します。

• デザインスプリント
• 共感マップ
• ダブルダイヤモンド
• ビジネスモデルキャンバス
• SWOT分析

それぞれのフレームワークを活用すれば、デザイン思考を適切に運用できます。

デザインスプリント

デザインスプリントはGoogle Venturesが開発した、短期間で集中的にアイデアを検証し、プロトタイプを作成するためのフレームワークです。

通常5日間で、問題定義・アイデア出し・プロトタイプ作成・テストといったデザイン思考の主要なプロセスを高速で繰り返します。
短期間で結果を出したい場合に有効です。

参照：デザイン思考でイノベーションを生み出す｜Google re:Work

共感マップ

共感マップはユーザーの視点に立ち、ユーザーの思考・感情・行動を理解する際に活用されるフレームワークです。
ユーザーが「何を考え、感じているか」「何を見ているか」「何を聞いているか」「何を言い、行っているか」を可視化することで、深い共感を生み出せます。

共感マップは、ユーザーの行動・思考・感情を以下の6つの視点から整理する点が特徴です。

• ユーザーが見ているもの
• ユーザーが聞いていること
• ユーザーが考え、感じていること
• ユーザーが言っていること・行動
• ユーザーの痛みやストレス
• ユーザーが得られるもの・欲しいもの

より深くユーザーを理解するうえで、共感マップは有用です。

ダブルダイヤモンド

ダブルダイヤモンドは、英国デザイン協議会が提唱したフレームワークです。
デザインプロセスを「発見」「定義」「開発」「提供」の4つの段階に分け、それぞれ「発散」と「収束」の思考を繰り返すことで、より良い解決策を見つけ出します。

「正しい問題を見つけるダイヤモンド」と「正しい解決を見つけるダイヤモンド」として表現される2つの菱形が特徴的です。

参照：The Double Diamond｜Design Council

ビジネスモデルキャンバス

ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデルを以下の9つの要素に分解し、可視化するためのフレームワークです。

• 顧客セグメント
• 価値提案
• チャネル
• 顧客との関係
• 収益の流れ
• キーリソース
• キーアクティビティ
• キーパートナー
• コスト構造

デザイン思考を通じて得られたアイデアを、ビジネスとして実現可能かどうかを検討する際に役立ちます。

ビジネスモデルキャンバスはスイスの経営コンサルタントと大学教授が開発したフレームワークであり、多くのビジネスで活用されています。
実践に必要なテンプレートも簡単に手に入るので、導入しやすい点が魅力です。

参照：The Business Model Canvas丨Strategyzer

SWOT分析

SWOT分析は、Strengths（強み）・Weaknesses（弱み）・Opportunities（機会）・Threats（脅威）の4つの要素を分析し、事業戦略を立案するためのフレームワークです。
デザイン思考によって生まれたアイデアを、外部環境と内部環境の両面から評価し、実現可能性やリスクを検討する際に活用できます。

SWOT分析は、ビジネスモデルを深掘りするフレームワークとしても有効です。
デザイン思考の補完はもちろん、経営戦略の見直しなどを行う際にも活用できます。

さまざまなフレームワークと組み合わせやすいので、積極的に取り入れましょう。

デザイン思考を実施する際の3つの注意点

デザイン思考は、革新的なアイデアを生み出すための強力な手法ですが、実施にあたっては以下の注意点があります。

• デザイン思考に適した環境を整える
• 一部の意見に偏重せず多様な意見を取り入れる
• 実現性を明確にする

これらの注意点を理解して適切に対応することで、デザイン思考の効果を最大限に引き出せます。

デザイン思考に適した環境を整える

デザイン思考を成功させるためには、自由な発想を促し、多様な意見を受け入れられる環境が不可欠です。
具体的には、以下の点に配慮しましょう。

特にディスカッションやアイデアの提案に不慣れなメンバーが多くても、デザイン思考に適した環境があればスムーズに進められます。

一部の意見に偏重せず多様な意見を取り入れる

デザイン思考では、特定のメンバーの意見や過去の成功体験に固執することなく、多様な意見を積極的に取り入れることが重要です。
より多様な意見を取り入れる際は、以下の点に注意しましょう。

先述したように、デザイン思考は多様な意見がなければ成立しない思考法です。
特定の意見に偏重すると、本来の効果を発揮しません。
必要があれば中立的な立場で進行できるファシリテーターを配置するなど、より多様な意見を取り入れられる体制を構築しましょう。

さらに意見を発信する際にデータや数字を提示するようにすれば、客観性の担保も可能です。
多様な意見を出しやすい状況を作ることで、より良いアイデアが創出されやすくなります。

実現性を明確にする

斬新なアイデアを生み出すことは重要ですが、同時に実現性も考慮する必要があります。
アイデアがどれほど革新的であっても、実現できなければ意味がありません。

以下の点に注意して、実現性を評価しましょう。

デザイン思考で大切なのは、実現性にとらわれずにアイデアを提案し続けることです。
しかし、実現性を一切無視して進めると、アイデアをビジネスに取り入れられません。

実現性の検証を入念に行う場合は、システム思考を取り入れるなど、別の思考法を併用しましょう。
デザイン思考ではカバーできない分野に適切な思考法を取り入れることで、実現性が高いアイデアの創出が可能です。

デザイン思考をマスターしてより良い事業を創出しよう

デザイン思考は単なる思考法ではなく、事業全体をより良くするためのビジネス向きの手法です。
デザイン思考をマスターすることで企業はイノベーションを促進し、顧客満足度を高め、競争優位性を確立できます。
これらを事業創出に活かすことで、企業は持続的な成長を遂げられます。

実施する際は、意見や参加するメンバーの多様性の確保が大切です。
適切な方法でデザイン思考を導入し、より良い事業を創出していきましょう。

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