システム移行は侮れない|5つの注意点と手順をくわしく解説

最終更新日:2024.10.26
DX・システム開発
安藤 大海
システム移行は侮れない|5つの注意点と手順をくわしく解説
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こんにちは。Wakka Inc.のWebディレクターの安藤です。

システム移行を成功させるには注意点を理解し、しっかりと準備を行う必要があります。
実は、システム移行は多くのリスクをはらむ、難易度の高いプロジェクトです。

慣れないシステム移行で「失敗したくない」「成功させるにはどうすればいいのだろう」と考えられている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、システム移行の注意点と正しい移行手順を解説します。自社システムの移行に不安を感じている方は、ぜひご参考ください。

目次

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システム移行とは

システム移行とは、既存のシステムやソフトウェアを別の環境への移転し、新しいシステムに置き換えることを指します。既存システムの一部のみを移行する場合と、すべてを移行する場合があります。

単に「システムを移行する作業」と認識されがちですが、移行作業においてトラブルが発生すると、大切なデータの損失や業務停止に陥るリスクもあるため、注意が必要です。

システムを移行するタイミング

システムの移行は、どのようなタイミングで必要となるのでしょうか。
システムの移行が必要になるタイミングは、主に次の場合です。

  • ハードウェアのサポートが切れたとき
  • OSのサポートが切れたとき

順番に解説します

ハードウェアのサポートが切れたとき

パソコンやサーバーなどのハードウェアは、物理的に経年劣化するため、各メーカーはサポート期限を設けています。

サポート期限が終了しても使用し続けられますが、故障やOSが稼働できないなどのトラブルが発生する可能性もあります。
場合によっては、トラブルの影響で事業継続が危うくなるケースもあるため、早めのシステム移行が重要です。

もし、サポート期間が切れた後にトラブルが発生すると、ベンダーへの相談ができず、自社で対処しなければなりません。
サポートの期限は事前に各メーカーがアナウンスするため、システム移行などの対処法を検討しましょう。

OSのサポートが切れたとき

OSもハードウェアと同様で、サポートの期限が切れたときにシステムの移行が必要になります。
メーカーサポートが切れた後も使用できますが、システム障害やセキュリティの欠陥からサーバーへの不正侵入につながる恐れがあります。

OSサポート期限もベンダーの公式サイトなどに掲示されているため、お使いのOSのサポートが終了していないか確認するとよいでしょう。
目安として、マイクロソフト社が提供しているWindowsは10年間のサポート期間があります。
OSのサポートが切れた場合はシステム移行をしましょう。

システム移行の注意点

システム移行が失敗すると、業務に支障をきたして大きな損失が出てしまう恐れがあります。
こうしたリスクを回避するには、システム移行を正式なプロジェクトと位置付け、潜在的なリスクを未然に排除しておく必要があります。

システム移行の注意点を理解すると、失敗のリスクに備えられるでしょう。
意識すべき注意点は、次の5つです。

  • 計画を立てる
  • システムの仕様を確認しておく
  • システムを止めないようにする
  • システム移行も1つのプロジェクトと認識する
  • システム移行の範囲を定める

計画を立てる

システム移行で失敗をしないためにも、入念な計画策定が欠かせません。
計画・段取りの段階で、システム移行プロジェクトの質が決まると言っても過言ではないでしょう。

計画では移行の方針やスケジュールなどを定めます。
スケジュールを考える際は、移行に伴ってシステムが止まることを考慮し、各部署と調整を行います。

またシステム移行中のトラブルを想定し、問題が生じた際の対応策をシミュレーションしておくと良いでしょう。

システムの仕様を確認しておく

システムの仕様の確認は、移行をスムーズに進めるために重要です。

仕様を把握できていると、トラブルを未然に回避できたり、手戻りを削減できたりするためです。

現在使われているデータやファイル形式・OSの種類などを、あらかじめ確認しておきましょう。
また現在のシステム運用のマニュアルも再度目を通しておくのをおすすめします。

マニュアルにはシステムの仕様やメンテナンスについて書かれているため、準備に必要な情報を効率よく収集できます。

なお、オンプレミス型のシステムからクラウド型システムへの移行では、仕様の違いから機能・データを引き継げないことがあります。
そのためオンプレミス型システムをお使いの場合は、新システムに移行ができるのか確認が必須です。

システムをなるべく止めないようにする

システム移行の方式によってシステムが止まる範囲や期間は異なりますが、システムをまったく止めずに移行するのは難しいでしょう。
そのためシステム移行の際は、少なからず業務が止まってしまう時間があります。

自社の事業にとってどの移行方式が、システム停止による影響を抑えられるかやシステム停止中の対応策を十分に検討しましょう。

システム移行も1つのプロジェクトと認識する

システム移行をプロジェクトの1つとして位置づけるのは、メンバーにシステム移行の重要度性を理解してもらうためです。

システム移行を軽視してしまうと、思わぬトラブルにつながる恐れがあります。
例えば、事前の調査が不十分だったがために移行作業が長期化したり、一部のデータを移行できなかったりします。

システム移行担当者も経営層もシステム移行を重要なプロジェクトとして認識することが重要です。

システム移行の範囲を定める

システム移行では、データやシステムをどこまで移行するか範囲を定める必要があります。

移行の範囲によって作業の日数が変わるため、範囲の決定は計画書を作成する前に行うのが一般的です。
システムやデータに優先順位を決めてから、システム移行の範囲を決めましょう。

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システム移行の方式

システム移行プロジェクトを進めるうえで、移行方式の種類を把握することは重要です。
それぞれにメリット・注意点があるため、要件に応じて選択します。

移行方式を把握し、自社の事業にはどの方式が合っているか検討しましょう。

システム移行の方式には次の4つがあげられます。

  • 一斉移行方式
  • 順次移行方式
  • パイロット移行方式
  • 並行運用移行方式

一斉移行方式

一斉移行方式は、一括移行方式とも呼ばれます。

特定の時点で現行のシステムの機能をすべて休止し、新たなシステムや別の環境へ一斉に移行する方式です。
基本的には週末や連休など、ある程度まとまった期間を利用してシステムやソフトウェアの入れ替え、データ移行のなどを行います。

既存のシステムと新システムの連携が必要なく、システム移行にかかる費用や時間などを抑えられます。

またシステム移行後は、旧システムを予備的に稼働しなくても、すぐに新しいシステムの稼働が可能です。
ただし、データ容量やシステム仕様の複雑さによって、移行期間が長期化する点には注意が必要です。

一斉移行は、システム移行の費用や時間・手間を抑えたい企業に適しています。

順次移行方式

順次移行方式は、業務や機能ごとにシステムを分割し、段階的に新しいシステムへ切り替える方式です。

システムを部分的に休止するため、業務が停止する際の影響を小さく抑えられます。
またシステム移行に伴うエラーのリスクも軽減できる点も順次移行のメリットです。

しかしシステム移行が完了するまでは、既存のシステムも稼働するため、新旧のシステム間で連携が必要です。

新旧システムを連携するためのソフトウェアの用意や連携作業などがあるため、一斉移行と比べると多くのコストや時間がかかります

移行するデータ量や種類が多く一括の移行を避けたい場合に適しています。

パイロット移行方式

パイロット移行方式は特定のシステム・機能・部門などをパイロットとして検証を行った後に、他のシステムも徐々に移行する方式です。
システムや機能の一部を徐々に移行する点で、段階移行方式と似ています。

事前に入念な検証を行うため、移行中のシステムに起こる問題やリスクを把握でき、対策も講じられます。
しかし部分的にシステムを移行するため、完了までに多くの時間がかかる欠点があります。

初めてのシステム移行で慎重に移行を行いたい場合は、パイロット移行方式が適していると考えられます。

並行運用移行方式

並行運用移行方式では、システム移行が完了した後に現行のシステムと新システムを並行で稼働し運用します。
同時稼働中に両者を比較し、新システムに問題がないか検証します。

検証の結果、新しいシステムに問題がないとわかったら旧システムを停止し、新システムに入れ替えるのです。
新システムに万が一問題が起こった場合、新システムを停止すれば、旧システムで業務が続けられます

しかし2つのシステムを同時に稼働するため、データを2回入力したり、システム同士を同期させたりといった手間が発生する点がデメリットです。

システム移行の手順

システムの移行作業は入念な準備と計画のもと、実行することが重要です。

システム移行の手順は、以下のとおりです。

  1. 移行元システムとデータの調査
  2. システム移行計画書の作成
  3. 移行手順を確認・リハーサル
  4. システム移行実施・テスト
  5. 業務担当者への教育

移行元システムとデータの調査

システム移行でまず行うのは、移行元システムとデータの調査です。

仕様はどのようなものか、データの量や種類はどの程度あるか把握します。
データ量や種類から、移行完了までにかかる時間やコストを見積もります。

また、システム内のデータに優先順位を設定すると、移行作業をスムーズに進められます。

システム移行計画書の作成

システムの仕様とデータを把握したら、移行プロジェクトの計画書を作成します。
システム移行の対象を明確にし、具体的なスケジュールを考え計画に落とし込みます。

計画書はシステム移行プロジェクトの進め方に問題がないかを再確認するための資料です。

抜け漏れが起きないよう、下記のような5W1Hに従って記載します。

  • 移行方針・目的(why)
  • 移行対象(what)
  • 移行方式(how)
  • 移行による業務への影響・対処法(where)
  • システム移行スケジュール(when)
  • プロジェクトの体制(who)

いつ・誰が・何をするかなどを明確にして、関係者の認識を合わせられるかがシステム移行プロジェクトのポイントです。

計画を設定した段階で、従業員や顧客などの関係者にシステム移行の実施日と、影響の範囲を伝えておくことをおすすめします。

移行手順を確認・リハーサル

計画書の次に行うのは、移行手順の確認とリハーサルです。
システム移行は既存システムが止まり、業務に影響が出るため、リハーサルで計画の問題点やリスクを洗い出します。
リハーサルは本番と同じ手順で作業を行います。

リハーサルを行って発見された問題点を収集し、改善策と合わせて計画書に盛り込みます。

システム移行のリハーサルは、少なくとも2回以上実施したいところです。

システム移行実施・テスト

リハーサルが完了したのち、いよいよシステムの移行作業を進めます。
リハーサルを実施して問題がなければ、計画書のとおりに実施します。

システム移行中は業務が停止するため、関係各所にももう1度連絡しましょう。

またシステム移行が終わった直後は、新システムに問題がないか確認するためテストを実施します。

業務担当者への教育

システム移行とテストに問題がなかったら、本格的に運用を開始します。

本格的な運用の際に重要なのが、業務担当者への教育です。
業務担当者への教育は、利用方法やシステムの保守・運用に必要な知識、トラブル対応などを伝えます。

教育の際は上記のマニュアルも一緒に用意すると、よりスムーズにトレーニングを実施できます。

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システム移行で起こりがちな3つのトラブルと対応策

あらかじめどのようなトラブルが起こるか把握し、対応策を講じることでリスク回避に役立ちます。

システム移行で起こりがちなトラブルは次の3つです。

  • 新しいプロセスが定着しない
  • システムが止まって業務に影響が出る
  • レガシーシステムによって移行がしにくい

上記3つのトラブルについて、対応策と合わせて解説します。

新しいプロセスが定着しない

1つ目のトラブルは、新しい業務プロセスが定着しないことです。
システム移行が完了すると、機能や操作性など多くの変更箇所が出てきます。

これに伴い、システムの運用体制や業務フローを変更する必要があります。
従来の業務フローに慣れている従業員は、業務フローや新しいシステムの操作に苦労し、モチベーションが低下する恐れがあります。

新しいプロセスが定着しない要因は、次の2つが考えられます。

  • 移行前・移行中の教育が不十分
  • 移行後のシステム利用のフォロー不足

移行前や移行中に、新システムの操作方法やトラブル対応を教育する際は、講習だけでなくデモシステムを用意して実際の業務フローをトレーニングしましょう。
またトレーニングを行っても操作に慣れない従業員もいるため、システム移行後も従業員をフォローできる体制を整えましょう。

システムが止まって業務に影響が出る

2つ目のトラブルはシステムが止まって業務に影響が出ることです。

並行移行を除いた方式はシステム移行に伴ってシステムが止まるため、業務に影響がでます。
システムが止まると自社の業務だけでなく、取引先にも影響を及ぼす恐れがあります。

そのためシステム移行の計画書を作成する段階で、システム停止によって影響が及ぶ範囲を特定することが大切です。
関係者には丁寧に説明し、理解を得られるように努めるのが大切です。

レガシーシステムによって移行がしにくい

3つ目のトラブルは、レガシーシステムによって移行がしにくいことです。

レガシーシステムとは、古い技術で開発されたシステムのことです。

システムの古さや複雑さから、特定の人しか扱えなかったり、互換性の問題で移行しにくかったりします。
老朽化したシステムを新しいシステムへと移行したいのに、その古さから移行がしにくいといったジレンマに陥ってしまうのです。

レガシーシステムを新システムへ移行する場合の対応策は、大きく以下の2つがあげられます。

  • モダナイゼーション
  • マイグレーション

モダナイゼーションとは近代化を意味し、過去のデータやソフトウェアなどの資産を活用しつつ、最新の製品や設計に置き換えることです。
システム全体の刷新や、既存システムのプログラム言語を新しい言語での書き直しなどがあります。

一方マイグレーションとは、既存システムを新しいソフトウェアや新システムに移行することです。
一般的なシステム移行が、マイグレーションに当たります。

2つの方法をまとめると使用している言語やプラットフォームなどの変更、システムを1から再構築したり、別の環境に移したりするのです。
どの方法が適しているかは相談しながら進めるとよいでしょう。

レガシーシステムの問題点や対応方法を以下の記事でくわしく解説しています。

ご参考になさってください。

綿密な計画を立てシステム移行を実施しましょう

システム移行には、開発プロジェクトと同等の重要度があります。
システム移行を単なるシステムの変更やデータの移動と軽視してしまうと、トラブルが起こり、事業の損失につながりかねません。

システム移行プロジェクトを成功させるには、移行範囲や対象の明確化が重要です。
また従業員や顧客・外注先の協力なしにはスムーズに行えないため、3者との連携体制を整えるのも大切です。

綿密な計画を立て、システム移行を実施しましょう。

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この記事を書いた人
安藤 大海

学生時代にWebサイトを自作したことがきっかけでWebの世界に。制作会社でデザイン、WordPressテーマ開発の実務を経て、テクニカル・ディレクターとして大規模サイト構築のディレクションを経験。2021年からWakka Inc.の日本拠点でWebディレクターとして参画。最近はブロックエディタになったWordPressをもう一度、勉強しています。

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