ローコード開発でDXを加速！高速・低コストなプラットフォーム比較
こんにちは。Wakka Inc.のWebディレクターの安藤です。
「エンジニアがいなくても、ITを活用して仕事の効率化を行いたい」
「プログラミングの工程を省いて、システム開発の期間を短縮できないか？」
近年ではIT人材の不足を背景に、プログラミングの知識が少なくても開発できるローコード開発に注目が集まっています。
本記事では、ローコード開発の基礎知識やメリット・デメリット、ローコードとDX（デジタルトランスフォーメーション）の関係などを解説します。
ローコード開発による業務の効率化やコスト削減にご興味のある方は、ぜひ最後までお読みください。
Wakka Inc.ではDXプロジェクトを検討している担当者の方に向けて、失敗しない社内体制の構築から開発リソース確保までを網羅して解説しているDX進め方ガイドブックを無料で配布しています。ぜひご確認ください。
DXプロジェクトに関わる経営者・リーダー層の方へ
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ローコード開発とは
ローコード開発（Low Code）とは、ソースコードの記述をあまり必要としない開発手法を指します。
本章では、従来の開発手法と比べて、具体的にどのような点が注目されているのかを解説します。
ソースコードをあまり必要としない開発
ローコード開発はプログラミングによるソースコードの記述をあまり必要としません。
今までは簡単なアプリケーションを開発するのにも、各プログラミング言語への深い理解が必要でした。
しかしローコード開発では、プログラミング言語に詳しくなくても、手軽にアプリケーションを開発できます。
GUIで簡単に開発できる
GUI（Graphical User Interface）とは、画面上でマウスやキーボードを操作しながら直感的に命令できる手法です。
プログラミング言語を用いて文字列で命令する必要がなく、アプリケーション制作の敷居を下げてくれます。
ソフトウェアを文字列で操作する方法はCUI（Character User Interface）と呼ばれます。
GUIがCUIよりも馴染みやすい理由は、普段使用しているOSがGUIで制御されているためです。
GUIは、慣れ親しんだ環境でアプリケーション開発ができる画期的な手法です。
アジャイル開発が自社でも可能に
開発の柔軟性も、ローコードの注目すべき点です。
ローコード開発は「素早く開発する」の意味を持つアジャイル開発との親和性が高いと言われています。
アジャイル開発は、工程ごとにユーザーの使用感などのフィードバックを受けて、改善や機能追加を短いスパンで繰り返す手法です。
アジャイル開発は、ユーザーの声を反映させやすく、柔軟性が高いのが特徴と言えます。
ローコード開発がアジャイル開発と相性が良いと言われる理由は、おもに以下の2つです。
- コードが不要なローコード開発がアジャイル開発のさらなる開発速度の向上に役立つ
- アプリケーションの計画・設計・実装・テストなどのプロセスを、ローコード開発の機能パーツを組み合わせて実装しやすい
ローコード開発とアジャイル開発の組み合わせによって、IT人材の確保が難しい場面においても、アプリケーションの新規開発を実現できる可能性があります。
ローコード開発のメリット
DXの推進を左右するとも言われるローコード開発を取り入れることで、ビジネスモデルそのものを変革できるとも言われています。
本章では、ローコード開発のメリットを解説します。
開発スピードの向上
ローコード開発は、大部分が準備された機能単位の組み合わせで開発できる手法です。
そのため、ほかの開発手法と比較して、開発期間の大幅な短縮を実現できます。
また、ローコード開発はプログラミングが不要なため、バグが発生しにくいのもポイントです。
バグの修正にかかる時間を短縮できるため、全体的な開発スピードを向上できます。
開発コストの削減
開発期間が短縮されることで、開発にかかる人件費をはじめとした費用を削減できます。
システムやアプリケーションの導入後も、専門知識のある技術者への依存度を減らせるため、改修作業にかかるコストの削減にもつながるはずです。
内製化の促進
ローコード開発の作業は、パズルを組み上げるようなものです。
そのため、ITスキルが十分ではないメンバーでもシステム開発に参加しやすく、内製化を促進できます。
社内の人材が開発に携わることで、現場のニーズに合わせた使いやすいシステムを開発できるのも利点です。
開発したシステムが活用されないまま終わってしまう、といったリスクも軽減できます。
DX推進への貢献
DXを推進するには、社内の課題を解決するために必要な機能をベンダーとすり合わせ、少しずつ開発していく手法が一般的です。
かつてはそのために、プロジェクトの規模は大きくなりがちで、多額のコストとリソースを要しました。
ローコード開発を導入した場合は、社内で多くのシステムを開発できるため、必要なコストやリソースを削減することが可能です。
現場の意見に即したものを作り上げやすいため、DX推進が効率化される効果にも期待できます。
エンジニア不足のカバー
ローコード開発は必要なとき以外はソースコードの記述を最小限に抑えられるため、非エンジニアでも開発に参加できます。
決まった型を組み合わせることで機能を実装できるローコード開発であれば、エンジニア以外の幅広い人材がアサイン可能です。
非エンジニアのシステム開発への参加により、より多くのアプリケーションを制作でき、業務の効率化が進みます。
業務が効率化すれば、コア業務へのリソース確保など、さまざまなメリットが生まれるはずです。
ローコード開発のデメリット
ローコード開発のメリットばかりではなく、デメリットも把握しておかなければなりません。
自社の実装したい機能を満たせないときは、プログラミングで開発したほうがコストを抑えられる場合もあります。
本章では、ローコード開発のデメリットを解説します。
拡張性・自由度は低い
ローコード開発は、プラットフォームが提供しているデザインや機能などの型を組み合わせることでさまざまな機能を実装するため、微調整や型以外の機能の実装は得意としていません。
開発工程の削減によるスピードの向上や非エンジニアも参加できる反面、開発の自由度が失われてしまうのはデメリットと言えます。
プラットフォームに依存してしまう
ローコード開発は各社から提供されているプラットフォームを利用します。
このため、プラットフォームがなければ開発自体ができない事態に陥るリスクがあります。
プラットフォームのサービスが停止するリスクはもちろん、セキュリティ面のリスクも考慮しなければなりません。
自社で対策を実施できないため、自社のセキュリティポリシーの内容を満たさない場合は、いかに優れたツールだとしても導入は慎重に考えるべきです。
DXとローコードの関係
DXとローコード開発は密接に関係していると言われています。
近年で注目されているDXとはどのようなものなのか、またローコード開発とどのような関係があるのかを解説します。
DXとは
DX（Digital Transformation）とは、2004年に海外で提唱された概念で、IT技術の浸透により、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる変革を意味します。
DXは時代の移り変わりを捉え、企業の優位性を確立させるためには重要とされています。
例えば、メディアに注目すると、そのトレンドの移り変わりが実感できるのではないでしょうか。
かつてはTVがメディアとして大きな力を持っていましたが、近年は動画サイトやWebサイトが消費者の行動を大きく左右するようになりました。
ビジネスを取り巻く環境は常に変化しており、ユーザーや社会のニーズを取り込むためにはDXの推進が不可欠です。
既存のビジネスモデルの強化だけではなく、DXを取り入れることで、さらなるビジネスチャンスを得ることもできるでしょう。
企業がDXを取り入れるためにはITリテラシーの向上が不可欠ですが、IT技術に関してエンジニアほどの深い理解が必要となると、DXはなかなか浸透しません。
そこで、非エンジニアでもシステム開発が可能なローコード開発は、DX化のハードルを下げる鍵として注目されています。
2025年の崖
2025年の崖とは経済産業省が「DXレポート～ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開～」で提示した、近い将来日本に訪れる可能性がある危機的状況への警鐘です。
DXを推進しなければ、2025年以降に年間12兆円の経済的損失が生じることが予想されると示されています。
経済的損失が生まれるおもな理由は、多くの企業が既存の古いシステムを使い続けていることが挙げられます。
既存のシステムは長年のメンテナンスの結果、老朽化して非効率なものとなりがちです。
既存の古いシステムはレガシーシステムと呼ばれ、老朽化の問題だけでなく、システム連携ができないなどの問題も抱えています。
レガシーシステムのままで時代のニーズを理解するのは難しいでしょう。
2025年の崖を乗り越えるためには、企業が一丸となってDXを推進する必要があります。
しかし現状では、多くの企業が既存のシステムから脱却できていません。
脱却が難しい理由は、DX後の変革したビジネスモデルをイメージしにくいほか、ITリテラシーの高い人材の不足も大きな原因です。
また2025年には既存システムの保守を任されているエンジニアの定年が迫っており、人材のさらなる不足は避けられません。
メンテナンスをせずに既存システムを使い続けることも不可能ではありませんが、システムは動いているがなぜ動いているか分からない、いわゆるブラックボックス化したシステムになりかねないのです。
企業がいち早くDXを取り入れなければ、企業の優位性を確保できないだけでなく、既存システムの稼働もままならない状態となる可能性も考慮する必要があります。
ローコードで開発できる具体例
実際にローコード開発で、どのようなシステムやアプリケーションが開発できるのか、具体的な事例を解説します。
顧客管理・受注管理システム
株式会社アルペンでは顧客のニーズとITコストの最適化を目指し、社内システムの内製化を進めています。
はじめにCRMシステムの構築を自社で実施し、顧客の購買結果・接客の記録などの情報をカルテ化し、次回の接客などに活かしています。
この体験を元に、新規のシステム導入やシステムの変更の際には、基本的にローコード開発で内製化するようになりました。
ECサイトと予約購入品の自宅受け取りの仕組みは、2カ月ほどの期間で約5名のスタッフが構築しました。
ECサイトやPOSレジなどの連携を行う必要がある場合、システムの構築は費用が高く、期間は長期化しやすいのが一般的です。
ローコード開発を用いることで、期間の短縮だけでなく、コストの適正化が図れます。
参考：ローコードツール「kintone」がアルペン全店舗の業務プラットフォームに採用 | PR TIMES
決済システム
JAグループ青森では、2019年10月にキャッシュレス決済システムを稼働させました。
今まで運用していた基幹システムと、対面式のクレジットカード決済アプリを自動連携させるシステムの構築を、ローコード開発で行っています。
JAグループ青森の113拠点で同時に運用するまでにかかった期間はわずか6カ月です。
ローコード開発ツールの選定から要件定義の作成・開発・テストまでの工程を考えると、6カ月という期間は驚異的と言えます。
担当者が、ローコード開発ツールの開発手法の習得にかかった時間はわずか2週間でした。
ある程度プログラミングを理解している必要がありますが、プログラミング言語を1から習得する場合と比べて、習得にかける時間は大幅に短縮できます。
参考：青森共同計算センターがローコード開発ツールで決済端末を連携（マジックソフトウェア・ジャパン）| payment navi
ローコード開発のプラットフォーム比較
ローコード開発を行うためには、各社から提供されているプラットフォームを利用する必要があります。
本章では、代表的なプラットフォームを解説します。
Microsoft Power Apps
Microsoft Power Appsは、Excelの関数やPowerPointのような普段業務で使い慣れているツールを操作するような感覚で、ビジネスアプリケーションを制作できるローコード開発プラットフォームです。
テンプレートも豊富に用意されており、プログラミングの知識が必要ないため、エンジニアに依存しないアプリ開発も十分に可能です。
またブラウザ上で稼働するツールなので、専用の開発環境を構築する必要もありません。
Microsoft社がリリースしていますが、Windows OSだけでなくMacやChrome OSでもアプリ制作が可能です。
Oracle APEX
Oracle APEXとは、さまざまな情報をデータベースで一元管理するためのアプリケーションを開発できるプラットフォームです。
社内で扱う案件管理から顧客管理システムまで、幅広いアプリケーションの制作に役立ちます。
また、Oracle APEXで制作されたアプリケーションはさまざまなデバイスからアクセスできます。
クラウドデータベースを利用していれば、外出先から必要な情報を参照したり登録したりといった動作も可能です。
Excelに多少の不足を感じる状況もOracle APEXがカバーできます。
Smart DB
Smart DBは、高度な申請・承認ワークフロー・Webデータベース・文書管理機能を中心とした、業務効率化を目的としたシステムを構築できるプラットフォームです。
各部門に応じたテンプレートが多数あり、短時間でのシステム構築も可能です。
Smart DBは大企業市場でもシェアを獲得しているため、安心感のあるプラットフォームを探している際の候補としておすすめです。
kintone
kintoneは、クラウド上で業務アプリを開発できるローコード開発プラットフォームです。
導入社数は3万社を突破しており、チーム・部署単位での利用を目的としたアプリケーション開発に向いています。
kintoneで用意されているサンプルアプリは100種以上と膨大で、デザインや設定の変更も容易にでき、新たなアプリケーションを開発する際もドラッグ&ドロップで簡単に開発できる点が魅力です。
DX進め方ガイドブック
DXプロジェクトを検討している担当者の方に向けて、失敗しない社内体制の構築から開発リソース確保までを網羅して解説しています。
ローコード開発の主なツール
ローコード開発ツールは、ビジュアルインターフェイスでアプリケーションを設計し、設計に基づいたコードを自動で生成するのが目的です。
代表的なローコード開発ツールは、主に以下の3つです。
- 株式会社STANDSのOnbaording
- ジェネクサス・ジャパン株式会社のGeneXus
- 株式会社インプリムのPleasanter
なお、ローコード開発の基盤となるプラットフォームは、コード生成後の運用・分析・デプロイメントまでを網羅しているのに対して、ローコード開発ツールは最低限の開発を目的としています。
ローコード開発ツールとローコード開発プラットフォームの違いを理解し、自社の状況や開発目的などに応じて選びましょう。
ローコードと他の開発手法との違い
ローコード開発の他にアプリケーションやシステムの構築にはどのようなものがあるのでしょうか。
よく比較される対象のプラットフォームを解説します。
| ローコード | ノーコード | プログラミング | |
|---|---|---|---|
| ソースコードへの理解 | やや不要 | 不要 | 必須 |
| 開発速度 | 早い | 非常に早い | スキルに依存する |
| 拡張性 | あまりない | ほぼない | 非常に拡張性が高い |
| プラットフォームへの依存度 | 依存している | 依存している | 依存しない |
ノーコード
ノーコード開発とはローコード開発とは違い、ソースコードの記述を必要としない開発手法を指します。
ローコードはエンジニアほどの知識は必要としないまでも、ある程度のプログラミングの知識は必要でした。
しかしノーコード開発にはプログラミングの知識は必要ありません。
あらかじめプラットフォームに用意されたテンプレートを活用したり、パーツをドラッグ&ドロップで並べ替えたりすることでアプリケーションを開発できます。
ローコード開発も開発スピードは従来のものと比べて迅速ですが、ノーコード開発はさらに開発期間を短縮できます。
業務の効率化を自社で素早く行えるため、コア業務や新規事業にリソースを割くことが可能です。
ノーコード開発のデメリットは、プラットフォームへの依存度が高い点です。
新たな機能の実装などの拡張性はプラットフォームに委ねられ、企業や開発の規模が大きい場合は、ノーコード開発では要件を満たさなくなる可能性も出てくるでしょう。
また、プラットフォーム自体のサービスが利用できなくなるリスクも考慮する必要があります。
サービスが停止した場合、せっかく開発したツールが利用できなくなってしまいます。
プログラミング
プログラミングはローコード開発・ノーコード開発と比べると専門知識の習得や実装までの時間がかかりますが、圧倒的に拡張性が高いのがメリットです。
ローコード開発はある程度の拡張性は持ち合わせていますが、自社の思い通りの機能をすべて実装できるとは限りません。
しかしプログラミングを駆使すれば、プラットフォームの機能への依存を考慮せずに、ほぼ自社の思い通りの機能が実装できるでしょう。
ローコード・ノーコード・プログラミングには、それぞれメリットとデメリットがあります。
どれかひとつの手法に限定するのではなく、ローコードやノーコードを活用して自社で開発する部分と、ベンダーに開発を依頼する部分を必要に応じて使い分けるのがおすすめです。
ローコード開発は今後も発展し続けるか
さまざまなメリットがあるローコード開発ですが、今後も需要は拡大していくのでしょうか。
今後の発展予想について解説します。
ローコード開発は今後も拡大していく
ローコード開発は今後もますます需要が拡大していくと予想できます。
日本においては、電子化の推進・AIやIoTの活用など、DX技術が少しずつ浸透してきた社会背景が理由の一つです。
日本だけでなく、海外でも同様の需要が見込まれるため、ローコード開発はますます広まっていくでしょう。
プログラミングの知識自体は必要
ローコード開発が広まったとしても、プログラミングの知識は必要です。
仮にこの先、ローコード開発はさらなる発展を遂げ、ソースコードの記述がほぼ不要な拡張性の高いプラットフォームが実装されるかもしれません。
しかし、プラットフォーム自体を開発するにはプログラミングの知識が欠かせません。
エンジニアに対するニーズは変化する可能性がありますが、プログラミングによる開発を求める声がある以上は、需要がなくなることは考えにくいでしょう。
ユーザーとのコミュニケーションが必要になる
ローコード開発でアプリケーションを開発する場合、大事なのはユーザーとのコミュニケーションです。
ローコード開発では自身でアプリケーションを作ることもできますが、複雑なものはベンダーに依頼する必要があります。
開発を請け負う側は、ユーザーの望むものを把握するために丁寧にヒアリングするだけでなく、ユーザーの気づいていない価値を提案するなど、さまざまなコミュニケーションが必要です。
ローコード開発では開発自体に手間はかかりにくいものの、顧客体験の向上のために力を注ぐ必要が出てきます。
エンジニア不足に悩むのならば外注するのも選択肢に
ローコード開発は、今後ますます注目されていくポテンシャルを秘めています。
しかしローコードは万能ではありません。自社の規模感や要件に合った開発を行うのが重要です。
エンジニア不足で必要な機能が実装できない場合は、経験豊富なベンダーへの相談や、ラボ型開発などの海外リソースの活用もご検討ください。
DX進め方ガイドブック
DXプロジェクトを検討している担当者の方に向けて、失敗しない社内体制の構築から開発リソース確保までを網羅して解説しています。
学生時代にWebサイトを自作したことがきっかけでWebの世界に。制作会社でデザイン、WordPressテーマ開発の実務を経て、テクニカル・ディレクターとして大規模サイト構築のディレクションを経験。2021年からWakka Inc.の日本拠点でWebディレクターとして参画。最近はブロックエディタになったWordPressをもう一度、勉強しています。
