フルスクラッチ開発とパッケージ開発の違い|導入時のポイントを解説

最終更新日:2025.09.30
DX・システム開発
安藤 大海
フルスクラッチ開発とパッケージ開発の違いと導入時のポイントを解説
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こんにちは。Wakka Inc.のWebディレクターの安藤です。

システムを開発する際に検討すべき課題のひとつとして、フルスクラッチとパッケージのどちらを選ぶかがあると思います。
フルスクラッチとパッケージ、それぞれの特徴はなんとなく理解していても、実際に選ぶとなると下記のような疑問を感じる人もいるのではないでしょうか。

「うちの場合はどちらが適しているのだろう?」
「どちらかを選ぶときの基準やポイントはどこにあるのだろう?」

本記事では、みなさまが疑問を解消する参考になるように、以下について詳しく解説するのでぜひお役立てください。

  • フルスクラッチ開発とパッケージ開発の進め方の違い
  • それぞれのメリット・デメリットの比較
  • 導入を検討する際にチェックしておきたいポイント

Wakka Inc.はフルスクラッチ開発を得意としています。
フルスクラッチ開発のちょっとした疑問から お見積もり依頼までお気軽にお問い合わせください

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目次

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フルスクラッチ開発とは

スクラッチ開発(フルスクラッチ開発)とは、ソフトウェアやシステムをゼロの状態から開発する手法です。
フルスクラッチ開発は、カスタマイズの自由度が高く、企業の要件に最適化したソフトウェア・システムを開発したいときに活用できます。

フルスクラッチ開発の手法

フルスクラッチ開発で利用される開発手法は以下の通りです。

  • ウォーターフォール開発
  • アジャイル開発

それぞれの開発手法について、順番に解説します。

ウォーターフォール開発

ウォーターフォール開発は開発工程を複数に分割し、それぞれ時系列に沿って順番に実施していく開発手法です。
滝のように上から下へ流れるようにプロセスを進めるため、ウォーターフォール開発と名付けられました。

ウォーターフォール開発は大規模な開発プロジェクトや、複雑な機能を搭載しているプロダクトの開発に用いられることが多い点が特徴です。
スケジュールや進捗状況が管理しやすい上に、手法自体は極めてシンプルで、さまざまなプロジェクトに応用できます。

ただし、ウォーターフォール開発は手戻りが難しく、開発計画の修正や軌道変更に対応しにくい傾向があります。
万が一開発計画の修正や軌道変更が発生すると、多大なコストが発生するリスクがあるため、柔軟な対応が求められるプロダクトの開発には不向きです。

加えて、ウォーターフォール開発は開発期間が長期化しやすいので、スピーディーな開発が求められるプロダクトにも適していません。

アジャイル開発

アジャイル開発は開発プロセスを機能単位で細分化し、それぞれのサイクルをスプリント(短い期間)でスピーディーに回しながら開発を進める手法です。
開発からテストを短い時間でスピーディーに実践するため、品質を高められるうえに早期リリースを実現しやすい点が特徴です。

アジャイル開発はウォーターフォール開発と異なり、柔軟な仕様変更や軌道修正に対応できます。
短い期間で開発を完了でき、コストを抑えられる点も大きなメリットです。

ただし、アジャイル開発は性質上、短期間で開発できるプロジェクトでなければメリットを得られません。
長期的な開発期間を求められる大規模なプロジェクトや、複雑な機能を搭載したプロダクトの開発には不向きです。

また、アジャイル開発はスピーディーに開発サイクルを回すので、スケジュール管理が難しい傾向があります。
スプリントを繰り返す過程でプロジェクトのコンセプトがブレるリスクもあり、入念なプロジェクト管理が欠かせません。

フルスクラッチ開発の要件定義で行うこと

フルスクラッチ開発に限ったことではありませんが、要件定義は重要性の高い要素です。
なぜなら、いかに具体的に要件を定義できるかが、ソフトウェアやシステムの完成度に直結するためです。

本章では、フルスクラッチ開発の要件定義で行うことを解説します。

ヒアリングと現状分析

ヒアリングでは、関係者から現状における課題や要望を聞き取り、現状分析では既存システムやプロセスを調査して課題を洗い出します。
洗い出した課題に基づき、どのようなシステムを開発するか、といった指針を決めます。

ヒアリングと現状分析は、変更要求の発生防止にもつながります。
変更要求とは、システム開発途中で要件変更が発生した際の提案です。

変更要求が発生すると、開発スケジュールの遅延をはじめ、最悪の場合はプロジェクトが破綻するリスクが伴うこともあります。
ヒアリングと現状分析は、変更要求のリスクを軽減し、システムの完成度を高めるための大切な要素です。

要求定義

要求定義とは、システムに求める要件を明確にするプロセスです。
具体的には、下記のような要件を明確にします。

  • システムで何を実現したいのか
  • システムに必要な機能や性能は何か

要求定義では、要件を整理して優先順位を付ける作業も含まれます。
ヒアリングと現状分析から得た情報を活用して優先順位をつけ、効率的な開発につなげるためです。

明確化された要件は文書化し、開発側と発注側の認識のズレを防ぎ、開発するシステムの完成度向上に役立てられます。

機能要件定義

機能要件とは、システムが持つべき機能です。
具体的には、請求書発行機能・顧客管理機能などで、開発するシステムに欠かせない機能を定義します。

機能要件は、システム開発によって達成すべき目的に沿って、どのような機能を搭載するかを開発側・発注側が話し合って過不足のないように定義するのがポイントです。

非機能要件定義

非機能要件とは、システムが満たすべき性能や特性です。
システムの応答速度や拡張性、セキュリティ・可用性などが該当し、安全性・快適性などの要素が含まれます。

非機能要件は、構築したシステムに搭載した機能を十全に活用するために定義します。
したがって、機能要件と同様に重要視すべき事項です。

フルスクラッチ開発とパッケージ開発の違い

フルスクラッチ開発とパッケージ開発は、「製品の導入の有無」が大きな違いです。

フルスクラッチ開発は既存のシステムやパッケージを利用せず、ゼロから独自にシステムを構築する開発手法です。
対して、パッケージ開発とは、あらかじめ開発された既製のシステムを導入し、必要に応じてカスタマイズする開発手法です。

フルスクラッチ開発とパッケージ開発は進め方も異なります。
本章ではフルスクラッチ開発とパッケージ開発のプロセスの違いについて解説するので、ぜひ参考にしてください。

開発の進め方

フルスクラッチ開発とパッケージ開発は、いずれもウォーターフォール型で進めるのが一般的です。

違うのは、フルスクラッチ開発の要件定義ではヒアリングと現状分析を実施するのに対して、パッケージ開発の要件定義ではヒアリング・現状分析にフィット・ギャップ分析が加わる点のみ。

フィット・ギャップ分析とは、パッケージ製品の機能と設定オプション、自社の業務を突き合わせ、適合する部分とそうでない部分を明らかにすることです。

フィット・ギャップ分析の実施後は、パッケージの機能の中からカスタマイズする箇所を決定し、次の工程に進みます。

開発期間

開発期間が短いのはパッケージ開発です。

フルスクラッチ開発はゼロからスタートするのに対して、パッケージ開発は既存システムのソースコードを流用するため、開発期間は短縮できます。

フルスクラッチ開発とパッケージ開発の開発期間の目安は下記の通りです。

  • フルスクラッチ開発:約2~3年
  • パッケージ開発:約3カ月~半年

開発費用

開発費用が低いのはパッケージ開発です。
パッケージ開発は既存システムをもとに開発を進めるため、初期費用を抑えられます。

パッケージ開発は、開発期間が短い点も費用削減に関係しています。
開発期間が短い場合は、人件費をはじめとした時間経過とともに発生する費用を削減できるためです。

フルスクラッチ開発とパッケージ開発の費用の目安は以下の通りです。

  • フルスクラッチ開発:約500~1,000万円
  • パッケージ開発:約300万円

柔軟性・カスタマイズ性

柔軟性・カスタマイズ性が高いのはフルスクラッチ開発です。

フルスクラッチ開発は自社の業務に合わせてカスタマイズできるのに対して、パッケージ開発は汎用的に活用できるよう開発された製品を使うため、こまかなニーズには対応できない場合があります。
フルスクラッチ開発は、細かな要求にも対応でき、自社の業務フローに対してフィット率の高いシステム開発に期待できます。

保守性

保守性は、フルスクラッチ開発とパッケージ開発、それぞれに一長一短があります。
フルスクラッチ開発とパッケージ開発を、保守性からの観点で比較してみましょう。

メリットデメリット
フルスクラッチ開発・開発側との連携を図りやすい環境の変化に対する柔軟性が高く保守性も高い・開発側の担当者が入れ替わると保守の難易度が変化する可能性がある
・コード構造が複雑な場合は保守効率が低下するリスクがある
パッケージ開発・サポートが充実している場合が多い
・保守向けの機能が搭載されていて運用が安定しやすい
・保守性の高さがパッケージ製品のバージョンアップ・アップデートに依存しがち
・パッケージ製品のサポート終了に備える必要がある

上記のように、保守性の観点からは、フルスクラッチ開発とパッケージ開発のどちらにもメリットとデメリットが存在します。
フルスクラッチ開発とパッケージ開発のどちらが適しているかは、システムの要件や将来的な運用計画をもとに検討しましょう。

導入までのスピード

開発が完了し、導入が完了するまでのスピードは、どのようなシステムを開発したかによって異なります。

例えば、フルスクラッチ開発で既存のシステムに近い新規システムを構築した場合は、使用者への指導がほとんど必要なく、開発完了から導入までの速度は短期間で済みます。
逆に、フルスクラッチ開発を用いても、使い勝手が異なる場合は指導期間を見込むため開発完了から導入までの期間は長くなるでしょう。

フルスクラッチ開発とパッケージ開発を比較した場合は、柔軟性・カスタマイズ性に課題を抱えがちなパッケージ開発のほうが、開発完了後の指導が必要なケースが多いのが現状です。
したがって、開発完了から導入までの期間を削減したい場合は、フルスクラッチ開発で既存のシステムに近い新規システムを構築するのが良いと言えます。

フルスクラッチ開発とパッケージ開発の導入比率

ところで、パッケージ開発は日本国内でどれくらい普及しているのでしょうか。
フルスクラッチ開発とパッケージ開発の比率を見てみましょう。

一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が、2020年に発表した調査資料によると、2018-2020年累積でフルスクラッチ開発(業務パッケージの使用状況が”使用せず”)が64.5%でした。
対してパッケージの使用状況は、ERP・単体パッケージ・その他ツールを合計して全体の35.5%という比率です。(出典:『ソフトウェアメトリックス調査2020 システム開発・保守調査』― 一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)

資料では2016年時点と比較するとパッケージが2倍以上に増加しているとも報告されており、35.5%という結果は、過去の数値と比較すると決して低い比率ではありません。

JUASの会員企業を対象にしたアンケートの回答結果から集計されているため、サンプル数はやや少ないものの、国内全体で見てもパッケージが増加している傾向に大きな違いはありません。
一方で、アメリカやヨーロッパ諸国など、海外ではこの比率が完全に逆で、パッケージを導入するケースがほとんどだといわれています。

先述した通り、日本国内ではフルスクラッチ開発が6割以上を占めており、海外と比較すると日本のパッケージの導入比率は少ない傾向があります。

なお、ERPパッケージとは、企業の基幹業務(会計・販売・生産・人事など)を統合的に一元管理できるソフトウェアパッケージです。
単一のシステムでデータリソースを一元管理でき、業務効率化・コスト削減・経営判断の迅速化などを実現できるため、近年では注目を集めています。

フルスクラッチ開発のメリット・デメリット

フルスクラッチ開発を成功させるには、メリット・デメリットをそれぞれ正確に把握する必要があります。
本章ではフルスクラッチ開発のメリット・デメリットについて解説します。

フルスクラッチ開発のメリット

フルスクラッチ開発のメリットは自由度が高いことです。
オーダーメイドで完全オリジナルのシステムをゼロから構築するため、どのような機能をどのような仕様で実装するかは自由で、制約もありません。

したがって、自社の業務に適合したシステムの構築が可能です。
また、システムが本番稼働してからも、機能の追加や改善にスピーディに対応できます。

フルスクラッチ開発のデメリット

フルスクラッチ開発のデメリットは開発費用が高額になることです。
パッケージ製品のように多数の企業に導入することを前提にしておらず、特定の企業向けにオーダーメイドのシステムを構築する場合、多額の費用がかかります。

規模が大きいほど人件費などのコストが増える点を考慮すると、スクラッチ開発を実践する際は、ある程度予算を確保する必要があります。

また、ゼロから開発するため、導入までに長期間を要するのもデメリットのひとつです。
さらに、オーダーメイドのシステムを構築するには高い技術力が必要になってきます。

  • システム要件を適切に整理する技術
  • 利用者が使いやすい機能を設計する技術
  • プログラミングの技術
  • Webデザインの技術
  • セキュリティの技術

このような技術が総合的に高いレベルで必要とされるため、開発プロジェクトの技術者を確保するのは容易ではありません。

パッケージ開発のメリット・デメリット

本章では、パッケージ開発のメリットとデメリットについて解説します。
実践する前に、あらかじめ把握しておきましょう。

パッケージ開発のメリット

フルスクラッチ開発とは反対に、パッケージ開発のメリットは導入期間を短くできる点です。
また、多数の企業向けに開発されたパッケージ製品を導入するため、フルスクラッチ開発で同じ規模の機能を構築するのに比べると、開発費用は安く済みます。

ただし、パッケージ製品の購入料金だけなら安価ですが、カスタマイズの規模が大きくなると、それなりに開発費用がかさみますし開発期間も必要です。
パッケージ開発のメリットを活かすには、いかにカスタマイズの量を少なく済ませるかがポイントです。

パッケージ開発のデメリット

パッケージ開発のデメリットは、カスタマイズの自由度が制限されることです。
パッケージ製品は、はじめから決まった仕様に基づいて開発され、製品として完成されています。

ある程度のカスタマイズは可能ですが、製品の元の仕様から大きく外れたカスタマイズはできません。
また、開発費用を抑えるにはカスタマイズの量を減らすことが必要ですが、カスタマイズの量を無理に減らすと使い勝手が犠牲になってしまい、利用者の満足度を下げることにもつながります。

フィット・ギャップ分析の時点で業務をしっかりと整理し、業務を最適化すべきかカスタマイズすべきか、適切に判断することが重要なポイントです。

もし、パッケージ開発で過度なカスタマイズを実践すると、よりコストが高まるだけでなく、そもそも既成のパッケージ製品を利用する意味がありません。
独自性の高いシステムやインターフェースを求めるなら、フルスクラッチ開発を検討する必要があります。

フルスクラッチ開発とパッケージ開発の比較表

これまでに解説してきた内容を簡単な比較表にまとめました。開発手法を検討される際の参考にしてください。

 フルスクラッチ開発パッケージ開発
開発の進め方・ウォーターフォール型が主流
・すべてのシステム要件をゼロから定義する
・パッケージの機能を中心にフィット・ギャップ分析をする
・カスタマイズ機能のみ個別に開発する
メリット・自社の業務に適合したシステムを構築できる
・機能追加や改善にスピーディに対応できる
・カスタマイズ性が非常に高い
・独自の強みの反映によって競合優位性を獲得できる可能性がある
・運用保守は自社とベンダーのどちらでも可能
・短期間で導入できる
・開発費用が低額
・運用コストが明確
・実績のあるパッケージは品質が安定しやすい
デメリット・開発費用が高額
・導入までに長期間を要する
・保守費用が独自に発生する
・都度のバージョンアップが必要
・品質が開発側の技術に依存しやすい(初期バグのリスクがある)
・カスタマイズの自由度が限られている
・使い勝手が悪いと利用者の満足度が下がる
・業務プロセスをパッケージに合わせる必要がある
・システムによる競合優位性の獲得が難しい
・運用保守はベンダーが担うため選択できない

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【シーン別】開発手法を選ぶときのポイント

実際に開発手法を検討する際には、どのようなところに注意すれば良いのでしょうか。
本章では、「フルスクラッチ開発とパッケージ開発のどちらを選ぶべきか?」を決めるときのポイントとして、以下の内容を詳しく解説します。

  • システム開発の目的と優先事項を明確にする【前提】
  • 新規ビジネス立ち上げ・業務ネット対応はスピードを優先
  • 現状業務の整理はパッケージ開発
  • 自社業務に合わせた独自のシステム構築はフルスクラッチ開発

それぞれについて順番に解説するので、参考にしてください。

システム開発の目的と優先事項を明確にする【前提】

開発手法を選ぶ際の前提として、システム開発の目的を明確にしておきましょう。
目的を明確に意識しておくことで、何を優先して検討すべきかがクリアになるためです。

「サービスをいち早く起ち上げたいので、利用するシステムも早急に整えたい」
「複雑な業務手順を見直して最適化したい」
「業務部門の利用者が使いやすく、業務を効率的に回せるようにしたい」

上記のように、システムを開発する目的は企業を取り巻く事情によってさまざまです。

目的によって優先事項は異なり、向いている開発手法も変わります。
また、あらかじめ目的や優先事項を明確にしておけば、開発プロセスの決定が容易です。

目的を明確にすることで無駄なプロセスを事前に省けるため、スピーディーな開発も可能です。
コストの削減にもつながるので、目的や優先事項は入念に検討しましょう。

新規ビジネス立ち上げ・業務ネット対応はスピードを優先

新規ビジネスの立ち上げや、業務のネット対応などはスピードが重要です。
自社のビジネスに適したパッケージを見つけてスピーディに導入し、いち早くビジネスを軌道に乗せるプロセスが適しています

フルスクラッチで半年から1年と時間をかけて開発していると、ビジネスを取り巻く環境が大きく変化し、ビジネスチャンスを逃すことになりかねません。
最初から完成された状態でなくても、いったんシステムを導入してから、より自社に適した形に改善を重ねていけば、ビジネスに適したシステムを実現できます。

実際、MVP開発やアジャイル開発などは、スピーディーな開発手法として多くの企業で実践されています。
スピーディーな開発は早期参入利益を獲得しやすくなるだけでなく、ユーザーのフィードバックを得ることで、プロダクトのさらなるブラッシュアップが可能です。

さらに、必要に応じて部分的にフルスクラッチ開発を採用するなど、柔軟に対応しましょう。
市場の動向に合わせて適切な開発手法を組み合わせれば、より良い成果を獲得できる可能性が高まります。

現状業務の整理はパッケージ開発

現状の業務を整理し、最適化するうえで、効果的な開発手法を選ぶことも重要です。

「現状の自社業務を整理して最適化したい」
「複雑な業務手順をさらに合理的でシンプルなものにしたい」

このような場合、業務の整理自体が目的にはならなくても、システムの導入をきっかけに、現状の業務を整理したいと考える企業は少なくありません。
パッケージ製品はグローバルな規格や、ベストプラクティスを集めた運用ガイドラインに沿って設計されたものも多く、さまざまなシチュエーションに対応できます。

さきほど、フルスクラッチとパッケージの導入比率についてのパートで、海外ではパッケージを導入するケースがほとんどだとご紹介しました。
海外でパッケージの導入が進んでいる理由は下記の通りです。

  • コアではない業務については自社の独自性を排除し、標準的な業務に対応するパッケージを利用して、導入コストを抑えるため
  • パッケージは、グローバルで統一された規格や運用ガイドライン(ITILなど)に基づいて開発されており、パッケージに業務を合わせて運用を最適化するため
  • コアでない業務でコストをおさえた分、競合他社と差別化したいコアな業務に思い切って投資をするため

このように戦略的な意図をもって非コア業務を効率化するために、海外ではパッケージを積極的に導入しています。
パッケージ製品には多くの効果的なノウハウが詰まっているため、パッケージに合わせて業務を変更することが、結果的に業務を最適化する可能性を高めます。

自社業務に合わせた独自のシステム構築はフルスクラッチ開発

最後に、自社業務に合わせて独自のシステムを開発したい場合です。
独自のシステムを開発するとなると、フルスクラッチ開発が選択肢として有力ですが、以下の点についてあらかじめ検討しましょう。

  • 本当に自社業務に合った独自のシステムが必要なのか?
  • パッケージの機能に合わせて業務を合理化することは考えられないか?
  • パッケージの中には自社業務に合わせて使えそうな製品がないか?

フルスクラッチ開発を選ぶ前にぜひ、上記の視点でパッケージの導入が可能か十分にリサーチと検討をしてみてください。
そのうえでなお、自社業務に合わせた独自のシステムが必要と判断された際は、フルスクラッチ開発を検討しましょう。

自社のコア業務のために実施するシステム化であれば、戦略的に競合他社と差別化を図ることが必要な場合もあります。
独自性を高め、ほかのシステムと差別化を図るなら、むしろパッケージを導入すべきではありません。

自社のコア業務の部分で独自のノウハウを活かしてシステム化するなら、フルスクラッチ開発が適しています。

フルスクラッチ開発の信頼できる発注先を選ぶポイント

「開発手法の検討を終え、フルスクラッチ開発を採り入れることに決まった。しかし、開発プロジェクトを自社内で編成できるだけの技術者はそろえられない」

例えば、上記のような状況でフルスクラッチ開発のメリットを活かしてプロジェクトを成功させるには、いかに信頼できる発注先を選ぶかが重要です。
本章ではシステム開発を成功させるために、信頼できる発注先を選ぶポイントを解説します。

要件を引き出すリサーチ力があるか

フルスクラッチ開発では、開発工程の最上流である要件定義をいかに正確にまとめるかが成功のカギを握っています。

  • 顧客が要求した内容をただ鵜呑みにするのではなく、要求を深掘りして背景情報まで明らかにする
  • 必要であればさらにヒアリングを重ね、要求の裏側にある根拠を明確にし、的確に整理する
  • 要求の間に矛盾がないかなど、引き出した情報を総合的に分析する
  • 顧客が気づいていない要求の矛盾や不都合な点を発見したら、代替策を提示して要求の変更をうながす
  • 最終的に整理され、確定した要件を要件定義書にまとめる

このようなプロセスを経て、より質の高い要件定義を作り上げることが必要です。
高質な要件定義には、顧客のニーズを適切に引き出し、正確にまとめるリサーチ力が欠かせません。

リサーチ力は、発注先の信頼度をはかる大切な要素です。
リサーチ力を評価するには、開発ベンダーにシステム開発の見積もりを依頼するときに、次のような点に注目しましょう。

  • こちらの要求に対して、曖昧な点や不明点を深掘りして、納得いくまで質問してくれるか?
  • 提案内容の土台となる根拠がしっかり積み上げられているか?
  • こちらからの問い合わせや相談に対して、丁寧にリサーチして回答してくれるか?

開発ベンダーが出してくる提案内容や、提案活動における振る舞いを注意して見ておくと、ある程度は力量の評価が可能です。

確かな技術力と実績があるか

技術力と実績がどれほどかを評価するには、開発ベンダーのホームページや会社案内のパンフレットなどを確認しましょう。

ホームページやパンフレットには取引先の企業や、過去の開発実績が掲載されていることが多いものです。
もし、自社と同じ業界の開発実績が多ければ、同業界のシステム開発に関するノウハウを豊富に持っていることが期待できます。

具体的に顧客の実名を出して、システム導入の成功事例を紹介している企業もあります。
それだけ高い技術力を持っている裏付けと考えられるので、積極的に問い合わせたり情報を収集したりして、より確かな情報を入手しましょう。

また、Wakka Inc.のようにブログなどのコンテンツを使って、開発技術やビジネスに関する有用な情報を公開している企業もあります。
技術的に信頼できる企業かどうかを評価するためにも、公開されている情報を積極的にチェックしましょう。

コストを抑える提案ができるか

実際にフルスクラッチ開発を開発ベンダーに発注すると、開発費用が高額になる可能性が出てきます。
確保していた開発予算を上回る見積もりが提示され、予算をどうやりくりするか悩ましいケースに直面する場合も珍しくありません。

上記のようなときに、気軽に相談に乗ってくれる開発ベンダーが発注先にいると心強いものです。
例えば、コストを抑えるために親身になってこのような提案をしてくれる開発ベンダーは、信頼できる発注先の候補といえます。

「開発を2フェーズに分けて、優先度の高い機能を厳選してフェーズ1で開発しましょう。残りはフェーズ2でやりませんか?」
「要件定義が固まっていないので、開発ボリュームが膨らむリスクが高そうです。まずは要件定義だけで契約させてください。要件定義が終わったら残りの開発を再見積もりします。」

コストを抑えるために、親身になってこのような提案をしてくれる開発ベンダーは、信頼できる発注先の候補と考えて良いでしょう。

また、フルスクラッチ開発で高い技術力と低コストを両立させるのは困難ですが、ラボ型開発であれば、コストをおさえながら高い技術力を確保できます。
ラボ型開発は海外の企業と提携、あるいは子会社や開発拠点を置き、海外でシステムを開発する開発手法です。

コスト削減を目的としてラボ型開発を採り入れる際は、経験と実績が豊富でラボ型開発を得意とする企業を発注先に選ぶのがおすすめです。

フルスクラッチ開発・パッケージ開発を活用してビジネスを加速させよう

フルスクラッチ開発とパッケージ開発は、どちらにもメリット・デメリットがあります。
それぞれのメリット・デメリットを押さえたうえで、自社が優先すべきポイントを明確にしておきましょう。

優先すべきポイントが明確になっていれば、フルスクラッチ開発とパッケージ開発のどちらのメリットを活かせるか?」をきちんと判断でき、最適な開発手法を選択できます。
本記事を参考に、ぜひ最適な開発手法を選択してください。

WaGAZINE読者さま限定!

ラボ型開発サービス導入事例集ラボ型開発のケーススタディを紹介

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この記事を書いた人
安藤 大海

学生時代にWebサイトを自作したことがきっかけでWebの世界に。制作会社でデザイン、WordPressテーマ開発の実務を経て、テクニカル・ディレクターとして大規模サイト構築のディレクションを経験。2021年からWakka Inc.の日本拠点でWebディレクターとして参画。最近はブロックエディタになったWordPressをもう一度、勉強しています。

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