フルスクラッチ開発とは?メリット・デメリットや費用、成功に導く要点を解説

最終更新日:2024.12.02
ラボ型・オフショア開発
安藤 大海
フルスクラッチ開発とは?メリット・デメリットや費用、成功に導く要点を解説
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こんにちは。Wakka Inc.のWebディレクターの安藤です。

システム開発手法の一つにフルスクラッチと呼ばれるものがあります。IT用語としてはよく使われるので、システムに携わったことがあれば一度は耳にしている人も多いはずです。
しかしながら、下記のようにお悩みの方も多いのではないでしょうか。

「聞いたことはあっても意味はきちんと理解できていない」
「意味は知っているが、特徴や導入のポイントはよく分からない」

そこで本記事では、フルスクラッチの意味、メリット・デメリット、開発を成功させるためのポイントについて解説します。ぜひ、最適なシステム導入への疑問や不安の解決にお役立てください。

Wakka Inc.ではフルスクラッチ開発を得意としています。フルスクラッチ開発のちょっとした疑問から お見積もり依頼までお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせはこちらから。

目次

フルスクラッチ開発とは?用語の意味

フルスクラッチ開発は英語で「totally from scratch」と呼ばれる開発手法です。

スクラッチという言葉には、IT用語でゼロから新たに作るという意味があります。
つまり、既製品や部品などの土台となるものがあってそれをもとに作り上げていくのではなく、何もないゼロの状態からシステムを生み出すという意味で、IT業界では一般的にスクラッチ開発と呼ばれています。

これはスーツでたとえるなら、オーダーメイドです。
店舗で販売されている既製品のスーツを選ぶのではなく、自分の体にあったサイズのスーツをオーダーしてゼロから自分用に作り上げてもらうのと似ています。
つまり、オーダーメイドのスーツのように、自社にあったオリジナルなシステムをゼロから作り上げてもらうのがスクラッチ開発です。

スクラッチ開発では既存のテンプレートやフレームワークを利用せず、Java・PHP・HTMLなどの開発言語を利用して開発が行われます。
しかし、場合によっては開発費用や開発工程の削減のためにテンプレートやフレームワークを利用することもあります。
このように開発プロセスを自由に設定できる点が、フルスクラッチ開発の魅力です。

フルスクラッチ開発とスクラッチ開発の違い

スクラッチ開発の中でも単に「スクラッチ」と呼ぶ場合と、特に意味を分けて「フルスクラッチ」と呼ぶ場合があります。

ゼロからシステムを作り上げるという点で大きくは同じようなことを意味していますが、あえて「フルスクラッチ」という場合は少し意味合いが変わってきます。
スクラッチ開発がゼロからシステムを作り上げることを意味しているといっても、厳密には下記を意味することが一般的です。

  • テンプレートをもとにシステムを構築している
  • フレームワークや既成の部品を組み合わせて構築している

その中で「フルスクラッチ開発」と呼ぶ場合には、使用するテンプレートやフレームワーク、部品なども含めすべてゼロから作り上げる開発を指しています。

フルスクラッチ開発の対義語は「パッケージ開発」

フルスクラッチ開発の対義語にあたる開発手法が「パッケージ開発」です。

ゼロからシステムを構築するフルスクラッチ開発に対し、パッケージ開発は費用や時間を削減するために、既存のテンプレートやソフトコンポーネントを利用する手法を指します。

パッケージ開発の流れについて簡単に見ていきましょう。
パッケージ開発では、ウォーターフォール型の開発手法でいう要件定義にあたる工程で、パッケージ製品が持つ機能と製品を利用する業務とのフィット&ギャップ分析を行います。

フィット&ギャップ分析とは下記の確認を意味します。

  • パッケージの機能が自社の業務要件を満たしているか?
  • このままの仕様で自社の業務利用に合うのかどうか?

フィット&ギャップ分析が終わったら、基本的には下記のいずれかの方法で、ギャップをいかにして埋め合わせてなくしていくかを検討します。

  • パッケージ機能に合わせて業務を変更する
  • 業務で使いやすいようにパッケージ機能をカスタマイズする

こうしてカスタマイズ要件を確定し、カスタマイズ開発を進めるというのがパッケージ開発の流れです。
これに対してフルスクラッチ開発は、システムをゼロから作り上げるため、開発するすべての機能の仕様を決めて一から構築します。

パッケージ開発と比べると、かかる費用が大きく異なることがお分かりいただけるのではないでしょうか。

フルスクラッチのメリット

ここまでに述べたように、スクラッチ開発のようなオーダーメイドのシステム作成には相応の手間がかかります。
しかし、既製品のスーツとオーダーメイドのスーツにそれぞれ特徴があるように、手間をかけて作るスクラッチ開発にも独自の利点があるのです。

以下では、システム開発手法としてフルスクラッチを選択することのメリットについて詳しく見ていきましょう。

独自のビジネスに合わせた開発ができる

まず、スクラッチ開発の主なメリットとして、独自のビジネスに合わせたシステム構築が可能な点が挙げられます。

システム導入時の選択肢には、スクラッチ開発以外にパッケージ製品の導入があります。
パッケージ製品は、スーツに例えると、オーダーメイドではなく既製品を選ぶようなものです。
オーダーメイドなら自分の体型に合わせて細かくサイズ調整ができ、ぴったりフィットする製品が手に入ります。

一方、既製品のスーツは、S・M・Lといった全体的なサイズは合っても、袖丈やウエストなど細部まで厳密にフィットするとは限りません。
システム開発も同様で、パッケージ製品は安価で導入が容易ですが、細部で自社の業務内容に合わず、使いにくかったり使えなかったりすることがあります。
その点、フルスクラッチ開発では、自社の業務に合わせて細かく仕様を調整できます。パッケージ製品よりも使い勝手の良いシステムを手に入れられることが利点です。

改善活動をスピーディに回せる

次に挙げるメリットは、改善活動をスピーディに回せることです。

再びパッケージ製品との比較をしながら詳しく見ていきましょう。パッケージ製品とは、多くの企業に共通する業務用途で開発されたものです。
つまり、特定の企業の業務に特化した構造ではありません。

そのため、パッケージ製品を採用しても「せっかく導入したのに、使いにくい機能がある」という問題が生じる可能性があります。
このような場合は使い勝手の改善が必要です。

しかし、パッケージソフトは特定の企業向けに開発されたものではないため、開発会社や販売会社に依頼しても、機能の改修をすぐに実現するのは難しい場合が多いものです。
一方で、フルスクラッチで開発したシステムの場合は、ソースコードを自社で所有できるのが強みです。適切な技術者がいれば、迅速に機能の改修に着手できます。

システムを導入してから、そのまま初期状態で使い続けることはまれです。
たいていは使っているうちに、不具合など想定していなかった事象が発生したり、使い勝手のよくない部分が出てきたりするものです。

そのような事象に対応するため、システム導入後は利用しながらシステムの評価をするプロセスを設けましょう。そして、評価の過程では下記の課題を見つけていくことが大切です。

  • 使い勝手の悪さを改善する
  • 不具合が起こりにくくなるよう仕組みを見直す
  • 処理性能を改善する

見つけた課題は、PDCAのサイクルにのせて回していきましょう。
こうした、システムの評価やPDCAサイクルを回すときに、よりスピーディにサイクルを回せるのがフルスクラッチといえます。

特別な制約がなくカスタマイズの自由度が高い

3つめのメリットは、カスタマイズの自由度の高さです。
フルスクラッチは既製品を導入するのとは違って、カスタマイズの自由度が高いのが特徴です。

システム全体をゼロから構築するため、既製品のような仕様上の制約がありません。
業務で使い勝手が良いように画面をデザインできて、動きや機能を要望に合わせて自由に決めながら開発できます。

もちろん既存の自社システムとの連携も、特別な制約なく、比較的自由に取りまとめることが可能です。
パッケージ製品の場合もある程度のカスタマイズは可能ですが、もとの製品としての仕様が決まっているため、仕様上の制約でどうしても対応できないところが出てきます。

また、パッケージ製品の仕様を熟知していないとカスタマイズができないため、製品を扱っている開発ベンダーにカスタマイズを依頼する必要があります。

フルスクラッチのデメリット

フルスクラッチによる開発はさまざまな面で自由度が高く、目的に適合したシステムを構築しやすいことがお分かりいただけたのではないでしょうか。
そのようなフルスクラッチも、当然ながら良い面ばかりではありません。選択する上でデメリットになることも認識しておく必要があります。

以下では、フルスクラッチを選択することによるデメリットについて詳しく見ていきましょう。

開発に時間と費用がかかる

まずデメリットの1点目として、開発に時間と費用がかかることが挙げられます。

フルスクラッチによる開発はゼロからオーダーメイドのシステムを構築するため、自由度が高い分、既製品を導入するよりも開発に時間と費用もかかります。

構築するシステムの規模や難易度にもよるため「どれくらい費用がかかるか」は一概には言えません。
例えば、1カ月の稼働に70万円かかる技術者を10名、6カ月間かけて開発できるシステムがあるとします。その場合の計算式は下記の通りです。

70万円×10名×6カ月=4,200万円

これは計算を単純化した例ですが、実際にはシステム開発プロジェクトに参画する技術者にはプロジェクトマネージャーやシステムアナリスト、システムアーキテクトなどレベルの高い技術力が求められます。
それだけ単価が高額な人も必要となるため、構築にかかる費用はさらに高額になることも十分考えられるはずです。

同じくらいの規模のシステムをパッケージ製品やクラウドサービスなど既製品の導入でまかなうとしたら、おそらくここまで費用がかかることはないはずです。

ランニングコストにも相応の予算が必要

フルスクラッチで開発したシステムは構築にかかる費用もさることながら、ランニングコストもそれなりにかかってくることを想定しておかなければなりません。
比較対象として、クラウドサービスとして提供されているパッケージ製品について見てみましょう。

パッケージ製品の中でも最近ではASP業者がクラウドサービスとして提供している製品が増えています。
クラウドサービスとして提供されている製品の場合、パッケージ製品を提供している業者が、下記のような製品自体のメンテナンスを、サービスの一環として実施していることが一般的です。

  • バグ修正によるアップデート
  • 製品自体のバージョンアップ

他にも、下記の場合に自動的にバージョンアップされたり、ストレージの容量が追加されたりすることがあります。

  • OSやミドルウェアのサポート期限が切れる場合
  • ストレージの容量が不足してきたため拡張したい場合

そのため、クラウドサービスを利用している場合はメンテナンスのための費用を軽減できるといえます。

フルスクラッチで開発したシステムの場合は、クラウドサービスとは違って、システムの機能自体がオリジナルなものとして構築されています。
そのため、バグ修正のアップデートもバージョンアップも、自社で計画し実施することが必要です。

これらのメンテナンスにかかる費用は、当然ながらシステムのランニングコストとして毎年の予算に計画的に組み込んでおくことが求められます。

高い技術力を持つ人材が必要

パッケージ製品をそのまま導入したり、既成の部品を組みあわせたりフレームワークやテンプレートに沿って開発するのに比べて、フルスクラッチのようにゼロからシステムを開発するには高い技術力が必要です。

また、ひと口に高い技術力といっても、ある分野についての技術力が高いだけでは質の高いシステムを構築するのは困難です。
下記のような、専門性の高い技術が総合的に求められます。

  • システムのデザインに関する技術
  • プログラミングの技術
  • セキュリティに関する技術

もちろん、一人の技術者がそれらの専門知識を幅広くカバーしている必要はありませんが、それぞれの専門分野に長けた技術者を調達することは不可欠です。

パッケージ製品の場合は、これら専門性の高い技術を盛り込んで製品化されています。
そのため、パッケージを導入するのにそれほど専門性の高い技術は求められません。フルスクラッチの場合はゼロからの構築です。

パッケージ製品に見劣りしないような機能を実装するためには、個別に専門性の高い技術を用いてシステムを構築することが求められるわけです。

フルスクラッチ開発の費用

フルスクラッチ開発はゼロからシステムの開発を行うため、パッケージ開発のようなテンプレートやフレームワークを利用する手法より費用がかかりやすくなります。

一般的に、フルスクラッチ開発の費用相場は数百万円~1,000万円程度とされています。
加えて、企業の基幹システムや多数の機能を搭載した大型のECサイトとなれば、数千万円単位の費用がかかることは珍しくありません。

また、フルスクラッチ開発に限らず、システムの開発費用の大半は人件費です。
開発に要する期間×人件費で計算すれば、大まかな費用を把握できます。

フルスクラッチ開発は一定以上の費用が発生する開発手法ですが、少しでも費用を抑えるなら、既存のテンプレートやフレームワークの導入を検討しましょう。

外部にフルスクラッチ開発を委託する際は、契約金を下げられる準委任契約を締結するなど、契約形態を工夫するだけでも費用を抑えられます。

フルスクラッチ開発の流れ

以下では、フルスクラッチでシステムを構築する場合の開発の流れを見ていきましょう。
フルスクラッチ開発は以下の手順で実施されます。

  1. 要件定義
  2. 設計
  3. 開発
  4. テスト
  5. リリース
  6. 運用・保守

いずれのプロセスも、適切に実施する上で意識すべきポイントがあります。
それぞれのポイントについて順番に解説するので、フルスクラッチ開発を行う際の参考にしてください。

要件定義

要件定義とは、開発するシステムの基本的な設計を行うフェーズです。
システムを開発する目的を明確化し、運用方法・予算・搭載する機能・性能・開発期間などを決定しましょう。

要件定義を具体的に設定するほど、開発のプロセスは明確化します。
明確なプロセスを設定できれば、不要な工程を削減したり、無駄な費用をなくしたりできます。

設計

要件定義が完了したら、実際に開発準備を進める設計を行います。
設計では、定められた要件を機能単位に分割し、それぞれの処理内容を決定します。

加えて、操作方法や出力画面など、インターフェースに関わる部分も決定しましょう。
設計が完了したら、基本設計書を作成し、開発をスタートさせます。

なお、設計はリリース後に行うメンテナンスや運用も踏まえて実施しましょう。

開発

基本設計書の内容に基づいて開発を進めます。
要件定義を具体的に実施していれば、作業の巻き戻しが起こりにくくなるため、開発をスムーズに進められます。

テスト

開発が完了したら、テストを実施しましょう。
テストでは開発したシステムが想定通りに稼働するか、バグやエラーなどの問題がないかを確認しましょう。

もし、テストで問題が発覚した際は、速やかに改善しましょう。
なお、テストはユーザー目線で実施し、ハード面・ソフト面でも問題がないかを入念にチェックすることが重要です。

リリース

テストを無事に終えたら、いよいよリリースです。
リリース後も、ユーザーからの意見やフィードバックをチェックし、積極的に取り入れましょう。

運用・保守

リリース後は運用・保守が開発者の重要な役目です。
この段階では、運用後に発生したエラーやバグの修正・機能の追加やアップデート・稼働状態の監視などを行います。

スクラッチ開発は時代遅れか?

時代とともにITは大きな進化を遂げています。ひと昔前までは、システムの構築もスクラッチ開発が主流という時代でした。
しかし、現在は企業の業務に合わせて構築されたパッケージ製品が数多く出回っています。

例えば、会計・経理のような、どの企業にとっても定型的な業務のシステムとなると、パッケージ製品を導入するケースがほとんどではないでしょうか。

それ以外に、業界に特化した専門性の高い業務においても、パッケージ製品化が進んでいるケースは増えています。
「もうスクラッチ開発は時代遅れなのでは?」と感じている技術者も少なくありません。

しかし、スクラッチ開発には次に述べる価値があることを理解しておきましょう。

パッケージ開発の方針をとる判断基準

フルスクラッチ開発の価値として、パッケージ開発のフィット&ギャップ分析においてギャップがそれほど多くない点が挙げられます。
パッケージ機能でおおむね自社の業務が回せるのであれば、パッケージ製品の導入は効果的です。

実際、昨今のパッケージ製品はユーザーのニーズを取り入れたものが多く、適切に運用すれば、スピーディーなシステム開発が可能です。

また、すでにフレームワークが完成されているパッケージ製品であれば、経験値が少ない企業でもシステム開発に取り組めます。

フルスクラッチ開発の方針をとる判断の仕方

一方で、「自社の業務に合わせたインターフェースや機能を搭載したい」「独自性の高さを売りにしたい」と考えている場合、パッケージ製品では限界があります。

パッケージ製品は開発を効率化しますが、個々のユーザーの事情に合わせて作られたものではありません。
そのため、企業の特殊な業務やニッチなニーズに対応できないことがあります。

システムの独自性を追求するなら、フルスクラッチ開発が有効な選択肢となり得ます。
なぜなら、フルスクラッチ開発では、ゼロから自社の事情やニーズに合わせたシステムを構築できるからです。

確かに、フルスクラッチ開発には高度なノウハウが求められますが、近年は開発を請け負う業者も増えてきました。優れた業者に委託すれば、自社開発よりも時間や費用を削減できる可能性があります。
理想のシステム開発を実現したいなら、フルスクラッチ開発の採用を真剣に検討してみましょう。

フルスクラッチは1つの選択肢!目的にあったシステム開発を選ぼう!

フルスクラッチとは、システムをゼロから開発する手法です。既製品のパッケージと異なり、独自のシステム開発に適していますが、同時にデメリットも存在します。
どちらを選択するかは、システム開発の目的、予算、リソースなどの状況に応じて変わってきます。

本記事を参考に、自社の目標と制約条件を含むシステム開発を取り巻く状況を慎重に見極め、最適な開発手法を選択しましょう。

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この記事を書いた人
安藤 大海

学生時代にWebサイトを自作したことがきっかけでWebの世界に。制作会社でデザイン、WordPressテーマ開発の実務を経て、テクニカル・ディレクターとして大規模サイト構築のディレクションを経験。2021年からWakka Inc.の日本拠点でWebディレクターとして参画。最近はブロックエディタになったWordPressをもう一度、勉強しています。

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