フルスクラッチ開発とは?費用相場・パッケージとの違い・向いているケースを解説


こんにちは。Wakka Inc.のWebディレクターの安藤です。
システム開発を検討する際、「フルスクラッチ」という言葉を耳にすることがあるでしょう。
これは、既製品を組み合わせるのではなく、完全にゼロからオリジナルのシステムを構築する開発手法を指します。
しかし、「聞いたことはあるけれど、正確な意味やパッケージ開発との違いが分からない」「自社のプロジェクトに本当に必要なのか判断できない」といったお悩みを持つ方も少なくありません。
本記事では、フルスクラッチ開発の基本的な意味から、メリット・デメリット、費用相場、そしてどのような企業やプロジェクトに適しているのかを包括的に解説します。
この記事のポイント
- フルスクラッチ開発とは、既存のテンプレートやフレームワークに頼らず、完全にゼロからオーダーメイドでシステムを構築する開発手法です。
- 最大のメリットは、独自の業務フローやビジネスモデルに完全に適合したシステムを構築できる自由度の高さにあります。
- 一方で、開発費用が数百万円から数千万円規模となる場合があり、開発期間も半年から数年に及ぶことがデメリットとして挙げられます。
- 競合との差別化を図りたい、既存システムとの複雑な連携が必須、将来的な大規模拡張を想定している場合に特に有効な選択肢となります。
- 成功の鍵は、要件定義の精度と、豊富な実績と高い技術力を持つ開発パートナーを選定することにあります。
フルスクラッチ開発とは?ゼロからシステムを構築する意味と概念

フルスクラッチ開発とは、既存の基盤や部品を利用せず、完全にゼロの状態から独自のシステムを構築する開発手法を指します。
このアプローチは、既製品のスーツではなく、採寸から生地選びまですべてを自分仕様で行うオーダーメイドスーツに例えられます。
企業特有の業務フローや独自のビジネスモデルに完璧にフィットするシステムを実現できるのが最大の特徴です。
システム開発の世界では、さまざまな手法が存在しますが、フルスクラッチはその中でもっとも自由度が高い一方で、相応のコストと時間を要する方法論として位置づけられています。
このセクションでは、まず「フルスクラッチ」という言葉の正確な意味と、関連する用語との違いを明確にします。
スクラッチ・フルスクラッチの意味
「スクラッチ(scratch)」という英単語には、「最初から」「ゼロから」といった意味があります。
IT業界ではこの言葉を引用し、何もない状態からシステムを作り上げることを「スクラッチ開発」と呼んでいます。
このスクラッチ開発には、広義と狭義の意味合いが存在します。
一般的に「スクラッチ開発」と言う場合、ゼロから作るとはいえ、開発効率を高めるために既存のフレームワーク(開発の骨組み)やライブラリ(便利な機能の部品集)を利用するケースも含まれます。
これに対し、「フルスクラッチ開発」という言葉を使う際は、より厳密に、フレームワークやライブラリといった基盤技術の選定も含め、すべてをゼロから設計・構築することを強調するニュアンスがあります。
つまり、「フルスクラッチ」は、「スクラッチ」の中でも特に純粋なオーダーメイドであることを示す言葉と言えるでしょう。
この「ゼロから作る」という概念は、システム開発の文脈だけでなく、他の分野でも用いられます。
例えば、3Dモデル制作の世界では、既存の素体データを使わずに一体ずつ造形することを「フルスクラッチ」と呼びます。
また、ゲーム開発の文脈で「ゲームにおけるフルスクラッチとは?」と問われた場合、それはUnreal EngineやUnityといった既存のゲームエンジンに頼らず、描画エンジンや物理エンジンといった根幹部分から自前で開発するような、非常に高度なケースを指すことがあります。
どの分野においても、「フルスクラッチ」は既製品に頼らない完全なオリジナル制作を意味する言葉なのです。
フルスクラッチ開発とスクラッチ開発の違い
前述の通り、フルスクラッチ開発とスクラッチ開発は、どちらも「ゼロからシステムを構築する」という点で共通していますが、その厳密さにおいて違いがあります。
「スクラッチ開発とフルスクラッチ開発の違いは何ですか?」という疑問に端的に答えるならば、その違いは「どこまでをゼロからと見なすか」という範囲の差にあります。
一般的に、IT業界における両者の使い分けは以下のようになります。
※表は、横にスクロールできます
| 言葉 | 詳細 |
|---|---|
| スクラッチ開発 | ゼロからビジネスロジックを構築するが、開発の土台として既存のフレームワークやライブラリ、場合によってはテンプレートを利用することが多い。 |
| フルスクラッチ開発 | ビジネスロジックはもちろん、それを支える技術基盤(フレームワーク、主要な部品など)の選定・設計も含めて、完全にゼロベースで構築することを指す。 |
実務上、この二つの言葉は厳密に区別されずに使われることも少なくありません。
しかし、開発会社との認識合わせを行う際には、「フレームワークなどは既存のものを利用するのか、それとも基盤から独自に構築するのか」という点を確認しておくことが、後のトラブルを避ける上で重要です。
フルスクラッチは、独自のアーキテクチャ設計から始まる、オーダーメイドのプログラム開発手法なのです。
フルスクラッチ開発の対義語「パッケージ開発」
フルスクラッチ開発の対義語として位置づけられるのが「パッケージ開発」です。
これは、特定の業務(例:会計、販売管理、顧客管理など)向けに、あらかじめ機能が作り込まれた既製品のソフトウェア(パッケージ)を導入し、自社の業務に合わせて設定や一部カスタマイズを行う開発手法を指します。
フルスクラッチ開発がオーダーメイドスーツなら、パッケージ開発は既製品のスーツを購入し、必要に応じて裾上げなどの調整をするイメージです。
ゼロから作り上げるフルスクラッチに対し、パッケージ開発は完成された製品を土台にするため、開発期間が短く、コストを抑えられるという大きなメリットがあります。
パッケージ開発のプロセスでは、まず「フィット&ギャップ分析」を行います。
これは、導入を検討しているパッケージ製品の機能が、自社の業務要件をどれだけ満たしているか(フィット)、そして満たしていない部分はどこか(ギャップ)を分析する工程です。
分析後、ギャップを埋めるために以下のいずれかのアプローチを選択します。
- パッケージの機能に合わせて、自社の業務フローを変更する。
- パッケージにカスタマイズ(追加開発)を加え、自社の業務に合わせる。
このアプローチからも分かる通り、パッケージ開発はあくまで既存製品の枠組みの中で最適化を図る手法です。
そのため、フルスクラッチ開発と比較すると、実現できることの自由度に大きな差が生まれます。
これが、フルスクラッチの対義語としてパッケージ開発が挙げられる理由です。
フルスクラッチ開発のメリットとデメリット

フルスクラッチ開発は、企業に高い自由度と競争優位性をもたらす可能性がある一方で、相応の投資とリスクを伴う選択肢です。
この開発手法がもたらす独自の利点を最大限に活かし、同時に潜在的な課題を乗り越えるためには、その光と影の両面を正確に理解しておくことが不可欠です。
オーダーメイドならではのフィット感や拡張性は大きな魅力ですが、高額なコストや長期にわたる開発期間は無視できません。
ここでは、フルスクラッチ開発を選択する際に考慮すべき主要なメリットとデメリットを詳しく掘り下げていきます。
フルスクラッチ開発の3つのメリット
フルスクラッチ開発には、パッケージ製品やSaaSでは得られない、オーダーメイドならではの大きな利点があります。これらは、企業の競争力を根幹から支える重要な要素となり得ます。
独自のビジネスに完全に適合したシステムが構築できる
最大のメリットは、自社の特殊な業務フローや独自のビジネスモデルに100%合致したシステムを構築できる点です。
パッケージ製品は、多くの企業に共通する汎用的な業務を想定して作られています。
そのため、導入すると「この機能はうちの業務に合わない」「この項目が足りない」といったミスマッチが生じがちです。
その結果、システムに業務を合わせるという本末転倒な事態に陥ることも少なくありません。
フルスクラッチ開発であれば、画面のデザインから業務ロジック、データの持ち方に至るまで、すべてを自社の要件に沿って設計できるため、従業員の生産性を最大化し、業務効率を飛躍的に向上させることが可能です。
改善活動をスピーディに回せる(保守・機能追加の柔軟性)
ビジネス環境の変化は速く、システムも一度導入したら終わりではありません。
市場の変化やユーザーからのフィードバックに基づき、継続的な改善が不可欠です。
パッケージ製品の場合、機能改修の要望を出しても、開発元ベンダーのロードマップに依存するため、すぐに対応できるとは限りません。
一方で、フルスクラッチで開発したシステムは、ソースコードを自社で所有(又は管理)しているため、必要なタイミングで迅速に機能の改修や追加に着手できます。
不具合の修正や使い勝手の改善といったPDCAサイクルを高速で回せるため、常にビジネスに最適化された状態を維持できます。
特別な制約がなくカスタマイズの自由度が高い
フルスクラッチ開発は、ゼロからシステムを設計するため、技術的な制約がほとんどありません。
既存の社内システムとの連携、特殊な外部サービスとのAPI連携、将来的な事業拡大を見据えたスケーラブルなアーキテクチャの採用など、あらゆる要件に柔軟に対応できます。
パッケージ製品では「仕様上、この連携はできない」「これ以上のカスタマイズは製品の根幹に関わるため不可能」といった壁に突き当たることがありますが、フルスクラッチにはその心配がありません。
長期的な視点でビジネスの成長を支える、拡張性の高いプラットフォームを構築できる点は、大きな強みです。
フルスクラッチ開発の主なデメリット
多くのメリットがある一方で、フルスクラッチ開発には慎重に検討すべきデメリットも存在します。これらの課題を事前に認識し、対策を講じることがプロジェクト成功の鍵となります。
開発に時間と費用がかかる
オーダーメイドである以上、当然ながら開発には相応の時間と費用が必要です。
要件定義から設計、開発、テスト、リリースまで、すべての工程を一から行うため、開発期間は小規模なものでも半年、大規模なシステムになれば数年単位に及ぶことも珍しくありません。
費用も、構築するシステムの規模や複雑さに応じて、数百万円から数千万円、場合によっては億単位の投資が必要となります。
これは、パッケージ製品の導入費用と比較して格段に高額です。
ランニングコストにも相応の予算が必要
初期の開発費用だけでなく、リリース後の運用・保守にかかるランニングコストも考慮しなければなりません。
クラウドサービス(SaaS)型のパッケージ製品であれば、サーバー管理やセキュリティアップデート、法改正に伴う機能更新などはサービス提供者が行うため、利用者は月額費用を支払うだけで済みます。
しかし、フルスクラッチで開発したシステムの場合、これらのメンテナンスは全て自社の責任で行う必要があります。
サーバー費用、バグ修正、セキュリティパッチの適用、OSやミドルウェアのバージョンアップ対応など、継続的なコストが発生することを予算計画に織り込んでおく必要があります。
高い技術力を持つ人材が必要
ゼロから高品質なシステムを構築するには、非常に高度で幅広い技術力が求められます。
要件を正確にシステム設計に落とし込むアーキテクト、安全で効率的なコードを書くプログラマー、プロジェクト全体を管理するプロジェクトマネージャーなど、各分野の専門家が必要です。
もし開発を外部ベンダーに委託する場合でも、ベンダーの技術力を正確に見極め、自社の要件を的確に伝え、成果物をレビューできるだけの知識が自社内にも求められます。
信頼できる技術パートナーを見つけられるかどうかが、プロジェクトの成否を大きく左右します。
【比較表】フルスクラッチ開発とパッケージ開発を徹底比較

フルスクラッチ開発とパッケージ開発のどちらを選択すべきか判断するためには、それぞれの特徴を多角的に比較し、自社の優先順位と照らし合わせることが重要です。
費用や期間といった分かりやすい指標だけでなく、ビジネスへの適合度や将来性といった長期的な視点も欠かせません。
以下の比較表は、両者の違いを一目で理解し、最適な意思決定を行うための判断材料としてご活用ください。
※表は、横にスクロールできます
| 項目 | フルスクラッチ開発 | パッケージ開発 |
|---|---|---|
| 自由度・拡張性 | ◎ 非常に高い 独自の業務要件や複雑なデザイン、将来の機能拡張など、制約なく自由に実現可能。 | △〜○ 限定的 製品の基本仕様の範囲内に限られる。カスタマイズは可能だが、制約や高額な追加費用が発生する場合がある。 |
| 費用(初期コスト) | × 高額 一般的に数百万円〜数千万円以上。システムの規模や複雑性に応じて億単位になることも。 | ◎ 比較的安価 ライセンス購入費用や初期設定費用が主。SaaS型なら月額数千円〜数十万円程度。 |
| 開発期間 | × 長期 要件定義からリリースまで、最低でも半年〜1年以上。大規模な場合は数年単位。 | ◎ 短期 フィット&ギャップ分析と設定が中心。カスタマイズが少なければ数週間〜数ヶ月で導入可能。 |
| メリット | ・業務への完全な適合 ・競合優位性の確保 ・高い拡張性と将来性 ・柔軟な機能追加・改修 | ・低コスト、短納期 ・導入実績が多く安定的 ・業界のベストプラクティスを導入可能 ・運用保守の手間が少ない(特にSaaS) |
| デメリット | ・高コスト ・長期間 ・高度な技術力とマネジメント能力が必要 ・開発パートナー選定が重要・要件定義の失敗リスク | ・機能やデザインの制約 ・独自の業務フローに対応できない場合がある ・過度なカスタマイズは高コスト化 ・複雑化を招く ・ベンダーのサービス終了リスク |
| 保守・運用 | 自社又は委託先でインフラ管理からアプリケーション保守まで全て対応。ソースコードは自社で所有。 | 基本的には提供元ベンダーが対応。バージョンアップのタイミングや内容はベンダーに依存する。 |
| 代表的な選択肢 | 独自の業務基幹システム、大規模ECサイト、革新的なWebサービスなど。インフラにはAWSなどのクラウドが利用されることが多い。 | ECサイト: Shopify, MakeShop 業務アプリ: kintone, Power Apps カスタマイズ前提: EC-CUBE, ecbeing |
この表から分かるように、両者には一長一短があり、どちらが優れているというわけではありません。
重要なのは、「自社のビジネスにとって、何をもっとも重視するか」を明確にすることです。
コストとスピードを優先するならパッケージ開発、独自の強みを最大限に活かしたいならフルスクラッチ開発が有力な候補となるでしょう。
こんな企業に最適!フルスクラッチ開発が向いているケース

フルスクラッチ開発は、パッケージ製品では解決できない、もしくは解決に多大なコストがかかるような、複雑で独自性の高い要件を持つ企業に最適な選択肢です。
全ての企業にとってフルスクラッチ開発が必要なわけではありません。
むしろ、多くの定型的な業務は、優れたパッケージ製品やSaaSを導入する方が賢明です。
しかし、企業の競争力の源泉となるコア業務や、他社との差別化を図るための戦略的なシステムにおいては、フルスクラッチ開発が唯一無二の価値を発揮します。
ここでは、具体的にどのような状況でフルスクラッチ開発を検討すべきか、4つの代表的なケースを解説します。
競合優位性を築きたい独自性の高いシステム開発
自社のビジネスモデルそのものがユニークで、その業務プロセスが競合他社に対する明確な差別化要因となっている場合、フルスクラッチ開発は極めて有効です。
例えば、特殊な価格設定ロジックを持つサブスクリプションサービス、独自のアルゴリズムを用いたマッチングプラットフォーム、長年のノウハウが凝縮された生産管理システムなどがこれにあたります。
このようなシステムをパッケージ製品の枠に無理に当てはめようとすると、自社の強みである独自プロセスを犠牲にせざるを得ません。
それでは本末転倒です。業務プロセスこそが競争力の源泉であるならば、システムを業務に合わせるべきであり、そのための最適な手段がフルスクラッチ開発なのです。
自社ならではの価値提供をシステムで実現し、模倣困難な参入障壁を築きたい企業にとって、この投資は将来の大きなリターンにつながるでしょう。
既存システムとの連携が不可欠な場合
企業内には、長年利用してきた基幹システム(ERP)、顧客管理システム(CRM)、会計システムなど、複数のシステムが稼働していることが一般的です。
新たに導入するシステムが、これらの既存システムと密接に、かつ双方向でデータ連携する必要がある場合、フルスクラッチ開発が有利になります。
パッケージ製品もAPI連携機能を提供していますが、連携できるデータの種類や更新頻度、認証方式などに制約があることが少なくありません。
特に、古い基幹システムや特殊な仕様を持つ社内システムとの連携では、パッケージの標準機能だけでは対応しきれないケースが頻発します。
フルスクラッチ開発であれば、連携先のシステムの仕様に合わせて、最適な連携方式(API、ファイル連携、データベース連携など)を自由に設計・実装できます。
これにより、システム間のデータをシームレスにつなぎ、全社的な業務効率化やデータの一元管理を実現できます。
将来的な大規模な機能拡張を見込む場合
現時点ではスモールスタートするものの、将来的に事業が拡大するにつれて、大規模な機能追加やユーザー数の大幅な増加、グローバル展開などを計画している場合、フルスクラッチ開発は長期的な視点で見て賢明な選択です。
パッケージ製品やSaaSは、初期段階では手軽で便利ですが、事業の成長とともに性能の限界や機能の制約がボトルネックになることがあります。
例えば、「ユーザー数が想定を超えてパフォーマンスが劣化した」「海外の決済手段や税制に対応できない」といった問題です。
フルスクラッチ開発では、初期の設計段階から将来の拡張性(スケーラビリティ)を考慮したアーキテクチャを採用できます。
負荷に応じてサーバーを自動で増減させる仕組みや、機能ごとにサービスを分割して独立して開発・改修できるマイクロサービスアーキテクチャなどを取り入れることで、ビジネスの成長に合わせて柔軟かつ迅速にシステムをスケールさせることが可能です。
パッケージ開発が不向きなのはこんな時
逆に、パッケージ開発では対応が難しい状況から、フルスクラッチ開発の必要性を考えることもできます。
以下のようなケースでは、パッケージ製品の導入は不向き、あるいは多大なカスタマイズ費用が発生し、結果的にフルスクラッチよりも高コストになる可能性があります。
※表は、横にスクロールできます
| パッケージ開発が不向きなケース | 詳細 |
|---|---|
| フィット&ギャップ分析で「ギャップ」が多すぎる | パッケージの標準機能と自社の業務要件との間に乖離が大きく、ほとんどの業務でカスタマイズや運用でのカバーが必要になる場合。業界特有の規制や法制度への対応が必須: 金融、医療、不動産など、業界固有の厳格な法律やコンプライアンス要件があり、パッケージの標準機能では対応できない場合。 |
| UI/UXに徹底的にこだわりたい | ユーザーの操作性を極限まで高めたい、あるいは独自のブランドイメージを反映した唯一無二のデザインを実現したい場合。パッケージのテンプレートでは表現に限界があります。 |
| パフォーマンス要件が極めて厳しい | 大量のトランザクションをミリ秒単位で処理する必要がある金融取引システムや、大規模なリアルタイム通信が求められるサービスなど、特殊な性能要件がある場合。 |
このような状況に当てはまる場合は、無理にパッケージ製品を導入するよりも、最初からフルスクラッチ開発を選択する方が、結果的に満足度の高い、長期的に使えるシステムを構築できる可能性が高いでしょう。
フルスクラッチ開発の費用相場と流れ

フルスクラッチ開発は、その自由度の高さと引き換えに、数百万円から数千万円、場合によっては億単位の投資を要するプロジェクトです。
この費用は、開発するシステムの規模、機能の複雑さ、求められる品質、そして開発チームの構成など、多くの要因によって大きく変動します。
したがって、具体的な費用を算出するには詳細な見積もりが必要ですが、ここでは一般的な費用の内訳とコストを抑えるためのポイント、そして開発プロジェクトの基本的な流れについて解説します。
これにより、予算計画やスケジュール策定の精度を高めることができます。
費用の内訳とコストを抑える方法
フルスクラッチ開発の費用の大半を占めるのは、エンジニアやプロジェクトマネージャーなどの「人件費」です。費用は、以下の式で概算できます。
| 開発費用 = 担当者の単価 × 開発人数 × 開発期間(人月) |
例えば、月単価80万円のエンジニア5名が6ヶ月かけて開発を行う場合、単純計算で「80万円 × 5名 × 6ヶ月 = 2,400万円」が開発費用の目安となります。
実際には、プロジェクトマネージャー、UI/UXデザイナー、インフラエンジニアなど、さまざまな役割の専門家が関わるため、費用はさらに増加します。
この高額になりがちな費用を抑えるためには、いくつかの有効な方法があります。
※表は、横にスクロールできます
| 方法 | 詳細 |
|---|---|
| 要件の優先順位付けとMVP開発 | 最初から全ての機能を完璧に実装しようとせず、ビジネス上もっとも価値のある最小限の機能(MVP: Minimum Viable Product)に絞って開発し、早期にリリースします。市場の反応を見ながら段階的に機能を追加していくことで、初期投資を抑え、開発リスクを低減できます。 |
| ラボ型開発の活用 | 日本に比べて人件費が安い海外(例: ベトナム)の開発拠点を活用することで、開発コストを大幅に削減できます。弊社Wakka Inc.のように、日本国内のプロジェクトマネージャーが現地チームを直接管理する「ハイブリッド体制」を採る企業に依頼すれば、品質を維持しつつコストメリットを享受できます。 |
| 準委任契約の検討 | 成果物の完成を保証する「請負契約」ではなく、作業時間に基づいて費用を支払う「準委任契約」を選択する方法もあります。仕様変更に柔軟に対応しやすく、開発の透明性が高まるメリットがありますが、プロジェクト管理能力が求められます。 |
| 適切な技術選定 | オープンソースのフレームワークやライブラリを効果的に活用することで、ゼロからフルスクラッチでプログラミングを行う範囲を減らし、開発工数を削減できます。 |
フルスクラッチ開発の流れとプロジェクトをスムーズに進めるコツ
フルスクラッチ開発は、一般的に「ウォーターフォールモデル」と呼ばれる、工程を順番に進めていく手法で管理されます。
各工程を丁寧に進めることが、手戻りを防ぎ、プロジェクトを成功に導く鍵となります。
※表は、横にスクロールできます
| 工程 | 詳細 | |
|---|---|---|
| 1 | 要件定義 | プロジェクトの成功を左右するもっとも重要な工程です。システムを開発する目的を明確にし、必要な機能、性能、予算、開発期間などを具体的に定義します。ここで定義が曖昧だと、後の工程で認識の齟齬が生まれ、大幅な手戻りやコスト増につながります。利用部門の担当者を巻き込み、ビジネス要求を正確に洗い出すことが不可欠です。 |
| 2 | 設計(基本設計・詳細設計) | 要件定義で決めた内容を、システムの仕様書に落とし込む工程です。「基本設計」では、ユーザーから見える部分(画面、操作方法など)を、「詳細設計」では、内部の処理ロジックやデータベースの構造など、開発者が見る部分を設計します。 |
| 3 | 開発(プログラミング・実装) | 設計書に基づいて、プログラマーが実際にコードを書いてシステムを構築していく工程です。 |
| 4 | テスト | 開発したシステムが設計通りに動作するか、バグやエラーがないかを確認します。単体の機能を確認する「単体テスト」、機能を組み合わせた際の動作を確認する「結合テスト」、システム全体が要件を満たしているかを確認する「総合テスト」など、段階的に行います。 |
| 5 | リリース | テストで問題がないことを確認した後、完成したシステムを本番環境に展開し、ユーザーが利用できる状態にします。 |
| 6 | 運用・保守 | リリース後もシステムの安定稼働を維持するための重要な役割です。エラーやバグの修正、ユーザーからの問い合わせ対応、サーバーの監視、定期的なアップデートなどを行います。 |
プロジェクトをスムーズに進めるコツは、特に上流工程である「要件定義」と「設計」の品質を高めることです。
この段階で関係者間の合意を徹底的に行い、仕様を明確に文書化しておくことで、後の工程での手戻りや仕様変更のリスクを最小限に抑えることができます。
Wakka Inc.のフルスクラッチ開発事例と開発を成功させるための知見

フルスクラッチ開発は、単に高い技術力があれば成功するわけではなく、ビジネスへの深い理解と、プロジェクトを完遂させるための的確なマネジメント能力が不可欠です。
弊社Wakka Inc.では、これまで数多くの企業のフルスクラッチ開発を「伴走型」で支援してきました。
その中で培われた知見と、実際のプロジェクト事例を通じて、成功の要諦を具体的にお伝えします。
机上の空論ではない、現場から得られた一次情報こそが、これからプロジェクトに挑む方へのヒントとなるはずです。
Wakka Inc.が手掛けたフルスクラッチ開発の具体的な事例
Wakka Inc.が支援したフルスクラッチ開発の代表的な事例として、DREAMBEER様の「会員制クラフトビール配送サービス」の立ち上げプロジェクトがあります。
プロジェクト概要
※表は、横にスクロールできます
| クライアント | DREAMBEER株式会社様 |
| 課題 | 全国各地のブルワリーから直送されるクラフトビールを、家庭用ビールサーバーで楽しめるという、全く新しいサブスクリプション型ECサービスを新規事業として立ち上げる必要があった。 |
| 要件 | ・会員管理、注文管理、配送管理、決済機能といった基本的なEC機能・ブルワリーごとの複雑な配送ロジックへの対応・サブスクリプションモデル特有の継続課金システム・会員とブルワリーをつなぐコミュニティ機能 |
フルスクラッチ開発を選択した理由
このプロジェクトでは、当初パッケージ製品の利用も検討されました。
しかし、DREAMBEER様のビジネスモデルは、単なるECサイトではなく、複数のブルワリーと多数の会員をつなぐプラットフォームであり、その配送ロジックや会員管理は非常に独自性が高いものでした。
既存のECパッケージでは、この複雑な要件を実現するために大規模なカスタマイズが必要となり、かえってコストと時間がかさむことが判明しました。
そこで、ビジネスモデルの独自性を完全に再現し、将来の事業拡大にも柔軟に対応できるフルスクラッチ開発が最適な選択肢として採用されました。
Wakka Inc.の提案と支援
Wakka Inc.は、東京本社のシニアSEが要件定義や設計といった超上流工程を担当し、ベトナム・ホーチミンの自社開発拠点と連携する「ハイブリッド体制」で開発を推進しました。
これにより、日本品質のプロジェクトマネジメントと、コスト競争力のある開発リソースを両立。Webサイトからスマートフォンアプリ、業務システムまで、サービス全体のシステムをフルスクラッチで構築し、新規事業立ち上げを支援しました。
フルスクラッチ開発を成功に導くための重要なポイント
数々のプロジェクト経験から、Wakka Inc.はフルスクラッチ開発を成功させるために、特に以下の2点が重要であると考えています。
リスクを制する「要件定義」の徹底
前述の通り、フルスクラッチ開発の失敗の多くは、要件定義の不備に起因します。
上流工程での誤りは、下流工程に進むほど修正コストが指数関数的に増大します。
このリスクを回避するために、弊社Wakka Inc.が実践しているのは以下の点です。
※表は、横にスクロールできます
| 実践内容 | 詳細 |
|---|---|
| 利用部門の代表者のプロジェクトへの完全な参画 | 「忙しいから」とシステム部門に任せきりにするのではなく、実際にシステムを使う業務部門のキーパーソンにプロジェクトメンバーとして参加してもらうことが絶対条件です。弊社が支援するプロジェクトでは、週次の定例会などを通じて、ビジネスサイドと開発サイドの認識の齟齬を徹底的になくします。 |
| 関係者を巻き込んだ入念なレビュー | 作成した要件定義書は、関係者全員でレビューを行います。プロジェクトに直接関わっていない第三者の視点を入れることも有効です。多様な視点から検証することで、思い込みや考慮漏れを発見しやすくなります。 |
成否を分ける「開発パートナー」の選定
フルスクラッチ開発は、発注側と開発側の二人三脚で進める長期的なプロジェクトです。
技術力はもちろんのこと、ビジネスを深く理解し、信頼できるパートナーを選ぶことが何よりも重要です。
※表は、横にスクロールできます
| 選定ポイント | 詳細 |
|---|---|
| 複数の開発ベンダーから提案を受ける | 1社に絞らず、複数のベンダーから提案を受け、内容を比較検討することを強く推奨します。提案内容、体制、見積もりの妥当性などを多角的に評価し、もっとも信頼できるパートナーを選びましょう。 |
| 「伴走型」の支援姿勢があるか | 仕様書通りに作るだけでなく、ビジネスの成功という共通のゴールに向かって、積極的に提案してくれる「伴走型」のパートナーであるかを見極めることが大切です。Wakka Inc.では、単なる開発会社ではなく、お客様の事業をITで支えるパートナーでありたいと考えています。 |
| 事前に小規模案件で実力を試す | 可能であれば、いきなり大規模な開発を発注する前に、小規模な案件を依頼して、コミュニケーションの取りやすさや仕事の進め方、品質などを評価するのも有効な手段です。 |
フルスクラッチ開発は大きな挑戦ですが、これらのポイントを押さえ、信頼できるパートナーと協力することで、ビジネスを飛躍させる強力な武器となり得ます。
フルスクラッチ開発に関するよくある質問(FAQ)

ここでは、フルスクラッチ開発を検討する際にお客様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。プロジェクトを始める前の疑問や不安の解消にお役立てください。
フルスクラッチ開発の期間はどれくらいですか?
一概には言えませんが、一般的には半年から1年半程度の期間を要するプロジェクトが多いです。
ただし、これはあくまで目安であり、実際の期間は開発するシステムの規模や機能の複雑さによって大きく変動します。
例えば、シンプルな業務ツールであれば3ヶ月~6ヶ月程度で完了する場合もありますが、企業の基幹システムや大規模なWebサービスとなると、2年以上の長期プロジェクトになることも珍しくありません。
開発期間に大きく影響する要因は以下の通りです。
・機能の数と複雑さ
・要件定義の精度
・開発チームの規模とスキル
正確な期間を知るためには、開発会社に相談し、要件を伝えた上で詳細なスケジュールを提示してもらうことが必要です。
フルスクラッチ開発で費用を抑える方法はありますか?
はい、いくつかの方法で費用を抑えることが可能です。
高額になりがちなフルスクラッチ開発ですが、工夫次第でコストを最適化できます。
・要件の優先順位を明確にする
・ラボ型開発を活用する
・オープンソースソフトウェア(OSS)を有効活用する
・発注側の協力体制を整える
これらの方法を組み合わせることで、品質を維持しながら、より費用対効果の高い開発を実現できます。
小規模なシステムでもフルスクラッチ開発は可能ですか?
はい、技術的には小規模なシステムでもフルスクラッチ開発は可能です。しかし、その選択が常に最適であるとは限りません。
小規模なシステムの場合、フルスクラッチで開発するメリットと、パッケージ製品やkintoneのようなローコード/ノーコードツールを利用するメリットを慎重に比較検討する必要があります。
【小規模システムでフルスクラッチを検討するケース】
・規模は小さいが、業務ロジックが非常に特殊で、パッケージでは絶対に対応できない場合。
・将来的にそのシステムを中核として、大規模な拡張を計画している場合。
・特定の技術やパフォーマンス要件が必須で、それを満たすパッケージが存在しない場合。
一方で、一般的な情報共有ツールや簡単な業務アプリであれば、フルスクラッチ開発は過剰投資になる可能性が高いです。
開発費用や期間だけでなく、リリース後の運用・保守にかかるコストも考慮し、もっとも費用対効果の高い方法を選択することが重要です。
フルスクラッチは1つの選択肢!目的にあったシステム開発を選ぼう!

本記事では、フルスクラッチ開発の定義からメリット・デメリット、費用相場、そして成功のポイントまでを網羅的に解説してきました。
フルスクラッチ開発とは、完全にゼロからオーダーメイドでシステムを構築する手法です。
その最大の魅力は、独自のビジネス要件に完璧に適合した、競合他社には真似できないシステムを構築できる高い自由度にあります。
一方で、高額な費用と長い開発期間、そして高度な技術力が必要というデメリットも伴います。
重要なのは、フルスクラッチ開発が唯一の正解ではないと理解することです。
企業の目的、予算、リソース、そして解決したい課題に応じて、パッケージ開発やSaaS、ローコード開発など、数ある選択肢の中から最適な手法を見極める必要があります。
- 競合優位性の確立や、複雑な業務要件の実現が最優先なら → フルスクラッチ開発
- コストと導入スピードを重視し、定型的な業務を効率化したいなら → パッケージ開発やSaaS
この判断を的確に行うことが、システム開発プロジェクトを成功に導く第一歩です。
弊社Wakka Inc.は、2008年の創業以来、多くのお客様のシステム開発を支援してきたシステムインテグレーターです。私たちは、単に仕様書通りに開発するだけでなく、お客様のビジネスに深く寄り添い、ともに成功を目指す「伴走型」の支援を信条としています。
東京本社の経験豊富なSEが要件定義や業務分析といった最上流工程を担い、ベトナム・ホーチミンの自社エンジニアチームと連携する独自の「ハイブリッド体制」により、日本品質のクオリティとラボ型開発のコスト優位性を両立。フルスクラッチでの業務システム開発やECサイト構築はもちろん、お客様の事業ステージに合わせたラボ型開発など、多彩なソリューションをご提供します。
「自社の場合はどの開発手法が最適なのか」「フルスクラッチで開発した場合の、より具体的な費用や期間を知りたい」など、システム開発に関するお悩みがあれば、ぜひ一度Wakka Inc.にご相談ください。

学生時代にWebサイトを自作したことがきっかけでWebの世界に。制作会社でデザイン、WordPressテーマ開発の実務を経て、テクニカル・ディレクターとして大規模サイト構築のディレクションを経験。2021年からWakka Inc.の日本拠点でWebディレクターとして参画。最近はブロックエディタになったWordPressをもう一度、勉強しています。







