レガシーシステムのモダナイゼーションとは?必要性と成功のポイントを解説

最終更新日:2025.07.02
DX・システム開発
Wakka Inc. メディア編集部
レガシーシステムのモダナイゼーションとは?必要性と成功のポイントを解説
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こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。

長年使い続けてきた古いシステムが、ビジネスの足かせになっていませんか。

「新しい事業を始めたいのに、システムが対応できない」
「維持管理コストばかりかさみ、IT予算を圧迫している」

上記のような課題は、多くの企業が抱えるレガシーシステムの問題です。
レガシーシステムの問題を解決し、企業の競争力を高める鍵のひとつがモダナイゼーションです。

本記事では、レガシーシステムのモダナイゼーションの必要性・具体的な手法・成功のポイントなどを解説します。
具体的なモダナイゼーション戦略も、あわせてご覧ください。

目次

DXプロジェクトに関わる経営者・リーダー層の方へ

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レガシーシステムモダナイゼーションとは?

モダナイゼーションは、単にシステムを新しくするだけではありません。
既存のシステム資産を活かしながら、部分的に改修・再構築して、ビジネスの変化に柔軟かつ迅速に対応できるIT基盤を築くことを目的とします。

用語意味
レガシーシステム過去の技術や仕組みで構築され、老朽化・複雑化・ブラックボックス化したシステム。
負の遺産とも呼ばれる。
モダナイゼーション既存のレガシーシステムを、現代的な技術や設計に見合うように刷新し、価値を最大限に引き出す取り組み。


モダナイゼーションは、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進における重要な取り組みの一つです。

モダナイゼーションが必要な4つの理由とは?

なぜ今、多くの企業がモダナイゼーションに取り組む必要があるのでしょうか。
背景には、企業が放置できない深刻な課題が潜んでいます。

本章では、モダナイゼーションが必要とされるおもな4つの理由を解説します。

老朽化によるシステムリスクの増大

長年運用されてきたレガシーシステムは、老朽化に伴うさまざまなリスクを抱えています。
レガシーシステムが抱えるリスクは、事業継続や事業拡大を脅かす重大な問題に発展する可能性があります。

レガシーシステムが抱える、おもなリスクは下記の通りです。

リスクの種類具体的な内容
セキュリティリスク古い技術は最新のサイバー攻撃に対応できず、情報漏洩やデータ改ざんの危険性が高まります。
障害リスクハードウェアの故障やソフトウェアの不具合が発生しやすくなり、システムの安定稼働が困難になる可能性があります。
データ破損リスク予期せぬシステムダウンにより、重要なビジネスデータが失われる可能性があります。

ビジネス環境の変化への対応力不足

現代のビジネス環境は、市場のニーズや競合の動向が目まぐるしく変化します。
しかし、レガシーシステムに新しいサービスや機能を追加するには、多大な時間とコストを要します。

なぜなら、旧来の技術を用いて構築されたレガシーシステムに、最新の技術を適用するのは困難な場合が多いからです。
レガシーシステムへの対応の遅れは、ビジネスチャンスを逃す直接的な原因となり得ます。

しかし、システムの刷新には多大なコストがかかるのが現状です。
従来の全面的なシステム刷新(リプレイス)ではコストが膨大になるため、既存資産を活用しつつ段階的に刷新できるモダナイゼーションは、コストを抑えやすい選択肢として注目されています。
そのため、既存のシステム活用によってコストを削減しやすいモダナイゼーションの重要性が高まっています。

運用コストの肥大化

レガシーシステムは、運用・保守にかかるコストが年々増加する傾向にあります。
レガシーシステムは複雑化しているうえ、技術的なサポートが終了していることや、老朽化したハードウェアの保守に高いコストがかかることなどが理由です。

旧来の技術を維持するためには、高額な保守費用や、専門知識を持つ技術者の確保が必要不可欠です。

コストの分類肥大化する要因
保守・運用コストメーカーのサポートが終了したハードウェアやソフトウェアを維持するための費用が高騰します。
人件費システムを扱える技術者が限られているため、人件費が高止まりします。
改修コストシステム構造が複雑化・ブラックボックス化しており、わずかな修正にも大規模な調査と工数が必要になるリスクがあります。

人材不足

レガシーシステムが抱える深刻な問題の一つが、技術者の不足です。
システムの開発に携わった技術者が定年退職を迎える一方で、若い世代の技術者は新しい技術を志向する傾向にあります。

旧来の技術が更新されなかった結果、システムの仕様を理解する人材がいなくなり、保守・運用そのものが困難になる、2025年の崖(出典:経済産業省 DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~)と呼ばれる問題が指摘されています。
2025年の崖では、レガシーシステムが抱える課題を解決できない場合、多大な損失が生じることも示唆されています。

一方で、現代の日本では少子高齢化が進行し、IT人材を豊富に獲得するのは困難な状態です。
レガシーシステムのモダナイゼーションにより、少ない人数で運用する必要性が生じています。

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モダナイゼーションとマイグレーションの違いとは?

モダナイゼーションと似た言葉に、マイグレーションがあります。
どちらも古いシステムを刷新する手法ですが、そのアプローチと目的は異なります。

自社の状況に合わせて適切な選択をすることが重要です。

比較項目モダナイゼーションマイグレーション
目的既存資産を活かし、現代の技術に合わせて刷新する新しい基盤(プラットフォーム)へ完全に移行する
アプローチ段階的・部分的な改修一括での全面的な移行
おもな対象アプリケーション・ソフトウェアインフラ・OS・データベース全体
リスク比較的小さい(段階的に進められるため)比較的大きい(一括移行のため失敗時の影響が大きい)
期間・コスト柔軟に調整可能大規模になりやすい

モダナイゼーション|既存資産を活かす刷新戦略

モダナイゼーションは、既存のプログラムや設計思想といった資産を可能な限り活用します。
そのため、業務への影響を最小限に抑えながら、段階的にシステムを強化できる点が大きな特長です。

リスクをコントロールしつつ、着実にシステムを近代化したい場合に適した戦略と言えるでしょう。

マイグレーション|基盤そのものを移行する大胆な変革

マイグレーションは、システムを稼働させている基盤ごと、新しい環境へ移し替えるアプローチです。

例えば、自社サーバーで運用していたシステムを、丸ごとクラウド環境へ移行するケースが該当します。
根本的な課題を解決できる可能性がありますが、大規模な計画と投資が必要です。

モダナイゼーションの5つの手法

モダナイゼーションには、システムの状況や目的に応じてさまざまな手法が存在します。
ここでは、代表的な5つの手法について、それぞれの特徴と長所・短所を解説します。

リプレイス|ソフト・ハードの双方を刷新

リプレイスとは、既存システムを完全に廃棄して、新たなシステムを構築する手法です。
最新技術の導入が容易で、根本的な課題解決に期待できます。

新たに構築するシステムは、企業の要件に応じてカスタマイズできる点がメリットです。
ただし、開発期間が長期化しやすくコストが膨らみやすい点に注意を要します。

リホスト|サーバー・OSなどを新規システム基盤に移行

リホストとは、アプリケーションは変更せず、サーバーやネットワーク機器などの実行環境(インフラ)のみを一新する手法です。
比較的低コスト・短期間で実現できるため、おもにオンプレミスからクラウドに移行する際に採用されます。

ただし、アプリケーション自体が抱える老朽化といった課題は解決できない点に注意を要します。

リライト|ソフトウェアのコードを新規言語に書き換え

リライトとは、COBOLなどの古い言語で書かれたプログラムを、JavaやPythonといった現代的な言語に変換する手法です。
リライトにより、扱える技術者が増え、保守性が大幅に向上します。

しかし、コード書き換えに伴うバグの発生リスクがあるため、十分なテストの実施が必要な点に注意しましょう。

リファクター|アプリケーションソフトのコードを見直し・調整

リファクターは、いわばプログラムの整理整頓です。
複雑に絡み合ったコードを整理して、将来の改修を容易にし、技術的負債を軽減する手法を指します。

機能自体に変更はなく、直接的なビジネス価値を生み出しにくい反面、システムの可読性や保守性が向上するため、将来的な機能追加が容易になるというメリットがあります。

リドキュメント|現行システムのドキュメントを再調整

リドキュメントとは、長年の改修で実態と乖離した設計書を最新の状態に更新する手法です。
リドキュメントを行うことで、システムの全体像を正確に把握できるようになり、今後の改修や保守作業のリスクを低減できます。

これにより、システムの全体像が把握しやすくなり、安全な改修や保守作業の基盤を構築できます。

モダナイゼーションを成功させるための7つのポイント

モダナイゼーションは複雑で大規模なプロジェクトになることが多く、成功のためには慎重な計画が不可欠です。
本章では、プロジェクトを成功に導く7つの重要なポイントを紹介します。

アセスメントの重要性

プロジェクトを開始する前に、まずは現状を正確に評価するアセスメントが極めて重要です。
アセスメントにより、どのシステムにどのような課題があるのかを客観的に把握できます。

評価領域おもな評価項目
ビジネス価値システムが事業にどれだけ貢献しているか、将来性はあるか。
技術的価値使用されている技術は陳腐化していないか、保守性は高いか。
コスト運用・保守にどれだけの費用がかかっているか。
リスクセキュリティや障害に関する潜在的なリスクは何か。

明確な目標設定とスコープ定義

「なぜモダナイゼーションを行うのか」という目的を明確にし、具体的な目標を設定します。

例えば「サーバー運用コストを30%削減する」「新サービスの開発期間を半分に短縮する」といった数値目標が有効です。
また、プロジェクトの対象範囲(スコープ)を明確に定義し、関係者全員で共有することで、後の手戻りや混乱を防ぎます。

目標の具体化は、プロジェクトメンバーのモチベーション向上や、PDCAサイクルの活用などにも役立ちます。

現状システムの徹底的な分析と可視化

アセスメントで明らかになった課題をさらに深掘りし、システムの依存関係やデータフローを徹底的に分析します。
特にブラックボックス化している部分を可視化することで、改修による影響範囲の正確な予測が可能です。

分析と可視化は、モダナイゼーションを成功させるための大切な土台となるため、徹底して実施しましょう。

最適なモダナイゼーション手法の選択

システムの課題やビジネス目標に応じて、前述した5つの手法から最適なものを選択します。
単一の手法に固執するのではなく「この部分はリホストし、あの部分はリライトする」といったように、複数の手法を組み合わせることも有効です。

最適なモダナイゼーションの手法を選択する際に迷った場合は、ベンダーに相談するのも有効な方法です。
経験則を踏まえたアドバイスにより、適したアプローチの発見につながる可能性があります。

段階的なアプローチとPoC(概念実証)の実施

大規模なシステムを一度に変更するのはリスクが大きいため、優先度の高い領域から段階的に進めるのが賢明です。
また、本格的な開発に着手する前に、小規模な実証実験であるPoCを行うことを推奨します。

用語意味
PoC(Proof of Concept)概念実証。
新しい技術やアイデアが実現可能かどうかを検証するために行う、小規模な試行プロジェクト。

PoCによって技術的な実現可能性や投資対効果を事前に検証し、リスクを低減できます。

ビジネス部門との連携と継続的な改善

モダナイゼーションは、IT部門だけのプロジェクトではありません。
システムの利用者であるビジネス部門と密に連携し、現場のニーズを正確に反映させることが成功の鍵です。

また、一度で完成形を目指すのではなく、リリース後も継続的に改善を続ける姿勢が求められます。
ビジネス部門の意見を収集し、現場と経営が一体となって取り組みを進めていくことが重要です。

適切なベンダー選び

社内リソースだけでモダナイゼーションを完遂するのは困難な場合が多く、専門的な知見を持つ外部ベンダーとの協力が不可欠です。
ベンダーを選定する際は、価格だけでなく、技術力や実績、コミュニケーション能力などを総合的に評価しましょう。

選定基準確認すべき内容
実績・専門性自社の業界やシステムに近いモダナイゼーションの実績があるか。
技術力レガシー技術と最新技術の両方に精通しているか。
コミュニケーション自社のビジネス課題を深く理解し、円滑な意思疎通が図れるか。
サポート体制プロジェクト完了後も継続的なサポートが期待できるか。

ビジネス成長を加速させるためのモダナイゼーション戦略

モダナイゼーションは、単なるコスト削減やリスク回避を目的とした守りのIT投資ではありません。
企業の競争力を高め、ビジネス成長を加速させるための攻めのIT投資と捉えるべきです。

アジリティ向上|変化に強いビジネス基盤の構築

現代社会では、顧客ニーズの激しい変化に加えて、ビジネス環境も刻々と変化を遂げています。

モダナイゼーションによってシステムが柔軟になることで、ビジネス環境の変化に対するアジリティが向上します。
市場のニーズに応じて新サービスを迅速に投入できるようになり、競合他社に対する優位性を確立できます。

コスト削減|運用効率化とリソース最適化

レガシーシステムの維持にかかっていた高額なコストと人的リソースを削減できます。
そして、そこで創出された余力をデータ分析や新規事業開発といった、より付加価値の高い戦略的な領域へ再投資することが可能です。

新規ビジネス創出|デジタル技術を活用したイノベーション

最新のIT基盤は、AI・IoT・クラウドといったデジタル技術との親和性が高いという特長があります。
これらの先進技術を既存のビジネスと組み合わせることで、これまで不可能だった新しいサービスやビジネスモデルの創出が期待できます。

データ活用|ビジネス意思決定の精度向上

ビッグデータは、経営戦略を立てるうえで重要な役割を果たしています。
しかし、レガシーシステムが抱えるデータは各所に分散し、サイロ化しているのが現状です。

レガシーシステムでは、データが各所に分散しサイロ化していましたが、モダナイゼーションによってこれらのデータを統合し、一元的に管理できるようになります。
これにより、全社横断的なデータ分析が可能となり、経営層はより正確なデータに基づいて迅速に意思決定できるようになります。

まとめ:レガシーシステムのモダナイゼーションで未来を切り開こう

本記事では、レガシーシステムのモダナイゼーションの必要性・具体的な手法・成功のポイントまでを網羅的に解説しました。
モダナイゼーションは、決して簡単な道のりではありませんが、企業の持続的な成長のためには避けて通れない重要な経営課題です。

古いシステムの制約から脱却し、ビジネスの変化に柔軟に対応できる強いIT基盤を構築することが、不確実な時代を勝ち抜く第一歩となるでしょう。
まずは自社のシステムの現状を把握するために、アセスメントから着手することをおすすめします。

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この記事を書いた人
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