オフショアを活用したSaaS開発|メリットや開発の進め方を解説
こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
近年、提供されるソフトウェアの多くが、従来のインストール型からSaaS型へ移行しています。
従来からソフトウェアを提供してきたベンダーはもちろん、ユーザー側企業の中にも独自の業務ノウハウを活かして構築したソフトウェアをSaaSの形態で提供しているケースが見られます。
自社の業務ノウハウを活かして、これからSaaS開発に取り組もうと考えている企業も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、SaaS開発を効率的に進めるため、オフショアを活用してSaaSを開発するメリット、オフショアを活用する際の契約形態、SaaS開発の進め方などについて解説します。
これから自社でSaaSビジネスを立ち上げたい方は、ぜひとも本記事を参考にしてください。
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SaaSとは
SaaS(サース)とはSoftware as a Serviceの頭文字を取った略語です。
インターネットを使用してクラウド上のソフトウェアを利用できるサービスを指します。
自前で構築したシステムとは違い、インターネットにアクセスする環境があればいつでもどこでも利用できるのが特徴です。
GmailやGoogleカレンダー、Microsoft365などが代表的なSaaSとして挙げられるでしょう。
SaaSは一般的にサブスクリプション型のサービスとして提供されることが多く、高額な初期費用がかからないため導入のハードルが低いことがメリットです。
また、自前のサーバーを持つ必要がないため、OSアップデートが不要など、運用管理の面でも優れています。
近年のSaaS開発の動向
SaaS開発の動向は近年どうなっているのでしょうか。
本章では、SaaSビジネスの市場規模、SaaSが注目される理由について見ていきます。
SaaSビジネスの市場規模
富士キメラ総研によると、SaaSビジネスの市場規模は2021年時点で9260億円でした。
2026年には1兆681億円まで拡大すると推計されています。
また、総務省が発表した『令和3年通信利用動向調査ポイント』によると、クラウドコンピューティングサービスを導入している企業の割合は70.4%と7割を超えました。
場所や機器を選ばないなどのメリットが認識され、導入企業の88.2%がクラウドコンピューティングの導入効果があったとしています。
参考:『令和3年通信利用動向調査ポイント』(総務省)
SaaS市場の拡大を後押ししている要因としては、新型コロナウィルス感染症の影響による在宅勤務の普及が挙げられるでしょう。
在宅勤務の環境整備の一環として、システムのクラウド移行が推進されたのをきっかけに、SaaSなどのクラウドを活用した技術が急速に普及しました。
SaaSが注目される理由
SaaSが注目される理由は、ひとことで言うと導入の手軽さにあると言えるでしょう。
すなわち、環境構築面の手軽さと、導入費用面の手軽さです。
環境構築面では、自前のサーバーを導入してアプリケーションをインストールするといった手間がありません。
自前で開発しなくても高機能なアプリケーションを簡単に利用できます。
導入費用面では、サーバーの購入やアプリケーションの開発費用がかかりません。
SaaSはサブスクリプション型の料金モデルを導入しているケースが多く、月額や年額の利用料金が設定されているため、多額の初期費用をかけずに導入できます。
また、サーバーのOSアップデートなどのメンテナンス作業は提供側で実施してくれるため、運用負荷も軽減できます。
SaaS開発のオフショアアウトソーシング
前述してきたように、SaaSビジネスは注目を集め、市場規模も拡大の一途をたどっています。
そのため、SaaSビジネスに参入する企業も増加傾向です。
しかし、前述のような環境構築や導入費用のメリットを利用者に与えるために、SaaS事業者としては多額の初期投資が必要です。
そこで、SaaS開発のコスト削減や開発の短期化が期待できるオフショアアウトソーシングが注目されています。
オフショアアウトソーシングによるSaaS開発については次章以降で詳しく見ていきましょう。
オフショアでSaaS開発するメリット
前章でも少し触れたように、オフショアを利用したSaaS開発にはいくつかのメリットがあります。
本章では、オフショアでSaaS開発するメリットについて見ていきましょう。
開発コスト削減
オフショア開発の大きなメリットは開発コストが削減できることでしょう。
ソフトウェア開発にかかるコストとしては人件費が大半を占めます。
そのため、開発規模が大きくなるとそれだけ人件費も高額になってしまいます。
近年、オフショア開発で利用される東南アジア諸国では物価が安く、技術レベルの高いエンジニアでも人件費が日本国内より安価です。
国内でエンジニアを雇うのと比較すると、人件費を半分程度まで抑えられる場合もあります。
優秀なエンジニアを確保できる
日本国内では技術レベルの高いエンジニアが常に不足している状態です。
そのため、SaaS開発のように継続的に改善が求められる開発では、なかなか思うように人材を確保できないのが現状ではないでしょうか。
オフショア開発を利用すれば、海外の優秀な人材を確保できるため、人材不足に悩まされることが減るでしょう。
短期開発が可能
規模の大きいSaaS開発を実施する場合、開発工程で優秀なエンジニアを多数確保できれば短期開発が可能でしょう。
要件定義など上流工程ではあまり効果的ではありませんが、プログラミングの工程ではエンジニアリソースによって開発期間を大幅に短縮できる可能性が高くなります。
サービス開始後の保守体制を維持できる
SaaS開発は、サービスを提供して運用を開始してからがスタートです。
提供したサービスをユーザーに利用してもらいながら、フィードバックを受けて機能を改善したり、不具合を修正したりといった保守作業が続きます。
そのため、サービスを開始してからも保守体制を維持しておくことが求められるでしょう。
サービス開始後も引き続き保守体制を維持するのは、オフショアを活用すれば比較的容易です。
オフショアでSaaS開発する際の契約形態
オフショア開発を利用する場合、契約形態がいくつか考えられます。
本章では、オフショアでSaaSを開発する際の契約形態について解説します。
発注型
発注型は、開発案件を一括で発注する形態で、請負契約を締結します。
受注側は依頼された成果物を、契約期間内に完成させる責任を負う契約形態です。
契約した期間、金額で開発を依頼できるため、スケジュールやコストの管理がしやすいのが特徴です。
ただし、途中の仕様変更が難しく、場合によっては仕様変更による追加コストがかかります。
常駐型
常駐型は、開発担当に任命されたエンジニア又は開発チームが、発注側企業内に常駐して作業する体制です。
契約形態は準委任契約です。
発注側企業の裁量で開発チームに作業を依頼できるため、チームメンバーを直接管理でき、作業内容も柔軟に指示できます。
ただし、発注側企業の責任でチームメンバーの作業をコントロールしなくてはいけないため、発注側にマネジメント能力が必要です。
ラボ型
ラボ型とは、発注側企業が必要とするスキルを持った専属のエンジニアチームを編成して開発する形態です。
プロジェクトが完了すると開発チームが解散する請負契約とは異なり、半年や1年といった期間単位でリソースを確保するモデルで、契約期間内は専属チーム内で自由に開発を進められます。
契約形態は準委任契約です。
そのため、受注側に製品の完成責任はありません。
ラボ型のメリットは、必要な期間に必要な人材を確保できること。
また、請負契約とは違い、仕様変更に柔軟に対応できることでしょう。
混合型
混合型とは、ラボ型に発注側企業のマネージャーやエンジニアを加えてチーム体制を組む方式です。
チーム体制を柔軟に変更し、最終的には体制を社内に移管します。
初期開発ではオフショアに任せ、最終的には社内にノウハウを継承して内製化に移行したい場合には有効でしょう。
SaaS開発の進め方
本章では、実際にSaaSを開発する際の進め方について解説します。
ヒアリング・要件定義
まず、開発するSaaSの要件を定義します。
要件を定義するためには、開発するSaaSの機能がどのような業務で利用されるか、どのような課題を解決すべきかを知る必要があるでしょう。
そのために対象の業務分野に精通した人や、顧客になり得る人を対象にヒアリングを行い、ヒアリング内容をもとに要件定義をおこないます。
プロトタイプ作成
要件定義の内容をもとに、簡単なプロトタイプを作成します。
作成したプロトタイプは顧客候補となる人に実際に利用してもらい、使い勝手などのフィードバックをもらいましょう。
フィードバックの内容をもとにプロトタイプをブラッシュアップし、再度利用してもらうサイクルを繰り返しながら製品の仕様を固めます。
本格開発
仕様が決まったら実際の開発に着手します。
ここでいう開発とは、決まった正式仕様にもとづく設計から製造・テストの工程が対象です。
プロトタイプでは主に、ユーザーの使い勝手に関する部分に絞り込んで試作を進めます。
しかし、本格開発ではそれだけではなくシステムを管理する機能や、ユーザーの利用状況を把握するための機能など、サービスを運用する際に必要となる機能の設計・開発も必要です。
プロトタイプ作成から本格開発にかけて、オフショアの開発チームに参画してもらえば短期開発が可能になるでしょう。
環境構築
開発したSaaSの機能を稼働させる環境を構築します。
想定するサービスの利用者数によって必要な環境が異なるため、ビジネスとして獲得したい利用者数を踏まえたキャパシティ計画を事前に立てておきましょう。
リリース
開発が終われば、いよいよサービスとしてのリリースです。
開発の流れを解説するのが目的のため、本章では触れませんでしたが、開発プロセスの進行と並行して提供するサービスのプロモーション活動も実施すべきでしょう。
できればサービスをリリースしたらすぐに、多くの人が利用してくれる状態にしておきたいものです。
利用者が多いほど、提供したサービスに対して多くのフィードバックが得られます。
運用・保守
SaaSはリリースして終わりではなく、ここからが始まりです。
ユーザーの満足を得るために、運用の中でシステムからさまざまなデータを収集・分析して改善につなげます。
既存機能をブラッシュアップしたり、新規機能を追加したりするためには保守の予算と体制が必要になるため、計画段階から保守の予算と体制を検討しておきましょう。
オフショア開発でラボ型を採り入れると、運用・保守体制への移行もスムーズです。
オフショアを活用して効率的なSaaS開発と安定した保守体制を
SaaSビジネスの市場規模は今後、ますます拡大する傾向が見えてきています。
しかし、ビジネスに参入するにはSaaSを提供する側の企業が多額の先行投資をしなければなりません。
いかにコストを抑えながらSaaS開発に取り組み、ビジネスに参入するかが大きな課題の1つとなるでしょう。
また、SaaSビジネスはサービスの提供を開始してからが始まりです。
SaaS開発だけで終わらせず、運用を開始してからの保守体制をいかに維持していくかも重要な課題と言えるでしょう。
これらの課題に適切な対応をする上で、オフショアの活用は有効な手段です。
効率的なSaaS開発と、安定した保守体制を構築するために、ぜひオフショアの活用をご検討ください。