ITにおけるサービス品質向上とは?品質管理のポイントと対策を解説

最終更新日:2023.12.04
DX・システム開発
Wakka Inc. メディア編集部
ITにおけるサービス品質向上とは?品質管理のポイントと対策を解説
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こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。

自社サービスを提供する会社にとって、ITサービス品質を向上させることは必要不可欠です。
しかし、ITサービス品質の向上と言っても、提供者側の視点、利用者側の視点があり意識的に使い分けることが重要です。

では、ITサービスとしての十分な品質を確保し、向上させていくためにはどうすれば良いのでしょうか。
そこで本記事では、

  • ITにおける品質の定義
  • ITサービスの品質向上とは何か
  • ITサービスの品質を向上させるためのポイントと具体例

などについて詳しく解説します。

ぜひ本記事を、ITサービスの品質向上のためにお役立てください。

目次

ITにおける品質とは

サービス品質について解説する前に本章ではまず、ITにおける品質とは何を指すのかを見ておきましょう。

品質の要素と種類

品質とひとことで言っても、複数の切り口でさまざまな定義が存在します。
品質の種類で分類した場合、一般的には次の3種類になるでしょう。

  • プロダクト品質・・・ソフトウェア製品が仕様どおりに正しく動作すること
  • プロセス品質・・・プロダクト品質を保証するために必要な、再現性のあるプロセスを構築していること
  • サービス品質・・・ユーザーの要求を満たし、サービスとして十分な価値を提供していること

また、ソフトウェア開発において、品質保証の観点で言及される品質の要素とはおおよそ次の4つに分類できます。

  • 機能性品質・・・ 必要な機能、使いやすさ、操作のわかりやすさなど
  • 信頼性品質・・・ バグなどによる誤動作の頻度、障害からの回復性、安全性
  • 性能品質・・・ 処理性能、システム資源の効率使用
  • 製造技術品質・・・ 保守性、移植性

上記の分類は、ソフトウェア開発プロジェクトで製品の品質を保証する際に重要視されますが、品質の種類で言うと大部分がプロダクト品質に該当するでしょう。

機能性品質の一部の要素としてサービス品質に該当する項目が含まれますが、従来のソフトウェア開発における品質の定義だけでは、十分なサービス品質を保証できない可能性があります。

当たり前品質と魅力的品質

品質の要素や種類ではなく、品質レベルの切り口で分類したものが当たり前品質と魅力的品質です。

当たり前品質とは、備わっていて当たり前の品質。
備わっていて当たり前であるため、ユーザーは品質について特に意識しません。
しかし、品質が不十分な場合は欠陥とみなされ、ユーザーの不満につながります。

一方、魅力的品質とはユーザーの要求を満たし、あるいはユーザーの期待を越えて価値を提供する品質です。
当たり前品質が備わっていれば、魅力的品質が不足していてもユーザーの不満にはつながりません。

当たり前品質がマイナスからゼロに向かう品質レベルとすれば、魅力的品質はゼロからプラスに向かう品質レベルと言えるでしょう。

サービス品質向上とは

前章でITにおける品質の定義を確認し、サービス品質の位置づけを明確にしました。
本章では、サービス品質とはどのようなもので、サービス品質向上とは何が達成されることなのか、具体的に解説します。

サービス品質の向上とは、

  • 当たり前品質を満たせていない状態から満たせている状態に引き上げる
  • 魅力的品質を満たせていない状態から満たせている状態に引き上げる

この2つのアプローチがユーザーにとってのサービス価値を高める活動と言えるでしょう。

では、サービス品質が向上した状態とは、何が達成された状態でしょうか。
次項で具体的に見ていきましょう。

業務の品質向上

サービス品質の向上とは、1つは業務の品質向上が達成された状態です。

提供されたサービスを利用してユーザーは業務を遂行します。
魅力的品質を備えたサービスが提供された場合、その品質によってユーザーの業務は効率化され、業務自体の品質向上も期待できるでしょう。

例えば、

  • レポートの作成が自動化されて業務が省力化された
  • 適切なデータチェック機能の導入によってヒューマンエラーが減った
  • ヒューマンエラーや障害の減少によって業務の遅延がなくなった

など、提供されたサービスの品質が向上すれば、業務の品質向上にもつながります。

自社製品・サービスの品質向上

もう1つは、自社製品・サービスの品質向上が達成された状態です。
業務の品質が向上すれば、自社の製品やサービスの品質も向上が期待できるでしょう。

例えば、従来は業務においてヒューマンエラーが多く、製品・サービスを提供するお客様に対しても影響を与えていたとします。
業務の品質向上が達成され、ヒューマンエラーがなくなれば、自社が提供する製品・サービスの品質も向上し、お客様の満足度・信頼度も向上するでしょう。

ITサービスの品質管理プロセス

サービス品質向上のためには、システムの開発プロセスにおいてITサービスの品質管理プロセスを実施する必要があるでしょう。
本章では、ITサービスの品質向上のための品質管理プロセスについて解説します。

なお、本記事では旧来のウォーターフォール型(※1)のような開発プロセスではなく、リーンソフトウェア開発(※2)のような仮説検証型の開発プロセスを導入するのを前提に進めていきます。
なぜなら、ITサービスの品質向上のためにはユーザーのニーズを分析し、仮説・検証をスピーディーに繰り返しながらサービスを改善してユーザーの真のニーズに近づけていくアプローチが効果的だからです。

※1:ウォーターフォール型の開発プロセスとは、開発工程を要件定義、設計、製造、テストの順番に実施し、必ず前の工程が終わってから次の工程に着手する手法。工程の順番を遵守するため手戻りが起きにくいが、一度決まった仕様を柔軟に変更できないのがデメリット。

※2:リーンソフトウェア開発とは、無駄のないプロセスで必要なものを必要なだけスピーディーに提供する製造業のリーン生産方式を採り入れた考え方。必要最小限の機能を実装したMVPと呼ばれる試作品を構築し、ユーザーに試用してもらいながらフィードバックを得て改善を繰り返す手法が用いられる。

サービスの品質目標を設定して達成計画を立てる

開発プロセスにおいてITサービスの品質を管理するためには、まずサービスの品質目標を設定します。
サービス品質目標は開発者側の視点ではなく、あくまでユーザー視点で設定されるべきです。

例えば、「提供するサービスを利用してユーザーの業務がどのように改善され、品質が向上するか」などはサービスの品質目標の候補に挙げられるでしょう。

もちろん、ユーザーの業務やビジネスに変化があった場合は、素早く対応できるよう目標を見直すことが必要です。
また、サービス品質目標が途中でブレないよう、サービスの開発プロセスの各段階で常に明確にして提示しておきます。

品質目標を達成できているか確認する

開発プロセスの中では、MVP(Minimum Viable Product:最小限の実用可能な製品)と呼ばれる試作品を用いてユーザーのフィードバックを得ながら改善を繰り返します。
同様に、品質管理プロセスも開発プロセスのサイクルの中で品質管理・品質保証・品質改善の活動を繰り返すことでユーザーの期待するサービス品質に到達できるでしょう。

品質管理プロセスでは、開発プロセスの繰り返しサイクルの中で、サービスの品質が品質目標に到達しているかを確認し、十分な品質に到達したら次の段階へ移行する判断をします。

計画に沿った品質保証活動を実施する

品質保証活動とは、サービスを製品としてユーザーに提供する際に、計画した品質を約束するための活動です。
開発プロセスにおいて実施するレビュー、デバッグ、テストがこの活動にあたります。

最終製品を提供するときだけではなく、MVPとして試作品をユーザーに試用してもらう際にも最終製品に準じた形で品質保証活動が必要です。

品質に問題のある点を改善する

ユーザーに試作品を試してみてもらった結果、得られたフィードバックをもとにサービスを評価し、品質の改善を実施します。
品質改善活動は、開発プロセスで仮説検証を繰り返す中だけで行われるものではありません。

最終製品をユーザーに提供したあとも、サービスを提供し続ける限り品質改善活動は続きます。
なぜなら、サービス提供者が品質を改善すればするほど、ユーザーの期待値は高くなるからです。

サービス品質向上のポイント

本章ではサービス品質の向上に向けて取り組む際、成功させるために特に注意しておきたいポイントを解説します。

ユーザーの視点を大切にする

サービス品質とはユーザーの要求を満たし、サービスとして十分な価値を提供することです。
つまり、提供するサービスに対してユーザーが価値を感じているかどうかがサービス品質を左右します。

その意味で、ユーザーの視点を大切にして、どのようなサービスを提供すればユーザーが価値を感じてくれるかをしっかり考えるのが大切と言えるでしょう。

サービス品質の目標を明確にする

サービス品質の目標を明確に定めることも品質向上の取り組みでは重要です。
品質向上を達成できたかどうかは、サービス品質の目標が明確になっていてはじめて判断できるからです。

そもそも、サービス品質の目標が明確でないと、何を目指して取り組んで良いのかが不明確ではないでしょうか。

ただ、目標が明確に定められていても、目標自体がずれていてはもちろんサービス品質向上にはつながりません。
そのため、サービス品質の目標が明確であるとともに、目標によって何が達成されるかが明確になっているか注意しておきましょう。

例えば、ただ単に、

  • ユーザーの使い勝手が向上する
  • ヒューマンエラーを防げる

といった直接的な改善効果を目標にするのではなく、効果が得られることでユーザーの業務や自社の商品・サービスがどのように改善されるか、という点まで踏み込んで目標を設定してみてください。

運用データやユーザーのフィードバックを収集して継続的に改善する

サービスは一度提供して終わりではありません。
提供したサービスをユーザーが利用し、サービス品質の目標達成に近づいていっているか、測定して評価する必要があります。

サービスの運用で得られたデータや、ユーザーからのフィードバックを収集し、品質改善の取り組みを継続していかなければいけません。
なぜなら、一度サービスを提供しただけで想定どおりサービス品質の目標を達成できるとは限らないからです。
品質改善の取り組みを継続し、設定したサービス品質の目標に少しずつでも近づけていくのが大切だと言えるでしょう。

また、前述したように品質改善をすればするほど、ユーザーの期待値は高くなるため、サービスを提供し続ける限り改善活動に終わりはありません。
つまり、提供するITサービスが増えると、増えた分だけ継続的な改善に取り組むリソースが必要です。

しかし、自社でそれだけのIT人材を確保し続けるのが難しい場合もあるのではないでしょうか。
その場合は、システム開発会社など外部のリソースを有効活用することも視野に入れて検討してみてはいかがでしょうか。

サービス品質向上のための具体的な取り組み例

本章では、サービス品質の向上に役立つ具体的な取り組み例を紹介します。

提供するサービスレベルを定義する

提供するサービスのレベルを定義しておき、定義したサービスレベルを常にクリアすることをユーザーと約束しておく方法です。
これはSLA(Service Level Agreement)と呼ばれるもので、提供するサービスレベルをユーザーとあらかじめ約束しておくことで、一定品質を確実に保証するための仕組みを必然的に検討するでしょう。

具体的なサービスレベルとは、

  • 画面のレスポンスは3秒以内であること
  • 夜間バッチ処理は翌朝8時のオンライン開始までに必ず終わっていること
  • 24時間365日、無停止でサービスが提供できること
  • システム停止を伴う障害が発生した場合は、翌営業日までに回復すること

例えばこのような項目を定義します。
さらに、業務を遂行する上で必要な条件があれば、条件をクリアするための内容も定義すべきでしょう。

このように、サービスレベルを定義してユーザーと約束しておくことが、サービス品質の向上に役立ちます。

開発プロセスで仮説・検証を繰り返す

開発プロセスの中で仮説と検証を繰り返しながら改善を重ねることで、サービス品質をユーザーの期待レベルまで引き上げられます。
特に、検証のプロセスにおいて試作品をユーザーに使ってもらい、いかに有用なフィードバックを得るかが重要なポイントです。

仮説と検証をいくら繰り返しても、ユーザーの期待レベルに近づいていっていないと意味がありません。
ユーザーの期待レベルに近づいているかを判断するためには、やはりユーザーから得られるフィードバックを重視すべきでしょう。

ユーザーにアンケートを実施してフィードバックを得る

開発プロセスの中でユーザーのフィードバックを得るほかに、サービスを提供して本番運用を開始してからユーザーにアンケートを実施してフィードバックを得る方法も効果的です。
アンケートの回答から得られたフィードバックをもとに、提供したサービスを評価し、今後のサービス改善に向けた取り組みにつなげていきましょう。

また、アンケートではなかなか深掘りした内容を聞けないため、より深く突っ込んだフィードバックを得たい場合は、ユーザーを選定して個別にヒアリングするのも効果的です。

ポイントを押さえた取り組みで継続的な品質向上を目指しましょう

企業がビジネスの成長を目指して進んでいる限り、ITサービスの品質向上にも終わりはありません。
なぜなら、ビジネスが成長すればITに求められる役割は変わり、求められるサービスの品質も変わってくるからです。

ITサービスの提供者は常にユーザー視点でビジネスの動向に寄り添い、どのようなサービス品質が求められているかを把握しなければなりません。
ぜひ本記事を参考に、ポイントを押さえた効果的な取り組みを実施し、継続的なサービス品質の向上を目指してみてください。

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