エクセルを使った生産管理の方法とは?運用ポイントと代替システムを解説
こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
生産工程をエクセルで管理する企業も多いでしょう。追加コストがかからないうえに、使い慣れたソフトということもあり現場に定着しやすい点が魅力です。
しかし、エクセルでの管理にはメリットだけでなく、デメリットも存在します。生産管理は製造業にとって根幹を担う業務のため、場合によっては企業の生産性・収益性に影響を及ぼす恐れもあります。
本記事では、生産管理をエクセルで行うメリット・デメリットを踏まえつつ、効率化のポイント・代替システムを紹介します。
生産管理をエクセルで行うメリット
実際にエクセルで生産管理を行うと、どのようなメリットがあるのでしょうか。エクセルを活用した生産管理には、次のようなメリットがあります。
- システムを開発するより低コストで導入できる
- 教育・学習の負担が低い
- マクロで入力作業の自動が可能
- 無料で使えるエクセルテンプレートが豊富
1つずつ解説します。
システムを開発するより低コストで導入できる
生産管理システムの導入費用はエクセルよりも高額です。
エクセルであれば、多くのパソコンに標準搭載されており、追加のコストが発生せずに利用できます。
もし、ライセンスの追加が発生しても、1人あたり月額750円(一般法人向け最安プラン)とコストを抑えられます。
参考:Microsoft
低コストで利用できるのは、エクセルならではの魅力です。
教育・学習の負担が低い
エクセルの生産管理では教育や学習の負担が少ないです。
理由は下記の通りです。
- すでに導入している場合は操作に慣れているため、学習抵抗が少ない
- エクセルは全世界的に利用されているため、ノウハウや活用事例が豊富にある
例えば、インターネットや書籍を活用すれば、生産管理に使う関数や自動化のコツなど、有益な情報が入手できます。ノウハウが豊富で即座に情報へアクセスできるため、学習コストを低く抑えられます。
マクロで入力作業の自動化が可能
エクセルのマクロの機能やVBAを利用すれば、データ処理や関数実行などを自動化できます。
例えば、入出庫管理表に数値を入力すれば、それ以外の記入日時や在庫の数、状況が自動で更新されるように設定可能です。マクロを正しく設定できれば、データ入力の労力を軽減できます。
無料で使えるエクセルテンプレートが豊富
生産管理に必要な管理表を作成するのに、適切な関数やマクロを1から考えるのは手間がかかります。
しかし、エクセルの場合はテンプレートが豊富にあり、ダウンロードすれば作成の時間を削減できます。
テンプレートの種類も多いため、自社の生産方法に合っているものを見つけやすいでしょう。
生産管理をエクセルで行うデメリット
生産管理をエクセルで行うデメリットは次の4つがあります。
- 業務効率の低下を招く恐れがある
- 管理業務が属人化しやすい
- 工場・部署間で情報のタイムラグが生じる
- 必要データの収集に時間がかかる
1つずつ順に紹介します。
業務効率の低下を招く恐れがある
生産管理をエクセルで行っていると、業務効率の低下を招く恐れがあります。
業務の効率を低下させる代表的な例は以下の通りです。
- 同時編集ができない
- 履歴を管理できない
- ファイルが開けなくなるときがある
- ファイルデータが処理速度が低下する
- VBAはバージョンごとに修正が必要になる
エクセルを共通のサーバーで管理していても、誰かが作業している場合は、同じファイルを開けません。
そのため複数人で同時編集ができず、リアルタイムで進捗や状況が共有できないのです。
そして、ファイルの更新を行った際に履歴を管理できないため、万が一の場合に操作を振り替えられずデータの喪失につながる可能性があります。
いずれも作業の順番やデータ復旧の待ち時間が発生してタイムロスにつながるため、対応が必要です。
管理業務が属人化しやすい
管理業務が特定の人に属人化しやすくなるのも、エクセルの生産管理で発生するデメリットです。
自動化するために複雑なマクロやVBAを組んだものの、更新や修正は1人の担当者しか行えないといったケースも少なくありません。
通常、エクセルのVBA・マクロを作成する際は、パソコン作業に詳しい従業員に任せることが多いでしょう。
しかし、仕組みやプログラムの設計を作成者のみしか把握しておらず、他の従業員が対応できない事象につながるのです。
業務の属人化は、作業負担の偏りやノウハウが蓄積しないなどの問題を引き起こす恐れがあります。
工場・部署間で情報のタイムラグが生じる
先述したようにエクセルは、複数人でのリアルタイムな情報共有が難しいです。
そのため、工場間・部署間で情報のタイムラグが生じます。
情報共有にタイムラグがあると、発注遅れや作業の手戻りなどにつながり、作業効率の低下・利益減少などを招きます。
エクセルで生産管理を行う際は、全社で情報を円滑に共有できるように、連携体制を整えておきましょう。
必要データの収集に時間がかかる
エクセルの生産管理には、必要データの収集に時間がかかるデメリットがあります。
エクセルで管理するデータは、担当者のパソコンや共有フォルダーに保存されるケースが一般的です。
必要情報を集める際は、複数のファイルを開いたり、担当者に該当ファイルを送信してもらったりと、多くの手間がかかります。
また、管理するデータ量が膨大になるとエクセルの処理速度が低下するため、データの共有に時間を要します。
そのため、データ共有を円滑化し業務を効率化するためにも、従来の管理体制を改善することが大切です。
エクセルで生産管理を行う方法
生産管理ではさまざまな業務を管理しますが、工程管理は比較的重要な位置付けです。
円滑な生産管理を実施するには、生産計画表の作成が欠かせません。
エクセルで工程管理表を作成して、生産管理を行う方法を解説します。
ガントチャートの活用
ガントチャートは生産プロセスの進捗状況を可視化するのに役立つ管理表です。
縦軸には各工程、横軸には時間や日時を記入し、予定や進捗状況を横棒で表します。
タスクや工程の開始日と終了日をタイムライン上に明確に示すことで、作業の進捗状況を一目で把握できます。
全体の流れを共有しやすく、「誰が」「何を」「いつまでに」対応するかがわかるため、現場の混乱を防げるでしょう。
しかし、各工程の細かな内容が把握しにくいため、詳細を共有する際は別の方法を実施しなければなりません。
バーチャート工程表の利用
バーチャート工程表は各作業のスケジュールを一覧にした表です。
縦軸に工程・作業項目、横軸に日程を記入し、各作業の開始と終わりが把握可能です。
ガントチャートと似ていますが、横軸に進捗率がない点が異なります。
作成が簡単で、予定が把握しやすいメリットがあります。
一方で作業が複雑になる場合は、各工程の関連性が把握しにくく、後工程に影響が出る恐れがあるのがデメリットです。
工程管理曲線を使用
工程管理曲線は全体計画と実際の進捗を比較し、進行状況を分析する表です。
縦軸に進捗率を入力し、横軸には日付を設定します。そして、予定工程曲線・上方下方の許容限界曲線を明示し、工程をどこまで早めても大丈夫か、作業遅れの許容日程を共有します。
全体計画と実績のズレを把握するのに役立ち、進捗の逸脱に対する早期の対応が可能です。
しかし、個別の工程の進捗を把握するのには不向きなのと、作成の手間が多少発生するのがデメリットです。
グラフ式工程表の活用
グラフ式工程表は進捗率と納期や日程を比較する管理表です。
縦軸には進捗率、横軸が日数を設定します。全体の計画を細分化し、日程ごとの進捗を確認可能です。
作業予定日と進捗率が把握でき、計画の修正に役立ちます。
一方で、膨大な量の工程がある場合、情報量が多くなりグラフが見にくくなるデメリットがあります。
生産管理をエクセルで行う際によく使用される関数
エクセルでの生産管理には、関数の使用が欠かせません。
生産管理によく使用される関数を次の表にまとめました。
関数 | 内容 |
SUM関数 | 指定範囲内の数値を合計する関数。 週別・月別に生産数を合計したい場合に使用される。 |
AVERAGE関数 | 引数の平均(算術平均)を返す関数。 指定範囲の平均値を算出。 週別・月別の受注データの平均値を計算するために使用される。 |
WORKDAY関数 | 土日、祝日を除く稼働日を開始日から起算して、対応する稼働日を返す関数。 納品書の支払日や発送日、作業日数などを算出する際に休日を自動的に除外。 |
IF関数 | 指定した条件を満たすかどうかを判定するための関数。 目標受の注件数を達しているか、などを確認できる。 |
VLOOKUP関数 | 表データを縦方向に検索し、値が一致した行の指定範囲のデータを返す関数。 テーブルまたは範囲の内容を業ごとに検索する場合に使用する。 |
COUNTIF関数 | 指定した条件に該当するセルの数を数える関数。数値を含むセルの個数、引数リストに含まれる数値の個数をカウントする。 在庫数や担当の人数を数える際に役立つ。 |
SUMIF関数 | 特定の条件に一致したデータ、数値を合計する関数。 製品や顧客など条件ごとに数値の合計を算出したい場合に使用する。 |
それぞれを使い分けられると、作業効率や分析精度の向上につながるでしょう。
エクセルで生産管理を行うポイント
エクセルの生産管理は導入コストが抑えられる一方で、かえって効率が悪くなってしまうデメリットがあります。
効率的に運用するには、次のポイントを意識すると良いでしょう。
- 運用ルールを決める
- 定期的にバックアップをとる
- 誰が見てもわかりやすく作成する
- 業務系システムと併用して効率向上
基本的なことですが、上記を意識するだけでもエクセル管理の効率化につながります。
取り入れられそうなものがないか、ぜひご確認ください。
運用ルールを決める
運用ルールがない状態では、担当者ごとに入力データの仕様が異なり、管理表としての機能を果たせなくなる恐れがあります。
またエクセルは同時編集ができないため、細かな運用ルールを設定しなければ作業の停滞や二重入力が発生します。
そのため、ファイル管理方法や入力時間・表記方法などを決めて関係者全員に周知しましょう。
また、1度設定した運用ルールでも課題や業務の変化に合わせて修正していくことも重要です。
定期的にバックアップをとる
2つ目は定期的にバックアップをとることです。
エクセルのファイルは、まれにファイルが突然開けなくなることがあります。
そして、Webブラウザでアップロードしていたファイルを誤って削除してしまうケースも見られます。
作業実績や在庫データなど重要なデータが消失すると、損失につながるためバックアップは必ず取るようにしましょう。
誰にでもわかりやすく作成する
3つ目は誰が見てもわかりやすく作成することです。
データの記入方法が煩雑だったり、入力場所が管理されていなかったりすると、入力ミスにつながります。
例えば資材の発注数を入力する際に、資材の名前のみ羅列され写真が挿入されていなければ、資材の発注間違いが発生します。
ミスを誘発しやすい設計になっていないかを導入前にテスト運用するなどして、徹底的に確認しましょう。
業務系システムと併用して効率向上
4つ目は業務型システムと併用して効率を向上させることです。
エクセルは、膨大なデータ量に対応しにくく、システムと比較して自動化できる作業が少ないなどの課題があります。エクセルのみで生産管理を行うのは、かえって作業効率を下げる恐れがあります。
この課題を解決するには、業務系システムの活用が効果的です。
システムの利用でデータベースによる大量のデータ管理が可能になったり、各業務の連携ができたりとエクセル管理の弱みを補えるのです。
エクセル管理の課題解決には生産管理システムがおすすめ
前述でエクセルの生産管理の課題解決には、システムを併用すると良いと説明しました。
業務系システムの中でも、生産管理には生産管理システムが適しています。
エクセル管理の課題解決に生産管理システムが適している理由は以下の通りです。
- QCDの最適化を実現
- 人手作業を削減し業務を効率化
- 生産工程を可視化しトラブルへの対応力を強化
- 属人化の解消・防止
1つずつ順に紹介します。
QCDの最適化を実現
生産管理システムの導入により、QCD(Quality=品質、Cost=コスト、Delivery=納期)の最適化が見込めます。
QCDが悪化する主な要因は、部署間・工場間の情報共有がうまく機能していないことです。
例えば、製造工程の進捗を把握しないまま、タイトな納期の案件を受注したケース。
製造工程に業務負荷が集中し、ミスの発生や納期の遅延などを引き起こします。
一方、生産管理システムで生産工程の情報を一元管理できれば、上記の課題を解消できるでしょう。
なお、生産管理システムでは生産に関わるリソースをリアルタイムに可視化できるため、販売計画や生産計画のムダを抑制してコストの最適化につながります。
上記によって、QCDの最適化を実現できます。
人手作業を削減し業務を効率化
生産管理システムを導入すれば、人手作業を削減し業務を効率化できます。一部の工程を自動化できたり、作業時間を短縮できたりできるからです。
例えば、すでにデータのある入力作業や書類作成などをシステム上で自動処理できます。
さらに、過去のデータを基に、生産計画の立案が可能な製品もあります。
生産計画を一から策定する場合は、多くの時間と手間がかかりますが、実績データを活用できることで、業務を効率化できるでしょう。
生産工程を可視化しトラブルへの対応力を強化
生産管理では各部門が連携して工程を進める必要があるため、各部門が何をしているか見えないと作業の手戻りや損失につながる恐れがあります。
例えば、全体の生産工程が見えないため、営業部門が生産スケジュールを把握せず受注し、工程の見直しや納期遅れが発生するケースがあります。
上記の問題を防ぐには生産工程の見える化が必要です。
生産管理システムでは各工程を可視化できます。「いつ」「誰が」「何をする」などを全部門が把握できるため、作業の手戻りや発注ミスなどのトラブルを回避できるのです。
属人化の解消・防止
生産管理システムの導入で業務の属人化解消や防止につながり、エクセルの課題を解決できます。
エクセル管理で高度な自動化の仕組みを構築する場合、専門性の高い知識やスキルが必要です。
仕組みの運用やメンテナンスにもある程度の知識を要するため、特定の従業員のみしか対応できなくなってしまいます。
しかし生産管理システムを導入すれば、複雑な業務や手間のかかる作業を簡略化できます。
仕組みを維持するための専門知識が不要になり、属人化の解消が可能です。
エクセルやシステムで生産管理を最適化しよう
エクセルの生産管理は、アナログの管理方法よりデータの処理をスムーズに行えます。
しかし、エクセルで業務の課題を改善できる範囲には限りがあります。エクセル管理の課題を解消しないまま、運用を続けるのはコストもかかりかえって非効率です。
生産管理システムを導入すれば、エクセル管理の弱みを補えます。
少量のデータ処理や簡易の計算にはエクセルを用い、複雑な連携には生産管理システムで対応するなど、両者を使い分けて生産管理を最適化しましょう。
生産管理システムを導入するか考えている方は、実績のある企業に相談すると良いでしょう。