生産管理のMESとは?機能やメリット、おすすめのメーカーを紹介
こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
昨今の製造業界では、大量生産ではなく多品種少量生産が主流となっており、製造現場の可視化や属人化の解消が求められています。
そんな中で特に注目されているのが、MES(製造実行システム)です。
「生産性を向上させたい」「MESに興味がある」といった担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、MESについて以下の内容を解説します。
- MESの概要
- MESが備える11の機能
- 生産管理にMESを導入するメリット
- おすすめのMESパッケージ
MESがどのようなシステムなのか知りたい方や導入を検討している方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
「システム開発ハンドブックvol.2 在庫管理システム」では、生産管理を含むコストと販売機会の効率化をはかるための在庫管理について、システムの選び方や導入時の注意点などを解説しています。ぜひ、あわせてご確認ください。
自社の在庫管理を最適化したい、在庫管理についてシステム化を計画している方
ぜひ下記の資料から最適なシステムの選び方もご確認ください。
コストと販売機会の効率化をはかるための在庫管理について、システムの選び方や導入時の注意点などを解説しています。
MES(製造実行システム)とは?関連システムとの違い
MESとは「Manufacturing Execution System」の略で、製造実行システムを指します。
生産管理の中の製造工程を管理するもので、具体的には原材料や仕掛品、設備の数量や状態を把握し、製造の進捗を管理するシステムです。
近年、ライフスタイルの変化に伴って消費者のニーズが多様化しています。
大量消費を前提とした生産では、多様化するニーズに答えることが困難です。
そのため、「どの商品を、いつまでに、どの程度」生産するかを把握して生産ラインを細かく管理することが重要でしょう。
その中でMESは、製造工程一つひとつを管理できるシステムとして注目されています。
MESとLIMSの違い
LIMSとは「Laboratory Information Management System」の略で、日本語ではラボ情報管理システムとも呼ばれます。
実験室や研究室で使われるシステムで、サンプルや実験データ、実験装置のメンテナンスなどを管理して業務を効率化するシステムです。
また、ワークフローを自動化して管理することも可能です。
MESも工程を管理して生産性を高める点ではLIMSと似ていますが、MESは製造業で使われるシステムである点が異なります。
MESと生産管理システムの違い
生産管理システムとは、生産に関するデータを集計・管理して生産計画を立案するシステムです。
製造前後のプロセスを含めて、以下のような幅広い業務を管理できます。
- 生産計画
- 在庫管理
- 受注管理
- 原価管理
- 品質管理
- 購買管理
MESは生産管理の中でも特に、製造現場に特化した管理システムです。
生産管理システムとは、対象としている業務の範囲が異なります。また、MESが生産管理システムの一部であるとも言えるでしょう。
MESとERPの違い
ERPとは「Enterprise Resource Planning」の略です。
「ヒト・モノ・カネ・情報」といった資源を有効活用するための管理システムでもあります。
もともとは生産管理の手法であったMRPを企業経営に応用したもので、現在では生産や販売といった企業の基幹業務を支援するために、多くの企業で活用されています。
MESはボトムアップ型のシステムであり、各業務の担当者が日々の製造進捗を管理するために使われます。
対してERPはトップダウン型で、長期の視点で立てた生産計画を管理するシステムです。
詳しくは下記の記事で解説しています。
生産管理システムの一部であるMESの機能
MESには具体的にどのような機能があるのでしょうか。
MESの発祥は、MESA(Manufacturing Enterprise Solutions Association)と呼ばれるアメリカの団体です。
MESAが提唱した以下の11項目が、MESの基本機能とされています。
- 生産資源の割り当てと監視
- 書類管理
- 作業のスケジュール管理
- 生産ユニットの手配
- 労務管理
- 作業過程の管理
- 情報収集
- 進捗の追跡と管理
- パフォーマンス分析
- 製品クオリティの管理
- 操作点検と安全点検
参照:History of the MESA Models|MESA
それぞれ解説します。
生産資源の割り当てと監視
生産資源を監視し、適切に分配する機能です。
生産資源とは、機械や工具などの設備だけでなく作業者などの人材も含まれ、生産活動を行うための資源として管理されます。
書類管理
図面や指示書、手順書などの製造作業に必要な文書を作成し、管理する機能です。
また、製造記録の管理も行われます。
必要な書類が適切に作成・管理されているかをチェックするだけでなく、書類の運用にかかる事務作業の手間も省きます。
作業のスケジュール管理
生産計画に基づいて作業のスケジュールを立てる機能です。
勤務シフトの作成にも対応しているため、製造工程の流れを決めるだけでなく設備や作業員の配置も行えます。
生産ユニットの手配
作業スケジュールに基づいて作業を手配し、作業者に対して指示を行う機能です。
工程ごとに仕掛量を調整しながら作業を進められます。
管理者による手書きや口頭での情報共有と比べて製造に関する情報をリアルタイムで共有できるため、効率的に作業を進められるでしょう。
労務管理
作業者の作業状況を管理し、適切に仕事を割り当てる機能です。
作業スケジュールや作業者の負担などさまざまな状況をリアルタイムで把握する必要があります。
作業過程の管理
生産状況を管理し、作業者の判断や意志決定を支援する機能です。
通常時の支援だけでなく、異常が発生した際にアラートで知らせることで即座の対応が可能となります。
情報収集
作業工程の進捗状況を把握し、分析する機能です。
具体的には、「いつ、誰が、何をやったか」をデータとして収集します。
作業を行う前後に指示書に対応したQRコードをスキャンするなどの方法で管理できるでしょう。
進捗の追跡と管理
生産途中の仕掛品を追跡し、進捗状況を管理する機能です。
この機能により、次の作業の把握にもつながります。
パフォーマンス分析
過去の記録や計画と比較した作業状況を分析する機能です。
レポートの作成や出荷の予測ができるほか、データの分析によって品質管理の改善も図れます。
製品クオリティの管理
製品の検査業務を行う機能です。
生産に関するデータをリアルタイムで収集・測定・分析し、適切な品質管理を行います。
操作点検と安全点検
設備や工具などの定期メンテナンスや保全を行う機能です。
設備の停止や不良状態を事前に予防することで、スケジュールを予定通り進められます。
生産管理にMESを導入する4つのメリット
MESを導入することで、製造現場のさまざまな課題を解決できる可能性があります。
MESの導入メリットとして、以下の4つが挙げられます。
- 生産計画の実現性を向上する
- 製造コストを削減できる
- 部門間の連携がスムーズになる
- ノウハウやスキルを可視化できる
それぞれ解説します。
生産計画の実現性を向上する
MESの導入により、リアルタイムで製造工程や進捗状況をチェックできたり、現場の状況を把握できたりします。
工程管理のシステム化によって作業の無駄を省けるため、製造業務の効率化につながり、生産計画を実現できる可能性が高まるでしょう。
また、データを蓄積して分析することで品質を改善したり、均一化を図ったりすることも可能です。
作業現場におけるトラブルが発生した際も、スムーズに対応できるでしょう。
製造コストを削減できる
MESは、作業現場の状況をリアルタイムで把握でき、次の工程の予測もできるシステムです。
製造業務で発生する無駄を減らして効率化し、コストを削減できるでしょう。
例えば、設備が稼働する時間や制御にかかる時間を集計して把握すれば、トラブルが発生した際の対応の効率化が図れます。
通常の製造業務においても見過ごしやすい無駄が多いため、MESによる効率化でコストの削減が期待できるでしょう。
部門間の連携がスムーズになる
工場と事務所の情報連携は、製造業における課題とも言われています。
MESを活用すればシステム上で情報を一元管理できるため、部門間の連携がスムーズになるでしょう。
拠点が離れている場合でもリアルタイムで同じ情報を共有できます。
また、仕様や業務に変更が生じた場合でもMESがトレーサビリティを発揮します。
履歴を追跡することで仕様や業務の変更が影響を与える範囲を明確にでき、必要な情報や指示をスムーズに展開できるでしょう。
ノウハウやスキルを可視化できる
さまざまな業界で人手不足が進んでおり、製造業も例外ではありません。
ノウハウやスキルを身に付けた作業者の引退により、技術継承に手間がかかることが課題のひとつです。
MESの機能により、属人化しがちな技術を客観的なデータとして管理できます。
技術者のスキルを可視化すれば、新人の研修や教育に役立ちます。属人化しがちな作業を標準化できるため、業務全体を効率化して会社全体の利益にもつながるでしょう。
自社の在庫管理を最適化したい、在庫管理についてシステム化を計画している方
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おすすめのMESパッケージを比較
MESパッケージはさまざまな企業が提供していますが、それぞれ特徴も異なるため、導入する際は以下のポイントに注目して選ぶとよいでしょう。
- 自社の業務形態や生産方式に合わせて選ぶ
- 機能が対応している範囲で選ぶ
- データの収集や入力などの操作性で選ぶ
- サポート体制で選ぶ
本記事では以下5つのMESシステムを紹介します。導入を検討している企業の担当者はぜひ参考にしてください。
- IB-Mes
- CIMVisionLIBRA
- DELMIA Apriso
- ProManage
- FMES
IB-Mes
IB-Mesは、株式会社ユニフェイスが提供しているMESパッケージ製品です。
以下のように、製造現場で必要とされる数多くの機能が搭載されています。
- 生産進捗管理
- 品質管理
- 設備管理
- 労務管理
- 分析ツール
- 設備の保全や監視
- 構内物流
特に分析機能には力を入れており、収集したデータからヒストグラムや相関図を作成して多角的な分析が活用できます。簡単な操作で表示サイズや配置も変えられるため、ニーズに合わせて利用しやすいでしょう。
また、コンサルタントによるものづくり補助金やIT導入補助金、中小企業投資促進税制の利用サポートも行っています。システム利用料金を節約しやすいシステムとも言えるでしょう。
参照:IB-Mes
CIMVisionLIBRA
CIMVisionLIBRAは、横河電機株式会社が提供しているMESパッケージです。
食品製造工場を対象としたMESで、計量や製造、充填、包装など、入荷から出荷まで工場全体の工程をシステム化します。
造品目やレシピに合わせて工程を柔軟に構成でき、変更にも対応できます。
シンプルな画面レイアウトになっているため、システムを使い慣れていない方でも扱いやすいでしょう。
横河電機株式会社はほかにも、医薬品製造工場や物流センター、医薬品や半導体を扱う工場などさまざまな業種に対応したMESを提供しています。自社の業種に適したシステムを利用するとよいでしょう。
DELMIA Apriso
DELMIA Aprisoは、株式会社ダッソー・システムズが提供しているMESです。
グローバルサプライチェーンに対応しており、製造を世界規模で管理できます。海外に拠点を構える企業にもおすすめのシステムと言えるでしょう。
また、在庫管理システムDELMIA Apriso Warehouseとの連携でジャストインタイムの実現も図れます。
ProManage
ProManageは、株式会社伊東商会が提供しているMESです。以下のような機能を取捨選択して必要なタイミングで導入できます。
- オンラインリアルタイム設備監視
- サイクルタイム監視
- 稼働率監視・分析
- 設備停止理由監視・分析
- タブレットによる情報入力
- 品質管理
- オペレータースキル管理
- 文書管理
- メンテナンス管理
リアルタイムで正確なデータを収集して見える化できるため、製造現場での適切な対処が可能となるでしょう。
徐々に機能を増やすことも可能なため、柔軟にシステムを利用できる点も魅力です。
参照:ProManage
FMES
FMESは、IT導入支援事業者として採択されている株式会社ファイブモーション・システムズが提供するMESです。
ブラウザで管理画面を確認できるためテレワークにも対応し、別の拠点からでも作業現場の状況を確認できます。
また、以下のように豊富な機能を搭載しているシステムです。
- 進捗管理
- 検査管理
- 日報管理
- 出荷管理
- 在庫管理
- 設備点検
- 棚卸管理
- データ分析
iPhoneやAndroidに対応しているため、スマートフォンでQRコードを読み取って情報を入力できるので、手入力によるミスも防止できるでしょう。
参照:FMES
MESによる管理で製造現場の生産性を向上させよう
MESは製造工程を管理し、業務を効率化できるシステムです。
適切に利用すれば、生産計画の実現やコストの削減などさまざまな効果が期待できるでしょう。
本記事を参考に、自社の業務に適したMESの導入を検討してはいかがでしょうか。
自社の在庫管理を最適化したい、在庫管理についてシステム化を計画している方
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