社内システムを自作するメリットとは?内製化の手法や注意点も

2023.01.16
DX・システム開発
中垣圭嗣
社内システムを自作するメリットとは?内製化の手法や注意点も
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こんにちは。Wakka Inc.のベトナムラボマネージャーの中垣です。
昨今、社内システムを自作する企業が増えてきています。しかし技術力や予算の問題で、自作システムの導入に踏み切れずにいる企業も少なくありません。
本記事では社内システムの自作が行われる背景から、自作するメリットや注意点、自作の手法まで詳しく解説します。ぜひ貴社のビジネスの成長にお役立てください。

Wakka.IncではDXプロジェクトを検討している担当者の方に向けて、失敗しない社内体制の構築から開発リソース確保までを網羅して解説しているDX進め方ガイドブックを無料で配布しています。ぜひご確認ください。

目次

社内システムの自作が行われる背景

社内システムの自作や内製化に注目が集まっています。
社内向けのシステムなので、直接利益にはつながらない可能性があるのにもかかわらず、社内システムの自作に注力する企業も少なくありません。
多くの成長企業が社内システムを自作している理由は大きく分けて3つあります。

社会や経済の変化に対応するため

1つ目の理由は、社会変化に対応するためです。
ほとんどの企業が抱える大きな課題が、生産性の向上ではないでしょうか。社内の業務を効率化できれば、生産性が上がり、その分リソースを他の業務へ分散できます。
社会の情勢が目まぐるしく変化する昨今、顧客のニーズや市場の変化に柔軟に対応するためにも、リソースの確保は重要なのです。

また、社員の労働時間を短縮できるのも自作システムのメリットです。
労働人口の減少、働き方改革などにより労働市場も大きく変化しています。
生産性を高めて優秀な人材を確保するためには、社内の業務に精通した人材がシステムを構築し、あらゆる業務の効率化を図る必要があるでしょう。

開発のハードルが下がってきた

2つ目の理由は、開発環境が整備されてきたことです。
かつてはプログラミング言語やインフラ環境などの専門的な技術を持つエンジニアでなければ、システム構築は難しい状況でした。
しかし現在は、プログラミング言語を使わなくてもシステムを構築できるノーコードやローコードなどの技術が次々と開発されています。
エンジニア以外の社員もシステム構築に参画できるようになり、社内でのシステム開発のハードルが下がってきているのです。

脱Excelを図るため

3つ目の理由は、Excelでは処理能力に限界があるからです。
これまでは、社内のシステム構築といえばExcelでほぼニーズを満たせていました。
Excelには、VBA(Visual Basic for Applications)と呼ばれるMicrosoft Office製品専用のプログラミング言語や、操作を自動化できるマクロ機能が備わっています。
VBAやマクロを用いればある程度のシステム化は可能ですが、以下のような懸念点もあります。

  • 大量のデータを分析するにはExcelは向いていない
  • PCのパワーに依存し、重たいファイルを扱うとフリーズしてしまう
  • 共同編集するとVBAが破損する可能性があり、管理がしにくい
  • VBAの中身がわからなくなる可能性もある

Excelを用いたシステムは安価である程度の役割を果たせますが、扱うデータの量や保守の面でいずれ限界を迎える恐れがあるでしょう。
VBAやマクロに関しては専門的な知識も必要なので、作成した担当者の移動や離職によってシステムがブラックボックス化して機能しなくなる可能性もあります。
開発しやすいプラットフォームを選択して社内システムを自作したほうが、将来的にコストが低くなる可能性が高いため、脱Excel化を図る企業が増えているのです。

社内システムを自作するメリット

社内システムを自作するメリットには、具体的に下記のような点が挙げられます。

  • 自社の状況に合わせやすい
  • 費用を抑えられる
  • 開発のノウハウが蓄積される

詳しく見ていきましょう。

自社の状況に合わせやすい

社内システムを自作するメリットは、自社の状況に合わせやすい点です。市販されている既存のシステムでは、社内業務に合わせた細かい調整は難しい場合もあるでしょう。
その点自作されたシステムは、帳票のデータ入力や報告書の作成などの細かい定型業務を最適化できるため、業務の効率化が一気に進みます。
また一度システム化してしまえば、定型業務に関して誰がやっても同じ処理を行えるため、業務の属人化を防ぐのにも役立つでしょう。
特定の業務に習熟した従業員が部署移動や退職をした場合、業務の進め方がわからなくなったり、作業効率が落ちてしまったりする可能性もあります。
内製化するためには時間や労力が必要ですが、社内業務に合わせたカスタマイズが容易な点は大きなメリットではないでしょうか。

費用を抑えられる

社内システムの自作は市販のパッケージソフトを導入するよりも費用を抑えられます。かつてはシステムを構築するのに費用がかかるだけでなく、情報を集約するサーバーも設置する必要がありました。
サーバーには運用の費用、設置場所の確保など様々なコストが必要でしたが、昨今のシステムはWebサーバーで運用されるクラウド型が多くなっています。
Webサーバーやクラウド型のシステムは月額費用がかかるものもありますが、既存のパッケージソフトよりも安価でシステム構築が可能です。
サーバーの保守、管理コストがほとんど掛からないため、本来必要とされる開発面にのみ注力すれば良いのです。実際の開発費用だけでなく開発期間も圧縮できるため、開発に掛かる人件費も抑えられるでしょう。

開発のノウハウが蓄積される

社内システムの自作により、業務改善やITツールに関するノウハウが蓄積されるのも注目すべきメリットです。業務改善はトップダウン形式より、ボトムアップでビルドしたほうがより効果的です。
まずは小さいグループで、自作ツールの開発や運用の成功体験を作るのが良いでしょう。
その後より広い範囲での業務に導入していくと、社内システムの内製化につながりやすくなります。

また社員の改善に対する意識が高まると同時に、ITツールの習熟度も上がっていくでしょう。ITツールの習熟度が上がると、より高度なシステムを自作できるような好循環が生まれます。
業務への意識改革と現場での開発ノウハウが蓄積されるのは、大きなメリットと言えるのではないでしょうか。
コストを抑えつつ自社にノウハウを蓄積したいのであれば、ラボ型開発という選択肢もあります。

社内システムを自作する際の注意点

社内システムを自作する際には、下記のような点に気を付けましょう。

  • 業務の棚卸しを行う
  • 社内に浸透するまで時間がかかる
  • 保守・管理への対応コスト

本来は社内の生産性を上げるために作成されるシステムが、場合によってはデメリットになる場合もあるため注意が必要です。

業務の棚卸しを行う

まずは現在の業務がどのように行われているか、一連のプロセスを把握する必要があります。
場合によってはシステムを導入するのではなく、必要のない業務の洗い出しや手順の変更だけで業務の効率化が図れることもあるからです。
現在行われている業務をフローチャート図で分析し、工数や分岐条件などを確認していきましょう。頻度が高く単純な作業であるほど、システムの導入により効率化が図れます。業務で必要な機能について徹底的に洗い出すのが、社内システムの自作を行う第一歩です。

社内に浸透するまで時間がかかる

すべてのITツールに言えることですが、導入したら終わりではありません。どれだけ優れたツールだとしても、利用されなければ意味がないのです。
継続して使い続けられるような仕組みを作るするためには、複雑なシステムではなく、単純かつ優先度の高いものから構築していくのがおすすめです。完成したシステムが使いにくければ、再度機能をブラッシュアップする必要もあるでしょう。
自作ツールは柔軟に現場の意見をキャッチできるのもメリットの一つです。丁寧に現場の意見を拾い、継続して利用されるシステムづくりを心がけましょう。

保守・管理への対応コスト

自作ツールを作った環境によっては、保守や管理コストにも注意を払う必要があるでしょう。
新しいOSや新規デバイスへの対応など、パッケージソフトならばベンダー側で管理できたことも自社で管理しなければなりません。
また保守履歴などを残さないと、どのようにシステムが改変されたかわからなくなる可能性もあります。
法改正など外部環境の変化によってシステムの改変が必要となるケースもあるでしょう。適切な保守・管理を怠るとシステムの陳腐化を招き、使用されなくなるリスクもあります。

自作できる社内システムの種類

自作できる社内システムには下記にようなものがあります。

  • データベース
  • CRM
  • ワークフローシステム

それぞれの特徴や代表的なツールを詳しく見ていきましょう。

データベース

ある程度までのデータ量であればExcelで賄えますが、大容量になるほどデータベースを別のプラットフォームで作成したほうが効率的です。Excelに慣れている方であれば比較的簡単に使えるツールとして

  • Googleスプレッドシート
  • Airtable(エアテーブル)

があります。特にAirtableはノーコードで作成できるクラウド型のデータベースツールとして注目されています。
ExcelやGoogleスプレッドシートのようにマス目に数字や文字列を表示するだけではありません。
カレンダー表示やカンバン形式での表示など見た目の切り替えも可能です。機能が豊富なだけでなく、拡張性も非常に高く、他のツールとも容易に連携できます。
データベースのレコード数が1200までは無料なので、まずは導入して使い勝手を試してみるのが良いでしょう。

CRM

CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客の情報や顧客とのやり取りなどを記録し、良好な関係を築く行動管理を指します。
顧客情報を一元管理すれば、商談の内容など必要なデータを参照できるため、業務効率の向上が見込めます。CRMとして必要な機能は

  • 顧客情報管理機能
  • 情報配信機能
  • 問い合わせ管理

などです。VBAや関数を駆使すればExcelでも顧客情報を管理できるかもしれません。しかし使い勝手の良いCRMを構築するには専門知識が必要となり、運用のハードルは高いと言えるでしょう。
CRMを無料で試してみたい場合は、Fullfree(フルフリー)*などのフリーソフトを導入するのもひとつの手段です。
※上位版のFullfree PROは有料です。

ワークフローシステム

手書きの申請書などで決裁フローを構築している場合は、ワークフローのシステムを自作するのをおすすめします。
システム化によって、申請書類の保存の手間や申請までの手順の複雑化を防げるので、スピード感をもってビジネスを展開できるでしょう。
申請から承認までのプロセスが比較的シンプルならば、Googleアンケートフォームを利用したシステム化が可能です。GoogleアンケートフォームはGoogleスプレッドシートとリンクでき、管理しやすいフォームを自動で作成できます。

プログラミングの知識が必要ですが、GAS(Google Apps Script)というプログラムを使った自動化や拡張にも対応しています。
ワークフローをシステム化すれば、申請から承認までのプロセスが可視化できるため不正防止にも役立つでしょう。ワークフローシステムの構築は比較的ハードルが低く効果も高いため、社内システム自作の第一歩におすすめです。

社内でシステムを自作する2つの方法

社内システムを自作するには、下記の2つの手法を使うのが一般的です。

  • ノーコードツールを使う
  • オリジナルソフトを構築する

社内システムの構築にプログラミング言語などの専門知識は必須ではありませんが、より自由度の高いシステムを構築するためには、経験豊富なエンジニアによる開発が求められます。それぞれの特徴を理解して、自社に適した開発方法をお選びください。

ノーコードツールを使う

下記のような社内システムの自作を手軽に行えるのは、ノーコードツールでしょう。

  • データベースの構築
  • ホームページの作成
  • ECサイトの構築
  • Webアプリケーションの開発

従来、データベースの構築にはMySQL、ホームページの作成にはHTML/CSSなどの言語習得が必須でした。
またECサイトやWebアプリケーションなどの動的サイトを構築するには、JavaScriptやPHPなどの言語を習得しなければなりません。
しかしノーコードツールを利用すれば、直感的な操作により必要な機能を実装できます。各社から様々なノーコードツールがリリースされているので、自社の解決したい課題に合ったツールを選びましょう。
ただし、ノーコードツールはプラットフォームから提供されている機能や部品を組み合わせて開発を行うため、自社の状況に合わせた詳細なカスタマイズは難しいでしょう。
ノーコードツールの拡張性には限界があるため、独自性の強い業務や流動性の高い業務をシステム化する場合には、後述するフルスクラッチ開発によってオリジナルシステムを構築するのがおすすめです。

オリジナルシステムを構築する

社内システムを自作するもうひとつの方法は、フルスクラッチ開発によるオリジナルシステムの構築です。
フルスクラッチ開発は1からオーダーメイドでシステムを構築するため、ノーコードツールと比較すると費用は高くなりますが、自社の要望や課題に合わせた適切なシステムを構築できるでしょう。ベンダーとの協議の中で

  • 要求定義・要件定義
  • システム設計
  • 開発
  • テスト

を繰り返し行い、必要な機能を実装していきます。
ノーコードツールは作成するノウハウを習得するまでに時間がかかります。システム開発を信頼できるベンダーに任せることでコア業務に集中できるのではないでしょうか。

まとめ | 社内システムの自作を成功させるために

今回は、社内システムを自作するメリットや自作するための方法をご紹介しました。ノーコードツールやローコードツールなど、社内システムを自作する手段は増えてきていますが、自作する手間や現場へ浸透させるための手間は決して小さくありません。
また思わぬミスが発生し、かえって非効率化してしまうこともあるでしょう。そのようなリスクを回避するためにも、まずはシステム開発の実績が豊富なベンダーに、自社の課題や要望を相談してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人
中垣圭嗣

WebメディアでPGから管理職まで幅広く経験し、Wakka Inc.に参画。Wakka Inc.のオフショア開発拠点でラボマネジャーを担当し、2013年よりベトナムホーチミンシティに駐在中。最近では自粛生活のなかでベトナム語の勉強にハマっています。

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