越境ECのメリット・デメリット!4つの出店方法もわかりやすく解説

2023.04.10
EC開発
中垣圭嗣
越境ECのメリット・デメリット!4つの出店方法もわかりやすく解説
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こんにちは。Wakka Inc.のベトナムラボマネージャーの中垣です。

「越境ECをこれから頑張って事業展開したいけれど、メリットやデメリットをしっかり整理しておきたい」と考えている企業担当者の方は多いでしょう。越境ECは知らない外国の土地で販売を行うだけあって、文化の違いをはじめとしてさまざまなギャップに戸惑うものです。

本記事では、越境ECをこれから行おうとしている人向けに、越境ECの基礎知識からメリット・デメリット、またおすすめの越境EC先まで詳しく解説します。最後まで読めば越境ECのメリットについてはもちろん、実際に自社で越境ECを始める判断もつくようになるため、ぜひお読みください。

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目次

越境ECの基本概要

まずは越境ECの基本概要から説明します。

越境ECとはそもそも何か

越境ECとは、平たく言えば「インターネットを通して、日本の企業や個人が海外に向けて商品を販売すること」を指します。自社で越境ECサイトを構築して自社サイトで運営をする場合と、海外のECモールを利用して販売する場合、そして海外で代行販売業者に販売を任せて越境ECを行う場合とに分けられます。

日本でも越境ECは年々注目されつつあり、今後もさらなる発展が見込まれています。

越境ECが注目されている背景

それでは、なぜ越境ECはこれほどまでに注目されているのでしょうか。理由は大きく分けて3つあります。

  • インターネットインフラの全世界的な普及
  • 海外でのEC消費需要が急速に高まっていること
  • インバウンド観光客からの影響

1つ目は「インターネットインフラの全世界的な普及」です。かつて発展途上国と呼ばれていたところでも携帯電話やパソコンが一般家庭で見られるようになり、インターネットはほぼ世界中で使われるようになっています。

2つ目には「海外でのEC消費需要が急速に高まっていること」が挙げられます。中国やアメリカをはじめとして、インドや東南アジアの国々でも年々EC消費は増加しています。コロナの影響もあってECの消費はここ数年ますます伸びを見せています。

3つ目は「インバウンド観光客からの影響」です。日本に観光に来た外国人ユーザーが日本の商品を買い、気に入って自国に戻ってからまたECサイトで同じものを買う、といった消費行動が目立つようになっています。日本の製品には信頼も厚いため、より日本発の越境ECが注目されているというわけです。

越境ECの市場規模

次に越境ECの市場規模について見ていきます。越境ECは伸びしろが高い分野であることは、以下のデータからも示されている通りです。

出典:経済産業省「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)

2021年の日本における越境EC購入額は3,727億円、米国では2兆409億円、中国では4兆7,165億円と、それぞれにおいて目覚ましい数字を出しています。3か国の中では日本はまだ越境ECが浸透しきっていませんが、長い目で見ればそれだけ伸びしろのある状況だといえるでしょう。

越境ECのメリット

越境ECの基礎知識が網羅できたところで、本題である越境ECのメリットについて触れていきましょう。越境ECのメリットには以下の3つが挙げられます。

  • 海外ユーザーを獲得して売上を伸ばせる
  • 実店舗よりもコストを抑えながら出店できる
  • 多言語に対応することでさまざまな国に展開できる

1.海外ユーザーを獲得して売上を伸ばせる

越境ECは海外に向けたマーケティング施策です。海外ユーザーが上手く自社商品のファンになって顧客になってくれれば、売上を伸ばし続けることができます

海外ユーザーは日本人よりも日本の商品をよく知りたい・好きだと思っている人が数多く、興味関心は高いため、日本発の商品であることをアピールすれば売上アップにつながるかもしれません。最近ではインバウンド需要も高まっています。「自国へ帰ってきた外国人観光客がもう一度日本で触れた商品を探したい」、といった場合にECサイトやショップがあれば、海外からの売上も多く見込めることは間違いないでしょう。

2.実店舗よりもコストを抑えながら出店できる

越境ECを行う際に大きなメリットになるのはコスト面です。なぜなら実店舗を用意する際にかかるようなテナント代や塗装費、レイアウト代などといった費用が一切かからなくて済むからです。

費用としてかかるのは、場合によりますがECサイトの構築費用や出店費用、モールを使う場合には月額料金やオプション料金などが挙げられます。他にも配送料は当然かかってきます。

このように、実店舗と比べてはるかに安く、かつはるかに短い期間で越境ECは行えるのです。

3.他言語に対応することでさまざまな国に展開できる

英語や中国語をはじめとして、日本語以外にも多くの他言語を話せる人員が居れば、さまざまな国に出店できます。言語の違う国々へ出店することで新たな世界が広がるのは大きなメリットです。

マーケティング的にも「この地域の人にはこれがよく売れるのか」「この言語の人達にはこれが売れるな」など、購入情報を記録して管理しておける仕組み作りを整えておけば、次の越境ECでのマーケティング施策についても考えることができます。

多くの言語に対応できる自社内のスタッフが居ればもちろん一番良いですが、そうではない場合の方が多いでしょう。こうした時はサポート企業の力を借りることも検討してみるとよいでしょう。

越境ECのデメリット

それでは反対に、越境ECのデメリットはどういうところにあるのかについて見ていきましょう。デメリットは大きく分けると以下の3つです。

  • 決済や発送手段を現地の方法に合わせる必要がある
  • 紛失や盗難などさまざまな危険性が高まる
  • 外貨決済は手数料がかかる

1.決済や発送手段を現地の方法に合わせる必要がある

決済方法や発送手段の国内とのギャップに苦しむのは第一の課題です。まず決済方法では、日本ではあまり多くのお店で対応していないキャッシュレス決済が存在するでしょう。その国独自の文化のような形で電子マネーを設けている国も多く、出店先に柔軟に合わせて決済方法を選択し、かつ慣れる必要があります。

次に発送手段です。発送手段のお悩みは越境EC企業にとって大きな悩みの種であり、日本とは違って商品が入った箱を乱暴に扱われたり、場合によっては盗難に遭ってしまったりといった事態が起こり得ます。

もちろん全ての国に悪い部分があてはまる訳ではありませんが、越境ECを行う際にはまず気を付けるべきポイントといえるでしょう。

2.紛失や盗難などさまざまな危険性が高まる

配送段階でどれだけ気を付けていても、倉庫から出荷して配送中のときにさまざまなトラブルが起こる可能性があります。もしあまり治安の良くない地域に配送することになった場合には、紛失や盗難は日常的に起こり得る話になるため、この点は覚悟が必要です。

商品が届かなかったことによるクレーム対応はする必要があるため、カスタマーサポート部門は用意しておくことが無難です。

3.外貨決済は手数料がかかる

外貨決済をクレジットカードで行う場合、1回の支払いにつき4%の手数料が発生します。これはカード会社がカード利用店で決済処理を行う際、日本円から現地の単位に変換するための事務手続き料だといわれています。

1回だけではそれほど大きな金額には思えないかもしれませんが、商品の取引は1回では終わりません。ちりも積もれば山となるため、小さな手数料でも積み重ねて行けばかなりの額になるでしょう。注意しておくことが必要です。

日本企業が進出したいおすすめの越境EC先

越境ECにおけるメリット・デメリットが分かったところで、具体的に越境ECをするにはどこの国に進出すればいいのかについて紹介します。おすすめの越境EC先は以下の通りです。

  • 中国
  • タイ
  • アメリカ
  • ベトナム

中国

日本発の越境EC先で最も人気が高いのは中国です。実際にジェトロ調査報告書の中でも、重視する販売先として47.6%の割合で回答されています。使用する主なECサイトはアリババ、天猫、淘宝、京東などが挙げられます。

飲食料品から服飾用品、ヘアケア用品にわたるまで、日用品の多くが取引されています。中国ではモバイル決済が非常に盛んであり、国内EC市場をほぼ独占しているアリババ発のAliPay、テンシンのWechatPayなどが主流です。中国でECショップを運営する際には、モバイル決済の導入が必須と言ってもよいでしょう。

また、中国ではコスメ用品を筆頭にして、インフルエンサーマーケティングが高い人気を集めています。インフルエンサーが動画内で紹介した商品がヒットすることが多くあるため、場合によっては活用も視野に入れるといいかもしれません。

タイ

タイのEC市場規模は約6兆円と、中国・アメリカ・日本・フランス・韓国に次いで世界6番目の立ち位置です。コロナ禍を経てタイ国内ではEC消費者が多くなり、今後もさらにEC市場が成長していくことが考えられます。また、タイ人全体の所得が年々伸びているため、仮にECサイトを運営し始めたとしたら、ユーザー一人の単価が高くなることもあり得るでしょう。

デメリットとしては、タイへの配送にはお金がかかり、配送にも時間がかかることです。国際郵便となるため100グラム以下でも620円します。越境ECによくある話ではありますが、送料が1000円を超えてしまうことも少なくありません。

また、現地に在庫を持っていない場合も注意が必要です。タイで独占的なシェアを占めているLazadaとShopeeは、化粧品とサプリ用品は現地に在庫がなければ配送できません。化粧品関連の商品は越境ECの中でも主力の商品であるため、タイに出店しようと考えている企業担当者の方は現地に倉庫を持つことを考える必要があります。

アメリカ

アメリカのEC化率は非常に高く、世界的に見ても第2位のEC市場規模を誇っています。主なモールはAmazonとeBayで、特にAmazonは世界中で使われていることもあり、アメリカ人でAmazonを使わない人はいないレベルにまで達しています。アメリカでのECを考えるのであれば最初にAmazonへの出店を検討するのが得策でしょう。

アメリカの若いEC消費者層では日本のアニメグッズや特撮グッズのような、日本のカルチャーが好まれる傾向にあります。カルチャー関連の商品を持つ企業にとってはアメリカは格好の出店先と言っても過言ではありません。

また、アメリカではGoogleショッピング広告を使って商品を購入する層も一定数居ます。Googleを使って商品を検索するユーザーが多いことから、これからの越境ECを考える際にマーケティング手法の一つとして考えてみてもいいでしょう。

ベトナム

ベトナムのEC市場規模は1.3兆円です。一見するとあまり高くない数字かのように思えますが、法人を介した取引のみで計算されているため、このような数字になっています。

というのも、ベトナムではFacebookがECのプラットフォームとして非常に高い人気を持っているのです。ベトナムにおけるFacebookのアクティブユーザーは、約7000万人いるといわれており、さらに日本とは少し異なった使われ方がされています。日本ではビジネスアカウントが多くありますが、ベトナムでは日常の小さな一コマなどを共有するカジュアルなメッセンジャーツールとして使われており、個人間取引も盛んに行われています。

日本とは違ってまだ「商品を企業から買う」という認識があまりなく、ベトナム独自の産業も発達し切っていないことから、Facebookが使われているといえます。

越境ECの出店方法4選

越境ECにおすすめの国々を紹介したところで、具体的な出店方法の話に移っていきましょう。出店方法は大きく分けて4つあります。

  • フルスクラッチ実装で出店する
  • ASP(Application Service Provider)を利用する
  • 海外のモールを利用する
  • 代行販売者を利用する

それぞれ詳しく説明します。

フルスクラッチ実装で出店する

フルスクラッチ実装とは、既存のサービスやソフトを使わず、真っ白な状態からサイトを構築する手法です。既存のものを使わないことによって自由度が最大限に高くなり、柔軟なサイトを作れます。ただし、自由度が高く作れるぶん、コストも時間もかなりかかることが注意点です。

ゼロから新しくサイトを作る実装方法であるため、高い開発スキルが必要です。開発スキルを持った人員が社内にいる、もしくは外注できる状態でないと厳しいものがあるでしょう。しかし他のECサイトとは一風違った個性的なサイトを作れるため、他社と差をつけたい企業にはおすすめです。

ASP(Application Service Provider)を利用する

ASPとはApplication Service Providerの略で、クラウド上でサイト構築に必要なもの全てが提供されるサービスのことです。例えばBASEやSTORESなどといったECショッピングサイトASPにあたります。

ASPを自社のECショップとして使うメリットは、なんといっても安くて簡単であること。初期費用と月額利用料さえ払えば基本的な機能を持ったECショップを簡単に作れるため、開発の専門的な知識がない企業にとってもおすすめできます。

海外のモールを利用する

越境ECでより海外のユーザーにアプローチするには、海外のモールを利用することが良いでしょう。例えばAmazonやアリババ、天猫国際、タイやシンガポールで言えばLazadaなどといったモールが挙げられます。

海外の現地のユーザーが日常的に使っているモールに出店するため、圧倒的な集客力があることがポイントです。また、日本語に対応しているモールもあるため、他言語に対応する準備がまだあまりできていない企業にとっては大きなメリットといえます。

登録に手間がかかったり、現地の法律や決済方法に合わせたりと障壁は多くありますが、一度進出してしまえば長期的な恩恵を得られるでしょう。

代行販売業者を利用する

自社の業務で手がいっぱいであったり、また自社に最適なモールが分からなかったりといった問題が発生した場合には、代行販売業者を利用するのも一つの手です。代行販売業者はECに必要な集客から販売までを一貫して行ってくれるものから部分的に手伝ってくれるものもあるため、臨機応変に活用できます。

もしどうしても困った場合には代行販売業者を利用し、最大限成功させることを考えてもいいかもしれません。

越境ECを成功させるためのポイント

それでは、最後に越境ECを成功させるためのポイントについて紹介します。本記事をここまで読んでくれた方の多くは、これから実際に越境ECを導入してみようと考えている人が多いはずです。ぜひ参考にして下さい。

ポイントは以下の3つです。

  • ターゲットユーザーをしっかり見定める
  • 現地の言語に堪能なスタッフを雇用する
  • 現地の配送手段に精通しておく

一つひとつ説明します。

1.ターゲットユーザーをしっかり見定める

最初に行うべきなのはターゲットユーザーを定めることです。ターゲットが定まっていないと、せっかく良い商品を売っても思うように売上が伸びないことが多いです。

ターゲットユーザーを定めるには、越境ECの場合は現地の人のリサーチを徹底的に行うことが必要です。とはいえ実際に現地に行くのは難しいため、インバウンド消費の傾向から読み解いてみることが先決といえるでしょう。

2.現地の言語に堪能なスタッフを雇用する

越境ECを行う以上、外国語を使うことは避けては通れません。自社内に外国語が堪能なスタッフが居れば良いですが、居ない場合は、外部のサポート企業に連携を依頼して外国語を話せるスタッフをつけるべきです。

3.現地の配送手段に精通しておく

現地の配送手段を把握することも忘れないでおきたいものです。日本とは文化が違うため、思わぬ配送ルートを取るものであったり、また商品が破損されて届いたりといったトラブルも少なくありません。

見知らぬ土地でのトラブルを避けるためにも、配送業者は事前によく選定した上で信頼できる業者を選ぶとよいでしょう。

まとめ|越境ECのメリット・デメリットを理解して、失敗しない事業展開を

本記事では越境ECのメリット・デメリットとともに、おすすめの進出先国、また成功させるためのポイントについてそれぞれ詳しく紹介してきました。

越境ECを本気で考える人にとって、まず障壁となってくるのは言語や文化、法律などといったものではないでしょうか。これらを解決するのには時間がかかりますが、粘り強く取り組み続けることによって、必ず成果は見えてきます。越境ECのメリットはその先にきっと最大限に享受できるでしょう。

この記事が少しでも越境ECを本気で考えている企業担当者の力になれば幸いです。

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この記事を書いた人
中垣圭嗣

WebメディアでPGから管理職まで幅広く経験し、Wakka Inc.に参画。Wakka Inc.のオフショア開発拠点でラボマネジャーを担当し、2013年よりベトナムホーチミンシティに駐在中。最近では自粛生活のなかでベトナム語の勉強にハマっています。

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