EC構築におけるRFPとは?作成で失敗しないコツやメリットを解説
こんにちは。Wakka Inc.のWebディレクターの安藤です。
市場ニーズの拡大やDX推進の流れからビジネスモデルの変革に取り組む企業が増え、その工程でECを導入するケースが増えています。顧客に求められるECを構築するには、質の高いRFP作成が欠かせません。
しかし実際には、
「RFPとはどのようなもの?」
「RFPの作り方や、必要な項目を知りたい」
このような悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか?本記事ではRFPに記載するべき項目から失敗しないコツ、作成前の確認事項まで網羅的に解説します。質の高いRFPを作成し、自社が望むECサイトを構築したい方はぜひ本記事を参考になさってください。
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ECのRFPとは
RFPとはRequest for Proposalの略であり、提案依頼書を意味します。ベンダーにシステムの開発や導入を依頼する際に必要な提案書です。RFPにはECに必要な要件や実現したい業務を記載したり、運用保守から予算やスケージュールに至るまで細かく記載したりします。
またRFPではベンダーへ正確な提案ができるため、情報の抜け漏れも防げてトラブル防止に役立ちます。ベンダー視点でも、依頼内容が実現可能かどうかの判断材料になるためRFPは必要です。
EC構築にRFPが必要な3つの理由
RFPが必要な理由は、正確に依頼内容を伝えることだけでなく、以下の3つも存在します。
- 開発の要件や目的が明確になる
- 情報の抜け漏れ防止になる
- ベンダー選びの基準になる
各項目を深掘りしながら解説します。
開発の要件や目的が明確になる
システム開発を依頼する際にRFPがあれば、ベンダーも要件や目的を正確に理解できるためスムーズなやり取りが可能です。ベンダーと要件定義をする際に、口頭だけでは要件や目的が正確に伝わらないケースがあります。
RFPにはプロジェクトの概要から実装したい機能やスケージュールまで細かく記載するため、ベンダーへ正確に情報を伝えられます。ただし、RFPの作成自体が目的にならないように、作りたいECを自社内で明確にしてベンダーへ正しく伝えましょう。
情報の抜け漏れ防止になる
RFPの作成は、ベンダーに伝える情報の抜け漏れを防ぐ有効な手段です。RFPにはベンダーが知りたい依頼情報も正確に記載されているため、作成段階で情報の抜け漏れを把握できます。
口頭だけでは、複数のベンダーに伝える内容がそれぞれ異なるケースがあります。RFPに依頼したい情報を漏れなく記載すれば、ベンダーに自社の意図が伝わって希望に沿った提案をもらえる可能性も上がります。
ベンダー選びの基準になる
RFPを作成することによって、ベンダー選びの指標に活用できます。
依頼する内容によってはベンダーが対応できないケースもあるため、その場合RFPが依頼先を選定する判断材料になります。依頼するすべての内容をベンダーが正確に把握できていない場合、成果物の品質に影響が及ぶ可能性があります。自社ビジネスへの理解やコミュニケーション体制、実績も考慮して選定を行い、ベンダー選びの失敗を防ぎましょう。
ECのRFPを作成するメリット
RFPを作成すればベンダーに明確な依頼が可能となるため、自社も結果的に良質な提案を受けられます。ECの作成において、RFP作成のメリットは以下のとおりです。
- 納期遅延やコスト増のリスクが減る
- 社内の方向性が明確になる
メリットを理解して、RFP作成する際の参考にしてください。
納期遅延やコスト増のリスクが減る
RFPを提示することによって、契約内容と相違が生じるトラブルを減らせます。RFPにはスケジュールや予算も正確に記載しているため、認識のズレはほとんど生じません。
しかし口頭でのやり取りでは認識のズレが生じやすく、納期遅れや予算をオーバーにつながる恐れがあります。
RFPなどの書面を通じて双方の認識をそろえ、食い違いのトラブルを防ぎましょう。またシステム変更による遅延も考慮して、アフターフォローをあらかじめ決めておく方法も有効です。
社内の方向性が明確になる
RFPを社外のみならず社内でも共有することで、チームの方向性を統制できます。RFPはいわばシステム開発の指針です。導入・運用やその後の課題解決も見据えて作成するため、チームが目指すべき方向性とゴールを共有できるでしょう。
RFPによって明確になった自社の課題を共有すれば、社内の意見をまとめやすくなります。明確になった課題をベースに考ると、理想のECを見出せます。ベンダーとの要件定義に向けて、経営層の合意を受ける際もRFPの活用がおすすめです。
ECのRFP作成前の確認事項
EC開発をベンダーに依頼する際、事前に確認するポイントを押さえておきましょう。事前に確認するポイントは以下の3点です。
- プロジェクトの全体像を確認
- カスタマイズの必要性を確認
- サーバー環境の確認
RFPを作成する前のポイントを確認しておけば、要件定義の際や作業を開始した後のミス、認識のズレも減らせます。
プロジェクトの全体像を確認
自社に導入したいECの記載を中心に、その他プロジェクトの全体像を再確認しましょう。
ベンダーがRFPを確認する際は、始めにプロジェクトの全体像を把握したうえで詳細部分を読み込みます。実現したいECや開発に至った背景から、想定するスケジュールや予算まで全体像をまとめます。プロジェクトの全体像をベンダーに正しく伝えることによって、自社の状況を考慮した提案が受けらるでしょう。
カスタマイズの必要性を確認
将来的にカスタマイズの必要性があるかを、RFP作成前に確認しておきましょう。ECサイトはリリース後にシステムを改修するケースが多く、ベンダーによっても対応の可否が分かれます。
例えば、トレンドに合わせて機能を追加したり、ECサイトの成長フェーズに合わせて規模を大きくしたりする可能性があります。カスタマイズが難しく新しいECに置き換える場合は、余計にコストがかかってしまうため注意が必要です。
サーバー環境の確認
ECに欠かせないサーバー環境も事前の確認が必要です。ベンダーによってはサーバー環境が指定されるケースもあるため、事前確認がなければトラブルに発展する可能性もあります。
サーバー環境の選択肢には、クラウドサーバーやVPS、共有サーバーに専用サーバーがあります。システム開発する要件に合わせて構築できるサーバー環境か確認が必要です。サーバー環境によって掛かるコストやスペックが異なるため、ベンダー選びの際には確認しましょう。
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ECのRFP作成で失敗しない7つのコツ
ポイントを抑えれば、質の高いRFP作成が可能です。RFP作成で意識する7つのコツは、以下の通りです。
- 実現したいECを明確にする
- 現状の課題をすべて記載する
- 依頼内容は詳細に記載する
- 既存システムも考慮する
- 経営陣も関与する
- 未定事項も記載する
- RFPの作成をベンダーに依頼する
7つのコツを確認して、自社の要件が正確に伝わるRFPを作成しましょう。
実現したいECを明確にする
RFPを作成する際には、自社が理想とするECを明確にしましょう。実現したいECが明確でない場合、ベンダーが提案内容を把握しづらく、導入後にシステム改修が発生する可能性もあります。
実現したいECとかけ離れないためにも、必要機能や運用体制を洗い出しRFPに盛り込んでください。また、EC導入後のアクセス数など自社の具体的な目標も共有すれば、目標に応じた戦略を提案してもらえる可能性があります。
現状の課題をすべて記載する
ベンダーからの良い提案を受けるコツは、自社の課題を漏れなく伝えることです。
課題をすべて伝えると、自社では気がつけなかった解決方法や、新たな提案を受けられる可能性があります。現状の課題を棚卸しすることで、自社の理想像が明確になってRFPを具体的に記載できるケースもあります。課題を把握する際には現場のメンバーだけでなく、関連部署や経営層からも貴重な意見を得られるでしょう。
依頼内容は詳細に記載する
RFPの内容を網羅的に記載するだけではなく、各項目を詳細に記載しましょう。EC構築を依頼するベンダーは自社について何もわからない状態であるため、詳細な情報が必要です。
自社独自の環境や部署内の個別の状況など、なるべく細かな情報提供が結果的に良い提案につながります。実現したいECのデザインやサービス例がある場合、参考資料も提出すれば自社要望への理解も深まります。
既存システムも考慮する
既存システムとECを連携させる前提でRFPを作成しましょう。なぜならECの運用には、さまざまな外部システムとの連携が必要不可欠だからです。既存システムとECがスムーズに連携できれば、必要なデータを瞬時に取得でき、データ活用が活性化されます。
連携にはファイル転送やデータベース共有、Webサービスを活用した方法などが挙げられ、複数を組み合わせて行われる場合が一般的です。
導入予定のECにおいてもデータ連携機能が必要になるため、はじめからRFPに記載しておけばベンダーからの見積りの変更やトラブルを防げます。既存システムと連携すれば情報の統語性が図れたり、常に最新の情報をECに反映して品質向上に役立ったりします。
経営陣も関与する
システム導入に関して社内意識の統一を図る必要があるため、経営陣もRFP作成に関わりましょう。
現場の意見を吸い上げただけのシステムでは、思い描く結果を得られない可能性があります。なぜなら現場と経営陣ではシステムに求める機能の優先順位が違ったり、事業の展望を正確にイメージしているのは経営陣だったりするためです。RFP作成には現場だけでなく、経営陣に加えて情報システム部門の関与も求められます。
未定事項も記載する
RFP作成において、専門的な知識がなく自社では答えが出ない項目も記載が必要です。
自社では答えが出ない未定事項も含めて、ベンダーが解決策を提示してくれる場合があります。例えばECに追加する機能の選択や拡張性の範囲など、自社では最良な判断が難しい場合です。はじめから完璧なRFPを求めず、ベンダーのアドバイスも聞きながら完成度を高めていきましょう。
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ECのRFPに記載すべき項目
ベンダーにRFPを提出して良い提案を受けるためには、過不足ない正確な情報を記載する必要があります。特に以下の項目は、RFPに記載すべき内容です。
- 会社の概要
- プロジェクトの概要
- 導入の目的
- 具体的な依頼事項
- 補足の情報
- 提案のスケジュール
順番に説明します。
会社の概要
ベンダーから良い提案を受けるため、RFPに自社の概要は記載しましょう。
システム構築における課題を深く理解するためには、ベンダーにとって会社の概要も貴重な情報です。具体的には事業内容からメインのターゲット層、自社の強みや競合まで詳しく記載します。ベンダーも自社の概要を理解して提案をしてくれるため、現実的な提案を受けられます。
プロジェクトの概要
プロジェクトの概要はRFPに欠かせない項目です。
プロジェクトの概要を記載すれば、ECを導入する背景や目的が抜け漏れなくベンダーに伝わります。プロジェクトの概要を記載する際には、ECの導入で得たい成果を具体的に記すのがポイントです。記載する際に図を活用するなど、ベンダーに伝わりやすい工夫も心がけましょう。
導入の目的
自社がEC導入の目的をベンダーに伝えることによって、自社の思いをくみとった提案を受けられます。
導入の目的を明確にしなければ、ベンダーと自社の間で解釈の違いが生じたり、導入自体が目的化したりする恐れがあります。導入自体が目的化しないためには、EC完成後の先にあるメリットを具体的に記載しましょう。
ECと基幹システムの連携で迅速なデータ共有を可能にしたり、利用情報を分析したデータからマーケティング施策を実施して新規顧客の獲得ができたり、具体的な目的を伝えるのがポイントです。
具体的な依頼事項
RFPには具体的な依頼内容を記載するほど、ベンダーが完成形をイメージできます。
依頼内容が抽象的なら頻繁に修正を繰り返したり、完成後に理想のECサイトとかけ離れていたりするケースがあります。実装したい機能やデザインの方向性から、テキストや画像の指定まで具体的にベンダーに伝えましょう。専門用語を無理に使わず、実現したいECのイメージをシンプルに伝えるのがおすすめです。
補足の情報
あらかじめ想定される質問を記載しておくと、無駄なやりとりを省け、スムーズに交渉を進められます。具体的にはシステムの運用体制や自社の業務フローの記載が挙げられます。あらかじめ補足事項を記載していれば、ベンダー側も対応に困ることは少ないでしょう。
提案のスケジュール
契約からECサイト公開までの具体的な提案スケジュールも記載が必要です。提案スケジュールの記載があれば、ベンダーがリソースや開発内容を考慮して無理のない工程を組めます。
想定しているマイルストーンから各フェーズの成果物の定義、サイト公開まで具体的なスケジュールを組めばベンダー側も安心して仕事を受注できるでしょう。スケジュール対応への可否も、ベンダー選定基準のひとつにしましょう。
RFPで自社のビジョンを明確にして理想のECを構築しよう
今回はEC構築のRFP作成に失敗しないコツやメリットを紹介しました。EC市場は拡大傾向であるため、質の高いEC構築が求められています。
丁寧なRFP作成が質の高いEC構築につながって、ブランドイメージの向上や顧客の増加に結びついて収益増加も見込めます。質の高い理想のECを作成したい方は、ぜひ今回の記事を参考にしてください。
●料金目安もわかるECサイト構築ガイド
>新規事業などでECサイトを構築する場合のガイドを作成しました。目的や売上規模に応じたEC種別選定や最適な構築手法についての診断を受けることができます。
学生時代にWebサイトを自作したことがきっかけでWebの世界に。制作会社でデザイン、WordPressテーマ開発の実務を経て、テクニカル・ディレクターとして大規模サイト構築のディレクションを経験。2021年からWakka Inc.の日本拠点でWebディレクターとして参画。最近はブロックエディタになったWordPressをもう一度、勉強しています。