エンジニアの採用単価はいくら?市場感と最適な採用法を解説
こんにちは。Wakka Inc.ベトナムラボマネージャーの中垣です。
「エンジニア採用には具体的にどれくらい費用がかかるのか?」あまり正確に分かっていない方も多いのではないでしょうか。
現在、エンジニアは世界的に不足しており、その採用単価も高い傾向にあります。そこで、この記事では公開データを基にエンジニアの採用単価をご紹介し、さらに採用コストを抑えるための6つの方法も解説していきます。
エンジニアが不足している企業の採用担当の方は、ぜひ最後まで記事をお読みいただき、エンジニア採用の効率化やコスト削減にお役立てください。
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エンジニアの採用単価と採用コストとは?
エンジニアの採用にかかる費用を知る上で必ず押さえておきたいのが、採用単価と採用コストです。
採用単価とは、1人採用するのにかかった費用のことです。採用したエンジニアの人数を、かかった費用で割ることで、エンジニアの採用単価を算出できます。
一方、採用コストとは、人材を採用するのにかかったすべての費用を合計したものです。採用コストは、以下のように、大まかに外部コストと内部コストに分かれています。
外部コスト | 内部コスト |
・求人広告費 ・人材エージェント利用料 ・採用ホームページの制作費 , etc. | ・採用担当者の人件費 ・応募者の交通費 ・入社祝い金 , etc. |
内部コストに関しては、正確に把握することが難しい場合もあります。外部と内部どちらのコストも含めた採用コストを算出し、エンジニアの採用単価を明確に把握できる状態を作りましょう。
エンジニアの種類ごとに異なる採用単価
マイナビの中途採用状況調査2022年版によれば、エンジニアの採用単価は約88.4万円と、100万円程度が相場です。
この相場は、IT・通信・インターネット業界の平均採用コストの574.4万円と、ITエンジニアの平均採用人数の6.5人から算出した概算です。
とはいえ、ひとえにエンジニアの採用単価といっても、エンジニアごとに金額は大きく異なってきます。エンジニアの採用単価を決めるのは、主にエンジニアの種類とスキルレベルです。
一般的に、プロジェクトマネージャー(PM)などのより上流過程を担当できるエンジニアほど採用単価が高く、システムエンジニア(SE)、プログラマー(PG)とスキルレベルが下がるにつれて単価は下がる傾向にあります。
また、同じ立場のエンジニアでも、経験や対応可能な言語などが豊富であれば、より採用単価が高くなる傾向にあります。
参考:マイナビ『中途採用状況調査2022年版』
他職種との採用単価の比較
他職種とエンジニアの採用単価を比較した場合、エンジニアのほうが採用単価が高くなる傾向にあります。先ほどと同じ中途採用状況調査2022年版に掲載されている、業種別中途採用の平均実績金額は下記の通りです。
- IT・通信・インターネット:574.4万円
- メーカー:654.8万円
- 商社:310.0万円
- サービス・レジャー:445.6万円
- 医療・福祉・介護:382.1万円
- 流通・小売・フードサービス:264.6万円
- 金融・保険・コンサルティング:638.0万円
- 不動産・建設・設備・住宅関連:359.9万円
- 運輸・交通・物流・倉庫:577.7万円
エンジニアが特に多いIT・通信・インターネット業界の採用コストは、他業種と比較しても高い部類であることがわかります。
以下の通り、職種別の平均採用人数においても、他職種と比較して極端に人数が多いわけではないので、採用単価も高くなることが予想されます。
- 営業:8.2人
- 企画・経営:4.5人
- 管理・事務:4.0人
- 医療・福祉:7.1人
- 保育・教育・通訳:5.7人
- WEB・インターネット・ゲーム:4.9人
- ITエンジニア:6.5人
- 建築・土木:5.2人
実際に、職種ごとの求人広告単価についても、エンジニアは高額であることがわかりました。
- 営業:36.3万円
- 企画・経営:39.1万円
- 管理・事務:33.7万円
- 医療・福祉:35.3万円
- 保育・教育・通訳:43.0万円
- WEB・インターネット・ゲーム:35.4万円
- ITエンジニア:40.5万円
- 建築・土木:37.7万円
データをもとに他職種と比較しても、エンジニアは採用単価が高額であることが証明される結果となりました。
エンジニアの採用単価が高い理由
では、エンジニアの採用単価はなぜ高くなる傾向にあるのでしょうか。主な理由としては、以下の3点が挙げられます。
- IT化やDXがビジネスのトレンド
- 世界的にエンジニアが人材不足
- エンジニアに必要なスキルの細分化
具体的な背景や要因がわかれば、エンジニアの採用単価を抑えるためのヒントが得られるかもしれません。
IT化やDXがビジネスのトレンド
まず1つ目に挙げられる採用単価が高い原因は、IT化やDXがトレンドになっていることです。
現在では、パソコンやスマートフォンが普及し、誰でもインターネットにアクセスできる時代になりました。だからこそ、すべての製品やサービスを手軽に利用できるように、IT技術を取り入れたり、DX戦略を推進し始めている企業は急激に増えています。
2020年以降、オンラインや非接触といったワードが話題となり、デジタル化のトレンドはより加速しているといっても過言ではありません。
そして、加速するIT化やDXを担う人材こそが、エンジニアなのです。ビジネスのトレンドを推し進めている職種がエンジニアなので、様々な方面からのニーズが生まれて不足するのは当然とも言えます。
世界的にエンジニアが人材不足
エンジニアのニーズが高まっているにもかかわらず、根本の問題としてエンジニアの数が少ないことも、採用単価が高くなる理由のひとつです。
経済産業省が2015年に発表したIT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果では、2030年までに79万人ものエンジニアが不足すると予測されています。
参考:経済産業省『IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果』
現在は、調査当時の2015年と比べてもエンジニアの需要が高まっているため、より多くのエンジニアが不足する可能性があります。さらに、世界的に見ても、エンジニアは人材不足の状態です。
ヒューマンリソシアの統計によれば、2020年時点で日本には100万人以上のエンジニアがおり、世界で4位の数字であるとされています。
世界には2,136万人以上のIT技術者がいる結果ですが、世界4位である日本がエンジニア不足となっている現状を踏まえれば、世界的にもエンジニアは不足していると考えて良いでしょう。
参考:ヒューマンリソシア『92カ国をデータで見るITエンジニアレポートvol.1』
エンジニア不足については以下の記事でも詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
エンジニアに必要なスキルの細分化
エンジニアにとって必要なスキルが細分化されていることも、エンジニアの採用単価を高くしている要因の1つでしょう。エンジニアには、
- ユーザーの目に届く範囲を構築するフロントエンジニア
- 裏側のシステムやプログラムを構築するバックエンドエンジニア
- スマートフォンなどのアプリケーションを構築するアプリケーションエンジニア
など、多くの種類があります。そして、各エンジニアによって、身に付けるべきスキルや得意な言語などは異なります。
つまり、エンジニア自体は見つかるものの、自社の開発に必要なスキルセットを併せ持っているエンジニアに出会える確率は格段に下がってしまうため、採用コストが増えてしまうのです。
他職種とは異なり、未経験のエンジニアを採用することが非常に難しい点も、採用単価が高くなってしまう原因といえるでしょう。
エンジニアの採用コストを抑えるための6つの方法
高くなりがちなエンジニアの採用単価を抑えるためには、下記の6つの方法で対策できます。
- 採用コストが高い原因を分析する
- 採用基準を見直す
- 低コストな採用手法を導入する
- 派遣や業務委託のエンジニアを採用する
- 海外のエンジニアを登用する
- エンジニア人材の定着を図る
各方法について詳しくご紹介するので、採用単価を抑えてエンジニアを採用したい企業の方は必見です。「自社に合うのはどの方法なのか?」じっくりと比較検討してください。
採用コストが高くなっている原因を分析する
採用単価を低くするためには、まず現状の採用コストを細かく把握することが重要です。
なぜ自社の採用コストが高いのかを理解していなければ、適切に対策できません。そのため、採用コストを外部コストと内部コストに分解し、採用単価の内訳を確認してから、対策方法を考えていくべきです。
求人応募の母数が少ないために採用人数を確保できず、採用期間が長期化して採用単価が高くなっているにもかかわらず、コストカットのために求人広告を削るという誤った対策を取ってしまう。
上記のようなケースは、原因分析の不足により起こりがちな間違った対策方法です。
また、ほぼ利用していない求人サイトに対して利用料を支払い続けているなど、採用コストが高くなっている原因を分析するだけで、コスト削減に繋がる可能性もあります。
効率よく採用単価を抑えるためにも、まずは自社の採用コストが高い要因を分析することから始めましょう。
採用基準を見直す
採用基準を見直すことでも、採用単価を抑えられます。
例えば、採用基準が高すぎると、条件を満たすエンジニアになかなか出会えない可能性があります。その結果、求人サイトへの広告出稿料がかさんだり、面接回数が増えたりして、コストが高くなるでしょう。
一方で、採用基準が低すぎても、業務効率が落ちたり教育に時間がかかったりして、余計にコストがかかってしまう恐れがあります。
リモートワークを許可して採用可能な地理的範囲を広げたり、経験の少ない若手エンジニアも採用の対象に変更したりと、妥協点を決めて採用基準を見直すことをおすすめします。
低コストな採用手法を導入する
採用コストが高くなってしまっている際には、採用方法を変更するのも良いアイデアです。エンジニアの採用方法としては、主に以下の5つが挙げられます。
- 求人サイト(求人広告)
- 人材紹介・人材エージェント
- リファラル採用
- ダイレクトリクルーティング
- 採用ブランディング
ここからは、各手法の詳しい内容を解説するとともに、前出の中途採用状況調査2022年版(マイナビ)を参考に、各手法の採用コストの相場も合わせて紹介していきます。
求人サイト(求人広告)
求人広告の掲載メディアに自社の広告を出稿して応募者を募集するのが、求人サイトを利用する採用方法です。
求人サイトを使った採用方法の採用コストは、IT・通信・インターネット業界の全体平均で144.1万円となっています。そして、求人広告を使ったエンジニア採用の採用単価は平均40.5万円です。
近年は、エンジニア専門の採用サイトも増えているため、求人広告による採用単価は低下傾向にあります。とはいえ、求人サイトでの採用コストは、他の採用手法に比べると高くなるのが一般的です。
人材紹介・人材エージェント
人材紹介やエージェントの利用による求人も、エンジニアの採用方法として主流な手段の1つです。
人材紹介会社などに登録することで、エージェントが自社に適した人材を紹介してくれます。一定の条件面を満たした候補のみが紹介されるので、選考のコストを抑えつつ、希望に適う人材を見つけやすいのがメリットです。
人材紹介の採用コストは393.3万円となっています。人材紹介による平均採用人数が6.7人であるため、採用単価は約58.7万円です。
紹介料や採用によるインセンティブが高いので、人材エージェントの利用はエンジニア採用手法のなかでも特に高い部類にあたります。多少コストがかかっても、短期間で即戦力のエンジニアを獲得したい企業におすすめの手法です。
リファラル採用
リファラル採用とは、自社の社員から知り合いを紹介してもらい、採用する手法です。エンジニアの知り合いを紹介してもらい、採用につながった際には社員にインセンティブを支給します。
つまり、リファラル採用の採用単価は、基本的にインセンティブの金額と同額です。リファラル採用によるインセンティブの平均金額は96,515.2円となっています。
10万円程度で社内環境にフィットしやすいエンジニアを確保できることが、リファラル採用のメリットと言えます。
ダイレクトリクルーティング
企業側から求職者にアプローチして採用する手法が、ダイレクトリクルーティングです。
自社に必要なエンジニアの要件を満たしている人材にのみアプローチできるので、採用に繋がりやすくコストを抑えやすいことが特徴と言えます。
ダイレクトリクルーティングの平均採用人数は7.0人、IT・通信・インターネット業界における採用コストは151.0万円なので、採用単価は約21.6万円です。
比較的低コストであり、エンジニア専門の転職サイトなども増えているため、ダイレクトリクルーティングによるエンジニアの採用人数は増加傾向にあります。
ただし、人材選定や候補者へのアプローチなどの内部コストが発生しやすいため、採用コストを明確に把握しにくい点には注意が必要です。
採用ブランディング
SNSや広告、自社製品やサービスの利用などにより、自社に対する良いイメージを印象付けることで採用に繋げる手法を採用ブランディングと言います。
特に売り手が優位である現在の採用市場においては、自社のポジティブな認知度を上げておくことで、求職者からの応募が増えやすくなります。
採用ブランディングは実際の採用人数に対する直接的な効果がわかりにくいため、エンジニアの採用単価を計算することは困難です。
IT・通信・インターネット業界で、採用ブランディングの採用コストの平均金額は66.8万円となっています。
採用ブランディングは比較的対象が広範に及ぶため、少ない人数を低コストで採用したい場合、おすすめの方法とは言えません。
派遣や業務委託のエンジニアを採用する
派遣や業務委託のエンジニアを採用することでも、採用コストを削減できる可能性があります。派遣や業務委託のエンジニアの採用は、選考プロセスが短く済み、たとえミスマッチがあったとしても契約を終了しやすい点がメリットです。
特定の業務に対して派遣や業務委託のエンジニアをスポット的に活用すれば、正社員のエンジニアよりも安く採用できるケースもあるでしょう。
また、活躍の度合いやエンジニアのコミットメント次第では、正社員への切り替えを検討するなど、採用活動の一端としても期待できます。
エンジニア人材の定着を図る
直接的ではないにせよ、エンジニア人材の定着を図ることでも、採用コストを下げられます。なぜなら、人材が流動的になると、常に採用活動を継続する必要があり、採用コストが発生し続けるからです。
エンジニア1人あたりの採用単価では大きな変化はありませんが、1年を通して採用する人数を少なくできれば、全体の採用コストとしては安く済ませられます。
エンジニアが社内に定着しやすくするためには、以下のような施策を実施する必要があります。
- 給与や福利厚生などの待遇を充実させる
- 入社後の研修やフォローを手厚くする
- ハラスメント対策など社内環境を整備する
- 事業のミッションやビジョンを明確化する
- 入社後のキャリアパスを拡大する
上記のような施策を取り入れることで、社内における人材の流動化を防ぎ、無駄な採用コストを発生させない体質を作り上げられるでしょう。
海外エンジニアを登用する
エンジニアの採用単価を抑える方法としては、海外エンジニアの採用も有効な手段として考えられます。
エンジニア不足の情勢の中で、グローバルに採用対象を広げれば、求めているエンジニアを早く採用できる可能性がより高まります。採用までの期間が短くなるほど、採用コストの削減が可能です。
また、同じスキルレベルのエンジニアだとしても、アジア諸国などのエンジニアを採用する場合、日本人エンジニアの採用単価の3分の1程度に抑えられます。
海外エンジニアを登用する場合には、受託型とラボ型があります。長期的な目線で考えた場合には、自社専属のチームを海外で組織するラボ型開発がおすすめです。
適切な採用手法でエンジニアの採用難を乗り切ろう
2022年時点でのエンジニアの採用単価は、100万円程度です。とはいえ、エンジニアは慢性的に不足しており、採用単価は今後も高くなっていくことが予想されます。
ご紹介した6つの採用単価を抑える方法を駆使して、求めているエンジニアを採用できるように活動しましょう。
なかでも、採用手法を変更する方法や、海外エンジニアの採用に乗り出す方法は、成功している企業の事例も多く特におすすめです。ぜひこのタイミングで最適なエンジニアの採用方法に切り替えて、事業を成功させてください。
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▼参考記事
WebメディアでPGから管理職まで幅広く経験し、Wakka Inc.に参画。Wakka Inc.のオフショア開発拠点でラボマネジャーを担当し、2013年よりベトナムホーチミンシティに駐在中。最近では自粛生活のなかでベトナム語の勉強にハマっています。