オフショア開発にバングラデシュを選ぶメリットとは?企業の選定方法や成功事例も解説


こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
「自社の開発リソースが不足している」
「エンジニアの人件費が高騰し、採用が難しくなっている」
こうした課題を抱える企業のIT責任者や経営層にとって、オフショア開発は有力な選択肢です。
特に、今まで主流だったベトナムやフィリピンといった国々でも人件費が上昇傾向にあります。
そのような中、次なるオフショア開発の拠点として、近年バングラデシュが大きな注目を集めていることをご存じでしょうか。
本記事では、バングラデシュでオフショア開発を行うメリットとデメリット、そして費用や企業の選定方法を徹底解説します。
さらに、具体的な成功事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

まずは確認|オフショア開発とは

オフショア開発とは、自社が拠点を置く国以外の海外企業や子会社に、システムやソフトウェアの開発業務を委託することです。
開発コストの軽減や国内で不足しているIT人材の確保、海外の優れた技術・ノウハウを取り入れる目的で活用されています。
オフショア開発のメリット5つ|バングラデシュが選ばれる理由

オフショア開発の主な委託先として、これまでは中国やインド、ベトナムなどが選ばれるケースがほとんどでした主な委託先でした。
しかし、現在ではバングラデシュも新たな選択肢として注目を集めています。
では、なぜ多くの企業が新たなオフショア開発先としてバングラデシュに注目しているのでしょうか。
バングラデシュが選ばれる理由は、単なるコストの安さだけではありません。
人材の質や将来性といった、さまざまなメリットが存在します。
若くて優秀なIT人材が多い
バングラデシュの魅力は、若く意欲的なIT人材が豊富であることです。
政府が推進する積極的なIT人材育成策により、毎年多くのデジタル分野に特化した人材が、国内大学や専門学校から輩出されています。
若年層の人口が多く新しい技術への探究心が旺盛なため、AIや機械学習、ブロックチェーンといった先端技術分野に強いエンジニアが増えています。
さらに、数学的な素養が高い国民性も、論理的な思考力が求められるソフトウェア開発において大きな強みです。
こうした背景から、バングラデシュは単なるコスト削減可能な開発拠点ではなく、技術力と成長性を持つパートナーとして注目されています。
現在バングラデシュの政府は、IT産業を主要産業に育てようと、税制優遇などの手厚い支援を続けています。
コストを抑えて高品質な開発を実現できる
バングラデシュでオフショア開発を行う大きなメリットは、開発コストの大幅な削減です。
ITエンジニアの人件費は日本や欧米と比べ低めに設定されているため、プロジェクト全体の費用を大きく抑えられます。
一般的な目安として、日本の人件費の約30%〜50%程度です。
中小企業やスタートアップにとっては、こうしたコスト削減は大きな魅力です。
バングラデシュのプログラマーの人月単価は、ベトナムやフィリピンと比較して競争力がある可能性があります。
ただし、具体的な金額はプロジェクトの要件や企業の選定によって変動します。
※表は横にスクロールできます
国 | プログラマー単価(月額) | シニアエンジニア単価(月額) |
---|---|---|
バングラデシュ | 35万円~ | 45万円~ |
ベトナム | 40万円~ | 55万円~ |
フィリピン | 40万円~ | 50万円~ |
インド | 50万円~ | 70万円~ |
日本 | 60万円~ | 80万円~ |
上記の費用は、あくまでエンジニアの人月単価を基準とした参考費用です。
実際の契約においては、人件費に加えプロジェクト達成に必要な管理費やオフィス経費、現地の税金などが上乗せされます。
また、為替レートの変動が日本円での支払い総額に影響を与える可能性も考慮しなければなりません。
そのため、複数の企業から相見積もりを取得し、費用の詳細をしっかりと把握しておきましょう。
参照
【2024年最新版】バングラデシュオフショア開発の人月単価相場はいくら? | オフショア開発.com
英語で円滑にコミュニケーションできる
バングラデシュでは、法務や教育、メディアなどさまざまな場面で英語が広く使われています。
特にIT業界では英語がビジネスの共通語となっており、多くのエンジニアが高い英語コミュニケーション能力を持っています。
そのため、欧米企業とのオフショア開発プロジェクトの経験も豊富です。
したがって、英語による仕様書や技術書類の読解、オンラインミーティングでの議論もスムーズです。
さらに、海外チームとチャットやメールでやり取りすることにも慣れているため、タイムゾーンの違いにも柔軟に対応可能です。
日常的に英語を使用する環境が整っているので、実務に直結した語学力が備わっています。
言語の壁によるコミュニケーションロスが少ないため、プロジェクトを円滑に進められることは大きなメリットです。
親日的な文化で仕事がしやすい
バングラデシュは国際的な世論調査で、約 71 %の国民が日本に対して好意的な印象を持っていることが確認されており、親日的な国と広く認識されています。
また、日本はODA(政府開発援助)によるインフラ整備を通じてバングラデシュの社会・経済発展に大きく貢献してきました。
以上のことからも、二国間に信頼関係があることがわかります。
長期的なパートナーシップを前提とするオフショア開発において、こうした文化的な親和性は大きなメリットといえます。
参照
BBC World Service Poll 2011
Annual Report on Japanʼs ODA Evaluation 2024
政府支援による積極的なバックアップがある
バングラデシュ政府は、”デジタル・バングラデシュ”と呼ばれるスローガンを掲げて、国策としてIT産業の振興に力を注いでいます。
IT企業に対する税制を優遇する措置や補助金の提供、国内各地でのハイテクパーク整備を積極的に進めています。
また、スタートアップ支援やIT教育の強化にも力を入れており、将来を担う若手エンジニアの育成に注力していることが特徴です。
さらに、通信インフラの高速化やデジタルサービス拡充も図られていて、IT関連の基盤整備は着実に進んでいます。
国を挙げた強力なバックアップによって、ITインフラやビジネス環境は年々改善されてきました。
企業にとっては、安心して投資や開発に取り組める体制が整いつつあり、こうした動きがバングラデシュの将来性を一層押し上げています。
バングラデシュオフショア開発の注意点3つ

多くのメリットがある一方で、バングラデシュでのオフショア開発には注意すべき点も存在します。
事前にリスクを把握し、対策を講じることがプロジェクト達成の鍵です。
品質や納期に対する意識の違い
バングラデシュでオフショア開発を依頼する際、日本企業と現地エンジニアとの間で品質や納期への認識に違いがある場合、プロジェクト進行に影響を及ぼすこともあります。
理由は、文化的な違いによって日本企業が求める厳格な品質基準や納期の意識が、現地の開発者に十分に共有されていないこともあるからです。
例えば現地のスタッフから「完了した」と報告があっても、日本側の視点ではテストが不十分であったり、細かな不具合が残っている可能性があります。
こうした認識のズレは、納品の遅れや品質トラブルにつながる大きな要因です。
以上のリスクを防ぐためには、プロジェクト開始時に品質基準や納品物の定義について、明確に合意することが重要です。
詳細な仕様書を作成し、受け入れテストの基準を具体的に示すことで、お互いの完成イメージをすり合わせる必要があります。
インフラ環境が整っていない
特に首都ダッカ以外の地方都市では、電力供給やインターネット回線といったインフラが不安定な場合があります 。
予告なく停電が発生したり、通信速度の低下によって、開発作業が中断しプロジェクトの遅延につながるリスクがあります。
こうしたリスクを回避するためには、委託先の開発企業がどのようなインフラ対策を講じているかを事前に確認することが重要です。
具体的には、自家発電装置やUPS(無停電電源装置)の有無、バックアップ回線の確保状況などをヒアリングしましょう。
加えて、非常時の対応マニュアルや、実際に過去にどういったトラブル対応を行ったかの事例を聞くことも有効です。
時差を考慮して連絡を取り合う必要がある
日本とバングラデシュには3時間の時差があります。
大きな時差は、リアルタイムでのコミュニケーションに影響を与える可能性があるので注意が必要です。
例えば、日本の就業時間の終盤に、至急で伝えたい要件が発生したとします。
しかし、バングラデシュではすでに業務時間ではないためスムーズに連絡が取れないことがあります。
こうした課題を解決するには、お互いのコアタイムを設けてミーティング時間を固定したり、チャットツールを活用して非同期での情報共有を徹底したりする工夫が必要です。
また、定期的な進捗報告のタイミングをあらかじめ取り決めておくことで、時差による認識のズレをできるだけ少なく抑えられます。
※表は横にスクロールできます
日本時間 | バングラデシュ時間 |
---|---|
9:00 | 6:00 |
12:00 | 9:00 |
15:00 | 12:00 |
18:00 | 15:00 |

【バングラデシュのオフショア開発】プロジェクト管理のポイント

バングラデシュでのオフショア開発を成功に導くためには、いくつかの重要な管理ポイントがあります。
各ポイントを徹底することで、品質の確保と納期の遵守につながります。
明確な目標設定と計画の策定
プロジェクトの開始前には、目的やゴール、具体的な成果物を明確に定義することが極めて重要です。
まずは「何のためにシステムを作るのか」「完成形はどのような状態か」を具体的かつ定量的に示し、日本側とバングラデシュ側のチーム全員で共有しましょう。
そして、詳細な開発スケジュールや各メンバーの役割分担、コミュニケーション計画などを文書化してプロジェクトの羅針盤として常に参照できるようすることが重要です。
加えて、想定されるリスクと対処法も事前に洗い出し合意しておくことで、トラブル発生時にも柔軟かつ迅速な対応ができるようになります。
定期的な進捗確認と細かいマイルストーン設定
大規模なプロジェクトを一つの塊として管理するのではなく、機能単位などで細かいタスクに分割し、それぞれに短期的な目標(マイルストーン)を設定しましょう。
そうすることで、プロジェクトの進捗状況が可視化され、問題が発生した場合でも早期に発見し対処できるようになります。
進捗確認の方法としては、アジャイル開発で用いられるデイリースクラム(毎日の短時間ミーティング)や、週次での定例会を設けることが効果的です。
加えて、進捗状況や課題を共有するためのプロジェクト管理ツール(例 / Jira・Backlog・Trelloなど)を活用すると、情報の透明性を高められます。
こうしたツールを導入することで、関係者間の認識のズレを防ぎ、スムーズなプロジェクト運営が可能になります。
参照
Jira(複雑なプロジェクトや日常業務に最適)
Backlog(タスクを可視化し一元管理)
Trello(どこからでもTODOをキャプチャ、整理、実行できる)
頻繁にコミュニケーションをとる
言語や文化、ビジネス習慣の違いを乗り越える上で、もっとも重要なのが丁寧で頻繁なコミュニケーションです。
仕様書やチャットのテキストだけでは伝わりにくいニュアンスも、ビデオ会議などを活用して顔を見ながら話すことで、誤解なく伝えられます。
特に、日本側と現地チームの架け橋となる(ブリッジSE)の存在は非常に重要です。
技術と語学の両方に長けたブリッジSEを介することで、コミュニケーションは格段にスムーズになります。
さらに、ブリッジSEが双方の文化的な背景を理解し調整役を果たすことで、相互理解が深まり円滑なプロジェクトの進行が期待できます。
バングラデシュでオフショア開発する際の企業選定のポイント

プロジェクトの成否は、どのようなパートナー企業を選ぶかに大きく左右されます。
また、価格だけでなく、信頼性や過去の実績をしっかり見極めることが重要です。
数多くある開発企業の中から、自社に最適な一社を見つけるためにも、以下のポイントをチェックしましょう。
専門知識や経験の豊富さ
まず確認すべきは、自社が開発したいシステムや属する業界に関する開発実績があるかです。
類似プロジェクトの経験が豊富な企業であれば、業界特有の課題や要件に対する理解が早く、的確な提案が期待できます。
特に、日本企業との取引実績は重要な判断材料です。
日本のビジネス文化や高い品質要求に慣れている企業であれば、スムーズなプロジェクト進行が見込めます。
また、要件定義などの上流工程から一気通貫でサポートしてくれるかどうかも、企業の技術力と提案力を測る上で重要なポイントです。
さらに、開発後の保守・運用体制が整っているかどうかも、長期的な視点で選定する際に欠かせない要素と言えます。
文化的適合性とコミュニケーション能力
長期的なパートナーシップを築くためには、企業の文化や価値観が自社と合っているかどうかも見極める必要があります。
単なる”発注者”と”受注者”といった関係ではなく、同じ目標に向かうチームとして協働できるかが重要です。
また、コミュニケーション体制が整っているかも必ず確認しましょう。
日本語または英語でのコミュニケーションが円滑に行えるか、ブリッジSEがどのようなスキルを持っているかを具体的に確認します。
加えて、報告・連絡・相談に使われるツールの種類や運用方法についても詳細にヒアリングすることも重要です。
費用と品質のバランス
コスト削減はオフショア開発の大きな魅力ですが、費用だけで選ぶのは危険です。
“安かろう悪かろう”では、手戻りが多発し、結果的にコストも時間も余計にかかってしまいます。
提示された見積もり費用や、それぞれの内訳が適正で明確かを確認するとともに、品質を担保するための体制についても詳しく確認しましょう。
例えば、コードレビューやテストのプロセスが確立されているか、セキュリティ対策は十分かといった点は事前にチェックすべき項目です。
さらに、開発スタッフのスキルレベルや教育体制、プロジェクトマネジメントの方法論についても把握しておくと安心です。
バングラデシュオフショア開発の成功事例

本章では、実際にバングラデシュでのオフショア開発を成功させた日本企業の事例を紹介します。
具体的な事例から、プロジェクト達成のヒントをつかみましょう。
日本企業によるラボ型開発の成功事例
株式会社アラタナ(現:株式会社ZOZO)は、バングラデシュのIT企業と連携し、ラボ型開発の体制を構築しました。
まず現地では、バングラデシュに専任エンジニアチームを設置し、主にECシステムやクラウドインフラの保守・運用を担当させました。
導入初期には、言語や文化の違い、業務理解のギャップといったさまざまな課題が浮上します。
しかし、週次のレビュー会議やマニュアル整備を徹底したことで、半年後には日本本社の開発チームと遜色ない品質で業務を遂行できるまでに成長。
こうした開発体制によって、社内のプロジェクトリーダーは新規案件に専念できるようになり、全体の業務効率は約25%向上しました。
継続的なスキル教育と定着率の高いチーム構成により、より高度な業務への対応も視野に入れた体制が確立されています。
以上の取り組みは、バングラデシュの開発チームを”外注先”ではなく”長期的な技術パートナー”として位置づけた点が、開発実現を後押しました。
参照/株式会社ZOZO
教育系企業によるEdTechサービスの共同開発事例
ネットオークションの相場検索サイトを運営する株式会社オークファンは、バングラデシュのIT企業と連携し、AI画像認識技術を用いた商品検索システムを開発しました。
上記プロジェクトを達成したのは、バングラデシュ人エンジニアが持つ数学的知識と、AIへの高い関心に起因します。
特に、AI開発におけるアノテーション作業(データへのタグ付け)を効率的に行うことで、高品質なAIモデルの短期間での開発を実現しました。
バングラデシュが持つ特定の技術分野における強みを活かした成功事例と言えます。
先端技術に対する積極的な姿勢と、基礎的な数学知識の組み合わせが、革新的なシステムを生み出す原動力となりました。
こうした事例は、グローバルな技術連携の可能性を示すと同時に、特定の国が持つ強みを活かす重要性を示唆しています。
参照/株式会社オークファン
まとめ:バングラデシュでのオフショア開発成功には、信頼できるパートナー選びと徹底したプロジェクト管理が重要

今回は、バングラデシュでのオフショア開発についてメリットやデメリット、成功させるためのポイントを解説しました。
バングラデシュは、豊富なIT人材と政府の強力な支援を背景に、オフショア開発先として非常に魅力的な国です。
しかし、日本と異なる文化や商習慣により、品質や納期に対する意識にギャップが生じる場合もあります。
こうした課題を乗り越え、オフショア開発を成功させるには、信頼できる開発パートナーを選ぶことと徹底したプロジェクト管理が不可欠です。
バングラデシュでオフショア開発を依頼する際は、ぜひ本記事の情報を判断材料の一つとしてご活用ください。

