リーンキャンバスとは?目的や書き方・BtoBで使えるテンプレート例をご紹介


こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
「新規事業を立ち上げたいけど、どこから手を付ければ良いか分からない」そう悩んでいる新規事業担当者の方もいるのではないでしょうか。
リーンキャンバスは、そんな悩みを解決する強力なツールです。
本記事では、リーンキャンバスの目的や書き方をBtoBの事例を交えて分かりやすく解説します。
ビジネスモデルキャンバスやバリュープロポジションキャンバスとの違いも明確にし、テンプレート例もご紹介します。
【おすすめ資料】新規事業の社内稟議で使える、企画書・ピッチテンプレートを無料配布!
大手企業での新規事業のプロが作った、新規事業企画書・ピッチのテンプレートを配布しています。 社内の新規事業検討の際に、ぜひご活用ください。

リーンキャンバスとは

リーンキャンバスは、新規事業のアイデアを整理し、ビジネスモデルを可視化するフレームワークです。
フレームワークに、ビジネスの重要な要素をまとめられるため、チーム内での共有や議論に役立ちます。
リーンキャンバスは、新規事業の立ち上げに有効な施策であり、特にスタートアップ企業で活用されるケースが多いです。
リーンキャンバスを利用する目的
リーンキャンバスの主な目的は、以下の通りです。
ビジネスモデルの可視化 | アイデアを具体的な形にし、全体像を把握する |
---|---|
課題の明確化 | ビジネスにおけるリスクや不確実性を洗い出す |
仮説の検証 | ビジネスの成功要因となる仮説を立て、検証する |
チームの共通認識の醸成 | 関係者間でビジネスモデルの理解を深め、連携を強化する |
迅速な意思決定 | 客観的な情報に基づき、スピーディーな判断を可能にする |
リーンキャンバスの目的を達成すれば、BtoB企業が新規事業を成功に導くための強力なサポートツールとなります。
ビジネスモデルキャンバスとの違い
リーンキャンバスとよく比較されるフレームワークに、ビジネスモデルキャンバスがあります。
どちらもビジネスモデルを可視化するツールですが、下記のような違いがあるのです。
項目 | リーンキャンバス | ビジネスモデルキャンバス |
---|---|---|
目的 | スタートアップの仮説検証とリーンスタートアップの実践 | ビジネスモデル全体の構造理解と改善 |
重点 | 顧客、課題、解決策 | 価値提案、顧客、チャネル、収益 |
適した状況 | 新規事業の立ち上げ初期段階 | 既存事業の分析・改善、成熟したビジネスモデルの可視化 |
構成要素 | 課題顧客セグメント独自の価値提案解決策チャネル収益の流れコスト構造主要指標競合優位性 | 顧客セグメント価値提案チャネル顧客との関係収益の流れキーリソースキーアクティビティキーパートナーコスト構造 |
ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデル全体を俯瞰的に捉えるのに適しています。
一方でリーンキャンバスは、顧客の課題に焦点を当て、仮説検証を繰り返しながらビジネスを成長させていくのに適しています。
バリュープロポジションキャンバスとの違い
バリュープロポジションキャンバスは、顧客のニーズと自社の提供する価値がどのように合致するかを明確にするためのフレームワークです。
リーンキャンバスと組み合わせて使用することで、より効果を発揮します。
項目 | リーンキャンバス | バリュープロポジションキャンバス |
---|---|---|
目的 | ビジネスモデル全体の構築と検証 | 顧客ニーズと価値提案の適合 |
重点 | ビジネスの実現可能性と成長性 | 顧客の課題解決と価値創造 |
適した状況 | ビジネスモデルの初期段階から検証段階 | 価値提案の設計と改善 |
構成要素 | 課題顧客セグメント独自の価値提案解決策チャネル収益の流れコスト構造主要指標競合優位性 | 顧客のジョブゲインペイン製品・サービスゲインクリエイターペインリリーバー |
リーンキャンバスは、ビジネスモデル全体を包括的に捉えるのに対し、バリュープロポジションキャンバスは、顧客の視点から価値提案を深く掘り下げることに特化しています。
両者を組み合わせることで、顧客のニーズに合致した競争力のあるビジネスモデルを構築することが可能です。
リーンキャンバスの書き方・作り方の流れ

リーンキャンバスは、以下の9つの要素を順番に埋めていくことで完成します。
- 顧客セグメントを明確にする
- 課題を特定する
- 独自の価値提案を定義する
- 解決策を考案する
- チャネルを特定する
- 収益の流れを明確にする
- コスト構造を把握する
- 主要指標を特定する
- 競合優位性を明確にする
各ステップを順番に解説していきます。
ステップ1:顧客セグメントを明確にする
まず、新規事業が誰のためにスタートするビジネスなのか、顧客セグメントを明確に定義します。
BtoBビジネスの場合、ターゲットとなる企業規模・業種・役職などを具体的に設定しましょう。
例えば、「従業員数100名以上500名以下のIT企業の人事担当者」のように詳細なペルソナを設定することで、より効果的な戦略を立てられます。
ステップ2:課題を特定する
次に、顧客が抱える課題を特定します。
顧客インタビューやアンケート調査などを通じて、顧客が本当に困っていることは何かを深く理解することが大切です。
例えば、「従業員の定着率が低い」「採用コストが高い」など、具体的な課題を洗い出しましょう。
課題を特定する際は、顧客の言葉をそのまま使うように心がけると、よりリアルな課題が見えてきます。
ステップ3:独自の価値提案を定義する
ステップ1と2で明確にした顧客セグメントと課題に対して、新規事業が提供できる独自の価値提案を定義します。
競合他社にはない本事業ならではの強みを明確に打ち出すことが大切です。
例えば、「従業員の定着率を向上させるための研修プログラム」や「採用コストを削減するためのAI採用ツール」など、具体的な価値を提案しましょう。
ステップ4:解決策を考案する
独自の価値提案を実現するための具体的な解決策を考案します。
どのような製品やサービスを提供すれば、顧客の課題を解決できるのかを明確にしましょう。
例えば、「1on1ミーティングの導入支援」「キャリアパス設計コンサルティング」など、具体的な解決策を提示してください。
ステップ5:チャネルを特定する
顧客に価値を届けるためのチャネルを特定します。
どのような方法で顧客にアプローチし、製品やサービスを届けるのかを明確にしましょう。
例えば、「Webサイト」「展示会」「セミナー」「パートナー企業」など、BtoBビジネスに適したチャネルを選定します。
ステップ6:収益の流れを明確にする
どのように収益を上げるのか、収益の流れを明確にします。
製品やサービスの価格設定・販売方法・支払い方法などを具体的に記述しましょう。
例えば、「月額利用料」「年間契約」「成果報酬型」など、BtoBビジネスで一般的な収益モデルを参考に、自社に最適なモデルを選択してください。
ステップ7:コスト構造を把握する
ビジネスに必要なコストを洗い出し、コスト構造を把握します。
人件費・開発費・マーケティング費用・オフィス賃料など、固定費と変動費を分けて整理すれば、収益性を評価しやすくなります。
ステップ8:主要指標を特定する
ビジネスの成功を測るための主要指標(KPI)を特定します。
顧客獲得数・顧客単価・解約率・顧客満足度など、ビジネスの成長をモニタリングするために重要な指標を設定しましょう。
ステップ9:競合優位性を明確にする
競合他社と比較して、自社のビジネスが持つ独自の優位性を明確にします。
技術力・価格・ブランド力・顧客サポートなど、他社には真似できない強みを洗い出しましょう。
この競合優位性こそが、ビジネスの成功を左右する重要な要素です。
BtoBで使えるリーンキャンバスのテンプレート例

リーンキャンバスは、BtoBビジネスにおいても有効なフレームワークです。
下記のテンプレート例はBtoB特有の要素を考慮し、より実践的な分析ができるように設計されています。
項目 | 説明 | BtoB向け具体例 |
---|---|---|
顧客セグメント | ターゲットとする顧客層 | 中小企業の人事部門、大企業のIT部門など |
課題 | 顧客が抱える課題 | 人材不足、業務効率の低下、セキュリティリスクの増大など |
独自の価値提案 | 課題に対する解決策 | 採用代行サービス、業務自動化ツール、セキュリティソリューションなど |
解決策 | 価値提案の具体的な機能やサービス | AIを活用したマッチング、RPAによる業務自動化、クラウド型セキュリティシステムなど |
チャネル | 顧客との接点 | 展示会、セミナー、Webサイト、代理店など |
収益の流れ | 収益の獲得方法 | 月額利用料、年間ライセンス料、成果報酬型など |
コスト構造 | ビジネスに必要なコスト | 開発費、人件費、マーケティング費用、サーバー費用など |
主要指標 | ビジネスの成功を測る指標 | 顧客獲得単価(CAC)、顧客生涯価値(LTV)、解約率など |
競合優位性 | 競合他社に対する優位性 | 独自の技術、豊富な実績、手厚いサポート体制など |
上記はあくまで一例ですが、自社が考案するビジネスに合わせて項目を修正したり、詳細な情報を追記したりすることで、より効果的なリーンキャンバスを作成できます。
【おすすめ資料】新規事業の社内稟議で使える、企画書・ピッチテンプレートを無料配布!
大手企業での新規事業のプロが作った、新規事業企画書・ピッチのテンプレートを配布しています。 社内の新規事業検討の際に、ぜひご活用ください。

リーンキャンバスを活用するメリット

リーンキャンバスは、その手軽さから多くの企業で活用されています。
BtoB企業がリーンキャンバスを活用する具体的なメリットは、下記の通りです。
- 手軽に作成できる
- 共有しやすい
- 直感的で分かりやすい
メリット1:手軽に作成できる
リーンキャンバスは、9つの要素を埋めるだけでビジネスモデルを可視化できるため、手軽に作成できます。
A4用紙1枚にまとめることも可能で、アイデアをすぐに形にしたい場合に最適です。
新規事業のビジネスモデルを可視化したいときに作成できる手軽さが強みで、複雑な分析や詳細な計画は必要ありません。
メリット2:共有しやすい
リーンキャンバスは、一枚の図でビジネスモデル全体を把握できるため、チーム内で簡単に共有できるメリットがあります。
関係者間で共通認識を持ちやすく、議論を活性化させる効果も期待できます。
新規事業のアイデアを説明する際や、チームメンバーとの意思疎通を図る際にリーンキャンバスを活用しましょう。
メリット3:直感的で分かりやすい
リーンキャンバスは、9つの要素が整理されたシンプルな構成なので、直感的に理解しやすい点がメリットです。
専門知識がなくても、ビジネスモデルの全体像を把握できます。
新規メンバーへの説明や、経営層へのプレゼンテーションなど、さまざまな場面で活用できます。
リーンキャンバスを作成するメリットは、ビジネスとユーザーの視点双方から、バランスよく簡潔にビジネスモデルの整理ができることです。
リーンキャンバスを活用するデメリット

リーンキャンバスは、ビジネスモデルを可視化しアイデアを迅速に検証するための強力なツールですが、万能ではありません。
利用する際には、下記のデメリットも考慮しておきましょう。
- 詳細な市場調査には不向き
- 複雑なビジネスモデルには対応しにくい
- 実行段階での課題が見えにくい
デメリット1:詳細な市場調査には不向き
リーンキャンバスは、ビジネスモデルの全体像を一枚のシートにまとめることに重点を置いています。
そのため、各要素を深く掘り下げた詳細な市場調査を行うには不向きです。
顧客セグメントのニーズや競合の状況などをより詳細に分析したい場合は、別途、市場調査を行う必要があります。
リーンキャンバスはあくまで初期段階での仮説検証ツールとして捉え、詳細な分析は別の手法を検討しましょう。
デメリット2:複雑なビジネスモデルには対応しにくい
リーンキャンバスは、9つの要素で構成されており、シンプルなビジネスモデルを表現するのに適しています。
しかし、複数の収益源がある場合や複雑なバリューチェーンを持つビジネスモデルの場合は、リーンキャンバスだけでは全体像を把握しきれない場合があります。
そのような場合はビジネスモデルキャンバスなど、より詳細なフレームワークの利用を検討してください。
デメリット3:実行段階での課題が見えにくい
リーンキャンバスは、ビジネスモデルの初期段階における仮説検証に役立ちますが、実行段階で発生する課題を予測するには限界があります。
例えば、顧客獲得の具体的な方法やチームの組織構造・資金調達の計画など、実行に必要な要素はリーンキャンバスには含まれていません。
そのため、リーンキャンバスでビジネスモデルを構築した後、実行計画を具体的に落とし込む必要があります。
リーンキャンバスの効果を最大化させるコツ

リーンキャンバスの効果を最大限に引き出すためには、下記のコツを押さえておく必要があります。
- 無理に全項目を埋めない
- PDCAサイクルを回してブラッシュアップしていく
- 短期間で作成する
- テンプレートやツールを活用する
無理に全項目を埋めない
リーンキャンバスの9つの項目は、それぞれ重要な要素を表していますが、最初からすべての項目を完璧に埋める必要はありません。
特に、初期段階では不明な点や仮説が多いのは当然です。
無理に情報を埋めようとするのではなく、現時点でもっとも重要な項目に焦点を当て、検証を進めながら徐々に詳細を詰めていくようにしましょう。
重要なのは、各項目に事業における仮説を明確に表現することです。
ビジネスモデル全体を把握しやすいように可視化することが目的なので、深掘りしすぎないようにしましょう。
PDCAサイクルを回してブラッシュアップしていく
リーンキャンバスは、一度作成したら終わりではありません。
むしろ、リーンキャンバスを作成してから市場の変化や顧客からのフィードバック・検証結果などをもとに、定期的に見直し改善を繰り返すことが大切です。
PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)を回し、リーンキャンバスをブラッシュアップしていくことで、より精度の高いビジネスモデルを構築できます。
短期間で作成する
リーンキャンバスは、時間をかけてじっくりと作り込むよりも、短期間で集中的に作成する方が効果的です。
時間をかけすぎると、情報が古くなったり、市場の変化に対応できなくなったりする可能性があります。
目安として数時間から数日程度の期間で、チームメンバーと集中的に議論し、リーンキャンバスを完成させましょう。
テンプレートやツールを活用する
リーンキャンバスを作成する際には、テンプレートやツールを活用すれば、効率的に作業を進められます。
テンプレートを使用すれば、必要な項目が整理されているため、抜け漏れを防ぐことが可能です。
また、オンラインツールを使用すれば、チームメンバーとの共有や共同編集を円滑化できます。
BtoBビジネスにおけるリーンキャンバスのテンプレートを、自社のビジネスモデルに合わせてカスタマイズしましょう。
まとめ:リーンキャンバスでビジネスを成功させよう!

リーンキャンバスはビジネスのアイデアを可視化し、検証するための強力なツールです。
シンプルな構成でありながら、ビジネスの成功に不可欠な要素を網羅的に検討できます。
また、手軽に作成できるため、スタートアップ企業だけでなく、既存のビジネスの改善にも活用しやすいです。
新規事業を考案する際に、リーンキャンバスを活用すべきか悩んでいる方は、まずは簡単に書き出すことから始めましょう。
本記事でご紹介したテンプレート例を参考に、リーンキャンバスを活用して新規事業を成功に導いてください。
【おすすめ資料】新規事業の社内稟議で使える、企画書・ピッチテンプレートを無料配布!
大手企業での新規事業のプロが作った、新規事業企画書・ピッチのテンプレートを配布しています。 社内の新規事業検討の際に、ぜひご活用ください。

