製造業における受発注システムの選び方|導入のメリットや注意点などを解説


こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
近年は特定の事業向けに、業務を効率化するさまざまなシステムが開発されています。
製造業においても、業務内容に特化した受発注システムが普及するようになりました。
一方で、受発注システムはさまざまな機能があり、それぞれで得られるメリットも異なります。
適切に運用するためにも、受発注システムのメリットや注意点、選び方のポイントを理解したうえで導入しましょう。
本記事では、製造業における受発注システム導入について解説します。
ぜひ、システムを導入する際の参考にしてください。

受発注システムとは

受発注システムとは、企業が行う受発注業務をデジタル化し、煩雑な業務を一元管理できるシステムです。
製造業における受発注業務は、原料や資材の調達・顧客からの外注や納期の管理など、煩雑な作業が発生するフェーズです。
顧客の要望に応じたプロダクトを製造するためにも、受発注業務は正確かつ効率的に遂行しなければなりません。
企業によっては、受発注業務で電話やFAXなどのようなアナログな手法を使っている場合があります。
しかし、アナログな手法だと顧客とのやり取りが煩雑化したり、リードタイムが長くなったりするリスクが高まります。
また、Excelを利用して受発注業務を行うケースもありますが、こちらも適切な運用ができるとは限りません。
Excelは顧客が多いと管理が難しくなるうえに、手入力によるミスが生じやすくなります。
受発注業務を正確で効率的に管理するうえでも、業務に特化したシステム導入は非常に有用です。
製造業向けの受発注システムの種類

製造業向けの受発注システムは、大きく分けてオンプレミス型とクラウド型の2種類があります。
それぞれ導入の過程やコストが異なるので、自社に合ったものを選びましょう。
オンプレミス型
オンプレミス型はハードウェアを購入し、自社に設置して運用するタイプです。
オンプレミス型はシステム本体に加え、サーバーやデバイスなど必要なハードウェアを購入しなければならないため、コストがかかりやすい傾向があります。
加えて導入に時間がかかるうえに、運用には知識やスキルが求められる点も特徴です。
一方で、オンプレミス型はカスタマイズ性が高い点が魅力です。
任意の機能やインターフェースを設定しやすいため、自社の業務に合わせたカスタマイズを行い運用することができます。
設定によってはインターネットに接続せずに利用できるため、高いセキュリティ性を確保できます。
クラウド型
クラウド型はベンダーのサーバーにアクセスして、受発注システムを利用するタイプです。
アカウントの作成など簡単な手続きで導入でき、システムによっては1〜2日で登録が完了するため、導入に手間がかかりません。
導入コストも低く、月額料金がリーズナブルに設定されているシステムが多くあります。
ただし、クラウド型はカスタマイズ性が低い傾向がある点には注意しましょう。
オプションを追加することはできるものの、特殊性が高い製造業だと、業務内容と機能が適合しない可能性があります。
製造業向けの受発注システムの主な機能

製造業向けの受発注システムには、業務に応じたさまざまな機能が搭載されています。
本章では受発注システムの代表的な機能を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
受発注管理
受発注管理機能は、製造業における受発注業務全体を効率的に管理するための基幹機能です。
取引先の企業名・受注内容・納期などの情報を一元管理でき、後述するさまざまな機能の基礎になるといえます。
例えば、新規の受注案件および発注案件があった際は、下記のような情報をシステムに登録します。
- 取引先情報(企業名、担当者名、連絡先など)
- 受注・発注内容(品名、数量、単価、仕様など)
- 納期(納品希望日、納期回答日など)
これにより、案件ごとに情報が散在することを防ぎ、必要な情報を迅速に参照できます。
さらにステータスを可視化すれば、案件の進捗状況が明確になり、遅延などを早期に発見することが可能です。
また、取引先情報をマスターデータとして登録すれば、受発注案件登録時の入力作業を大幅に効率化できます。
正確な取引先管理にも貢献し、過去の取引履歴を参照した見積作成や納期調整などもスムーズに行えます。
仕入れ管理
仕入れ管理機能は、製造に必要な原料・資材の仕入れを管理する機能です。
具体的には、仕入れる原料・資材に関する下記のような情報をシステムに登録し、一元的に管理します。
- 仕入先情報(企業名、担当者名、連絡先、取引条件など)
- 仕入品情報(品名、規格、単位、単価など)
- 発注情報(発注日、発注数量、納期、納入場所など)
- 入荷情報(入荷日、入荷数量、検品結果など)
これにより、仕入れに関する情報が散在することを防ぎ、必要な情報を迅速に参照できるようになります。
また、システム上で在庫状況がリアルタイムで可視化されるため、原料・資材の調達を行うための判断をしやすくなります。
納期管理
納期管理機能は、製品の製造から納品までの全工程における納期と進捗状況を一元的に管理するための重要な機能です。
納期情報と進捗を関連部署で共有し、部門間の連携を強化するためにも欠かせません。
具体的には、受注情報に基づいて、納品日や納品場所など製品の納期をシステムに登録します。
また、部品調達・製造・検査・出荷など各工程の完了予定日も設定でき、全体の納期と各工程の進捗を紐付けて管理することが可能です。
システムによっては、遅延が発生している場合に自動アラートができ、納期遅延を未然に防ぎながら、納期遵守率を向上させることに貢献します。
見積もり管理
見積もり管理機能は、製造業における受注・発注に関する見積もり業務全般を効率的に行うための機能です。
主に既存のテンプレートを利用することで、毎回同じ項目を入力する手間を省き、迅速に見積書を作成できます。
汎用的な項目は下記の通りです。
- 品名
- 数量
- 単価
- 合計金額
見積もりデータを蓄積できるので、過去に作成した内容を流用し、類似案件の見積もりを効率的に作成することも可能です。
また、合計金額や消費税などを自動的に計算する自動計算機能を設定すれば、手計算によるミスを防ぎ、正確な見積もりを作成できます。
荷役・出荷管理
製造した製品の荷役・出荷を管理するための機能です。
仕分け・検品・出荷を一括で管理できるだけでなく、進捗状況も把握できます。
倉庫や取引先との円滑な情報共有ができるため、出荷時のトラブルを避けやすくなります。
請求支払管理
取引先への請求支払を管理する機能です。
書類作成の負担を軽減するだけでなく、請求状況を可視化することで、支払い関連のトラブル回避に役立ちます。
統計・分析
製造・在庫・受注案件や発注案件などのデータや情報を統計、分析するための機能です。
統計・分析機能は自社の経営状況を把握できるうえに、事業計画を作成するうえでも不可欠です。
製品によっては統計・分析の結果をグラフ化したり、CSVにしたりできるため、経営会議などでの資料作成に役立ちます。

製造業で受発注システムを導入する6つのメリット

製造業で受発注システムを導入すると、以下のようなメリットを得られます。
- 受発注業務の効率化
- システム化による業務の属人化の解消
- スムーズな情報共有で製造プロセスを透明化
- 自動化によるミスやトラブルの削減
- 顧客満足度の向上
- 在庫欠品・過剰在庫の回避
メリットを把握すれば、実際に受発注システムを導入した際の効果をイメージしやすくなるはずです。
それぞれ順番に解説します。
受発注業務の効率化
受発注業務の効率は、受発注システム導入で大幅に改善されます。
アナログな対応に依存していると、多くの手間と時間を要し、業務効率が低下してしまうからです。
従来、受発注業務は電話やFAXでのやり取り、手書きの伝票作成、データの入力作業など、多くの手作業が発生していました。
その際、入力ミスが発生したり、確認作業に時間がかかったり、各部門間の情報伝達に遅延や誤りが発生したりと、製造リードタイムの長期化を招いていたことは否めません。
しかし、受発注情報の電子化・自動化を行えば、手作業による入力ミスや確認作業の手間を大幅に削減できます。
ゆえに、受発注システムの導入は、効率化を軸とした企業全体の生産性向上につながります。
システム化による業務の属人化の解消
システム化による業務の属人化を解消できる点も、受発注業務を導入した際に得られるメリットです。
受発注システムを導入すれば、業務プロセスが標準化されるため、特定の従業員のスキルに依存する状況を解消できます。
属人化の解消は人事異動や退職などで生産性が低下する状況を防ぐうえで欠かせない取り組みです。
従業員のスキルの均質化にもつながります。
スムーズな情報共有で製造プロセスを透明化
受発注システムがあれば、従業員同士でスムーズな情報共有ができるため、製造プロセスの透明化が可能です。
受発注システムは進捗状況や在庫状況を一元管理できるうえに、リアルタイムでの情報共有が可能です。
情報共有にタイムラグが生じないため、従業員は常に製造プロセスの最新の情報を把握して業務に取り組めます。
製造プロセスの透明化は、ミスやトラブルを防止できるだけでなく、自社内の状況を正確に把握するうえでも重要です。
突然大量の受注が発生しても、状況に即した適切な判断がしやすくなります。
自動化によるミスやトラブルの削減
受発注システムで受発注業務を自動化すれば、ミスやトラブルの削減が可能です。
アナログな手法だと手入力によるミスや、情報共有時の言い間違い・聞き間違いのような伝達ミスが起きやすくなります。
取引先とのやり取りでミスが発生すれば、製造ラインに影響を与えるトラブルに発展しかねません。
受発注システムによる自動化は、データのまま情報共有できるため、手入力によるミスや伝達ミスを削減できます。
さらに各部門に電話やFAXで連絡する手間も省けるので、情報共有の円滑化も可能です。
顧客満足度の向上
受発注システムはミスやトラブルを削減し、業務効率化によって製造のスピードや生産性を改善できるため、顧客満足度の向上が期待できます。
加えて、受発注システムで煩雑な業務を効率化すれば、浮いた時間で従業員が営業活動や宣伝活動に専念できます。
顧客への丁寧なアプローチやアフターフォローができる機会も増えるので、さらなる顧客満足度の向上を目指せるはずです。
在庫欠品・過剰在庫の回避
在庫欠品・過剰在庫の回避も、受発注システムを導入すれば実現しやすくなります。
受発注システムは受発注だけでなく、在庫を管理・把握する機能を搭載しています。
案件数と在庫状況を常に参照できるため、常に適正な在庫の維持が容易です。
在庫欠品や過剰在庫の防止は、コストの削減や機会損失を回避するうえで不可欠な取り組みです。
在庫を適正化すれば、収益の最大化にもつながります。
製造業で受発注システムを導入する3つの注意点

製造業で受発注システムを導入する際は、以下のような注意点を意識しなければなりません。
- 導入コスト・運用コストが発生する
- 取引先も同じシステムを導入する必要がある
- システム運用の定着に時間がかかる
受発注システムの導入で得られる費用対効果を高めるためにも、あらかじめ注意点を正確に把握しましょう。
導入コスト・運用コストが発生する
受発注システムを導入すれば、当然導入コスト・運用コストが発生します。
特にオンプレミス型の受発注システムだと、導入時点で数百万円単位のコストが発生することも珍しくありません。
さらに保守管理やアップデートも発生するため、運用コストも高くなります。
もちろん、クラウド型のようにリーズナブルに導入できる受発注システムを選べば、導入コストや運用コストの抑制も可能です。
しかし、コストを優先するあまり機能面で妥協すると、受発注システムを導入しても想定した効果を得られなくなります。
取引先も同じシステムを導入する必要がある
受発注システムは受注側・発注側それぞれが同じシステムを導入しなければ運用できません。
しかし、アナログな手法を多用する取引先だと、導入時のコストや手間を嫌い、受発注システムの導入に二の足を踏む場合があります。
さらに受発注システムの導入は業務プロセスを大きく変更する可能性があるため、取引先から理解を得られない恐れがあります。
システム運用の定着に時間がかかる
受発注システムを導入しても、運用が定着するには一定の時間がかかることには注意しましょう。
受発注システムは製品によって機能やインタフェースが違うため、当然使用感も異なります。
どれだけ優れた受発注システムを導入しても、従業員が適切に扱えなければ効果を発揮しません。
特にアナログな手法に頼ってきた現場だと、受発注システムの導入による業務プロセスの変更に従業員がついていけない可能性があります。
システム運用が定着しない場合、受発注システムの導入がかえって現場の混乱や業務の煩雑化を招くことになりかねません。
製造業向けの受発注システムの選び方

本章では製造業向けの受発注システムの選び方を解説します。
受発注システムを選ぶ際は、以下のポイントをチェックしましょう。
- 搭載している機能を確認する
- 他システムと連携できるものを選ぶ
- 拡張性をチェックする
- 導入のしやすさ・サポート体制に注目する
それぞれのポイントを意識するだけでも、自社に適した受発注システムを選びやすくなります。
搭載している機能を確認する
受発注システムに搭載されている機能は必ず確認しましょう。
受発注システムにはさまざまな機能が搭載されており、製品によっては任意で追加できるものもあります。
しかし、不要な機能や使い道がない機能が搭載されているケースも少なくありません。
もちろん、使う頻度が少ない機能を追加すれば余計にコストが高くなります。
受発注システムで使用できる機能は、現場のニーズや課題に合わせて確認しましょう。
必要な機能をあらかじめ決めておけば、有用性が高い受発注システムを導入できます。
他システムと連携できるものを選ぶ
在庫管理システム・会計システム・生産管理システムなど、すでに現場で利用しているシステムがある場合、連携して運用できる受発注システムを選びましょう。
受発注システムのなかには、他システムと連携することで、統括的に運用できるものがあります。
既存のシステムと連携できれば、データの共有がしやすくなり、業務のさらなる効率化が望めます。
逆に他システムと連携できない受発注システムだと、データの共有ができず、記録作業が増えるなど、かえって業務負担が重くなりかねません。
新しい受発注システムの導入は、既存のシステムとの連携を念頭に置いて検討しましょう。
拡張性をチェックする
受発注システムの拡張性もチェックすべきポイントです。
機能の追加や拡張ができる受発注システムなら、事業の変化に合わせた柔軟な運用が期待できます。
特に製造業のさらなる事業拡大を目指すなら、受発注システムもそれに合わせて対応できるものでなければなりません。
拡張性が低い受発注システムだと、業務の状況に合わせてシステム自体を入れ替える必要があります。
しかし、システムをすべて入れ替えるとなると、導入コストが発生したり、データの引継などの手間がかかります。
拡張性の高さは先々のコストを抑えるうえで、無視できない要素です。
導入のしやすさ・サポート体制に注目する
受発注システムは導入のしやすさやサポート体制も重要です。
受発注システムは種類によって導入に必要な期間が変わります。
特にオンプレミス型の受発注システムだと、システムに加えて必要なハードウェアを購入しなければならないため、設置に時間がかかります。
対して、クラウド型の受発注システムは製品によっては1日で導入が完了するため、短期間での導入を目指すなら、こちらがおすすめです。
また、ベンダーのサポート体制は受発注システムを円滑に運用するうえで無視できないポイントです。
トラブル発生時の対応がスピーディーなベンダーなら、初めて運用する受発注システムでも安心して導入できます。
受発注システムを導入する際の4つのポイント

受発注システムを導入する際は、以下のようなポイントに注意しましょう。
- 運用コストの把握
- システム運用の定着
- 取引先との連携
- 費用対効果の計算
それぞれのポイントを意識するだけでも、受発注システムの導入をスムーズに進められる可能性が高まります。
運用コストの把握
受発注システムの運用コストは必ず把握しましょう。
受発注システムは有用なシステムですが、運用コストが発生する以上、少なからず収益を圧迫するリスクがあります。
運用コストをよく把握していない状況で導入すれば、運用を継続できなくなる恐れがあります。
受発注システムによっては、定期的なメンテナンスや保守管理のために追加で料金が発生するケースも少なくありません。
想定外のコストに振り回されることがないよう、運用コストは正確に把握しましょう。
システム運用の定着
どれだけ便利でも、受発注システムの運用が現場に定着しなければ意味がありません。
従業員が問題なく受発注システムを運用できるよう、研修の実施やマニュアルの作成を徹底しましょう。
すぐに受発注システムを本稼働させず、試用期間を設ける方法も効果的です。
あらかじめ従業員が運用に慣れる期間を設けておけば、業務プロセスをスムーズに変更できます。
また、ベンダーによっては受発注システムの運用方法を丁寧にレクチャーしてくれる場合があります。
ITスキルに自信がない従業員が多い際は、積極的に活用しましょう。
取引先との連携
取引先との連携も、受発注システムを導入するうえで欠かせない取り組みです。
受発注システムの導入は取引先も対応しなければならないため、互いにスムーズに運用できるように、入念に協議しましょう。
取引先が受発注システムの導入に後ろ向きな場合は、丁寧な説明も必要です。
デジタル化を進めるメリットを提示し、受発注システムを導入する意義を説明すれば、理解してもらえる可能性が高まります。
費用対効果の計算
受発注システムを導入する際は、必ず費用対効果を計算しましょう。
優れた受発注システムを導入しても、期待通りの費用対効果を得られるとは限りません。
機能やインターフェースが現場に合わなければ、かえって作業の煩雑化やコストの増加を招く事態に陥ります。
検討中の受発注システムの費用対効果が低い場合は別の製品を検討するなど、複数のベンダーを比較することも重要です。
自社の状況を参照しながら、費用対効果を最大化できる受発注システムを選びましょう。
受発注システムの導入は製造業のさらなる成長につながる

製造業において、受発注システムの導入は業務の効率化やミス・トラブルの削減などを実現できる施策です。
適切な受発注システムを導入できれば、企業のさらなる成長を実現できる可能性が高まります。
しかし、受発注システムはメリットだけでなく、注意しなければならないポイントも多くあります。
ただ闇雲にシステム化を進めても、運用が定着しないうえに、業務のさらなる煩雑化やコストの増加を招く結果になりかねません。
受発注システムを導入する際は、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。

