【企業向け】海外進出のメリット・デメリットを解説!リスクを減らすポイントは?
こんにちは。Wakka Inc.のラボマネージャーの中垣です。
近年、日本企業の海外拠点への進出が活発になりつつあります。海外進出を成功させるには、そのメリット・デメリットを的確に把握しておくことが不可欠です。
本記事では、海外進出において知っておくべきメリット・デメリット、日本企業が海外に進出する理由について解説します。海外進出の成功に向けたポイントや、海外進出の流れについてもまとめました。
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日本企業の海外進出の現状(傾向と推移)
日本企業の海外進出は増加傾向にある
日本企業の海外進出は近年、増加している傾向にあります。独立行政法人の日本貿易振興機構が実施した調査によると、海外事業への関心および実現が高まっていることがわかりました。
たとえば、海外ビジネスに対する意欲の変化について。
21年の海外市場での売り上げが、感染症の流行以前と比較して増加すると回答した企業が約40%であったのに対して、輸出の拡大を図っている方針の企業は約80%という結果になりました。
これは、国内向けに今ある事業を拡大していくよりも、海外向けにマーケットを展開していく企業が多い傾向を示しています。
また、同調査では海外向けの販売でECサイトを活用する・活用を検討する企業の割合が、国内向け販売での同割合を上回りました。海外拠点をもたないにしても、ECサイトなどを通じて海外で販路を開拓していこうとする流れはトレンドになりつつあります。
海外進出先は中国・アメリカの他に東南アジアが多い
海外進出先に選ばれる国には、中国やアメリカといった、人口が多く発展した場所が多い傾向にあります。
近年は、それに加えて東南アジア諸国に拠点をおく流れが見られつつあります。東南アジアの中で、日系企業の進出先として多く見られるのは、
- タイ
- インドネシア
- ベトナム
です。とくにタイの増加は顕著に見られ、外務省の『海外進出日系企業拠点数調査』によれば、タイにおける日本企業の海外進出の拠点数は、18年で約1800件であったのに対して、19年には約4000件に到達しています。
なぜ、これらの国への日系企業の海外進出が多く見られるのでしょうか?国ごとに主な理由を詳しく解説します。
タイ
タイは、物価の安さと人件費の安さが、海外進出先に選ばれる主な理由です。タイの人件費は日本の約4分の1しかなく、人材確保に対する問題が少なくなる傾向があります。
また物価に関しては、日本の田舎で暮らすのと同程度の生活費があれば、タイの首都であるバンコクでも十分豊かな生活が可能です。その分、タイの平均年収は低めとなっています。
物価に加えて税制面でも、日本と比較した場合に非常に少ない負担ですみます。消費税はもちろんとして、法人税や付加価値税が少ないため、日系企業が進出しやすい環境です。
実際に、ホンダやマツダといった日系自動車メーカーの生産拠点や、三菱電機やコニカミノルタといったメーカーの拠点はタイに進出しています。
インドネシア
インドネシアでは天然資源が豊富にとれることから、さまざまな企業の進出が見られます。
生産業にかかせない石炭や天然ガスをはじめとして、穀物類や魚介類といった農産物生産も多いため、第一次産業から第三次産業まで幅広い業界から注目されている海外拠点です。
日系企業の進出例としては、京セラや資生堂、その他サービス業の企業が進出しています。
ベトナム
ベトナムでは漁業や農業など、第一次産業の側面が強く、かつてはこれらの輸入先として人気でした。
さらに近年は、第一次産業での強みを維持しつつ、IT産業を活発化させる流れが見られるようになっています。そのかいあってか、ベトナムには優秀なIT人材が多いです。
また、人件費や物価の相場も日本と比較して低めで、予算問題を緩和してくれるメリットもあります。日本企業の進出例としては、パナソニックやヤマハ、イオンといった大手企業の進出が見られます。また飲食業界の進出も多いです。
日本企業が海外拠点に進出する理由
なぜ多くの日本企業が、我先に海外へ進出しようとするのでしょうか?
海外進出が活発な理由を、詳しく見ていきましょう。
国内市場規模が縮小傾向にある
現在、日本では国内市場規模が縮小傾向にあることが問題視されています。主な原因となっているのは、少子高齢化と人口急減です。
ご存じの通り、日本は少子高齢化が深刻な社会問題となっています。高齢者への制度の充実、日本の医療技術の発達など、さまざまな要因が重なって引き起こされたものです。
さらに、景気の不況などによる人口急減も、日本が抱える問題のひとつです。
- 家庭の経済状況が厳しく、子どもを養う余裕がない
- 晩婚化や未婚化により、少子化が進んでいる
など、複雑な要素が混在することで人口が減少しています。
このような問題により、日本では将来的に生産年齢人口が大きく減少すると予想されています。厚労省の統計によると、2014年に約6,000万人いた生産年齢人口は、
- 2030年には約5,300万人
- 2060年には約3,700万人
にまで減少してしまうことが推定されているのです。
また労働人口の減少によって、国内のGDPは大きく低下し、近年の国内市場規模が縮小してしまうことが懸念されています。顧客の減少による競争の激化なども、日本企業が海外進出を検討する理由になっています。
海外市場規模は拡大が見込まれている
日本における高齢化・人口急減の傾向とは対照的に、海外諸国では人口増加の動きが高まっています。2020年における世界の人口はおよそ75億人ですが、2050年には97億人にまで増加すると推定されています。
とくに、
- インド
- 中国
- 東南アジア
での増加率が高く、そうした地域での市場規模の拡大が見込まれます。現にそれらの地域に拠点を設置する企業は、日本に限らず多数存在します。
インドはもともとIT大国としての側面があり、GAFAの拠点や大手IT企業の本社があることで有名です。中国はGDPの増加率が非常に高い国であり、優秀な人材も多く見られることから、新たな分野での開拓が顕著に進んでいる地域です。
グローバル化にともなう競争で生き抜くため
現代の日本で成功している企業は、そのほとんどがグローバルに事業を展開しています。IT業界はもちろんとして、
- サービス業界
- 建築業界
- 飲食業界
など、実に多種多様な業界から、海外進出を果たしている企業が多いことがわかります。
世界的に事業展開をしている企業は、マーケティング戦略および経営方針が非常に明快かつ正確です。
ドメスティックな事業展開に固執していると、マーケティングや経営に強い海外企業が国内へ参入してきたときに、市場を奪われ淘汰されてしまうかもしれません。販路を複数確保して多数のマーケットで勝負していくことで、売上の拡大だけではく、リスクの分散にもなるのです。
日本企業は、とくにものづくりやITの分野で技術力における高い評価を受けています。高い技術力をもとにしてグローバルにビジネスを展開していけば、グローバル化の波に取り残されることなく、海外の企業とも戦え、新たな販路を開拓できるでしょう。
このような理由から、これまで国内向けにビジネスを展開していた多数の日本企業が、積極的に海外進出をする流れが高まっているのです。
生産拠点を海外に移転することによる恩恵
生産コストや人件費をおさえるために、海外進出を果たす企業は多いです。日本の高い税制から解放されるため、法人税・付加価値税などの税金も安くすみます。
先ほどご紹介したように、日本企業の多くが、コストの安い地域である東南アジアへと進出しています。
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海外進出のメリットとは?
日本企業が海外進出をする理由について、ご理解いただけたでしょうか?
ここからは、日本の企業が海外に進出するメリットを5つご紹介します。
販路の開拓および拡大
まず大きなメリットとしてあげられるのは、新たなマーケットに参入でき、販路の開拓および拡大が可能であることです。
厚生労働省の統計によれば、日本の人口は10年連続で減少しており、2022年で1億人を超えていた日本の総人口は、2060年に9,000万人を下回り、高齢者率が40%を超える水準になるという予測が出ています。
人口が減ると、
- 労働者人口の減少による市場の縮小
- 顧客減少による競争の激化
といった問題が生じる可能性があります。
- AIの導入による業務効率化
- 法の改正による消費率の上昇
- ベーシックインカム制度の導入
などの対策が議論されてはいるものの、生産人口の低下を避けるのは難しい状況です。
しかし海外では日本とは対照的に、
- 人口増加にともなう生産年齢人口の増加
- 最低賃金の上昇による消費サイクルの強まり
といった動きが見られるため、むしろ市場規模は増加する傾向にあります。
とくにまだ発展途上にある中国やインド、東南アジア諸国では、市場の拡大への期待は大きいです。
発展途上の地域では、日本の高いテクノロジーはまだ浸透しておらず、先端技術を持ち込んで事業を展開することで、国内で得られる数倍の利益を得られる可能性があります。
人件費・材料費といったコストの削減
次にあげられる海外進出のメリットは、人件費・材料費といったコストの削減です。
まずは人件費。人件費は、月の平均収入を指標として高いか安いかが判断されます。日本だと約18~25万が平均的な数値となっており、これをドル換算すると約2,000ドルです。
では、東南アジア諸国での人件費はどうなっているでしょうか?海外進出がとくに活発なベトナム、タイ、インドネシアに加えて、中国での数値も調べました。2020年のデータによると、製造業作業員の平均月収は、
- 中国で約500ドル
- タイで約450ドル
- ベトナムで約250ドル
- インドネシアで約250ドル
という結果になっています。つまり、それぞれの国で作業員を雇用するには、
- 中国では日本の約4分の1、
- タイでは約4分の1、
- ベトナムでは約8分の1、
- インドネシアでは約8分の1
程度の人件費ですみます。生産拠点をこれらの国に進出させる場合は、とくに恩恵を得やすいでしょう。
さらに材料費をはじめとした物価が、日本と比較して低いこともメリットのひとつです。NUMBEOの物価データによると、ニューヨークでの物価を100とした場合、
- 東京/日本の物価は65
- バンコク/タイの物価は40
- ジャカルタ/インドネシアの物価は30
- ホーチミン/ベトナムの物価は30
という指標データが出ています。つまり、東京の物価と比較した場合、東南アジアの物価の相場は日本の約半分の水準です。この数値は家賃も含めた生活全般の水準なので、純粋なモノの物価でいうとさらに差が出ます。
海外に進出拠点をおくことによって、日本でマーケットを展開した場合の数分の1のコストでビジネスが展開できるようになるのです。
税金対策
3つ目のメリットは、税金対策によるコスト対策です。海外で事業を展開する場合も当然税金はかかりますが、日本よりも税金対策になるような制度を採用している国があります。
とくに海外進出という意味では、税制面で外国企業を優遇をする制度を設けている国をおさえておくのがよいでしょう。
大変有名な例として、中国や東南アジア諸国での経済特区制度があります。これは、ある特定の地域で事業を展開する企業に対して、法人税や付加価値税などさまざまな税金を緩和するという政策です。
この他にも、ベトナムなど単純に税率が低い国も進出先の候補に入ります。
税金は、マーケットで商売をする限り半永久的にかかってくる負担なので、長期的な事業を見据える際にはとくに重要視すべきポイントです。
新しいアイデアにつながるシナジー効果
4つ目のメリットとして、海外で事業を展開することで、新しいサービスや商品につながるようなアイデアを得られるなど、シナジー効果が期待できます。
日本と海外では文化や風習が大きく異なっており、日本では決して得られないような知見が、海外では当然のように風土として浸透していることがあります。
逆に日本では日常となっているモノやサービスが、海外の地元民からすると目新しかったり、理解されにくかったりすることもめずらしくありません。各地域における文化・思考を理解する過程で、新しいアイデアやサービス開発が見込めます。
また、現地のビジネスパートナーと提携して事業を推進することで、海外のビジネスノウハウを吸収し、既存のビジネスをパワーアップさせることもできます。多くの日本人があっと驚くような、すばらしいアイデアが生まれるかもしれません。
海外で得たノウハウを、日本に帰って新たなサービス展開に活かせば、マーケットの開拓へとつながる可能性は十分にあります。もちろん海外でうまくいけば、よりグローバルに展開する選択肢も生まれます。
企業価値の向上
最後にあげられるメリットは、企業価値の向上です。グローバル化を推進している企業の多くは、ブランド力を持ち、国内外で高い評価を得ています。
とくにIT業界においては、ほとんどの大企業がグローバル化を推進して、世界各地で大きなシェアを持っています。
このような事実から、「グローバル化が進んでいる企業は、事業がうまくいっている」と感じる傾向にあるのです。
逆に国内向けにしか事業を展開していない企業は、いくらサービスがよかったとしても、グローバルな企業と比較するとマーケット規模が小さく見えてしまう恐れがあります。
また、ほかの顧客や企業と取引をする際にも、「○○社はグローバル化を推進しているから、将来的な期待値も高そうだ」と、積極的な支援を受けられる可能性が高まります。
海外進出のデメリットとは?
海外進出にはさまざまなメリットがあり、「これなら日本で事業展開する意味はないのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし海外進出にもデメリットは存在しています。
メリットとデメリットを比較して、採算がとれるビジョンが見えたら事業展開をするべきで、経営者はどちらの側面についても詳しく理解することが必要です。ここからは、海外進出のデメリットを5つご紹介します。
人材のマネジメントが難しい
海外における人材のマネジメントは、日本のそれと比較すると非常に難易度が高く、大きなデメリットのひとつといえます。
まず海外における人材は、日本よりもはるかに流動的な傾向があります。
苦労をしてようやく会社に引き入れた優秀な人材であっても、待遇面や環境・やりがいなどがまさっている企業があれば、あっという間にそちらに流れていってしまうのです。
日本でも転職の流れが一般化しつつあるものの、海外では「転職は当たり前だよね」という文化が浸透していることを理解しておかなければなりません。
また、外国人とコミュニケーションをとらなければならず、人材育成やメンタルケアも日本と同じわけにはいきません。拠点先の国の文化や経済、思想に沿った人材のマネジメントをおこなっていく必要があるのです。
また、海外では人件費も不安定となるため、予算の段階から考慮する必要もあるでしょう。
海外の法規制による事業への支障
海外の法規制によって事業の幅が限定されることがあるのも、海外進出のデメリットのひとつです。とくに有名なのはREACHやRoHSといった、さまざまな製品に含まれている化学物質に関する規制です。
これによって日本で製造できる医薬品・殺虫剤などが、海外では規制されるケースがあります。規制の存在を知らずに事業をやってしまうと、大きな罰則が下り、場合によっては前科となってしまうケースも。
また最近ではSDGsがトレンドで、脱炭素化に向けて排気ガスなどの規制が厳しくなってきています。生産業でマーケット開拓を考えている場合は、とくに注意が必要です。
海外進出先の法規制について網羅的に調査するのは難しいので、専門のコンサルタントと相談するのがよいでしょう。
カントリーリスク・為替レート下落のリスク
拠点先の現地における法制度や規制、または政治情勢や治安のよさといった、その国固有のリスクのことをカントリーリスクと呼びます。事業者として現地でビジネスをおこなう際には注意しておきたいポイントです。
とくに事業者が注意すべきは、カントリーリスクに派生して起こる、為替レートの変動や証券市場の状況です。
たとえば近年ロシアが閉鎖的な経済圏を築いたことによって、ロシアに海外進出の拠点を設置していた事業者は厳しい状況を強いられました。ロシアの通貨であるルーブルが大幅に下落したり、主要な証券会社との取引が国内でストップしたりと、為替および証券において大混乱が発生しました。
事業内容にかかわらず、一方的に不利益をこうむるリスクがあることは、頭に入れておくべきでしょう。
過去には、債務不履行によって国全体の経済が破綻してしまったケースすらあります。国の政策や経済状況には常に注意を払い、必要なら国内に戻ることも視野にいれておきましょう。
言語の壁
4つ目は、国が違えば必ずつきまとう問題である言語の壁です。日本では英語教育が推進されてきていますが、まだまだ英語が日常的に使えるレベルには達していないのが現状です。
そのため、せっかく英語が通じるような場所であっても、英語力のある人材を確保しない限り、新たな人材やツールの導入にコストがかかります。
たとえばインドネシアや中国では英語がある程度通じるため、英語ができればなんとかなるのです。しかしタイやベトナムなど公用語が英語でない国では、英語による円滑なコミュニケーションは期待できないかもしれません。
言語が違えば、簡単なコミュニケーションにも時間がかかりますし、スピードが命の新規事業においては命取りの要素です。
海外進出先として設定する国では、どういった言語が通じて、そのためには何を準備すればよいのか、事前に検討しておく必要があります。
日本で成功するものが海外で成功するとは限らない
最後にあげる海外進出のデメリットは、日本で成功している事業が、海外でも同じように成功するとは限らないことです。一例として、ソニーが中国に進出した際のエピソードをご紹介します。
2016年、ソニーの中国工場は、現地の経済衰退によって、中国での生産工場を撤退させる必要がありました。それにともなって、中国で雇用していた作業員約4,000人を、一斉に現地の別企業に流すことにしたのです。
日本だとまかり通った可能性が高いですが、左遷を受けた中国現地の作業員たちは、一斉にストライキを決行しました。これにより、ソニーは作業員全員に対して賠償金を支払うことになり、トータルの収支で中国への海外進出は失敗に終わりました。
出典:ソニー中国工場で大規模ストライキ 売却に反発、補償要求 「ごね得」? – SankeiBiz(サンケイビズ)
このように、文化や思想の違いを理解しておかないと、結局損をして終わってしまうリスクもあるのです。また、需要と供給のバランスを把握していない、マーケット開拓は失敗に終わります。
たとえば漁業や水産業が盛んなノルウェーなどで、日本の魚を広げるビジネスを展開しようとしても、よほどの希少性がない限り成功は見込めないでしょう。
海外進出先の国における文化や思想・市場の状況をしっかりと調査しておくことは、海外ビジネスをおこなう上で不可欠です。
海外進出のリスクを減らすポイントは?
海外進出には、さまざまなメリットおよびデメリットがあることがおわかりいただけたかと思います。ここからは、実際に海外進出をおこなう際に、リスクを減らすために意識しておくべきポイントを4つ解説します。
マーケットの情報をリサーチしておく
海外進出先でのマーケットの情報を、事前にリサーチしておくことは必要不可欠です。
既存のマーケットに踏み込んでいく際には、「競合企業はどのようにしてビジネスを展開しているか?」、「どれだけ売れていてどれだけの粗利があるのか?」
新しいビジネスをする際には、「拠点先で十分な販売先を確保できるのかどうか?」、「今から売る商品はどれだけ売れる見込みがあるのか?」といった情報をリサーチする必要があります。
現状のマーケットはもちろんとして、これから推定される未来のマーケットも見通しておくことが大切です。
また、日本の市場や類似マーケットとの比較も、進出先の市場の規模感やポジショニングを理解するのに役立つでしょう。
すでに国内事業で成果がある場合には、リサーチした情報を事業戦略や売り上げ予測などに積極的に活かすことで、成功の可能性を上げられます。
顧客層を把握しておく
海外進出の拠点先の顧客と、日本の顧客とでは、需要が一致しないこともあります。
たとえば熱帯地域のインドネシア人に防寒用のコートを販売しても、おそらく誰も買ってくれません。英語圏の人に英語の教科書を販売しても、手に取る人すらいないでしょう。
現地住民の性質をよく知り、「何を販売すれば、成功の可能性が高いのか?」をしっかりと検討する必要があります。
現地のユーザーの求めるものに的確に答えられれば、事業は軌道に乗って順調に成長していくでしょう。
経済状況・物価の相場を調べておく
海外拠点先の経済状況を把握しておくことは、自社をリスクから守るために大切です。
前述の通り、拠点先の経済状況が悪ければ、どんなにいいビジネスを展開しても大きな利益を得られる可能性は低いです。事業の破綻を防ぐためにも、経済を見通す眼を養いましょう。
また、拠点先の物価の相場を把握していくことも大切です。物販ビジネスでは、とくに物価は利益に直結しています。物価が安ければ、その分利益も少なくなるのです。
ただし物価が安ければ、
- 事業の参入障壁が下がる
- 事業にかかるコストが低い
などのメリットもあるので、うまくバランスをとって運営していく必要があるでしょう。
メリット・デメリットを慎重に検討しておく
再度念を押すようですが、海外進出のメリットおよびデメリットは慎重に検討しましょう。メリットは事業を成功させて軌道に乗せるためのカギであり、デメリットは事業を長期的に進めるためのカギとなります。
流れとしては、まず致命的なデメリットについて慎重に検討することです。法規制や経済状況、文化的側面など、どうしようもないものを先に事業と照らし合わせます。
その次にメリットおよびその他のデメリットと事業を照らし合わせ、「いつどこの国へ進出するのが最善の選択なのか?」を検討します。そして明確なビジョンが立った段階で、海外進出へ向けた動きを開始するようにしましょう。
海外拠点に進出するまでの流れ
さて、海外進出のリスクを減らすポイントはご理解いただけたでしょうか?ここからは、海外進出の流れと事業計画の進め方について、具体的にご紹介します。もちろん細かい流れは、
- 展開したい事業の業種
- 取り扱う商品およびサービス
- 進出先の国の状況
によって変化するため、あくまで大まかな流れとしてご理解ください。
1. 海外進出の最終的・中間的な目的をできるだけ明確に設定する
はじめに、海外進出をすることによって達成したい最終的な目的を設定します。
利益で設定してもよいし、事業規模やシェア率などで設定してもよいでしょう。注意すべきは、国内では簡単に実現できない目標であることです。海外に進出するだけの価値のあるビジョンを設定しましょう。
その次には、最終的な目的に向かうまでの、できるだけ具体的な中間目標を設定します。中間目標はたとえば、
「〇〇年までに売上△ドル達成する」
「〇〇までに安定して□でのマーケットを確保する」といったものがよいでしょう。
中間目標を設定することで、短期的な目標が明確になり、海外進出がより現実味を帯びるようになります。
2. 進出拠点とする国を設定する
次に、そのビジネスをおこなうのに最適な海外進出先を検討しましょう。できればいくつか候補をあげて、のちのフェーズで絞っていく流れが理想です。たとえば生産業で、
- できるだけコストをおさえながら事業を推進したいのであれば、物価や人件費の安い場所を選ぶ
- ITや技術で確実にシェアを伸ばしたいのであれば、優秀なIT人材が集まっている国に進出する
といった流れになります。
3. マーケット・顧客・経済といった情報を緻密に調べる
進出先の国が決定したら、その国の
- 市場の状況
- 顧客(ユーザー)の性質・需要
- 経済状況・政治状況
など、事業を進めるにあたって影響してくるであろう情報を収集します。
日系企業がその国に進出して成功した事例があるなら、大いに参考にするべきでしょう。どの進出先の候補もあまりよくなさそうであれば、前に戻って再検討する必要があります。
4. 進出先の現地視察をおこなう
次におこなうのは、進出先の現地視察です。さまざまな情報を収集し、実際に現地でビジネスをする構想が具体化しても、いざその国に行ってみると収集した情報やイメージと異なっていることがあります。
情報が古かったり、経済状況の変化があったりと、現地の状況は必ずしも一様ではありません。今の時代であればわざわざ現地に行かなくても、海外在住の現地パートナーと相談することで、自分のイメージや情報が正しいものであるか確かめられます。
5. 海外の展示会や見本市に出展し、現地での反応をみる
実際に海外進出する前には、展示会や見本市といった短期間のビジネスをおこないましょう。
「現地の反応と想定した反応が一致しているか?」を調査するのが通例です。テストマーケティングによって失敗する可能性を大幅に減らせますし、失敗したとしても損失を最小限におさえられます。
国内にいるとどうしても日本人の視点で物事を考えがちなので、こういったチャンスを活用しない手はないでしょう。
6. 必要な予算を策定する
現地での反応がよければ、いよいよ本格的な法人化の流れに入っていきます。目標設定のフェーズで決定した具体的な目標を実現するための、あらゆるコストを予算として計上しましょう。
必要予算の策定が完了したら、将来的な売り上げや月の経費などの予算計画を立てていく流れになります。
7. 資金調達をおこなう
ここまでの流れで、具体的な事業計画書が作成できたかと思います。いよいよこれを使って助成金や補助金、融資および投資といった資金調達を行っていきましょう。
会社設立と聞くと銀行からの融資がメジャーですが、今はほかの手段も充実しています。たとえば
- 将来的に高い市場価値が見込まれる企業に、積極的に投資をおこなう機関に売り出す(ベンチャーキャピタル)
- JICA(独立行政法人国際協力機構)による中小企業・SDGs海外ビジネス支援事業を活用する
など多数の融資および投資の方法があります。
8. 現地で拠点となる会社を設立
必要な資金が調達できたら、いよいよ拠点先に会社を設立する法人登記をおこないます。海外での法人登記は日本とは異なっているため、心配であればプロの登記代行会社に依頼することも視野にいれておきましょう。
進出国の情報を十分に調べ、緻密な戦略で海外進出を成功させよう
いかがでしたか?
今回の記事では、日系企業が海外進出をする際のメリット・デメリットやリスクを減らすポイント、海外進出の流れを解説しました。
海外は変動が激しく、とくに進出先として多い東南アジアやインド・中国などは目まぐるしい市場激化、技術革新が日常的に起こっています。最新の情報を正確に読み取り、現在と未来を的確に予測して、ぜひとも貴社のビジネスを成功に導いてください。
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