べトナム進出で実績をあげた日系ERP導入支援企業(社名:ITER Consulting Vietnam Co., Ltd) さんへインタビューしてみた

2024.09.16
ベトナム情報
中垣圭嗣
ITEC
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目次

はじめに

みなさんこんにちは。Wakka Inc.ラボマネージャーの中垣です。

今回は、ベトナムへ進出した日系ERP導入支援企業「ITER Consulting Vietnam Co., Ltd」代表の里吉様に、インタビューということで、ベトナム進出についてのお話を聞いてみました。

ITER Consulting Vietnam Co., Ltdは、東京に本社を置き、日本の製造業・卸売業向けに、基幹システム(Enterprise Resource Planning(以下、ERP))導入を支援しているイーターコンサルティング株式会社のベトナム拠点です。

里吉様のこれまでのキャリアについて教えて下さい

里吉 美仁様(以下、里吉様):
2002年:大学卒業後、組み込み系のソフトウェア株式会社に入社。

2011年:31歳の時に、2度目の転職をし、ベトナム・ホーチミンのオフショア開発センターで働きはじめました。1年間は現地のパートナー会社に常駐し、その後、自社現地法人を設立。

2018年:38歳のときに1度目の起業。
IT以外のことをベトナムでやってみようと考えて、化粧品、食料品等の輸入販売業をはじめました。

詳細については、著書「ベトナムで起業した男 – ビジネスも人生も幸せにする生き方」もぜひご覧ください。
(出版社 ‏ : ‎ 株式会社Wonder Note 2020/10/14)」

2022年:42歳のときに2度目の起業。
ベトナムでの経験を活かし、ベトナムの従業員と共にイーターコンサルティング株式会社を設立。

貴社事業の概要について教えてください。

里吉様 :
イーターコンサルティング株式会社は、日本の製造業・卸売業向けに、基幹システム(ERP)導入を支援しています。
東京に本社を置き、フィリピン、ベトナム、インドネシアに海外拠点を設立することで、計4カ国150名のITコンサルタントでERPの導入支援をしています。

特に、2027年に旧バージョンのサポートが終了する世界シェアトップのERP「SAP ECC」の最新バージョン「SAP S4 HANA」アップグレード対応を中心に取り組んでいます。

当社の特徴としては、お客様の業務プロセスを理解し再設計する必要があるため、製造業や卸売業の販売、生産、購買、経理などの業務経験のある人材を中途採用しています。さらに、当社の人材は、日本および海外現地日系企業で日本語を使って働いた経験を持っています。

一部のテクニカルコンサルタントを除き95%以上が日本語検定N2以上となっています。

ERPの導入には、業務設計、システム設計、システム開発(ERPパッケージのカスタマイズ)、データ移行、業務検証など多くの手順が存在しますが、弊社にはプログラマーがいないため、システム開発においては他社とも連携して進めています。

ベトナム進出の目的について教えてください。

里吉様 :
イーターコンサルティング設立の経緯には、私のベトナムでの経験が深く影響しているため、ベトナムに現地法人を設立することは必然の流れでした。

現在も4カ国のうちハノイ60名、ホーチミン20名と圧倒的にベトナム在住コンサルタントの比率が高く、重要拠点となっています。

ベトナムの事業自体はSAPの導入に絞ってやっています。
理由は大きく以下の2つがあります。

1.  2027年に旧バージョンのサポートが終了する世界シェアトップのERP「SAP ECC」の最新バージョン「SAP S4 HANA」アップグレード対応を中心に取り組んでいる。

2. ベトナムの人材は、貿易業務経験者が多く、手先も器用。

ベトナムの製造業は原材料やパーツを国内だけではなく海外仕入先から輸入する比率が高く、また販売先についても海外比率が高いため、貿易業務に精通した人材を獲得しやすいという特徴があります。
余談ですが、ベトナムの文系大学で最も難易度の高いと言われている大学は「貿易大学」であることからもこの領域に強い国であるとも言えます。

昔からベトナムを形容する言葉として「手先が器用で真面目で勤勉」というものがありますが、数十年が経過した今でもこのような人材を獲得できるのがベトナムの強みだと思っています。

また、ここ20年の日本向けオフショア開発産業の発展で、日本型のソフトウェア開発の親和性が非常に高いことも大きな理由になっています。

フィリピン、インドネシアの各拠点を選択した決め手について教えてください。

里吉様 :
ベトナム以外で、フィリピン、インドネシアの拠点を選択した決め手としては、人口ですね。人材を十分に集めやすいという軸で考えた際に、ベトナムを含めて、フィリピン、インドネシアの人口は1億人以上となります。

これが東南アジアの各拠点への進出の決め手となりました。

もし、今後の事業拡大に伴い、東南アジアで拠点を増やす場合には、各拠点(フィリピン、ベトナム、インドネシア)の都市単位で複数拠点をもつのもありだと考えています。

▼都市単位の拠点拡張構想案
・ベトナムの場合…  首都:ハノイ拠点、  都市:ホーチミン拠点
・フィリピンの場合… 首都:マニラ拠点、  都市:セブ島拠点
・インドネシアの場合…首都:ジャカルタ拠点、都市:スラバヤ拠点

ベトナムでの業務について教えてください。

里吉様 :
当社においては、日本、ベトナム、フィリピン、インドネシアの各拠点において特に役割を分けていません。全社員がERPの導入コンサルタントです。

また、当社の方針は管理部門を持たないことです。総務、経理、人事、ファシリティ、マーケティングは全て外部委託しています。これにより本業であるERP導入支援事業のみに全神経を集中させることができます。

特に、ベトナムにおいては、直近20年間で日系企業のべ数千社が進出したことから管理部門の外部委託を請け負う企業が成熟しており、事業規模に合わせて松竹梅(松:会計Big4 竹:日系独立 梅:ローカル系)を選ぶことが可能です。

日本語対応可能な企業も多いため、日系企業にとっては理想的な進出環境であることは間違いありません。

一方で、外部委託の難しい営業領域については、経営陣一丸となってやっていますが、ERPの特性上ベトナムだけでシステム導入されるケースは少なく、多くは、日本本社で企画・構築されそのシステムをベトナムに横展開(ロールアウトと呼ばれます)されることが多いため、基本的に、日本国内で営業活動を行っています。

進出のメリットデメリットについて教えてください。

里吉様 :
当社では、日本でもコンサルタントの採用活動を行っていますが、日本とベトナムを比べると応募数で10倍以上の差があります。

日本で月10名の応募に対して、ベトナムでは月100名以上の応募があります。そのうち40名程度が書類選考を通過し、10名程度が最終選考に残ります。この状況を作ることにより、ERP導入コンサルタントとして、マッチしていない人材を無理に雇用育成する必要がなく、非常に効率的な運営をすることが可能です。

さらに数年前から日本在留ベトナム人(留学生・就労含む)は40万人を超えており、COVID流行の2019年以降多くの人がベトナムに還流しているという状況も人材市場にとってプラスに働いています。

10年前ベトナム進出に苦労した経験を持つ人も多いかと思いますが、状況は一転しており、日本語人材ボリュームにおいてはメリットがデメリットをはるかに上回っていると考えます。

デメリットをあえて挙げるのであれば、人件費に対するオフィスコストの高さです。都市部のオフィスビル平米単価は高止まり状態であり、日本の地方中核都市と比較しても高いという状況です。

かつては人材採用ブランディングのために中心部の新築オフィスビルへ入居する流れもありましたが、コストを抑えられる郊外の戸建てを改装したオフィスや、またはリモートワークを前提としたバーチャル/シェアオフィスを活用する企業も増えています。

ベトナムのSAP導入支援状況について教えてください。

里吉様 :
ベトナム国内企業においてもある程度の規模(売上500億円以上)かつグローバルに展開する企業においては、SAPが導入されていることが多いです。

しかし、多くは欧米・日本を本社とするグローバル製造業・卸売業の現地法人において、主に連結会計のためにSAPが導入されています。

当社においても日系消費財製造業のベトナム現地工場向けSAP導入支援を行っていますが、販売や生産管理においては、現地ITベンダーが導入したシステムが使われ続けるものの、会計領域についてはグローバルで統一するために、SAPへの切り替えを行なったという実績があります。

今後の展開について教えてください。

里吉様 :
SAPバージョンアップ需要に合わせて、2027年に向け引き続きコンサルタントの増員をかけていきたいと考えています。

並行して、在ベトナム日系オフショア開発会社との連携を強化し、現在、主にインドで行われているSAPのカスタマイズ開発のシェアをベトナムで拡大していきたいと考えています。

マクロで見れば、米国の対中経済制裁に端を発する中国製造拠点移転で、ベトナムはインドネシアと並んで注目されています。

労働人口比率で考えると、生産拠点移転総数の4割がインドネシア、2割がベトナムと推定して大きく外れてはいないと思っています。

これによりERPの導入も確実に増えます。

当社には、日本語を扱えてかつベトナム語、インドネシア語をネイティブで話すコンサルタントを抱えているため、これは大きなチャンスであると考えています。

最終的には、夢のような話ではありますが、ERP導入に限らず、経営戦略、業務改善、システム導入、BPOを組み合わせた、会計Big4やAccentureなどの総合コンサルティングファームを目指していきたいと思います。

最後に、海外進出を検討している企業様にメッセージをお願いします。

里吉様 :
いきなり海外へ現地法人を立ててみるのではなく、海外で会社を10年や20年と継続させるためにも知見を持っている海外進出支援のプロへ相談してみることをお薦めします。

プロのサポートがあれば、トータル的にコストを抑えられますし、Wakka Inc.さんには、「法人設立支援ラボ」というサービスがあります。これを使うと初めての海外でも法人設立のハードルを下げられるという点がとても良いと思います。判断に迷った場合、ぜひ選択肢の一つにしてもらうと良いのではないかと思っています。

里吉様、ありがとうございました!

まとめ

イーターコンサルティング株式会社

イーターコンサルティングは、2022年4月に設立されたERP導入支援企業です。
ベトナムの場合、SAPを中心とした導入支援を行っています。
ERPは、製造・卸・物流などの基幹産業を支える情報システムであり、海外製品の利用が主流となっています。

しかし、バージョンアップや技術の進化に追いつくのが難しく、人材不足が深刻化しています。そこで、イーターコンサルティングでは、企業の基幹業務プロセスを理解した外国人高度人材を採用し、ERP導入を提供しています。
まずは話しを聞いてみたいという方はこちらから。

こんな方におすすめです。
・ERPについて知りたい方
・ERP導入を検討されている方
・SAP導入を検討されている方

ベトナム法人設立ラボのご相談はWakka.incまで

伴走型システム開発・開発リソース強化ならオフショアラボ型開発。
Wakka Inc.はラボ型開発・海外法人支援で選ばれて10年。経験豊富なコンサルタントが、初めての海外進出でも手厚くサポートします。
ITベンチャー企業を中心にベトナム進出支援を手掛けてきました。エンジニアの採用支援から法人設立・運営サポートまで一気通貫で対応可能です。まずはサービス資料からという方はこちらから。

この記事を書いた人
中垣圭嗣

WebメディアでPGから管理職まで幅広く経験し、Wakka Inc.に参画。Wakka Inc.のオフショア開発拠点でラボマネジャーを担当し、2013年よりベトナムホーチミンシティに駐在中。最近では自粛生活のなかでベトナム語の勉強にハマっています。

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