DevOpsとは?基礎やアジャイル開発との違いをわかりやすく解説
こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
DevOpsとは、企業体の部門や情報が孤立する状態を指すサイロ化をはじめとした、さまざまな課題の解消につながる手法・考え方です。
部門間の連携力を高めて、柔軟かつ迅速な製品開発を目指す方法として注目されています。
しかし、DevOpsによる改善を成功させるには、基礎知識やポイントを把握しておく必要があります。
本記事では、DevOpsの基礎知識や導入する際のポイントを解説します。
DevOps導入時の7段階や注意点も、あわせてご覧ください。
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DevOpsとは
DevOps(デブオプス)とは、開発(Development)と運用(Operations)の頭文字から生じた新語です。
DevOpsは、流動的なニーズの変化に対応するための手法・考え方で、価値の高いサービスを提供する体制構築を目的として採用する企業が増えています。
本章では、DevOpsの基礎知識を解説します。
DevOpsの目的
DevOpsは、企業のサービスを配信するまでの期間短縮を目的としています。
昨今の社会は、各種のデジタルサービスへの期待値が高まると同時に、ニーズが短期間で変化を続けている状態です。
上記のような状態に対応し、市場に受け入れられるサービスを提供するには、柔軟で迅速なシステム開発が求められています。
より柔軟かつ迅速なシステム開発を実現するには、開発・運用チームの連携力が欠かせません。
なぜなら、連携力は開発・運用チーム間の情報共有力に大きな影響を与え、速やかな情報共有は開発速度の向上につながるからです。
しかし、実際には開発・運用チームの連携力が低いことを課題に感じている企業も多く存在します。
開発・運用チームの連携力が低下する原因のひとつに、それぞれの役割の違いから意見が食い違い、対立関係になりがちなことが挙げられます。
開発・運用チームの対立関係が長く続いた結果、サイロ化が発生して連携に難が生じます。
DevOpsは、開発・運用チームが一丸となり、より価値のあるサービスを提供できる体制構築を目的とした概念です。
複数ツール活用で自動化・効率化を進めるDevOps
DevOpsは、サービス配信にかかる期間短縮のために、さまざまなツールを用いて業務効率化を図ります。
特徴的なのは、ツールを用いて自動化することです。
従来では手作業となっていた業務を自動化することで、開発・運用チームの業務量を削減するとともに、ユーザーに直結する作業に重点を置くことが可能です。
結果的に生産性が向上し、企業としても競争力を獲得できます。
ただし、DevOpsの根幹にあるのは開発・運用チームの連携力強化であることを忘れてはいけません。
優れたツールは、使用者が高い連携力を発揮してこそ十分な効果を発揮します。
DevOpsは、開発・運用チームの連携力を向上させ、ツールによる自動化で業務効率化を促進させる手法です。
DevOpsとアジャイル開発の違い
DevOpsとアジャイル開発の意味を比較してみましょう。
DevOps | 柔軟かつ迅速なシステム開発を実現するための手法・考え方 |
---|---|
アジャイル開発 | 計画・設計・実装・テストの工程を短期間で繰り返す開発手法。機能ごとに開発が進むため、開発途中の仕様変更に対応しやすく柔軟性にすぐれる。 |
アジャイルは素早い・機敏ななどの意味を持っているため、迅速なシステム開発を目指すDevOpsと混同されがちです。
実際にはDevOpsとアジャイル開発では意味合いが異なり、使用するシーンを間違えた場合には誤解を招く恐れがあるため、違いを把握しておくことが大切です。
またシステムの開発手法は、アジャイル開発のほかにウォーターフォール開発があります。
ウォーターフォール開発とは、機能で分けるのではなく、企画・設計・実装・テストの工程ごとに分割して開発する手法です。
仕様決定が初期段階でできてコストを見積もりやすいものの、工程が進むと仕様変更が困難となるのがデメリットです。
ウォーターフォール開発についても、DevOpsやアジャイル開発と混同しないよう、使い方に気を付けてください。
DevOpsの7ステップ
DevOpsは、以下7つのステップを繰り返すことで構成されています。
プラン | 開発要件を定義し、プロジェクトの計画を具体化。 |
---|---|
開発 | 定義した要件に沿ってアプリケーションのビルドを進める。 |
テスト | アプリケーションの動作から、不具合の有無を確認。 |
パッケージング | アプリケーションのリリースに向けた準備を実施。 |
リリース | 運用及び保守作業を開始。 |
モニター | アプリケーションに対する評価を確認。 |
分析 | モニターして得た情報をもとに改善点を分析。 |
DevOpsは、上記の7つを繰り返す中でサービスの質向上と業務効率化を両立させる考え方です。
基本的には、通常のアプリケーション開発の流れと大差はありません。
DevOpsの本質は、開発からリリースまでの工程ではなく、開発・運用チーム間の連携強化です。
したがって、DevチームとOpsチームが同じフロアで協働できるような環境を構築しなければなりません。
DevOpsは、開発関係者の精神面を改革するための考え方という一面があることを覚えておきましょう。
DevOpsを導入する5つのメリット
DevOpsの導入は、企業にさまざまなメリットをもたらします。
本章では、DevOpsを導入したときの5つのメリットを解説します。
スムーズな開発の実現
DevOpsの導入により、チーム間の対立が解消されるため、片方が他方のタスク完了を待つシーンの減少に期待できます。
そのため、開発の進め方がスムーズになり、開発期間の短縮にもつながります。
また、DevOps導入による開発期間の短縮は、コスト削減や迅速なサービス提供の実現など、さらに多くのメリットを創出する上で有用です。
これらを活かせば、企業の市場競争力の強化も可能です。
生産性の向上
DevOpsの導入は、生産性を向上できるのもメリットです。
なぜなら、DevOps導入によって開発期間が短縮されると、より多くのアプリケーション開発が可能となり、生産性が向上するからです。
DevOpsは、DevチームとOpsチームの連携が強化され、対立によって生じていた無駄な時間が省かれます。
よって、業務の効率化にも期待でき、その点においても生産性向上に期待できます。
リリースまでの期間を短縮
DevOpsの導入でチーム間の対立が解消されることで、リリースやプランなどの工程がスムーズに進みます。
片方が得た情報は速やかに共有され、システムの不具合や設計方針の変更などにもスピーディに対応可能です。
結果的に全体の流れが迅速になり、リリースまでの期間短縮につながります。
サービスの質をアップ
DevOpsの導入は、ユーザーからの不具合情報を収集する運用チームと、不具合を解消する開発チームの連携が強化される取り組みです。
チーム間の連携強化は、シームレスな情報共有体制の構築につながり、ユーザーの要望を叶えるまでの時間を短縮できます。
具体的には、バグや不具合の修正や、ニーズに対応した新機能の実装などです。
上記のように、DevOpsはサービスの質を向上できるのがメリットです。
DevOps導入を成功させる6つのポイント
DevOpsを導入するには、組織改革や新たなツールの導入など、多様な要素が求められます。
本章では、DevOps導入を成功させるための6つのポイントを解説します。
チームメンバーがDevOpsの目的を理解
DevOpsの目的は、チーム間の連携力強化や業務効率化などです。
しかし、中には「DevOpsは業務効率化の仕組みのひとつである」と誤解している人がいる点に気を付けましょう。
DevOpsを導入する際は、取り組みが必要な理由や解消できる課題を明確にした上で、目的を共有する仕組みの構築が求められます。
特に、DevOps導入チームのトップメンバーは目的を正しく理解しておかなければなりません。
DevOps導入チームを中心として、基礎知識や目的の理解度を深めてください。
DevOpsは、基礎知識や目的の理解者が多いほどスムーズに導入できます。
組織全体で情報を共有
日本企業の多くは、ウォーターフォール開発が根付いており、DevOpsで生じる変化に反発する風潮があるのが実情です。
そのため、DevOpsを導入している日本企業は少なく、ユーザーのニーズに対応しきれていない一面を擁します。
企業に根付いた風潮を変えるには、組織全体で情報を共有する姿勢や体制構築が欠かせません。
なぜなら、組織全体の情報共有体制がない場合には、DevOpsの考え方を浸透できずに取り組みが暗礁に乗り上げる可能性があるからです。
DevOpsを成功に導くためには、組織全体で正しい知識を共有できる体制の構築が重要です。
継続的インテグレーションの実施
継続的インテグレーション(CI:Continuos Integration)とは、開発に関連した一連の作業を高頻度・継続的に実施する手法を指します。
DevOpsに必要な理由は、継続的インテグレーションがバグや不具合の早期発見に有効であり、開発期間の短縮やサービスの質向上に期待できるからです。
継続的インテグレーションは、専用のツールを活用して自動化する方法が一般的です。
バグや不具合探しの作業を自動化することで、より多く開発でき、生産性が向上します。
継続的デリバリーを実現
継続的デリバリー(CD:Continuos Delivery)とは、開発に関連した作業のほかに、アプリケーションのリリースやデプロイまで範囲を広げて自動化する手法です。
継続的デリバリーは、継続的インテグレーションと同様に、専用のツールを活用して実現する方法が主流です。
自動化の範囲が広がることで、開発チームが不具合の改修や新機能の実装などに集中できます。
そのため、業務効率が向上して、ユーザーの要望への迅速な対応が可能です。
適切なKPIの設定
KPI(Key Performance Indicator)とは、目標達成に向けた進捗状況を観測するための定点観測に活用する指標です。
DevOpsのように、新たな取り組みを開始する際に活用されており、目標の達成度合いを可視化できます。
KPIを活用するメリットは、チームメンバーが進捗を把握しやすくなり、モチベーション低下を防止できることです。
DevOpsは長期的な取り組みになりやすいため、KPIの設定が効果的です。
DevOpsに有効なKPIは以下の4つです。
- 一定期間内のリリース機能数
- 異常を検知するまでの時間
- 異常を解消するまでの時間
- 看過された不具合の数
リリース機能数は、四半期単位で計測するケースが一般的ですが、状況に合わせて変更しても構いません。
KPIは、現実的な数値を見極めて設定するのが成功するポイントです。
現状を踏まえて、DevOps導入でどの程度の向上を見込めるかを精査しましょう。
セキュリティ対策
DevOpsでは、開発段階でのセキュリティチェックの重要性が増します。
その理由は、CI/CDによってリリースが自動化される点から、セキュリティに脆弱性があった場合に重大な損失を受ける可能性があるためです。
損失の具体例としては、不正なスクリプトの書き込み・情報漏えい・データベースの不正操作などが挙げられます。
大切なのは、セキュリティチェックを逃さずに、毎回確実に実施することです。
開発環境や人員配置などに留意しながら、セキュリティチェックを確実に実施できる方法を模索してください。
DevOps導入時の3つの注意点
DevOpsを導入する際は、どのようなトラブルが発生する可能性があるのかを検討し、ある程度対策しておくことが大切です。
あらかじめ対策を練っておくと、トラブルシューティングが動きやすく、業務が妨げられるリスクが減少します。
本章では、DevOps導入時の3つの注意点を解説します。
管理・トラブルシューティングを的確に
DevOpsは、取り組みの中でさまざまなツールや工程を統合して業務効率化を図る手法です。
そのため、DevOpsには多くのツール活用が必須です。
多くのツールを活用するときは、管理・トラブルシューティングが困難になるリスクが想定できます。
理由として、ツールの併用はITインフラストラクチャを複雑化させ、管理・トラブルシューティングに影響するためです。
したがって、DevOpsを導入する際は、ツール管理手法の精査やトラブル発生時の対策をまとめておくことが大切です。
必要コストを算出
DevOpsを実現するには、多くのツールを新たに導入するコストが生じます。
また、DevOpsのリテラシーがあるエンジニアの雇用を要する場合も想定できます。
上記の理由から、DevOpsに取り組む際は、コストの増加に注意が必要です。
コストのシミュレーションで大切なのは、DevOpsには運用コストの削減効果に期待できる点を考慮することだといえます。
DevOpsによって開発期間が短縮されるため、1つのプロジェクトあたりの運用コストを削減することが可能です。
DevOpsにかかるコストのシミュレーションは、プラスとマイナスの両面を捉え、多角的な視野で実行しましょう。
意識改革を徹底
DevOpsは、立場や業務が異なる人が、互いに尊重・尊敬しあう姿勢が求められます。
互いに尊重・尊敬できる姿勢を社内で培うには、管理者やチームスタッフの意識改革が重要です。
企業によっては、意識改革が大きな壁となる場合も想定できます。
しかし、DevOpsは「開発・運用チームの溝をなくす」という考え方があってこその概念です。
意識改革は、課題の把握・具体的な行動の開始などに加えて、トップの率先した行動がポイントです。
DevOpsを成功させるためには、管理者やリーダーを中心とした意識改革を実施しましょう。
DevOpsは複数の課題を解決できる可能性がある
DevOpsは、開発・運用チームの連携力を高め、複数のツールで自動化を推進することで業務効率化及び生産性向上を目的としています。
そのため、運用コストの削減や新機能実装の期間短縮など、多くの課題を解決できる取り組みです。
DevOpsの実現に向けて、大きな壁となるのが、重要な要素である開発・運用チームの溝をなくすことです。
長年にわたって蓄積された互いの禍根は、一朝一夕で拭うのは困難と想定されます。
しかし、DevOpsは今後のユーザーニーズへの対応力として不可欠なものです。
試行錯誤を繰り返しながら、課題解決に向けてDevOpsに取り組んでみましょう。