新規事業における資金調達|資金調達方法の種類や注意点などを解説


こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
新規事業を成功させるうえで、資金調達は重要です。
もし資金調達に失敗すれば、新規事業が頓挫するリスクが急激に高まります。
昨今は資金調達の方法が多様化しており、企業の状況に合わせて採択できるようになりました。
しかし、多様化しているからこそ、資金調達方法は慎重に選ばなければなりません。
本記事では、新規事業の資金調達方法について解説します。
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新規事業における資金調達の重要性

まずは、新規事業における資金調達の重要性を確認しましょう。
本章では資金調達を行う目的や、必要な資金の目安について解説します。
資金調達の目的
資金調達は、文字通り必要な資金を確保するための施策です。
新規事業において、資金調達の目的は立ち上げ資金の確保だけではありません。
新規事業は立ち上げ当初だと財務基盤が安定しないものです。
利益が上がらない状態で人件費や製造費のような各種経費を払わなければならないため、赤字が一定期間続くことも珍しくありません。
対策を立てなければ、運転資金が枯渇しかねません。
資金のショートを防止するためにも、資金調達方法を確立することは、新規事業を立ち上げるうえで不可欠な取り組みです。
必要な資金の目安
新規事業を立ち上げる際に必要な資金は、事業内容や規模によって異なります。
日本政策金融公庫研究所の調査によると、開業資金の平均値・中央値は以下のように推移しています。
2023年の時点で、開業資金の平均値は1027万円・中央値は550万円でした。
一方で、グラフのとおり、開業資金の平均値・中央値は徐々に減っていることがわかります。
業態・業種によっては、開業資金を抑えられる場合もあります。
しかし、安定した経営を実現するには、一定以上の金額を確保しなければなりません。
資金調達方法の代表的な種類

新規事業を立ち上げる際に使える資金調達方法には、以下の6種類があります。
- 自己資金
- 出資
- 融資
- 助成金
- 補助金
- M&A
それぞれの方法の特徴について、それぞれ順番に解説します。
自社の事業に合った方法を選びましょう。
自己資金
自己資金は、ある意味もっともシンプルな資金調達方法です。
起業家が保有する資産を充てることで、新規事業に必要な資金を確保します。
自己資金は、起業家が自身の資金を利用するため、任意のタイミングで自由に資金を活用できる点がメリットです。
金利負担もなく、返済義務もないため、調達先とトラブルを起こすようなこともありません。
しかし、自己資金は運用できる金額に限度があるうえに、事業清算を行うと投入した資金を失うリスクがあります。
出資
出資とは、投資家やベンチャーキャピタルのような企業から資金を出してもらう資金調達方法です。
出資に該当する手法には、以下のようなものがあります。
手法 | 特徴 |
エンジェル投資家からの出資 | 新規事業を専門的にサポートする投資家から資金を提供してもらう |
ベンチャーキャピタルからの出資 | ベンチャーキャピタルから資金を提供してもらう |
クラウドファンディング | Web上で不特定多数の人から資金を集める |
社員持株会 | 社員同士で株を持ち合い、資金を確保する |
近年は、新規事業のような実績に乏しいプロジェクトでも資金を確保できる方法が増えています。
特にエンジェル投資家やベンチャーキャピタルは、スタートアップ企業に対しても積極的に資金を提供してくれるうえに、事業の運営に役立つアドバイスも提供してくれます。
しかし、投資家やベンチャーキャピタルからの出資は、株式の売買を通じて資金を得る方法であるため、持ち株比率に影響を及ぼします。
買い戻し条項を設けるなど、適切な手段を取らなければ、経営権を失うリスクもあるため注意しましょう。
対して、クラウドファンディングや社員持株会は株式保有率に影響を及ぼさない手法です。
特にクラウドファンディングは、多くの企業が資金調達に活用しており、成功した事例も増えています。一方で、クラウドファンディングは出資に当たらない調達方法となる場合もある点、従業員持株会は新株発行ではないので運転資金の調達には当たらない可能性がある点にも、留意しておく必要があります。
ただし、新規事業のクラウドファンディングはユーザーに訴求できるだけのアイデアやストーリーがなければ成功しません。
特典やバックも用意しなければ、目標金額に届かない結果に終わる可能性があります。
融資
融資は金融機関などから資金を借り入れる資金調達方法です。
新規事業の融資はハードルが高い印象がありますが、昨今はスタートアップ向けの融資が増えています。
代表的な融資には以下のようなものがあります。
融資の種類 | 融資する機関 |
銀行からの融資 | 銀行 |
信用金庫からの融資 | 信用金庫 |
制度融資 | 金融機関や信用保証協会と連携した地方自治体 |
新創業融資制度 | 日本政策金融公庫 |
マル経融資 | 商工会議所(1年以上の事業実績が必要) |
新規事業向けの融資は金利が低く設定されているものが多く、返済時の負担が少ないため、利用しやすい点が魅力です。
しかし、融資の種類によっては、実績が求められる場合もあります。
また、申請ができたとしても、審査で通らないリスクがあります。
審査も一定以上時間がかかるため、実際に資金を得られるまでタイムラグが発生する点にも注意しなければなりません。
加えて、返済計画はもちろん、保証や担保を用意するなど、さまざまな準備が必要です。
助成金・補助金
新規事業向けの助成金・補助金も資金調達方法として有効な手段です。
助成金とは、特定の要件を満たした企業に対して支給される資金を意味します。
そのため、要件さえ満たしていれば、基本的に資金を受給できます。
対して、補助金は審査を経て支給を決定する制度です。
補助金によっては通過率が低いものもあるため、確実性が低い点には注意しなければなりません。
新規事業が利用できる助成金・補助金には、以下のようなものがあります。
助成金・補助金の種類 | 特徴 |
ものづくり補助金 | 革新的なサービス・製品の開発を行う中小企業向けの補助金制度 |
IT導入補助金 | ITシステムの導入に対する補助金制度 |
創業補助金・創業助成金 | 国や東京都中小企業振興公社などが実施している創業者向けの補助金・助成金制度 |
JAPANブランド育成支援事業 | 海外進出を検討している企業向けの補助金制度 |
キャリアアップ助成金 | 従業員の正社員登用や待遇改善を支援するための助成金制度 |
助成金・補助金は無担保・無返済で利用できる反面、利用できるまで時間がかかります。
そのため、助成金・補助金を主軸にした資金調達計画は組めません。
また、助成金・補助金によっては申請できる期間が限定されているものがあります。
タイミングを逃すと、申請できるまで1年待たなければならない場合もあるため、あらかじめ調べておきましょう。
M&A
M&Aは新規事業とは別に、不要な事業や子会社を売却することで資金を調達する方法です。
すでに複数のグループ会社があったり、多数の事業を運営していたりする企業が活用できる資金調達方法であり、うまく利用すれば多額の資金を調達できます。
また、他の企業と連携することにより、シナジー効果を得られる場合もあるため、経営戦略としても有益な方法です。
しかし、M&Aは時間がかかるうえに、企業価値を適切にアピールできないと、想定より低い売却額になるリスクがあります。
コストもかかりやすいことに加え、売却まで時間を要する点も注意が必要です。
なお、スタートアップ企業の場合、ある程度事業が成長してから、M&Aによってあえて大企業と併合したり、事業譲渡を行ったりする戦略もあります。
経営権を失うリスクこそありますが、財務基盤を強化できるため、うまく活用すれば企業のさらなる成長を実現できる可能性が高まります。
資金調達の注意点3つ

資金調達を行う際は、以下のような注意点を意識しましょう。
- 必要な金額を明確にする
- 資金が入るまで時間がかかる場合がある
- 不利な条件を押し付けられるリスクがある
注意点を知らなければ、計画的な資金調達が難しくなります。
新規事業を立ち上げる前に、必ずチェックしましょう。
必要な金額を明確にする
資金調達を行う際は、あらかじめ必要な金額を明確にしなければなりません。
必要な資金が不透明な状態で資金調達に取り組んでも、スムーズに進みません。
あらかじめ必要な金額を明確にしておけば、資金調達のプロセスを確定しやすくなります。
また、事業計画書に必要な金額を明記すれば、投資や融資の交渉を行う際に証拠として提示できます。
むしろ、必要な金額が曖昧だと、相手の心証を悪化させかねません。
資金が入るまで時間がかかる場合がある
融資・補助金・助成金など、審査が発生する方法は資金が入るまで時間がかかるケースがあります。
場合によっては、実際に資金が入るまで数ヶ月かかることも珍しくありません。
そのため、資金調達は中長期的な目線で計画を組みましょう。
資金が入るタイミングを把握したうえで計画を組まなければ、予期せぬタイミングで資金が枯渇する恐れがあります。
不利な条件を押し付けられるリスクがある
ベンチャーキャピタルのような企業から投資を受けたり、M&Aを行ったりする際は不利な条件を押し付けられるリスクがあります。
新規事業を立ち上げる段階では実績がなく、相手を説得できるだけの材料が少ない場合があるためです。
資金調達の交渉がうまくいかなければ、自社に不利な条件を提示されるうえに、持ち株比率を下げられて経営権を握られる恐れがあります。
投資やM&Aで資金を確保する際は特定の投資家や企業だけに相談せず、セカンドオピニオンを受けましょう。
新規事業を成功させるなら資金調達方法に注意しよう

新規事業を成功させるうえで、資金調達方法の確保は解決すべき課題です。
資金調達ができなければ、立ち上げはもちろん、運転資金の確保すらできなくなります。
昨今は、実績のない企業でも利用できるさまざまな資金調達方法があります。
ただし、実際に資金が入るまで時間がかかるものや、審査や要件が設けられているものもある点には注意しましょう。
資金調達計画を立てる際は、特定の手段に固執せず、複数の資金調達方法を組み合わせるようにしましょう。
