ERPシステムのSAPとは?特徴やメリット・デメリットを解説

2024.09.03
DX・システム開発
Wakka Inc. メディア編集部
ERPシステムのSAPとは?特徴やメリット・デメリットを解説
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こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。

昨今は企業の業務を効率化するさまざまなシステムが登場しています。
ERPシステムもその一種であり、企業の基幹業務を効率化できるツールとして、多くの企業が導入するようになりました。

なかでもSAPは注目度が高く、さらなる効率化が実現できるシステムとして支持を得ています。
一方で、SAPは複雑なシステムでもあるため、理解が難しいと感じる人もいるのではないでしょうか。

本記事ではERPシステムのSAPについて解説します。
導入する際のメリットやデメリットなどについても解説するので、ぜひ参考にしてください。

目次

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【基礎知識】ERPシステムの概要

近年話題になっているERPシステムですが、従来のシステムとの違いを理解できていないケースは少なくありません。

本章ではERPシステムの基本的な知識について解説します。

ERPシステムとは

ERPとは「Enterprise Resources Planning」の略称であり、日本語だと「企業資源計画」を意味する用語です。
つまり、ERPシステムは企業の経営資源を統合的に管理するためのシステムです。

企業において、根幹を支える経理・人事・情報・生産・物流・販売などの基幹業務は重要であると同時に、それぞれが密接につながっています。
ERPシステムはそれぞれの基幹業務を統合し、効率的に運用するために用いられています。

基幹システムとERPシステムの違い

従来の基幹システムとERPシステムには、大きな違いがある点を知っておきましょう。

従来の基幹システムは経理・人事・販売と、それぞれが独立したシステムであったため、統合的な運用は難しい傾向がありました。
しかし、ERPシステムはあらゆる基幹業務を一元管理できるため、異なる部署間でもデータのやり取りが円滑化されます。

そのため、従来の基幹システムよりも業務が効率化する効果が期待できます。

ERPシステムが注目される背景

ERPシステムは2000年代から注目を集めていますが、その背景には企業のグローバル化が関係しています。
当時は海外進出に踏み出す企業が増加していましたが、従来の基幹システムだと海外の支社や企業と情報を共有するうえで、支障をきたす場面が多く見られました。

そのため、一元的に基幹業務を管理し、情報の共有を円滑にするERPシステムが注目されるようになりました。

加えて、昨今はDXの推進により、ERPシステムの普及がさらに加速しています。
DXは「デジタルトランスフォーメーション」を意味する用語であり、デジタルテクノロジーを活用することで業務を効率化したり、新たなビジネスを創出したりする取り組みを意味します。

DXの推進によって、業務の効率化を目指す企業にとってERPシステムは有効的なツールです。
経営体制の抜本的な刷新を実現するうえでも役立つため、今後もERPシステムへのニーズが高まり続けると予測されます。

SAPの概要

本章ではERPシステムの一種であるSAPについて解説します。
SAPの導入を検討する前に、基本的な概要を確認しましょう。

SAPとは

SAPはERPシステムの製品名であると同時に、製造しているベンダーの社名でもあります。
SAPはドイツに本拠地があるベンダーであり、ERPシェアにおいて世界一を誇ります。

SAPが製造するSAP ERPは、世界各国で運用されている実績を持つ主力製品です。
知名度の高さもあり、SAP ERPを指して「SAP」と呼称する場合もあります。

SAP ERPの特徴

SAP ERPは経理・販売・人事など、さまざまな基幹業務を一元管理できるERPシステムであり、幅広い範囲でサポートできる点が特徴です。

多様な業務・業態にも対応できるうえにカスタマイズ性も高いため、企業の傾向に合わせて柔軟に運用できます。

また、SAP ERPはパッケージ型の製品であり、オーダーメイド式のように導入に時間がかかりません。
必要なオプションは随時追加できるため、業務に合わせてカスタマイズしていけば、最適な状態でERPシステムを導入できます。

SAP ERPに搭載されているモジュール

SAP ERPは業務領域ごとにモジュールと呼ばれる構成単位で機能を分けている点が特徴です。
SAP ERPに搭載されているモジュールには、以下のようなものがあります。

機能略称
財務会計(FInancial Accounting)FI
管理会計(COntroling)CO
販売管理(Sales and Distribution)SD
在庫購買管理(Material Management)MM
生産計画・管理(Production Planning and Control)PP
品質管理(Quality Management)QM
プロジェクト管理(Project System)PS
プラント保全(Plant Maintenance)PM
倉庫管理(Warehouse Management)WM
人事管理(Human Resources)HR
クロスアプリケーション(Cross Application)CA

なお、SAP ERPには上記のモジュールをさらに細かく区分けしたサブモジュールもあります。
サブモジュールは、SAP ERPを管理するうえで用いられる構成単位です。

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SAP社が提供するソリューションの種類

SAP社が提供するソリューションは、SAP ERPだけではありません。
同じSAP ERPにもさまざまなバージョンがあり、企業の規模や業態に合わせて導入できます。

本章では、SAP社の代表的なソリューションを紹介します。

SAP ECC

SAP ECCはさまざまなプラットフォームに対応できるクライアントサーバー型のパッケージです。
カスタマイズ性が高く、自社の商慣習や業態に合わせて運用できます。

一方で、SAP ECCは2027年にはサポートが終了するため、後継モデルであるSAP S/4HANAへの切り替えを進める必要があります。

SAP S/4HANA

SAP S/4HANAはSAP ECCの後継モデルであり、アーキテクチャが大きく刷新されている点が特徴です。
ユーザーエクスペリエンスを重視して設計されており、使いやすさが増しています。

ビジネスインテリジェンスやデータ構造も改良されており、スピーディーなデータ分析もできるなど、いっそう業務を効率化できます。
現在はSAP ECCからSAP S/4HANAへの切り替えが推進されており、いずれ主流となるモデルです。

SAP S/4HANA Cloud

SAP S/4HANA Cloudは、SaaS型のSAP S/4HANAであり、Public EditionとPrivate Editionの2種類が展開されています。
Public EditionはSAP社が構築した企業を共有するモデルであるのに対し、Private Editionは自社専用の環境をSAP社のクラウド基盤に構築する、オンプレミス型に近いモデルです。

SAP S/4HANA Cloudは業務に合わせて必要なシステムを選択して構築するため、無駄のない構成で運用できる点もメリットです。

SAP Business One

SAP Business Oneは中小企業・中堅企業向けのSAP ERPであり、豊富な機能を搭載しています。

1つのシステムで幅広い基幹業務をサポートできるうえに、複数の言語・税制・商慣習に対応できるため、カスタマイズしなくても、さまざまな企業で運用できます。

SAP Business ByDesign

SAP Business ByDesignは、ほかのシリーズよりリーズナブルに導入できるSAP ERPです。
SAP Business Oneと同様に中小企業向けのモデルであり、ERPに多額のコストをかけられない企業でも手軽に利用できます。

人事や会計のような重要な基幹業務に活用できるため、世界中で導入されています。

RISE with SAP

RISE with SAPは多様なSAPのソリューションを包括したクラウドサービスです。
SAP S/4HANA Cloudを中心に構成されており、Public EditionとPrivate Editionの2つのバージョンがある点も共通しています。

なお、RISE with SAPと同じようなクラウドサービスにGROW with SAPがあります。
こちらはSAP S/4HANA CloudのPublic Editionを中心に構成されている点が特徴です。

SAPを導入する5つのメリット

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SAPのERPシステムを導入すると、さまざまなメリットが得られます。
代表的なメリットは以下の通りです。

  • 一元管理による業務の効率化
  • 経営状況の可視化
  • 運用負荷や人的コストの削減
  • セキュリティやガバナンスの強化
  • 社会的信頼性の向上

メリットを理解すれば、SAPを導入する意義を理解できます。

一元管理による業務の効率化

やはりSAPを導入する最大のメリットは、一元管理による業務の効率化です。
SAPなら、業務内容が異なる部署でも一元管理によってデータを運用できるため、業務プロセスの統合が可能です。

従来の企業のように、基幹業務ごとにシステムを運用する体制では、無駄なプロセスが生じやすく、業務が非効率化しやすい傾向がありました。
対して、SAPは世界のトップ企業が実施している効率的なプロセスをベースに設計されているため、導入するだけで業務プロセスの改善を図れます。

経営状況の可視化

SAPのERPシステムがあれば、あらゆる基幹業務のデータを網羅できるため、経営状況を可視化できます。

必要なデータをスムーズに分析できるため、経営層の意思決定の速度を向上させるうえでもSAPは有用です。
特に、データドリブンな経営体制を目指している企業にとって、SAPは役立つERPシステムです。

データをベースにした意思決定ができる体制が整えば、個人の主観や直観に依存した属人的な組織体制から脱却できます。

運用負荷や人的コストの削減

基幹業務のデータを一元管理できるようになれば、プロセスを簡素化し、工数を削減できます。
その結果、データの管理・共有に伴う運用負荷の軽減が可能です。

さらに、プロセスの簡素化は人的コスト削減にもつながります。
工数が減ることにより、管理にかかる業務負担を低減すれば、浮いたリソースをコア業務に集中させられます。

セキュリティやガバナンスの強化

SAPは高度なセキュリティを備えているうえに、内部のデータを保全するために、さまざまな管理機能を搭載している点も魅力です。
SAPなら、ユーザーごとにアクセス権限を設定できるなど、細かく設定を変更できます。

さらにユーザーIDと作業履歴が紐づいているため、作業履歴のトレースが簡単です。
データの改ざんや不正が発覚しても、スピーディーに調査できるため、ガバナンスの強化するうえでも役立ちます。

社会的信頼性の向上

SAP ERPは世界でもトップクラスのシェア率を誇り、知名度だけでなく、信頼度も高いERPシステムです。
加えて、国際会計基準を満たしているうえに、世界各国の税制・言語・商慣習への対応が可能です。

そのため、海外の企業と取引する際、SAPを導入していれば、優良な経営体制や高いセキュリティを確保している企業として認知されます。
相手から信頼を得やすくなり、取引がスムーズに進む可能性が高められます。

SAPを導入する3つのデメリット

SAPは優れたERPシステムですが、導入するにあたっていくつかのデメリットに注意しなければなりません。
SAPを導入するデメリットは以下の通りです。

  • 初期費用・維持費が高い
  • 操作が複雑で難しい
  • SAPに関するノウハウが不可欠

デメリットを知らない状態でSAPを導入すると、どれだけ高度なシステムでも持て余してしまう恐れがあります。
あらかじめデメリットを把握し、導入に向けた準備を進めましょう。

初期費用・維持費が高い

SAPはオンプレミス型のモデルが基本であるため、初期費用や維持費が高くなる傾向があります。
豊富な機能を搭載したシステムであるため、製品自体の単価が高額なうえに、ライセンス料・サーバー量・システム構築料などを含めると、数千万円単位の費用がかかることも珍しくありません。

比較的リーズナブルな中小企業向けのモデルもありますが、一般的な基幹システムと比較するとコストがかかりやすい点には気を付けましょう。

特に従量課金制を採用しているライセンス料や、機能を別途で搭載するカスタマイズ料はコストがかかりやすいので注意が必要です。
使用するユーザーの数や、追加する機能の種類によって料金が増大するため、費用対効果を冷静に見極めなければなりません。

操作が複雑で難しい

SAPは幅広い基幹業務に対応できる分、操作が複雑でシステムを理解することが難しいERPシステムです。
機能が豊富な分、対応できる業務は多いですが、操作方法を理解できていないと持て余すリスクが高まります。

近年は使いやすさを意識してインターフェースを導入したモデルも登場していますが、操作に習熟するまで一定の時間がかかる点には注意しましょう。
あらかじめ試用期間を設けたり、操作方法のマニュアルを徹底的に共有したりするなど、対応策を検討する必要があります。

SAPに関するノウハウが不可欠

SAPはABAPと呼ばれる独自の言語を使うなど、ほかの製品とは違う点が多いERPシステムです。
そのため、スムーズな導入を目指すなら、SAPのラインナップやABAPを含むシステム設計などの経験がある人材を確保しなければなりません。

特に、初めてSAPを導入する企業だと、それまで使用していたERPシステムとの違いに困惑する可能性もあります。
SAPを導入する際は、詳しい人材を確保するだけでなく、SAPに関するノウハウへの理解を深めましょう。

SAPを導入する際のポイント

SAPは規模が大きいERPシステムであるため、導入する際は以下のようなポイントを意識しましょう。

  • 業務の棚卸を徹底する
  • SAP操作の習熟度を上げる
  • SAPの2027年問題に注意する
  • 優秀なベンダーのサポートを受ける

上記のポイントを理解すれば、SAPをスムーズに導入し、確実に定着させられます。
それぞれ、順番に解説します。

業務の棚卸を徹底する

SAPを導入するなら、あらかじめ業務の棚卸を徹底しましょう。

基幹業務のプロセスは煩雑になっている箇所もあれば、属人性が高まってブラックボックスになっている箇所もあるものです。
棚卸を通じてあらためてプロセスを整理し、業務の内容をチェックすれば、SAPを運用すべき場面が明確にできます。

また、業務の棚卸はSAPを定着させるうえでも重要な取り組みです。
SAPは優れたERPシステムですが、導入することでただちに業務効率が改善されるわけではありません。

業務プロセスによってはSAPの機能を活用できず、持て余す恐れがあります。
業務の棚卸を徹底すれば、必要な機能を把握できるため、SAPをカスタマイズする方向性を定められます。

その結果、無駄なコストをかける必要がなくなり、費用対効果のさらなる向上が可能です。

SAP操作の習熟度を上げる

SAPを導入するなら、難しい操作に慣れるためにも、従業員の習熟度を上げる必要があります。
SAPを導入する段階からベンダーの指導を受け、マニュアルを整備しておくと、ノウハウを共有できます。

さらに実際にSAPを利用しながらユーザートレーニングを実施しましょう。

SAPはユーザーの習熟度が上がるほど本来の効果を発揮します。
特定の従業員だけでなく、基幹業務に関わる主要な従業員全員の習熟度を向上させましょう。

SAPの2027年問題に注意する

SAPを利用するうえで、2027年問題には注意しなければなりません。
SAPの2027年問題とは、現在流通しているSAP ERPの保守サポートが2027年に終了するため、SAP S/4 HANAへ移行しなければならないことです。

SAP S/4 HANAは従来のSAP ERPの特性を受け継ぎつつ、より発展させたシステムであるため、これまでと同様に基幹業務の効率化に役立ちます。
しかし、自社の業務効率化を目指すうえで、SAP S/4 HANAが本当に適切なシステムであるかは見極める必要があります。

場合によっては別のベンダーの製品に乗り換えたり、2030年まで利用できる保守サポートの延長を行ったりするなど、ほかの選択肢も踏まえて検討しましょう。

優秀なベンダーのサポートを受ける

SAPの導入をスムーズに進めるなら、優秀なベンダーのサポートを受けましょう。

先述したように、SAPは操作の習熟度を高めなければ本来の効果を発揮しません。
しかし、初めてSAPを導入する企業だと、経験がない従業員だけで習熟度を上げることは困難です。

そのため、導入に加え、運用をサポートしてくれるベンダーは欠かせません。
ベンダーによってはSAP導入を支援するだけでなく、習熟度を上げるための研修を開催してくれたり、カスタマイズのサポートをしてくれたりする場合があります。

SAPのERPシステムを活用して業務効率化を実現

SAPのERPシステムは豊富な機能を持ち、幅広い基幹業務に対応できるものです。
世界各国の言語・税制・商慣習に対応しているため、SAPを導入すれば業務を効率化するだけでなく、海外の企業との取引を円滑化する効果が期待できます。

SAPは多大なメリットをもたらす一方、操作方法が複雑だったり、初期費用・維持費がかかりやすかったりする点に注意しなければなりません。
SAPを導入する際は、優秀なベンダーのサポートを得るように心がけましょう。

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