PaaSを活用した開発環境|導入メリット・注意点や活用方法を解説
こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
近年では、PaaSを活用したシステム運用やアプリケーション開発が主流になりつつあります。
多くの企業がPaaSの導入にメリットを感じているためです。
しかし、PaaSの定義をしっかり理解できていない、具体的にどのようなメリットが得られるのかわからない、という方もいるのではないでしょうか。
本記事では、PaaSの概要や機能、導入するメリットと注意点、活用方法について解説します。
PaaSの導入を検討している方はぜひ、本記事を参考にしてください。
●開発リソースの不足にお悩みなら●
>>>Wakka.Inc独自の海外子会社設立サービスがおすすめ!
無料でサービス資料をダウンロードできますのでぜひご覧ください。
PaaSの概要
PaaSとはPlatform as a Serviceの頭文字を取った略語で、「パース」と読みます。
直訳すると「サービスとしてのプラットフォーム」ですが、要するにアプリケーションを動作させるために必要なプラットフォームをネットワーク経由で利用できるクラウドサービスです。
アプリケーションを実行、又は開発する環境を総称してプラットフォームと呼びます。
プラットフォームにはサーバーやネットワーク機器、OS、データベースなどのミドルウェアが含まれます。
また、開発用のフレームワークやプログラム言語など、開発を支援する機能が用意されているサービスも多く、うまく活用できれば効率的なアプリケーション開発に役立つでしょう。
SaaSやIaaSとの違い
PaaSとよく似た言葉にIaaS(Infrastructure as a Service:イアース)、SaaS(Software as a Service:サース)があります。
言葉は似ていますが、サービスの内容はPaaSと異なるため、違いを把握しましょう。
IaaS、PaaS、SaaSはピラミッドのような3段階の階層構造になっています。
最下層に位置するのがIaaSで、次にPaaS、最上層がSaaSという関係です。
各サービスがカバーする範囲は下記の通りです。
IaaS | PaaS | SaaS | |
アプリケーション | ○ | ||
ミドルウェア | ○ | ○ | |
OS | ○ | ○ | |
ネットワーク | ○ | ○ | ○ |
ストレージ | ○ | ○ | ○ |
サーバー | ○ | ○ | ○ |
IaaSとはサーバーやネットワークのインフラをクラウド上で利用できるサービスです。
つまり、基盤となるハードウェアだけが提供されるもので、PaaSが提供するOSやミドルウェアは含まれません。
また、SaaSとは、プラットフォームの上に構築されたアプリケーションをクラウド上で利用できるサービスです。
PaaSはプラットフォームを提供するサービスで、アプリケーションは別途、構築しなければなりません。
一方、SaaSでは完成したアプリケーションをそのまま利用できます。
PaaSが重要視される理由
近年、多くの企業でPaaSが導入されていますが、重要視されている理由としては主に次の点が挙げられるでしょう。
- アプリケーションの動作環境、開発環境の管理が煩雑になり、運用コストがかかる
- DXの推進により企業は大量のデータを蓄積し、分析する必要が出てきている
- テレワークなど多様な働き方に対応するため、どこからでもプラットフォームにアクセスできる環境が求められている
PaaSの主な機能
本章では、PaaSを導入することで利用可能になる主な機能について解説します。
アプリケーション開発を支援する機能
PaaSはアプリケーションの稼働環境・開発環境を提供するだけではなく、開発に役立つツールなども提供している場合があります。
これらを効果的に活用できれば、アプリケーションの開発をPaaS上だけで完結させることも可能です。
開発に役立つツールとは、具体的には次のような機能です。
- ソースコードの記述・編集機能
- ソースコードの共有や進捗状況の管理機能
- 開発したアプリケーションを統合・展開する機能
- パソコンやモバイル端末など複数のプラットフォームに対応するためのクロスプラットフォーム開発支援機能
- アプリケーションを診断し、問題を検出する機能
各種ミドルウェアを管理する機能
ミドルウェアとは、OSとアプリケーションの間を仲介するソフトウェアです。
データベースやWebサーバー、アプリケーションサーバーなどが代表的ですが、PaaSではこれらミドルウェアの機能もサービスとして提供しています。
PaaSではさまざまな種類のデータベース管理システムが提供されているほか、データ分析とマイニングを行うビジネスインテリジェンスの機能もあります。
また、バックアップの機能も提供されており、定期的に世代バックアップを取得でき、必要に応じてリストアもできるため、サーバーやデータの破損が万一発生した場合も安心です。
アプリケーションのライフサイクルを管理する機能
アプリケーションのライフサイクルとは、アプリケーションのアイデア・コンセプトを生み出して開発する段階から、寿命を迎えて利用を中止されるまでのプロセス全体を指します。
PaaSでは、アプリケーションのライフサイクル管理をサポートするため、アプリケーションのビルド、テスト、デプロイ、展開、更新などの機能を提供しています。
他にも、必要に応じてデータ容量の拡大・縮小が可能なストレージの自動スケーリングや、負荷分散・トラフィック管理ができるネットワーク機能も利用可能です。
PaaSを活用するメリット
本章では、PaaSを活用することで得られるさまざまなメリットについて解説します。
PaaSを導入するにあたっては、メリットを十分活かせることが重要であるため、ぜひ参考にしてください。
開発期間を短縮できる
PaaSを導入すれば、アプリケーションの開発に必要な環境がクラウド上にすぐ構築できるため、開発期間の短縮につながります。
プラットフォームが用意されており、OSのインストールやネットワークの設定といったサーバー構築の準備を省略できるためです。
また、前述したようにアプリケーション開発を支援する機能が用意されているサービスもあるため、効率よく開発できる可能性も高くなるでしょう。
システム環境を容易に複製できる
PaaSでは、アプリケーションの稼働環境を丸ごと複製するのが容易です。
同じプラットフォームを容易に複製・配布できるため、並行して多数の開発環境が必要になる場合、すぐに対応できます。
多数の物理サーバーをすぐに手配するのは容易ではありませんが、PaaSであれば必要なときに必要な分だけ環境の準備が可能です。
また、環境の複製ができると、本番環境で障害が発生したときに役立ちます。
例えば、本番のサーバーで発生した障害の原因を特定するためにテストを実施して事象を再現させたいけれど、本番業務には影響を与えたくないといったケースです。
本番環境を複製して、そのまま検証環境として利用できれば安全に調査を進められます。
業務には影響なく本番と同じ環境で安心してテストができるため、障害対応時には大きなメリットとなるでしょう。
複雑化した環境をシンプルに整理できる
自社システムが増えてくると、システムごとに稼働環境が乱立しがちではないでしょうか。
サーバーのスペックやOSのバージョンなど、プラットフォームごとに情報を整理して運用管理していくのはたいへんです。
システムの稼働環境をPaaSに集約していくことで、運用管理をよりシンプルにできるでしょう。
運用コストを抑えられる
PaaSではサーバーやネットワーク機器などのハードウェアや、OSを購入することなくサービスを利用できるため、初期投資が大幅に抑えられます。
また、自前で環境を構築する場合はサーバーのスペック不足や容量枯渇を避けるため、数年後の利用状況を予想して余裕のあるシステム投資をする必要があります。
しかし、PaaSの場合はシステムリソースを利用した分の費用しか発生しません。
そのため、運用コストの節約にもつながるでしょう。
サーバーのスペックや容量を柔軟に拡張できる
物理サーバーを自社内やデータセンターなどに配置して運用する場合、サーバーのスペックや容量を柔軟に拡張・縮小するのは容易ではありません。
しかし、PaaSでは必要なスペックや容量に合わせて柔軟に拡張や縮小が可能です。
したがって、PaaSを活用すれば必要に応じてスペックの増減をすれば良いため、将来性を考慮したムダな投資をする必要はありません。
テレワークなど多様な働き方に対応しやすい
PaaSはインターネット経由でクラウド上のアプリケーション環境にアクセスするため、技術者が作業する場所に縛られません。
そのため、テレワークなどの多様な働き方でも従来の働き方と同様のパフォーマンスが発揮できるでしょう。
また、急な障害対応などが必要になった場合も、どこにいてもスピーディーに対応できます。
PaaSを導入する際に注意すべき点
PaaSを導入するとさまざまなメリットが得られますが、逆に注意しておきたい点もあります。
本章では、PaaSを導入する際に注意すべき点について解説します。
セキュリティレベルはベンダーに依存する
PaaSでは、ベンダーから提供されたプラットフォームを利用するため、ベンダーのセキュリティに依存します。
例えば、ベンダーの提供する設備がウィルス感染により乗っ取られた場合、PaaSの利用者が扱っている機密情報などが流出してしまう恐れがあるでしょう。
セキュリティレベルはベンダーによって異なるため、暗号化対策や解約後の顧客情報の取り扱いなど、ベンダーのセキュリティポリシーや対策を確認しておくのが重要です。
インフラ環境の自由度が低い
PaaSを導入すれば、開発に必要なサーバーやネットワーク、OSなどの環境はすぐ手に入りますが、その反面、CPUやストレージなどの組み合わせが決まっていて、各パーツを自由に選べないといった制約があります。
また、希望するミドルウェアが利用できないケースも考えられます。
そのため、自前でインフラ環境やプラットフォームを構築する場合のような自由度がなく、希望通りの環境が実現できない可能性がある点には注意しておきましょう。
ベンダー側のメンテナンスや障害発生に影響を受ける
PaaSを利用していると、ベンダー側の都合でメンテナンス作業が実施されることがあります。
もちろん、事前にアナウンスはされますが、メンテナンス作業中はシステムが利用できない場合もあります。
メンテナンス作業の予定に合わせてシステムの臨時停止やスケジュール変更などの調整が必要です。
また、PaaSで提供されている環境自体に障害が発生すると、その上に構築している自社システムも影響を受けて停止することが考えられるでしょう。
このように、ベンダー側の事情によるメンテナンス作業や障害発生により、自社システムが影響を受けるリスクがあることにも注意しておいてください。
【おすすめ資料】海外開発拠点の設立を検討されていますか?
【保存版】成長企業が導入するWakkaのラボ型開発
>ラボ型開発を進めるポイントとWakka inc.の『独自の海外子会社設立サービス』を紹介した資料です。ぜひあわせてご覧ください。
PaaSの代表的なサービス
クラウド上で提供されているPaaSはたくさんありますが、そのうち代表的なものを3つ紹介します。
Amazon Web Service(AWS)
Amazon Web Service(AWS)はAmazon社が提供するクラウドコンピューティングサービスで、2006年からサービスを開始した草分け的な存在として有名です。
AWSには、PaaSとしての機能も含め200種類以上のサービスがあります。
PaaSの機能としては、次のサービスが主に挙げられるでしょう。
- プログラムの実行環境を提供するAWS Lambda
- アプリケーションの実行環境を自動的に作成するAWS Elastic Beanstalk
- 大容量のデータをほぼ無制限に格納できるAWS S3
それぞれ簡単に解説します。
AWS Lambda
AWS Lambda(ラムダ)はプログラムの実行環境を提供するサービスです。
OSやサーバーの管理はAWSが行うためインフラ管理の手間がかかりません。
開発者は実行環境の準備が必要ないため、プログラミングに集中できます。
Java、C#、Ruby、Pythonなど複数のプログラム言語に対応しているため、幅広いアプリケーション開発が可能です。
AWS Elastic Beanstalk
AWS Elastic Beanstalkは、アプリケーションの実行環境構築や管理を自動で行うサービスです。
アプリケーションをデプロイすると自動的に実行環境を構築してくれるため、AWS Lambdaと同様にインフラ管理の手間がなくスピーディーな開発が可能です。
AWS S3
AWS S3(Simple Storage Service)は、大容量のデータを格納し、管理できるストレージサービスです。
1ファイルあたりのサイズに制限があるものの、ストレージ容量としては制限がないため、ビッグデータの保管場所としても利用できます。
Microsoft Azure
Microsoft Azure(マイクロソフト・アジュール)は、2010年に開始したクラウドサービスで、Windowsで有名なMicrosoft社が提供しています。
製品やサービスのラインナップは100種類を超え、業界や企業の規模を選ばず幅広い企業がシステム開発、運用に利用しています。
AzureのPaaSとしての機能は以下のものがあります。
- Webサイトやモバイルアプリを構築するAzure App Service
- クラウド上に構築されたデータベースAzure SQL Database
- サーバーレスでプログラムを実行できるAzure Functions
それぞれ簡単に見ていきましょう。
Azure App Service
Azure App Serviceとは、クラウド上でWebサイトやモバイルアプリ、APIなどをスピーディーに構築し、デプロイできる環境を提供するサービスです。
OSはWindows、Linuxをサポートし、多くの開発言語にも対応しています。
また、負荷分散や自動スケーリングにも対応可能です。
Azure SQL Database
Azure SQL Databaseは、クラウド上で簡単に利用できるデータベースです。
通常、データベースサーバーを構築する場合に必要なインフラ構築やデータベースのインストール作業などは不要で、専門知識がなくてもGUIで基本設定をするだけで利用できます。
Azure Functions
Azure Functionsは、Azure上でプログラム(関数)を書いてサーバーレスで実行できるサービスです。
サーバーの構築や保守が不要で、自動でスケーリングもできるため、開発者はサーバーを意識せずアプリケーション開発に集中できるでしょう。
Google Cloud Platform(GCP)
Goole Cloud Platform(GCP)は、Google社が提供するクラウドサービスです。
Google検索、Gmail、YouTubeなど、Google社が提供する他のサービスと同じ技術・インフラを利用してアプリケーションを開発できるのが特徴です。
GCPの主な機能を3つ紹介します。
- ビッグデータを解析できるデータベースBig Query
- アプリケーションの作成・実行・管理を行うGoogle App Engine
- 大容量データの加工ができるETLツールCloud Dataflow
それぞれ簡単に見ていきましょう。
Big Query
Big Queryは、ビッグデータを解析するためのデータベースで、大規模データを高速に処理できるのが特徴です。
API連携も可能で、PythonなどのプログラムからAPIを使用してリアルタイムなデータ分析ができます。
Google App Engine
Google App Engineは、サーバーレスな環境でアプリケーションの作成・実行・管理ができるサービスです。
Python、Java、Rubyなど6種類のプログラム言語を使用できます。
Cloud Dataflow
Cloud Dataflowは、ビッグデータのリアルタイム処理、バッチ処理が可能な高性能のETLツールです。
複数のシステムに散在した大量のデータを効率よく収集・加工するのに役立ちます。
PaaSの活用方法
PaaSのメリットを活かしたおすすめの活用方法を紹介します。
インフラを集約して運用管理をシンプルにする
自前でインフラを構築していると、サーバーが増えるたびに運用管理がどんどん煩雑化して運用の手間とコストが増大しがちです。
各システムのインフラ構成がバラバラで運用しづらいといったことも起きているでしょう。
このような場合は、PaaSを導入してインフラをクラウド上にまとめて管理するのがおすすめです。
インフラをクラウド上に集約することで運用管理がシンプルになり、業務の効率化につながるでしょう。
開発環境を整備してアプリケーション開発を高速化する
PaaSを活用すると、サーバーやネットワーク、データベースの設計・構築といったインフラやミドルウェアの構築部分が大きく省略できます。
インフラの構築を待つことなくすぐにアプリケーション開発に着手可能です。
煩雑になりがちな開発環境の整備もスムーズになるでしょう。
また、PaaSにはアプリケーションの設計・開発を支援する機能が豊富にそろっています。
そのため、PaaSを利用した開発プロセスを確立できれば効率的に開発でき、アプリケーション開発の高速化が期待できるでしょう。
PaaSを活用して効率的なアプリケーション開発を目指しましょう
PaaSはインターネット上でプラットフォームを提供するクラウドサービスです。
サーバーやネットワーク、OS、ミドルウェアなど、アプリケーション開発に必要なプラットフォームが容易に手に入るため、インフラ構築の工程を省けるとともに、アプリケーションの開発に集中できます。
また、PaaSが提供しているアプリケーションの設計・開発を支援する機能を活用することで、アプリケーション開発の高速化が期待できるでしょう。
さらに、各システムでバラバラだったインフラ環境をPaaSに集約すれば、運用管理がシンプルになって業務効率の向上も期待できます。
PaaSの導入を検討されている方は、ぜひPaaSを活用して効率的な開発環境の整備とアプリケーション開発を目指してください。