PoCの評価項目とは?項目例や評価方法などを解説

最終更新日:2024.05.09
DX・システム開発
Wakka Inc. メディア編集部
PoCの評価項目とは?項目例や評価方法などを解説
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こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。

PoCは新しいアイデアの不確実性を減らし、リスクを回避するうえで不可欠な取り組みです。
近年は多くの企業で実践されています。

他方で、PoCは適切な評価項目を設定して実践しなければ、正確な検証結果を得られません。
有意義なPoCを実践するためにも、評価項目は入念に検討したうえで設定しましょう。

本記事ではPoCの評価項目について解説します。
効果的な評価項目例に加え、PoCの進め方や検証を進める際の注意点についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

目次

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PoCとは

本章では、PoCの概要についておさらいします。

近年、多くの企業でも取り組まれているPoCですが、実践するなら、意味や取り組みの目的を理解しなければなりません。
また、本章では実証実験や技術検証のような、PoCと混同されやすい手法との違いについても解説します。

PoCの意味

PoCとは「Proof of Concept」の略称で、「概念実証」や「コンセプト実証」を意味します。
その名の通り、PoCは新しいアイデアを検証し、実現する可能性や費用対効果などを明らかにするために実践されます。

元来、新しいアイデアはいくら革新性があるものでも、プロダクトとして実現できるかどうかはわかりません。
場合によっては、机上の空論で終わるものもあります。

そのため、新しいアイデアは開発の過程で予期せぬトラブルが発生するリスクを伴っています。
リスクを放置したまま開発に着手すれば、企業に多大な損害を被りかねません。

PoCは新しいアイデアに伴う不確実性を減らすことによって、開発やリリースに伴うリスクを抑制するうえで役立ちます。
それもあって、昨今は多くの企業で実践されるようになりました。

なお、PoCは必ずしもIT業界でのみ実践されているものではありません。
製薬会社の治験や、モニターを招いた新商品の評価なども、PoCに該当する取り組みです。

PoCを実践する理由

多くの企業がPoCを実践する理由は、やはり新規開発に伴うリスクの回避です。
昨今はDXの推進もあり、新しいアイデアを実現したサービスに着手する企業が増加しました。

しかし、新しいアイデアは不確実性が高く、開発に際して思わぬアクシデントに見舞われるリスクがあります。
また、近年はニーズが多様化しているうえに、新しいプロダクトが次々とリリースされているため、市場のトレンドも変動しやすくなりました。

ニーズを的確に読めなければ、リリースにこじつけても、思うように売上が上がらない可能性があります。
そのため、新しいアイデアを着実に売り出すうえでPoCが注目されるようになりました。

PoCを活用すれば、実現可能性を検証できるため、開発やリリースに伴うリスクに対し、事前に対策を講じられます。
加えて、実現する可能性が低いことがわかれば、損失が発生する前に撤退する判断がスムーズにできます。

他の手法との違い

PoCとよく似た用語に、「実証実験」や「技術検証」がありますが、前者はほぼ同義語です。
対して、技術検証は技術それ自体の実現可能性に着目する検証を指しており、コンセプト全体に着目するPoCとはニュアンスが異なる点に注意しましょう。

また、PoCはMVP開発やプロトタイプ開発とも似通っているプロセスです。

MVP開発は、必要最小限のプロダクトをリリースし、フィードバックを集めながら開発を進める開発手法です。
一方のプロトタイプ開発は、事前にプロダクトの試作品を作成し、実現を立証してから開発・リリースを行います。

両者ともPoCとは異なる開発手法ですが、プロセスが類似しているため、組み合わせて実践されるケースが多くあります。

PoCの評価項目例

PoCは新しいアイデアの実現可能性を検証するうえで、さまざま評価項目を設定しなければなりません。
PoCで用いられる評価項目には、以下のようなものがあります。

  • 技術的実現性
  • 費用対効果
  • 有用性
  • 具体性
  • 社会的受容性

どの評価項目を重視するかはプロダクトにもよりますが、いずれも重要なものです。
それぞれの評価項目について、順番に解説します。

技術的実現性

技術的実現性は、その名の通り、新しいアイデアが技術的に実現可能かどうかについて評価する項目です。

いくら革新的なアイデアでも、実際に実現できなければ机上の空論で終わります。
技術的実現性は新しいアイデアをビジネスに落とし込むうえで、もっとも重視しなければならない項目です。

アイデアを実現していく過程で発生するリスクを確認することも、技術的実現性を検証する目的です。
リスクを事前に把握しなければ、開発やリリースに際して損失を被る恐れがあります。

技術的実現性は、発案者に加え、実際に開発に携わる技術者を交えながら入念に検証しましょう。
要件を整理し、多角的に精査すれば、アイデアが実現するビジョンを明確にできます。

費用対効果

費用対効果は、新しいアイデアの実現によって発生する収益を把握するための評価項目です。

新しいアイデアを実現する場合、コストに対して十分なリターンが得られなければ、プロジェクトは中断せざるを得ません。
もし、開発やリリースに必要なコストを把握できていなければ、資金の不足により、開発が中断する恐れがあります。

費用対効果を評価する際は、開発・リリースに要するコストや得られるリターンに加え、資金調達コストやマーケティングコストなども精査しましょう。
網羅的にコストやリターンを算出すれば、より具体的に損益が把握できるうえに、課題を可視化しやすくなります。

費用対効果に関連する課題は、経営陣から開発の承認を得るうえで重要なものです。
検証時点で費用対効果の高さを証明できれば、経営陣を説得する材料にもできます。

有用性

有用性とは、新しいアイデアが顧客や市場のニーズを捉えられるかを判断する評価項目です。

有用性が高いほど、顧客や市場に受け入れられやすくなり、収益の増加が期待できます。
有用性を評価する際は、事前に顧客や市場の動向を調査し、プロダクトを通じて提供する価値が支持されるかを確認します。

また、ユーザーからダイレクトにフィードバックを得る方法もおすすめです。
テストマーケティングや、デモンストレーションなどを実践すれば、より確度の高いフィードバックを得られます。

具体性

具体性は、新しいアイデアを基に開発されたプロダクトに何が必要なのかを確認する評価項目です。

例えば、基幹業務用の管理システムの場合、使いやすいものにするなら、さまざまな工夫を凝らさなければなりません。
使いやすい管理システムを目指すなら、顧客の業務をサポートできる機能を追加したり、操作性が高いインターフェースを設計したりする必要があります。

このように、新しいアイデアをプロダクトとして実現するうえで、必要な要素を検証するために、具体性は検証されます。
なお、具体性の検証は、コンセプトとズレることを避けるために、開発者を交えて検討しましょう。

社会的受容性

社会的受容性は、新しいアイデアが倫理的・法的に受け入れられるかどうかを確認するための評価項目です。

新しいアイデアのなかには、法規制に抵触したり、倫理的に許されたりしないものもあります。
もし、社会的受容性を度外視したままだと、開発に成功してもリリースができなくなる恐れがあります。

そのため、倫理的に問題がないかを確認し、法規制に抵触しないように対応することは不可欠です。

また、プロダクトの安全性を確認することも、社会的受容性の検証においては重要です。
安全性が低い状態だと、リリースしてもトラブルが発生しやすくなり、企業が損害を被るリスクが高まります。

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PoCの進め方

PoCの進め方は以下のとおりです。

  • 目的の設定
  • 評価方法や評価項目の策定
  • 検証の実施
  • 検証結果の評価
  • 機能改善と要件定義

本章では、それぞれのプロセスにおけるポイントについて解説します。

目的の設定

PoCにおいて、目的の設定は重要なプロセスです。

目的を設定する際は、同時に数値化した目標を設定しましょう。
目的が明確であるほど、PoCで得られる結果の精度が向上します。

目的の設定はPoCの成否を左右します。
曖昧な目的でPoCを開始すると、評価項目や検証のプロセスが定まらなくなり、時間やコストをムダにかけるリスクを高めるので注意しましょう。

評価方法や評価項目の策定

検証目的を設定したら、評価方法や評価項目を策定しましょう。

評価方法や評価項目はPoCを実施する目的や、対象となるアイデアに合わせ、適切なものを採択します。
評価方法や評価項目を策定する際に、妥協は禁物です。

正確な検証結果を得るうえで必要な評価方法・評価項目を策定しなければ、PoCの効果が薄れます。

なお、評価方法によっては新たにリソースや設備を用意しなければならない場合があります。
PoCの実践に際し、必要なリソースや設備をあらかじめ把握しておきましょう。

検証の実施

評価方法や評価項目を決定したら、検証を実施します。

評価項目に沿って検証を行い、結果は想定外のものも含めて、その都度開発者同士に共有しましょう。
なお、PoCを実践する際は検証に時間をかけ過ぎないようにしましょう。

時間がかかりすぎると、適切なタイミングでのリリースができなくなったり、過剰にコストが発生する原因になります。
PoCに関わる従業員のモチベーションの低下につながるリスクもあるため、検証の長期化には注意しましょう。

検証結果の評価

検証結果の評価は、主観的にならず、データに基づいた客観的な視点で実施します。

初めに設定した目的を参照しながら評価すれば、コンセプトからブレていないか確認しやすくなります。
評価の過程で課題やリスクが確認された場合、対応策も並行して検討しましょう。

なお、PoCは悪い結果が出たとしても、決して無駄にはなりません。

PoCの結果は良し悪しに関わらず、プロジェクトの続行・中断を判断する材料になります。
結果によっては、次に検討するプロジェクトに活用するデータにもできます。

また、別の新しいアイデアを思いつくきっかけにもなるでしょう。

他方で、欲しい結果が出るまで無闇にPoCを繰り返すような行為は、かえって時間やコストの浪費につながります。

機能改善と要件定義

検証の結果、課題やリスクが確認された場合は、PDCAサイクルを回し、機能改善を実施しましょう。
PoCの時点で課題やリスクへの対応を行えば、開発をスムーズに進められます。

改善に成功したら、いよいよ新しいアイデアを活用したプロダクトの開発に着手します。
検証結果を基に要件定義を行い、開発を進めていきましょう。

PoCの評価項目を設定する際の注意点

PoCの評価項目を設定する際は、以下の注意点に留意しましょう。

  • PoCを実践する目的を明確にする
  • 具体的な評価基準を設定する
  • 導入環境に基づいた検証・評価を行う
  • コストをかけすぎないように注意する
  • 必要があればアウトソーシングする

上記の注意点を意識すれば、より良い検証を実現できます。
PoCを実践する前に、必ずチェックしてください。

PoCを実践する目的を明確にする

PoCは、実施する目的を明確にしなければなりません。

目的が曖昧な状態だと具体的な評価項目を設定できず、検証がスムーズに進みません。
場合によっては効果の薄い検証を繰り返すだけで、結果を得られないまま疲弊していく「PoC疲れ」に陥るリスクがあります。

また、想定以上に検証に行った結果、コストが過剰に増えていく「PoC貧乏」になるリスクも高めます。

PoC疲れやPoC貧乏を回避するためにも、明確な目的設定は不可欠です。
「何を検証したいか」「検証結果をどう活用するか」など、具体的に目的を設定すれば、それだけ効果が高いPoCを実践できます。

具体的な評価基準を設定する

PoCにおいて、具体的な評価基準の設定は重要です。
評価基準が具体的に設定されているほど、検証の精度を高められます。

評価基準を設定する際は客観的な視点を重視しましょう。
主観的な視点が入っていると、検証結果を正しく評価できず、PoCの効果が薄くなる恐れがあります。

導入環境に基づいた検証・評価を行う

PoCでは、プロダクトの導入環境に基づいた検証・評価を行いましょう。

PoCによる検証は環境による影響を受けます。
そのため、実際の導入環境と異なる条件で検証を行うと、適切な結果が得られません。

本運用と同じ環境で検証すれば、より精度が高い検証結果を開発に活用できます。
また、リリース後にトラブルが発生するリスクの回避が可能です。

なお、システムによっては気温や湿度など、環境の設定にきめ細かい配慮が必要な場合があります。
テストユーザーを招いて検証する際も、本運用と同じ環境で実践しましょう。

コストをかけすぎないように注意する

PoCはコストをかけすぎないように注意しなければなりません。

PoCはあくまで検証であるため、コストをかけすぎるとPoC貧乏を引き起こす要因になります。
何より、コストをかけすぎるとリソースが減少し、開発に影響を及ぼします。

PoCを実践する際はスモールスタートを心がけましょう。
評価項目を明確にし、各項目に対応した小規模な検証を繰り返し実践していけば、必要最低限の工数でPoCを実践できます。

スモールスタートでPoCを行えば、コストだけでなく、検証に要する時間も減らせるため、
検証を行う従業員の体力の温存や、モチベーションの維持にもつながります。

必要があればアウトソーシングする

必要があれば、PoCをアウトソーシングする方法もおすすめです。

PoCは検証だけでなく、リソースの確保・検証に用いる設備の導入・データの運用や管理など、さまざまな業務が発生するものです。
他方、企業によってはPoCに必要なノウハウや、実践する環境の確保が難しい場合があります。

もし自社だけでPoCを適切に実施できない場合は、実績がある企業に委託した方が、有意義な検証を実践しやすくなります。
実績のある企業に委託すれば、スムーズにPoCを進められるだけでなく、不足しているノウハウやリソースも補えます。

また、複数の企業がPoC契約を締結し、互いにノウハウを持ち寄ってPoCを実践するケースもあります。
PoCによる連携を通じて互いのノウハウをうまく組み合わせれば、より価値の高いプロダクトの開発の実現が可能です。

明確な評価項目を設定すれば効果的なPoCが実践できる

PoCは新しいアイデアの実現可能性を検証し、開発やリリースに伴うリスクを削減できる取り組みです。

昨今は多くの企業で実践されており、プロトタイプ開発やMVP開発と組み合わせて実践されることもあります。
PoCにおいて、評価項目は重要な要素です。

プロダクトを適切に検証するためにも、検証すべき評価項目は具体的に設定しましょう。
また、進め方や注意点を理解すれば、より効果的なPoCを実践できます。

本記事の内容を参考にし、ぜひ有意義なPoCを実現してください。

この記事を書いた人
Wakka Inc. メディア編集部