オフショア開発の今後はどうなる?成功のためのポイントも解説

2024.10.25
ラボ型・オフショア開発
Wakka Inc. メディア編集部
オフショア開発の今後はどうなる?成功のためのポイントも解説
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こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。

海外の企業や現地法人にソフトウェアやアプリなどの開発を委託するオフショア開発ですが、コスト削減や優秀な人材の確保ができるといったメリットがあるため現在多くの企業から注目されています。

しかし、大きなメリットがある反面、今後のオフショア開発の市場動向が気になる方も多いのではないでしょうか。

本記事ではオフショア開発の今後と、市場の動向を踏まえた上での事業成功のポイントについて解説します。

目次

オフショア開発を行う企業の動向とは

結論から言うと、今後、オフショア開発を委託する企業は様々な点において変化していきます。
オフショア開発は日本の企業側の目的に合わせて行われますが、近年その目的が変わりつつあるからです。

特に、委託する企業の規模や案件の種類などは今後変化する可能性が高いでしょう。
これらの視点から今後のオフショア開発を行う企業の動向を解説します。

オフショア開発を行っている企業の現状

「オフショア開発白書」によると、現在オフショア開発の相談をしている企業の特徴は以下のことが言えます。

  • 従業員10名以下の中小企業の割合が一番多い
  • オフショア開発の主な目的はコスト削減とリソース確保

出典:オフショア開発白書(2023年版)

10名以下の企業が多い背景としては、2020年に流行した新型コロナウイルスによる社会的な変革をビジネスチャンスとしたいベンチャー企業や起業家が急速に増えたからです。

また規模の小さい企業は資本力もそこまでないため、なるべく開発コストを削減したいという理由もあります。

オフショア開発の目的に開発リソースの確保が多い理由は、国内のエンジニアが不足しているためです。
特に、大企業の場合はリソース確保を目的にオフショア開発を委託するところが多いでしょう。

オフショア開発を委託する企業規模の今後の動向

オフショア開発を委託する企業の今後の展望としては、従業員数が100名以下の中小企業の割合が減少することが予想されます。
これまでは中小企業の割合が非常に多い状況が続いていましたが、今後は大企業の割合が増えてくるでしょう。

上記の資料1に掲載していた、オフショア開発の相談をしてきた企業の割合について以下の変化が見られます。

  • 従業員数が100名以下の企業が69%から62%に減少
  • 従業員数が5000名以上の企業は7%から14%まで増加

このような変化が見られた理由としては、海外拠点の人件費の上昇と円安による影響でコストメリットが減少したといった背景があります。
それに並行して現在は「コスト削減」よりも「リソース不足の解消」を目的としたオフショア開発を委託する企業が増えている状況です。

大企業の場合、多少コストをかけてでもリソース不足を解消したいといった企業が多いです。
一方で中小企業では大きなコスト削減が望めないのであれば、資本に余裕がない限りは、オフショア開発に踏み込めないでしょう。

このような変化から、今後のオフショア開発は資本力のある大企業の割合が増えると予想されます。

オフショア開発で委託される事業内容の今後の動向

今後は既存のシステムの開発や運用をオフショア開発で委託する企業が増えてくるでしょう。
なぜなら、オフショア開発は拡大していると同時に、海外拠点での開発の難しさを痛感している企業も増えてきているからです。

実際コミュニケーション面で苦労し品質が低くなったり、予算をオーバーしたりなどの結果になることもあります。

そういった経緯から現在は、新規のシステム開発は国内のエンジニアで行い、既存システムの追加開発や運用などを人件費の安い海外に委託するという考え方も広まりつつあるのです。

オフショア開発委託国の今後の動向

これまで「オフショア開発を委託する側」の現状と今後の動向を解説してきましたが、委託される国の動向も変わりつつあります。
委託される側の国は日本と違い経済成長率や国の政策などの変化が大きいからです。

日系企業は安定した委託のために、海外諸国それぞれの国の情勢を見ながら委託する国や法人を決めないといけません。

オフショア開発が始まった当初は委託先に中国、現在はベトナムが多く選ばれるイメージが強いかもしれません。
実際は他にもオフショア開発の需要が増えている国があります。

ここではオフショア開発の委託先の現状と今後について詳しく解説します。
委託先の国をどこにするか迷われている企業の方はぜひ参考にしてみてください。

現在のオフショア開発委託先はベトナムが多い

2023年版の「オフショア開発白書」によると、現状オフショア開発の委託先として最も検討されている国はベトナムです。

出典:オフショア開発白書(2023年版)

ベトナムの人気が高い理由としては以下が挙げられます。

  • 国の政策により税制面の優遇がある。
  • IT人材育成に力が入れており、優秀な人材が多い。
  • 語学力が高く、日本語を話せる人材も他の諸国に比べると多い。また親日家が多い。
  • コスト面でのメリットが大きく、品質も良いのでバランスが良い

現在は欧米諸国もベトナムでの人材確保を行っているため、競争率が高まっており人件費の高騰が続いています。
しかし、それでもコストと品質の部分で一定のメリットは得られるので、ベトナムはオフショア開発において安定的に人気な国と言えるでしょう。

今後オフショア開発委託が増える国

今後もベトナムは安定的に委託先として人気を誇ると思われますが、それ以外で増えてくると予想される国がフィリピン、インド、バングラデシュです。
同書によると2023年のオフショア開発検討先の上位5ヵ国は以下の通りです。

  • ベトナム:48%
  • フィリピン:21%
  • インド:13%
  • バングラデシュ:8%
  • 中国、ミャンマー:4%

フィリピンは前年比で2%、インドは1%上昇しています。
上記2ヵ国が伸びている理由には、両国ともに英語を得意としており、それが今後の日本のグローバルな市場での事業拡大とマッチしていることが考えられます。

日本では経済力の低下により、国内市場の拡大よりもグローバルな市場での事業拡大が期待され始めています。
それに伴い英語を用いてプロジェクトを進めていくとなると、フィリピンやインドの英語力が強みを発揮するでしょう。

また同白書の検討先としてはバングラデシュに大きな数字の変化はありませんが、バングラデシュから日本へのIT輸出額が急激に増えている実績はあります。
参照:ビジネス短信|JETRO(日本貿易振興機構)

バングラデシュはベトナムと同様に国の政策によりICT産業の成長率が高い国です。
また、人件費も抑えられるため、今後オフショア開発の委託先に選ばれることが増えると予想されます。

今後オフショア開発の委託先は目的や案件によって選ばれる

フィリピンやインドへ委託を検討する企業が増えている理由のように、今後オフショア開発の委託先は目的や案件の種類によって選ばれるでしょう。
各国ごとにどんな目的や案件が向いているかを以下にまとめました。

ベトナム

国内市場向けのプロダクトやサービスを開発する際は、ベトナムを選ぶことをおすすめします。
ベトナムでは日本語を話すことができる人材が多いからです。

低コストや技術力の高さに目が行きがちですが、日本語でコミュニケーションが取れるのは英語を話すことができない日系企業にとっては大きなメリットです。
オフショア開発においてコミュニケーションはプロダクトの品質に大きく影響するので、国内市場向けのプロダクトであればベトナムを選びましょう。

フィリピン

フィリピンの強みは英語の運用力が他の国と比べて圧倒的に高いところです。
グローバルな市場に向けたプロジェクトにおいては英語を使用する機会が多く、その際はフィリピンをオフショア委託先として選ぶことをおすすめします。

ただし、日本の企業側も英語を話せる人材が必要になってきます。
そのため最近では、英語を使用できる人材を自社で育成または採用している日本の企業が増えつつあります。

インド

インドはハイレベルな技術力を持つ人材が豊富で、欧米諸国などでは非常に人気の委託先です。
人件費の部分でのコストメリットは低いですが、技術力は高いため大規模な開発をする際のリソース確保を目的として選ばれています。

現在はリソースの確保を目的として大企業がオフショア開発を検討するパターンが増えつつあるので、今後インドも委託先として人気がでる可能性のある国でしょう。

バングラデシュ

まだオフショア開発委託の件数は多くないですが、国策によるICT産業の成長と人件費のコストメリットを考えると今後委託先として案件が増えてくる可能性がある国です。
他の諸国と比べるとコストメリットは大きいため、コスト削減を求めてオフショア開発を委託する企業は今後増えるでしょう。

中国、ミャンマー

中国とミャンマーは近年オフショア開発の委託先としては割合は低い状況です。

ミャンマーは2021年に発生したクーデターの影響で、ミャンマーで事業展開する企業との取引自体が慎重になっていることが理由としてあげられます。

また中国はもともと、オフショア開発の委託先として人気でした。
しかし、現在は人件費が東南アジア諸国と比べると高くなっているといった理由があげられます。

そのため、特別な事情がない限りは、東南アジア諸国を選択する企業が多い傾向です。

多様化する今後のオフショア開発

オフショア開発は当初海外の企業にシステム開発などを委託する形が一般的でしたが、今後のオフショア開発は運用方法が多様化していことが予想されます。
これまで行われてきたオフショア開発にて様々な課題が浮かび上がってきたからです。
その課題を解決するために、今後オフショア開発の活用方法が多様化が進んでいくと予想されます。

ここでは今後のオフショア開発の形式と契約形態の多様化について解説します。

オフショア開発の形式が多様化

オフショア開発は本来海外のオフショア開発を請け負う会社にシステム開発を依頼する形式ですが、近年では日本の企業が現地に拠点を置くパターンも増えつつあります。
現地に拠点を置くことが広まっている経緯としては、オフショア開発のリスクであったコミュニケーション部分の改善と人材の確保を行うためです。

近い距離でコミュニケーションが取れるためプロダクトの品質が向上し、優秀な人材を現地で調達し離職率を低下させることができます。
上記から現地に拠点を置く方式は、オフショア開発のリスクをうまく回避している形式と言えるでしょう。

また日系企業が拠点を置く際の税制面の優遇措置をしてくれる国もあるため、実際のところ海外に拠点を置きやすい状況です。
そういった経緯から現在では、海外に拠点を置いてシステム開発を行う企業が増えています。

今後オフショア開発はラボ型契約が増加

オフショア開発は契約形式として請負契約ラボ型契約の2種類がありますが、今後はラボ型契約が増えると予想されます。
ラボ型契約が増加する理由としては、オフショア開発をトライアル的に実施することができるためです。

請負契約はその名の通り案件ベースでプロダクトの開発を請負先の会社に任せ、プロダクトの納品までを全て委託する契約形式です。

一方、ラボ型契約は案件ベースではなく、一定期間で開発のためのチームを確保する契約形式です。
オフショア開発は必ずしも企業の思い通りにプロジェクトが進むわけではなく、ある程度のリスクやデメリットが存在します。

ラボ型開発の方がプロジェクト進行中の変化にも対応が可能なため、オフショア開発のリスクやデメリット回避に有効と考える企業が増えています。

ラボ型契約は現在増加しており、同白書によると直近でラボ型契約は全体の6割以上をしめています。
委託先での人件費が上がっている以上、委託する企業としてはなるべくリスクを回避するためラボ型開発を選択していくといった方向に傾いていくと予想されるでしょう。

出典:オフショア開発白書(2023年版)

今後のオフショア開発を成功させるうえでのポイント

今後オフショア開発を行い事業を成功させるために何が重要か気になる企業の方もいるでしょう。
オフショア開発の成功のためには、以下3つのポイントが重要です。

  • コスト削減に意識を向けすぎないようにする
  • 設計書のチェックは入念に行う
  • コミュニケーション齟齬が生まれないようにする

オフショア開発ではデメリットも考慮して、なるべくリスクヘッジをして進めていくことが重要です。
それぞれのポイントを解説します。

コスト削減に意識を向けすぎないようにする

コスト削減のみを考慮すると、オフショア開発は失敗してしまう可能性があるでしょう。
理由としてはコストが削減を意識しすぎると、コミュニケーションの齟齬や品質管理がうまくいかなくなる可能性が高いからです。

例えばベトナムには日本語を話せる人材が多くいますが、全員が日本語を話せるわけではありません。
実際、日本語を話せる人材を確保しようとすると基本的にコストは高くなります。

たしかに日本語を話せない人材であればコストは安くなりますが、コミュニケーションの齟齬が生まれ、品質低下につながることもあります。
よってコスト削減を意識しすぎたオフショア開発は、最終的に事業に投資した費用対効果を得られなくなるかもしれません。

設計書のチェックは入念に行う

オフショア開発においてプロダクトの品質は非常に重要ですが、そのうえで設計書のチェックを入念に行うことがポイントです。
なぜかというとプロダクトの不具合などの根本的な原因は設計書などのドキュメントにあることが多いからです。

高品質なプロダクトを目指す企業は、多少時間をかけてでも入念にチェックを行っています。
オフショア開発では委託先とのやり取りにおける問題がよく挙がりますが、設計書などのドキュメントチェックも入念に行うようにしましょう。

コミュニケーション齟齬が生まれないようにする

オフショア開発を成功させるために、コミュニケーションの齟齬をなくすための工夫は重要です。
なぜなら、コミュニケーション齟齬は品質の低下や人材の確保ができないといったリスクに繋がる1番の要因だからです。

実際オフショア開発におけるデメリットで最も多く挙げられるのが、コミュニケーションの齟齬が生まれやすい点です。
そのためある程度コストをかけてでも日本が話せる人材を確保したり、自社内で委託先の言語を話せる人材を育成したりする工夫が必要になります。

まとめ:委託先の状況把握と多様化する手段の活用が重要

今後、オフショア開発を検討する企業が意識すべき点は、委託する国の状況把握と今後多様化するオフショア開発の方法をうまく活用することです。
なぜなら、今後もオフショア開発を行う企業が増える以上、競争が高まり従来の方法ではうまくいかなくなる可能性があるからです。

オフショア開発には実際リスクがありますが、それをできるだけ回避するための方法や委託先の選び方は昔よりも増えています。
そのためオフショア開発により事業を成功させる可能性を少しでも上げるには、情報把握と固定観念に捉われない柔軟な計画を立てることが重要でしょう。

この記事を書いた人
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