ベトナム進出に使える助成金・補助金とは?条件や申請方法などを解説
こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
昨今は国内市場の縮小に伴い、海外進出に挑戦する企業が増加しています。
なかでもベトナムは、経済成長が著しく、新たな市場として注目を集めている国です。
他方で、ベトナム進出に限らず、海外進出は資金調達の重要性が高い経営戦略です。
そのため、資金を確保する方法に頭を悩ませている企業は多くあるでしょう。
本記事ではベトナム進出に活用できる助成金・補助金について、種類だけでなく申請の条件や、申請方法などを解説します。
実際にベトナム進出を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
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企業がベトナムに進出する背景
まずは多くの企業がベトナムに進出する背景についておさらいしましょう。
また、本章ではベトナム進出の現状や、進出における資金の重要性についても解説します。
ベトナムに進出する理由
多くの日本企業にとって、ベトナムは魅力的な市場です。
近年、ベトナムは経済成長が著しく、GDPの成長率を約6~7%で維持するなど、安定した経済成長を続けています。
加えて2007年のWTO加入以降、貿易の自由化も進んでおり、一部の分野を除いては100%の外資の呼び込みが認められるなど、進出しやすい環境が整っている点も魅力です。
また、ベトナムは人口増加によって若い優秀な人材が豊富であり、人件費も安いため、優れたスタッフを確保しやすいでしょう。
さらに近年の物価高にも関わらず、日本の3分の1程度の安い物価で安定しています。
このように、ベトナムは環境・人材・物価とさまざまな点で有益であり、進出に成功すれば多くのメリットを享受できます。
そのため、多くの日本企業が進出先にベトナムを選ぶようになりました。
ベトナム進出の現状
日本企業のベトナム進出は年々右肩上がりを続けています。
外務省の海外進出日系企業拠点数調査によると、2022年時点でベトナムにある日本企業の拠点数は2373拠点であり、2021年と比べると約350拠点以上増加しました。
ベトナムへの日本企業の進出数はASEANではトップであり、それだけ注目度が高いことがうかがえます。
なお、ベトナムへの進出が増加している背景には、中国の影響も考えられます。
以前より日本企業の進出先は中国がトップでしたが、昨今の政治情勢や輸出規制の影響で、リスクヘッジのためにチャイナプラスワンを実行する企業が増加しました。
チャイナプラスワンとは、進出先を中国に限定せず、別の国に拠点を設置してリスクを分散させる経営戦略を意味すする用語です。
チャイナプラスワンを実施する上で、ベトナムは有益な選択肢です。
ベトナムは親日的な上にめざましい経済成長を遂げているなど、魅力的な市場を有しており、中国に代わる新たな進出先としては申し分ありません。
2023年には国交樹立50周年を迎えるなど、日本とベトナムの関係はよい状態を維持しています。
今後もベトナムは日本企業にとって有望な進出先として注目され続けるでしょう。
ベトナム進出における資金の重要性
ベトナム進出を実施するなら、海外進出において資金は重要な要素です。
海外進出は、移動するだけでもコストがかかる上に、現地の事業展開をサポートするパートナーや、販路・流通経路など、確保しなければならないものも多くあります。
そのため、国内と比較すると新たな拠点を設立するだけでもかなりのコストが発生します。
他方で、進出当初だと売上が不安定になる状況が想定されるため、経営状態が安定するまでは資金繰りに苦労するでしょう。
資金の確保は、拠点の維持・事業の展開・人材の確保など、さまざまな面において重要な取り組みです。
そのため、必要資金の確保はベトナム進出を成功させる上で解決しなければならない課題です。
資金面の不安を払拭する上でも、企業は助成金・補助金の活用を含め、さまざまな対策を講じる必要があります。
ベトナム進出に役立つ助成金・補助金4選
本章ではベトナム進出に役立つ助成金・補助金を紹介します。
近年は企業の海外進出が重要な経営戦略とされるため、行政や支援機関がさまざまな助成金・補助金制度を立ち上げています。
いずれも利用する上では条件がありますが、活用できれば安定した資金調達を実現できるでしょう。
また、海外進出で役立つ融資制度についても紹介します。
JCM制度
JCM制度とは二国間クレジット制度の略称であり、環境省が行っている補助金制度です。
地球温暖化対策として、途上国への脱炭素技術の普及を目指して設立されました。
JCM制度は、温室効果ガスを削減できる脱炭素技術に注目した制度である点が特徴です。
そのため、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー関連の術を持つ企業が多く活用しています。
他方で、JCM制度は類似の技術の採択案件数によって補助率が変動する点に注意しなければなりません。
JCM制度の補助率は採択案件数が少ない技術ほど高くなりやすく、過去に採択された実績がない技術であれば、上限は50%です。
しかし、採択実績がある技術は件数に応じて、補助率の上限が40%・30%と低下します。
つまり、JCM制度は他の企業にはない最先端の技術を有している企業ほど、有利な補助率が得られます。
参照:JCM公式サイト
中小企業・SDGsビジネス支援事業
中小企業・SDGsビジネス支援事業はJICAが行っている助成金制度であり、中小企業による海外進出の支援のために設立されました。
中小企業・SDGsビジネス支援事業は単なる助成金制度ではありません。
JICAが途上国と日本企業をマッチングし、現地の社会課題の解決を目指しています。
そのため、助成金だけでなく、JICAが有するネットワークやコンサルティングを活用できるため、資金面以外のサポートも期待できます。
他方で、申請の際に現地の発展に対する貢献性が注目される傾向がある点には注意しましょう。
海外サプライチェーン多元化等支援事業
海外サプライチェーン多元化等支援事業は、日本とASEANのサプライチェーンの強靭化を目指して設立された補助金制度です。
日本貿易振興機構であるJETROが実施しています。
その名の通り、海外サプライチェーン多元化等支援事業は、サプライチェーン多元化を目的とする設備の導入や、導入のためのFS調査等を補助対象としています。
補助率は日本とASEANのサプライチェーン強靭化の度合いによって変動します。
なお、2023年時点での補助率は申請金額が1~15億円に対し、大企業が2分の1以内・中小企業が3分の2以内でした。
海外展開・事業再編資金
海外展開・事業再編資金は、日本政策金融公庫が実施している融資制度です。
海外進出を目指す中小企業向けの融資であり、直接貸付なら最大で14億2000万円、代理貸付なら1億2000万円までの融資を受けられます。
海外展開・事業再編資金は基礎利率が低く、現状では上限が2.5%で設定されています。
さらに利益率や本邦での雇用維持などで一定の要件を満たせば、2%以下の特別利率で融資を受けられる点が魅力です。
助成金・補助金の申請方法
本章では紹介したそれぞれの助成金・補助金の申請方法について解説します。
まずは、概要を記載しますのでどの助成金・補助金が自社に適しているのか検討する際の参考にしてください。
JCM制度の申請方法
JCM制度の申請は、インターネットを通じた電子申請が基本です。
Webサイトにあるアカウント申請フォームでアカウントを発行した上で、電子申請システムで必要情報の入力や、添付書類の格納を行います。
なお、申請に際しては以下の書類が必要です。
- 公募提案書
- 代表事業者届出書
- 実施計画書
- Project Idea Note for the JCM Model Project(パートナー国に共有する事業の概要を記載した書類)
- 経費内訳
- 業務概要がわかる資料及び定款
- 応募者及び共同事業者の経理状況説明書
なお、Project Idea Note for the JCM Model Projectは英語で記載しなければならないため、作成する際は注意しください。
参照:公募情報|JCM制度
中小企業・SDGsビジネス支援事業の申請方法
中小企業・SDGsビジネス支援事業は、ニーズ確認調査・ビジネス化実証事業のいずれかのスキームを選び、専用ウェブサイトより申請します。
申請に際して必要な書類は以下のとおりです。
- 同意書
- 企画書
- 調査支援対象経費積算表
- 直近3期分の財務諸表
- 登記事項証明書の写し
- 納税証明書
- 中小企業団体の設立許認可書等(中小企業団体のみ)
- 金融機関確認書
- ワーク・ライフ・バランス等推進企業に関する認定書
なお、申請後は約3か月の審査が開始されますが、必要に応じて、別途ヒアリングが実施される場合があります。
参照:募集要項|JICA
海外サプライチェーン多元化等支援事業の申請方法
海外サプライチェーン多元化等支援事業は、専用のオンライン応募フォームで事業概要提案を入力し、必要資料を添付した上で申請を行います。
海外サプライチェーン多元化等支援事業に申請する際は、以下の書類が必要です。
- 補助金交付申請書
- 事業提案に関する詳細資料
- 事業経費概算書
- パンフレット等の会社概要がわかる資料
- 資本内訳を含む直近3年の決算報告書と財務諸表
- その他参考資料
なお、審査結果はメールで通知され、採択決定者はホームページ上で公開されます。
海外展開・事業再編資金の申請方法
海外展開・事業再編資金は、他の融資と同様に日本政策金融公庫の窓口にて申請を行います。
近くに日本政策金融公庫の支店がなければ、商工会議所の定例相談の場でも融資の相談が可能です。
海外展開・事業再編資金で必要な書類は以下のとおりです。
- 会社案内・製品カタログなどの参考資料
- 登記事項証明書
- 最新3期分の決算書・税務申告書
- 納税証明書
- 最近の試算表(決算月から時間が経っている場合)
- 設備投資の概要がわかる資料(見積書等)
- 担保の内容がわかる資料(登記事項証明書等)
なお、融資について相談する時点から会社案内・決算書・事業計画書を持ち込めば、早い段階からより具体的な相談に対応してもらえます。
助成金・補助金を活用して円滑なベトナム進出を実現
近年、ベトナムは経済成長が著しく、進出しやすい環境が整っています。
しかし、ベトナム進出を成功させるためには、資金面の課題をクリアしなければなりません。
財務基盤が不安定な中小企業の場合、行政や支援機関が提供している助成金・補助金が大いに役立ちます。
自社の事業に見合った助成金・補助金を活用し、スムーズなベトナム進出を実現しましょう。