【事例あり】アプリの実証実験とは?得られる効果・実施手順を解説 

2024.02.15
DX・システム開発
Wakka Inc. メディア編集部
【事例あり】アプリの実証実験とは?得られる効果・実施手順を解説 
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こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
新しいサービスや商品をリリースする際、可能な限り失敗を無くし効果を最大限にしたいと考える企業は少なくありません。そのため、近年ではリリース前に仮説検証のため、実証実験を行う企業が多いです。

一方で「アプリ開発をするには実証実験が必要なのか?」「アプリ開発の際に実証実験を行うとどのような効果が得られるのか?」と考えている方もいるのではないでしょうか。

本記事では実証実験によるメリットや実証実験からアプリ開発までの手順を詳しく解説します。
また、実証実験を経てアプリを開発した事例も紹介しますので、参考にしてみてください。

目次

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アプリの実証実験とは

実証実験とは、新事業やサービスで扱うアプリやシステムの実現可能性や実用性、費用対効果、課題などを検証することです。
実証実験は、コンセプト実証や概念実証などの意味の「Proof of Concept」を略して、「PoC」とも呼ばれます。

目的の効果を得るために必要な要素や仕様を洗い出すことを目的としています。
アイデアやサービスの最小の機能を持ったアプリやシステムの簡易版を作成し、実際の利用を想定して使うことで、理論や試算に頼らない具体的な検証ができるのが特徴です。
国や市町村などの自治体と民間企業や研究機関が実証実験を取り入れる機会も多く、注目されています。

アプリ開発における実証実験で検証する内容

実証実験を通してアプリ開発をする際は、アプリの効果や技術的な実現性を主に検証します。

一般的な検証内容は前述の通りですが、実証実験の目的によっては内容が異なるため、検証する内容を明確にしておくことが重要です。
検証内容についてそれぞれ詳しく解説します。

アプリの効果

実証実験を通してアプリ開発を行う際は、アプリの効果の検証は欠かせないでしょう。

効果とコストを比較して、費用対効果を確認するために重要です。
具体的な内容としては、アプリで想定している課題を解決できるか投入した費用に見合っているかなどを検証します。

例えば、地方の高齢者が交通手段がなく病院に行けない問題を解決するため、オンライン診療アプリを開発する場合です。
患者と医師が通話できるか、画質は問題ないかなどがアプリの効果を確認する項目として挙げられます。

実証実験によってアプリの効果を検証し分析すれば、今後の投資を継続するかの判断材料になります。

技術的な実現性

技術的な検証もアプリ開発において大切です。
実際には事業やサービスの運用も考慮して、アプリを技術的に実現可能かを検証します。

また、アプリとサービスの連携ができるかや使用環境での電波で利用可能かなどを検証する必要があります。

実際の環境で利用できなければ、形にならずプロジェクトが終わってしまうからです。
実験後は、実証実験で見つかった課題やユーザーからの感想がアプリに反映できるかも考える必要があります。

実証実験で得られる効果

実証実験でどのような効果が得られるのかを理解すると、実証実験で行いたいことも考えやすくなります。

アプリを実現できるか検証できる


実証実験をすると開発するアプリの方向性や仕様がサービスや事業に適しているのかが分かり、アプリを実現できるか検証できます。
実現可能性が分かると、開発の工数や必要な人員数の算出に役立ちます。

工数や人員削減につながる

実証実験によって細かなニーズやアプリの課題を確認できるため、アプリ開発に必要な要件のブラッシュアップが可能です。

アプリ開発を想定した当初より要件が具体的になるため、余分な機能の削除やリソースの見直しにつながり、工数や人員を正確に見積もれるようになります。

また、「自社の技術やリソースのみで実現できるか?」が早期に分かれば、自社技術では開発が難しい箇所を長い時間をかけて開発しなくて済みます。

費用対効果を検証できる

最小限のサービスや機能を持ったアプリだとしても、開発には費用がかかります。
かけた費用に対して、どの程度の効果があるかを知れば、今後の開発をする上で予算を算出する目安になります。

実証実験では、今までのアプリ開発に投じたコストが適切かどうかの検証が可能です。

得られた成果に対してかけた費用が多いと分かれば、経費を抑えるための施策を考えられるでしょう。
予算を縮小せずに開発をする場合は、アプリ開発のための予算や人員を確保する工夫が必要です。

本リリース前にユーザーから直接意見を聞ける

アプリの実用性を高めるには、ユーザーの意見を反映させることが効果的です。

事前の意見収集によって、ユーザーのニーズを把握でき、リリースしても使われないといった事態を避けられます。

また、ユーザーから直接意見を聞くことで、アプリの改善点や想定ユーザーへの訴求ポイントが見つかります。

事業やサービス全体の設計の見直しする機会になる

実証実験では、アプリも含む事業アイデア自体が、想定している課題を解決できるかを検証します。

アプリ以外にもサービスそのものの改善点が見つかることもメリットのひとつです。

アプリの機能や内容が良くても、サービスそのものの設計が最適化されていないと、アプリが使いにくいと思われる場合もあります。

例えば、アプリで対応できる決済手段が少ないと一部のユーザーにとって利便性の低いものとなってしまいます。
そのためアプリ以外にも改善点はないかと多角的な目線で情報を収集することが重要です。

実証実験の段階では、支払い方法を細かく設定できないかも知れませんが、ユーザーに満足してもらうにはどのようにすればいいかを考え、実証実験の結果からサービス設計の見直しを検討しましょう。

ソフトウェアやアプリの開発手法について次の記事で詳しく解説しているので、アプリ開発を考えている方はご覧ください。

実証実験をしてアプリ開発をする際にデメリットはある?

アプリ開発において実証実験を行うとさまざまなメリットがある一方で、注意すべき点もあります。
それは情報漏洩リスクがあることです。

実証実験は自社のみで行えないケースがあり、関係者や実験参加者から情報が漏洩する可能性があります。
情報漏洩を防ぐためには、以下の対策が考えられます。

  • 協力会社や自治体とは秘密保持契約を結ぶ
  • 被験者や一般ユーザーには公開する情報を制限する

アプリ開発に関わる関係者が多いほど、対策を行い情報漏洩を未然に防ぎましょう。

実証実験で開発に成功したアプリ

ここでは、実証実験を行い開発に成功したアプリの事例を紹介します。

子育て支援『かわさき子育てアプリ』

かわさき子育てアプリは神奈川県川崎市が提供する、成長記録や街の育児情報の提供など子育てを支援するアプリです。
予防接種のスケジュールの確認や受け忘れ防止のリマインド、自治体の情報提供、イベント検索などさまざまな機能があります。

スマートフォンの急速な普及や子育て世代の支援充実についての政策的要請、子育てに関する情報の発信者が多様で、把握しにくいことが背景にあり、川崎市と富士通株式会社が共同で実証実験を行いました。

実証実験では、サービスの向上とオープンデータ活用モデルの開発、情報の一元化による効率化を目的として実施しました。
実験後のアンケートでは、アプリモニターのうち73%が「便利」と評価し、78%が今後も利用したいと回答しています。
評価が十分に得られたため、正式にリリースし、その後もリニューアルするなど品質の向上に努めています。

参考:川崎市『「かわさき子育てアプリ」について
川崎市・富士通共同実証実験 子育て支援アプリ「あさお子育てポータル」 実施報告書(まとめ)

面接練習アプリ『steach』

steach(スティーチ)は、IoT技術を用いたシステム開発を行っている株式会社エフィシエントと、就職支援事業を展開する株式会社ジェイックが共同開発したアプリです。
AIがユーザーの面接を分析し、スコア化することで改善点が分かり、面接の質を向上させられます。

実証実験は横浜市の支援のもと行われました。

主に学生を対象とし、学生と学校法人にsteachを利用してもらい、アプリに不足している機能や学校法人における就職活動支援の業務効率が向上できるかを検証しました。
フィードバックを基にアプリの改善と、より多くのデータ収集のため、学校法人や企業などの利用者の募集を行っています。

参考:株式会社エフィシエント

定額乗り放題サービス『mobi』

WILLER MARKETING株式会社が開発したmobiは現代の暮らしや働き方に沿った定額の移動サービス・アプリです。

東京の豊島区や渋谷区の2ヶ所で検証されました。

渋谷区では、公共交通が充実しているものの、新たな生活様式に対応した移動サービスが求められている背景があります。
子育て世代や高齢者など世代に関係なく、多様な区民・来訪者の日常生活で可能な利便性の高い移動サービスの実装を検証する目的で、実証実験が行われました。

実証実験により、60代以上のシニア世代への説明が課題になったため、サービスの訴求の仕方の見直しやスマートフォン教室で使い方を説明し、ユーザーの理解が深まる環境を構築して利用者の獲得に成功しています。

参考:WILLER株式会社『mobiサービスサイト
mobiの実証実験及び本格運行について

実証実験からアプリ開発までの流れ

事業のアイデアからペルソナやターゲットの仮設定まで行っている前提で、実証実験からアプリ開発までの流れを説明します。

実証実験の目的・ゴールの明確化

実証実験の計画をする前に、目的やゴールの明確化が必要です。
実証実験をなぜ行うのか、どのような成果を得られれば良いのかを決定します。
目的が曖昧なまま実証実験を行うと、欲しいデータが得られず、アプリを開発しても成果につながらない事態になってしまいます。

実施内容の決定

目的やゴールを基に、実証実験の内容を考えます。
実証実験では、実際のサービス利用を想定して行うため、アプリ利用のみならず全体を意識した導線設計に配慮し、実施内容を決定します。

具体的な内容は以下の通りです。

  • 実証実験での検証内容
  • 検証方法
  • 検証の回数
  • 予算の確保
  • 検証に必要な人員の洗い出し
  • 実証実験の流れ
  • 自治体への協力要請

自治体と実証実験を行う場合は、協力要請や実証実験の募集に応募が必要です。
協力を要請する際は、事業やアプリによって自治体の社会課題を解決できる旨をアピールしましょう。

実証実験の実施

準備を進めたら実証を実施します。

また、アンケートやユーザーの感想以外にも、関係各社からの意見の収集や現場で使用しているユーザー様子も観察し、表面上では分からないデータも集めておくと開発時にも役に立ちます。

結果の評価・分析

次は実証実験で集めたデータを評価・分析する段階です。
獲得したデータを客観的な視点で分析するのがポイントです。
そして、アプリの効果と費用を比較して、投資を継続するかの判断も行います。

分析の結果、リリースが決定したら、本格的な開発に向けて準備を整えます。

アプリ要件の再定義

分析結果を基に、リリースに向けてアプリの要件を再定義します。
追加で必要な機能やUIの改善がある際は、要件に記載します。
通常のアプリ開発と同様に、開発に必要な項目をすべて洗い出すことが必要です。
要件が決定したら、予算や工程などを検討し、実装に進みます。

アプリの改善・実装

要件定義書の内容に従いアプリの改善や新機能、新しいUIの実装をする段階です。
アプリの改善・新機能の実装が完了したら、アプリのテストを行います。

リリース

テストの段階でアプリの操作や仕様に問題がなければ、リリースを行います。
リリースの前には、ユーザーをどのように集めるか利用を継続してもらうにはどうするかなどの施策を考えましょう。
そしてリリース後も、アプリやサービス・事業の改善を継続的に行うことが大切です。

アプリ開発で実証実験を行う際のポイント

アプリ開発において、実証実験を行う際のポイントは下記が挙げられます。

  • 実際の運用と同じ環境で検証する
  • 小規模な実験から始める
  • 実証実験が目的にならないようにする

それぞれを詳しく解説します。

実際の運用と同じ環境で検証する

実際の運用と同じ環境、なるべく近い環境で実証実験を実施するのがポイントです。
同じ条件でない場合、収集したデータの有用性が低くなり、実証実験やアプリ開発に投入した費用やコストが意味のある投資と言えない事態になってしまいます。

特にアプリやWeb上で完結せず、リアルでもサービスが利用される場合は、アプリの動作に影響を与える要因をリスト化しておくことが重要です。

小規模な実験から始める

実証実験は小規模な実験から始めましょう。
大規模になると、検証だけでも多くのコストがかかり、十分な検証が行えない可能性があります。

実証実験は完了できたとしても、コストが増えすぎてアプリの開発予算がなくなってしまったり、事業やサービスの採算が取れなくなってしまったりと、撤退せざるを得ない状況になりかねません。
実証実験では、必要最低限のサービス、アプリ機能を実装して行いましょう。

実証実験が目的にならないようにする

まれに実証実験を行うことが目的になってしまい、当初のゴールからかけ離れたことをしてしまうケースがあります。
目的を見失うと、目標達成に直結するアクションが行えず、想定していた成果を得られません。

実証実験で何を検証したいのか、どのような情報を収集する必要があるのかを明確にしてから実施しましょう。
実証実験が長期間続く、もしくは複数かいある場合は、目的を見失わないように定期的に目的や目標を振り返るのも有効です。

長期的な事業の運用を見据えて実証実験を実施しよう

実証実験はアプリの実用性や実現可能性などを確認するために行います。
本来の目的を見失い、実証実験の実施が目的になってしまっては、想定している成果が得られないでしょう。

実証実験はプロジェクトの始まりに過ぎないため、実験の先に本番のリリースがあることを忘れず、長期的な運用を見据えて実証実験を行いましょう。
そのため、1回の実証実験で良い結果が得られなくても、アプリやサービス全体の改善を続ければ、成功の可能性も上がります。

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