PoC契約とは?基礎知識と契約のポイントや注意点について解説

最終更新日:2024.10.26
DX・システム開発
Wakka Inc. メディア編集部
PoC契約とは?基礎知識と契約のポイントや注意点について解説
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こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。

近年はDXやAIなどのデジタル技術が大きく発展している影響で、PoC契約による技術検証を実施する事例が増えています。
読者のみなさまの中にも、デジタル技術を用いた新しいサービスの開発に関わる方がいらっしゃるでしょう。

しかし、PoCを進めたいと考えていても

「PoC契約がどのようなものかよくわからない」
「どのようにPoC契約を進めればよいかわからない」

という方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、

  • PoC契約に関する基礎知識
  • PoC契約のポイントと注意点
  • PoCの進め方

などについて詳しく解説します。

これからパートナー企業とPoC契約を締結し、PoCを進める計画がある方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

目次

PoC契約の基礎知識

PoCとは何か。
また、PoC契約とはどのようなものか。

本章ではまず、PoCや、PoC契約についての基礎的な情報をお伝えします。

PoCとは

PoCとはProof of Conceptの略で、直訳すると概念実証という意味です。
経済産業省ではPoCを「技術検証」と訳しています。

技術検証とは、新しい技術やアイデアが

  • 実現可能か
  • ビジネスに有効か

などについて検証することです。
技術的な実現可能性だけでなく、ビジネスとして投資に見合ったリターンが得られるかも検証し、ビジネス上の有効性を確認します。

大規模な投資をする前に小規模な予算でプロトタイプを構築・検証し、技術面やビジネス面の有効性と課題を確認してリスクをコントロールするのが、PoCの意義だと言えるでしょう。

PoC契約が求められる理由

大規模な投資をして本格的な製品の開発に入る前に、提携する企業の技術力やアイデア、あるいはビジネスの有効性などを検証するのを目的に締結するのがPoC契約です。
PoC契約は、技術やアイデアを持つ企業の負担を減らす目的で作られました。

かつては、事業者間で共同開発を進める場合、秘密保持契約(NDA)を締結するだけでそのまま提携の協議に進んでいました。
ところが、本開発の入る前に行われる技術検証は、スタートアップ企業など技術やアイデアを持っている側が無償でPoCの実施を求められることが多かったのです。

スタートアップ企業にとってPoCにかかるコストの負担は重く、もし本開発に移行できなかった場合はPoCのコストを回収できません。
そのため、PoC契約の締結が推奨されるようになりました。

【経済産業省】PoC契約書の雛形

PoC契約で定めるべき契約条項については、経済産業省が公開しているPoC契約書の雛形である「モデル契約書」が参考になるでしょう。
経済産業省のモデル契約書では、樹脂に添加可能な新素材を開発したスタートアップ企業と、自動車部品メーカーがPoCを進めるというモデルケースを用いて契約書の内容を解説しています。

自社のケースに当てはめてみると参考になる部分もあると思われるため、ぜひ内容を読み込んでみて参考にしてください。

参考:『モデル契約書 ver1.0 技術検証(PoC)契約書(新素材)』(経済産業省)

PoC契約のポイント

本章では、PoC契約で問題を起こさないために注意すべきポイントについて解説します。

PoCの目的を明確にする

PoCは共同研究開発を本格的に始動する前段階で検証を実施するものです。
したがって、PoCの段階で時間と費用を使いすぎてはいけません。

時間と費用を使いすぎないためには、PoCの範囲を広げすぎず目的を絞り込んで明確に設定し、時間と費用を最小限に抑えましょう。

対象技術と用途を限定する

PoC契約では、PoCの対象とする技術を定めるのはもちろん、対象の共同研究開発だけに用途を限定しておく必要があります。
対象技術を定めるだけだと、対象技術を他の用途に転用されることを制限できないからです。

想定外の用途で技術が利用されないよう、PoC契約では用途を明記しておきましょう。

PoCにかける期間を明確にする

スケジュールや検証方法を決めて短期間で内容の濃い検証を実施するためにも、PoCにかける期間は明確に定めておきましょう。
契約で検証期間を定めておかないと、予想以上に時間をかけてしまい、その分だけ費用もかさむことになりかねません。

共同研究開発に移行する意思決定期間を定める

PoCによる検証結果を踏まえ、共同研究開発の契約に移行するかどうかの意思決定をする期限を明確に定めておきましょう。
期限を設定しておくことでPoCの検証作業や、結果を集中して評価しようという空気が生まれます。

PoC契約の際に注意したいこと

PoC契約さえ締結すれば安心というわけではありません。
本章では、PoC契約を締結する際に注意しておきたい内容について解説します。

モデル契約書は事例に合わせてカスタマイズする

経済産業省が公開しているモデル契約書は、PoCで実際に起きたトラブルを調査し、想定されるトラブルが発生しないよう必要な条項をある程度は網羅していますが、あらゆるケースで万能と言えるものではありません。
実際、PoCの内容や契約相手との関係などによって条件が変わってくるため、事例に合わせて契約内容をカスタマイズする必要があります。

そのため、考えられるリスクや起きてはいけないトラブルを洗い出し、トラブルやリスクを防ぐための条項を追加しておくのが重要です。

情報漏洩のリスクに備える

PoCでは自社の努力で開発した新技術やアイデアなど、公開していない情報を共同研究開発する相手企業に共有する必要が出てきます。
そのため、情報の適切な管理ができていないと、自社の重要な情報が外部に漏洩してしまい競争優位性を損なうリスクが出てきます。

情報漏洩のリスクに備えるためには、PoC契約の前に秘密保持契約(NDA)を締結しておくことが重要です。
また、PoCのプロセスで取り扱う情報の範囲を明確に定義しておき、必要最小限の情報を共有するような対応を検討しましょう。

PoCに時間と費用をかけすぎない

PoCには専門知識を持つ人材や、特殊な設備が必要になることもあり、実施するために必要な時間とリソースは少なくありません。
当然ながら検証回数が増えれば、それだけ費用も増大するでしょう。

したがって、PoCに時間と費用をかけすぎないためには、

  • PoCの目的
  • PoCで検証する範囲や回数
  • リソースの配分計画

などの項目を計画段階で明確に定めておくのが重要です。

PoCの進め方

本章では、PoCの具体的な手順について解説します。

1.目的の設定

まず、PoCを実施する目的を明確に定めます。
目的が明確でないと効果的なPoCが実施できないばかりか、無駄な時間やコストをかけてしまい、PoCにかけるコストが膨らむことになりかねません。

したがって、最初の計画段階で目的をしっかり定め、実施する範囲も決めておきましょう。

2.検証方法の策定

次に、PoCの目的を達成するためにどのような方法で検証を実施するかを検討します。
最初に決めた目的を達成するためには、検証にどのようなデータが必要かを決め、必要なデータを取得するための手順や使用する試作品などを準備しましょう。

3.検証の実施

PoCに使用する試作品や検証手順が準備できたら、実際に検証を実施します。
もちろん、検証とはいえ、できるだけ本番の運用に近い環境で実施するのが理想です。

本番の運用に近い環境で実施するほど、得られるデータの信頼性も向上するため、その後の評価で適切な意思決定がしやすくなるでしょう。

4.検証結果の評価

検証が終わったら、得られたデータをもとに検証結果を評価します。
できれば、技術の実用可能性やパフォーマンス、ビジネスにおける有効性など、多角的な観点で評価しましょう。

評価をすることで、現状の問題点や今後の課題を整理し、本開発のフェーズに活かせます。

5.機能改善と要件定義

検証結果の評価によって明確になった課題を踏まえ、機能改善を実施して品質向上を目指します。
さらに、機能改善の結果を用いて再度PoCのサイクルを繰り返し、得られる結果の品質を上げていきましょう。

計画した回数の検証を終えたら、最終的な検証結果をもとに本開発のための要件定義を実施します。

PoCで検証すべき3つのポイント

PoCで成果を上げるためには、どのような観点で検証するかが非常に重要です。
なぜなら、検証内容がポイントを外していると、本開発に向けて正しい意思決定ができないためです。

本章では、PoCで検証すべき3つのポイントを解説します。

ユーザーに提供する価値の検証

PoCで検証する技術やアイデアが、実際に製品やサービスとして提供したときにユーザーにとってどのような価値を持つことになるかを検証します。
そのためには検証する前に、現状ユーザーが抱えている問題について、仮説を立てておく必要があるでしょう。

そして、立てておいた仮説にしたがって、

  • ユーザーが抱えている問題を解決できるか
  • ユーザーが抱えている問題を解決するのにこの技術は有効か
  • 抱えている問題が解決すればどのようなベネフィットがあるか

といった観点で検証し、技術やアイデアの有効性を評価します。

技術的な実現可能性の検証

想定している製品やサービスの開発が、当該技術を用いて実現可能かを検証します。
実現は可能であっても、

  • 想定している効果が得られるか
  • 精度や品質は見込どおりか

といった点は検証してみないとわからないため、検証の観点として持っておくべきでしょう。

また、製品やサービスの仕様を決めるためにクリアしなければいけない課題が出てくる場合もあるため、

  • 具体的にどのような仕様で実現可能か
  • 実現するために他に考慮すべきポイントはないか

などについても検証で押さえておきましょう。

ビジネスの可能性の検証

PoCで検証する技術やアイデアが、ビジネス化を見込めるかについても検証します。

  • 新しい製品やサービスの開発にどの程度の費用がかかるか
  • ビジネスにおける収益はどの程度見込めるか

など、ビジネスとして収益が得られ、成長していけるかについても検証すべきでしょう。
実用化の目途が立っても肝心のビジネスで成果が出せなくては意味がないため、ビジネス観点での検証は重要です。

PoC契約でトラブルなく技術検証を進めましょう

PoCは、自社で開発した技術やアイデアを検証するとともに、ビジネスとしての有効性を確認するのが目的です。
また、事業会社にとっては技術やアイデアの有効性を検証するとともに、共同研究開発をする相手企業の技術力も確認しています。

トラブルを起こすことなく円滑にPoCを進めるためにはPoC契約が重要です。
ポイントを押さえたPoC契約を締結することで、安心して相手企業とのPoCに取り組めるでしょう。

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