オフショア開発における課題とは?3つのポイントで解決策を解説
みなさん、こんにちは。Wakka Inc.ベトナム拠点のラボマネージャー中垣です。
近年、人件費の高騰や開発人材の不足などから、オフショア開発の人気が高まっています。しかし、オフショア開発で海外の会社や関連会社に業務を依頼する際には、注意しなければならない点がいくつかあります。
もし今後、みなさんの会社でオフショア開発を行う予定があるようでしたら、事前にその課題と解決策を把握しておきましょう。今回はオフショア開発における課題とその解決ポイントについて紹介していきます。
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オフショア開発における3つの課題
オフショア開発の特徴であると同時に課題となる点は、開発拠点が海外にあるということに加え、現地のエンジニアが開発にあたるということです。この点に関して発生しやすい3つの課題を、ここで確認しておきましょう。
課題1:人材管理に関する課題
オフショア開発で直面する課題のひとつが人材管理です。これが管理不足に陥ると、チーム全体の生産性や成果物の品質などが低下してしまいます。
- 現地の人材管理
日本人と同様に、海外の人材もその能力には個々の差があります。この点は日本においてプロジェクトを立ち上げた場合でもまったく同じですが、海外の場合は日本とは異なる文化や仕事に対する考え方の違いがあります。
日本人が当たり前と思っていることは、海外では当たり前ではないのです。仕事を依頼する前には、開発を委託する会社や人材への事前教育と考え方のすり合わせが必要です。
- 品質やセキュリティの確認が困難
上記のような教育やすり合わせ、適切な人材管理を行わない場合、成果物の品質が期待したものと異なったり、開発の遅れや納期遅延などの問題が発生することも考えられます。
また情報(顧客データ等)に対するセキュリティ意識にも違いがあることが多く、適切な管理方法などをあらかじめ決めておかないと、情報漏洩などセキュリティ上の問題が発生する可能性もあります。
このような課題に対して事前に対策を講じておかなければ、品質の向上(修正)や進捗遅れのリカバリーのために開発人員を追加(国内でのリカバリーも含む)することにもなりかねません。
オフショア開発の目的のひとつがコスト削減であるにもかかわらず、結果的にコスト高となってしまうことも考えられるのです。
課題2:開発プロセス上の課題
- 海外との距離感
日本と海外は物理的に離れているだけでなく、時差もあります。時差によって問題があってもすぐにミーティングを開けないこともあり、開発の進捗が見えにくく、また、すぐに修正対応することが難しい傾向もあります。
電子データのやり取りであればほぼ問題ありませんが、実際の書類やサンプルなどを送る場合には数日から一週間程度かかることや、通関の必要があることも認識しておく必要があるでしょう。
- 言語の違いによる認識(理解度)の違い
日本人同士であれば「阿吽(あうん)の呼吸」のようなものもありますが、現地エンジニアの場合にはこれは通じません。微妙なニュアンスはもちろん、言語の違いによる認識のずれには十分気をつける必要があります。
特に仕様や検査条件などは、極力明確に、現地のエンジニアにも通じる表現を用いなければ通じません。曖昧さは双方の誤解の元となり、成果物の品質や納期に大きく影響します。
課題3:海外の文化や国民性による認識の違い
- コミュニケーション
言語の違いは認識の違いも生みますが、そもそもコミュニケーションが難しいという問題もあります。オフショア開発では一般的に英語でコミュニケーションをはかることが多くなりますが、たとえば相手がベトナムなどの場合、日本人もベトナム人も英語が母国語ではありません。
お互いが不慣れな言語でコミュニケーションをはかることになるので、細かな修正内容を伝える場合などは理解の再確認が欠かせないのです。
- 文化、国民性
国が違えば、当然のことながら政治情勢や文化、商習慣も違います。東南アジア・南アジア・中国などの場合によく問題となるのが「旧正月」です。
毎年2月の上旬ごろに日本の正月に相当するお祝いの習慣があり、この期間は仕事がすべて止まってしまいます。日本のように休日出勤をする習慣のない海外では、このような期間を考慮に入れておかないとスケジュールが大きく狂う原因となります。
また「残業をすることがない」、「会社や商店が早く閉まる」、「取引は現金のみ」など、国民性による商習慣の違いも知っておく必要があるでしょう。
オフショア開発における失敗事例と成功させるためのコツについては、こちらの記事もご覧ください
オフショア開発の課題を解決する3つのポイント
このようなオフショア開発の課題を解決するには、事前の対策が重要です。課題に対する、3つのポイントを解説します。
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ポイント1:適切なコミュニケーション設計
まず、日本人と現地のエンジニアとでは、仕事に対する感覚がそもそも違うことを意識しておきましょう。打ち合わせ時には日本人特有の曖昧さを排除し、伝えたいことを明確に、強く伝えることが大切です。
時差によるコミュニケーションの問題については、オンラインの会議システムを使って決まった時間にミーティングを設定するなど、定期的な進捗確認を心がけます。
委託先の国の事情については、あらかじめ調査会社を使うなどして把握しておいた方がよいでしょう。特に政治情勢については政情不安を抱えている国もあるので、直近の内政状況は必ず確認しておきましょう。
また、納期に関わりそうな国民の祝日や、旧正月の時期にも注意が必要です。特に、旧正月は毎年日付が変わるので、適宜チェックしておく必要があります。
このような状況を常に把握しておくためには、現地にブリッジエンジニアを置くことも有効です。政治情勢など、状況の変化もすぐに知ることができ、両国の言語や英語に堪能なブリッジエンジニアであればコミュニケーションの問題も解決してくれます。
高品質な成果物を低コストで納期までに開発してもらうためには、適切なコミュニケーション方法を準備して発注側の意図をいかに正確に理解してもらうかがポイントとなります。
ポイント2:開発進捗の明確化と仕組み作り
ITシステム開発で大切なことは、委託側・受託側双方の理解にずれが生じないように、可能な限り「見える化」を行うことです。
仕様や性能要件など、そのプロジェクトの根幹部分を明確に表現することはもちろん、報告のフォーマットを定型化したり、言葉ではなくイメージを共有できるような図を多く使う、開発途中でもソースコードを見せてもらうなどの工夫も必要となります。
また品質の管理には人間の感覚だけではなく、バグの管理表やチェックリストを用意するなど、品質に対するガイドラインを明確に設けて管理していく仕組みを作りましょう。
チェックの条件は定量化し、チェックする人の解釈で変わってしまうような定性的な項目や評価基準は極力排除します。こまめな進捗確認や仕様の再確認、ガイドラインを設けて仕組み化(見える化)していくことで、手戻りがなくなりコスト削減効果が出るようになります。
ポイント3:プロジェクト情報の一元管理
安定してプロジェクトを推進するためには、情報を一元的に管理することが重要です。たとえば、システム開発であれば、仕様書やチェックリスト、スケジュール等あらゆる情報が存在していますが、こうした情報は国内の開発案件であっても分散してしまう傾向があります。
プロジェクトの規模が大きければ、それに比例して情報量も多くなり収集や確認に時間がかかります。これらは意思決定の遅れにもつながり、プロジェクト全体の進行に影響が出ることも考えられます。
特に、オフショア開発では先述のようにすぐにコミュニケーションがとれないなどの問題もあるので、情報共有や一元管理にはツールを用いることも有効な解決策になります。
たとえば、プロジェクト管理ソフトを導入して情報共有を行えば、国内、オフショア側両方から「いつでも」そして「すぐに」プロジェクトの進捗確認ができるようになります。品質の安定も同様ですが、情報の一元的管理にも仕組みを整備することが重要なのです。
まとめ:大切なのはコミュニケーションと仕組み化
今回はオフショア開発の課題についてご紹介してきましたが、その課題のほとんどがコミュニケーションの不足から発生しています。
オフショア開発の大きな特長のひとつはコストメリットですが、逆に海外に仕事を発注することになるため、コミュニケーションの問題とは切っても切れない関係なのです。日本人の常識は、外国人の常識ではありません。
オフショア開発を進める場合には、コミュニケーションに十分な時間を割くことが大切です。とはいえ、言葉の壁や時差、物理的な距離など、コミュニケーションが容易にはかれないことも事実です。
そうした状況でも進捗確認をはじめとする情報の共有、品質に関するガイドラインの策定など、属人的にならずに仕組み化していくことも、プロジェクトを推進していくうえで重要といえるでしょう。
Wakka Incでは、10年以上のオフショア開発の実績があり、日本の本社とベトナム支社が一丸となってお客様のオフショア開発や海外の開発子会社設立を支援しています。
また、各種ガイドブックや1on1セミナーなどもご用意していますので、ぜひこの機会に活用してみてください。
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WebメディアでPGから管理職まで幅広く経験し、Wakka Inc.に参画。Wakka Inc.のオフショア開発拠点でラボマネジャーを担当し、2013年よりベトナムホーチミンシティに駐在中。最近では自粛生活のなかでベトナム語の勉強にハマっています。