新規事業におけるPoCの必要性とは?プロセスや進め方なども解説
こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
新規事業は、新たなビジネスモデルの創出を通じて企業の成長を実現する経営戦略です。
しかし、マーケットの変化が激しく、消費者のニーズが多様化した現在において、新規事業開発は不確実性が高い一面があります。
そのため、新規事業を開発しようにも、不確実性に対応できる術がわからない方も多いのではないでしょうか。
新規事業の開発に伴う不確実性のリスクに対応するなら、PoCを実践してみましょう。
PoCとは、新規事業が実現する可能性や有用性などをあらかじめ検証するプロセスです。
PoCなら不確実性のリスクを最小化する効果が期待できるでしょう。
本記事ではPoCの基本的な知識や、プロセス・進め方などについて解説します。
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新規事業におけるPoCの必要性
まずは、新規事業におけるPoCの必要性についておさらいしましょう。
本章では、PoCの意味や、新規事業におけるPoCの役割について解説します。
PoCとは
PoCとは、「Proof of Concept」を略した用語で、日本語では「概念実証」「コンセプト実証」と訳されます。
PoCは、新しい技術やアイデアが実現する可能性・有用性・社会的受容性などを検証する際に行われます。
新しい技術やアイデアがどれだけ優れていても、「問題なくリリースできるか」「想定した結果が出るか」は机上では測れません。
そのため、PoCのようにプロダクトの実証を含めて多角的に実現する可能性を検証する取り組みは重要です。
PoCはIT業界で多用される印象がありますが、実際は多くの業界で実施されているプロセスです。
広い目で見れば、製品の試験販売・薬品の臨床試験など、テストマーケティングやリリース前の製品の実験はすべてPoCに該当します。
新規事業におけるPoCの役割
新規事業において、PoCは事業の確度を向上させる際に用いられます。
これまでは、新規事業を立ち上げる際はマーケットを推定し、プロダクトやサービスを提供にどれだけのコスト・開発期間を要するかを算定していました。
ここまで算定してから、本格的な開発に着手するのが一般的な企業の手法です。
しかし、昨今のマーケットはニーズの変化が激しく、動向を把握しない状態での開発は失敗するリスクを高めます。
したがって、PoCによって新規事業を検証し、事業の確度を上げられれば、マーケットの動向を参照したうえでプロダクトの実現性を検証できます。
加えて、事前に研修を実施して開発工程をブラッシュアップしておけば、プロジェクトの軌道修正や手戻りが発生する事態を避けられるでしょう。
また、PoCは実施するコストが低く、スピーディーに実践できるため、リーンスタートアップにも適している手法です。
そのため、低コストかつ短期間で新規事業に伴うリスクを最小化できます。
PoCとMVPの違い
PoCとセットでよく使われる用語にMVPがあります。
MVPは必要最小限の機能を搭載したプロダクトを意味する用語です。
MVPはPoCを実施する過程で製造される場合もありますが、基本的に両者は実施する目的が違います。
PoCは本格的な開発に着手する前に、プロダクトの実現性や有用性などを検証するプロセスです。
対してMVPはリリースを目的として開発するケースが多く、ユーザーのフィードバックを得たうえでの改善の実施が目的です。
つまりPoCが開発前に重点を置いたプロセスなのに対し、MVPはリリースを前提としている点が異なります。
ただし、PoCとMVPは相性がよく、プロダクトの機能を確認する際に、検証の一環でMVPやプロトタイプを開発するケースがあります。
PoCを実施するメリット
新規事業開発を行う際にPoCを実施した際に得られる代表的なメリットは以下の通りです。
- リスクマネジメントがしやすい
- コストや工数をカットできる
- 顧客のニーズを取り入れやすい
- ステークホルダーに検証材料を提供できる
PoCのメリットを知れば、実施する目的を把握しやすくなります。
それぞれ詳しく解説します。
リスクマネジメントがしやすい
PoCを実施すれば、実現する可能性や社会的受容性など、開発に伴うリスクを検証できるため、開発に伴うリスクの抑制が可能です。
さらにPoCではプロジェクトの実現性だけでなく、プロダクトの機能を検証するプロセスもあります。
導入環境での実験でプロダクトの使用感や機能の安定性などができれば、リリース後に動作不良を起こすリスクを最小化できます。
コストや工数をカットできる
PoCはプロダクトの開発工程の検証も実施するため、コストや工数のカットも可能です。
新規事業は、どれだけ優れたアイデアでも開発工程が煩雑だったり、コストが増大したりすると実現する可能性が低下します。
また、入念な検証を行わずに開発を始めると、想定外のトラブルが発生し、手戻りや軌道修正によってコストがさらに増加しかねません。
PoCによる開発工程のブラッシュアップはコストや無駄な工数を削減するきっかけになります。
開発工程を見直せば、よりスムーズな開発が実現するでしょう。
顧客のニーズを取り入れやすい
PoCを実施すれば、顧客のニーズを取り入れやすくなります。
PoCによるプロダクトの実証実験を行い、ユーザーや現場の従業員などからフィードバックを得れば、さらなるブラッシュアップができるでしょう。
本格的な開発を前に顧客の声を取り込めると、よりマーケットにニーズに適合したプロダクトをリリースできます。
昨今、ユーザーのニーズは多様化しているため、開発に際して少しでもニーズを取り入れることは重要です。
また、リリース後に売上が伸び悩み、多大な損失を被るリスクも避けられます。
ステークホルダーに判断材料を提供できる
PoCはプロジェクトが実現する可能性や有用性などを検証できるため、投資を担うステークホルダーに判断材料を提供する際に役立ちます。
PoCを実施し、よい成果が出れば話題性が高まるため、新事業の開発に必要な人材やリソースを集めやすくなります。
なお、PoCのメリットを活用したものがPoC契約です。
PoC契約とは、技術提携や共同研究などを行う事業者同士が、協業前に技術を検証するために締結する契約です。
PoC契約は技術保有者になるケースが多いスタートアップ企業だけでなく、大企業や中小企業でも協業する際に締結する機会があります。
新規事業におけるPoCのプロセスと進め方
本章では新規事業におけるPoCのプロセスと進め方を解説します。
なお、PoCは以下のプロセスで実行されます。
- 1.目的の設定
- 2.検証方法の策定
- 3.検証の実施
- 4.検証結果の評価
- 5.機能改善と要件定義
いずれのプロセスも重要な役割があるので、正確に把握しましょう。
1.目的の設定
PoCの目的の設定は最初に実施する重要なフェーズです。
PoCをスムーズかつスピーディーに完了させるなら、検証する目的が明確でなければなりません。
なぜなら、目的が曖昧だと検証が不徹底になり、適切な検証効果が得られなくなるからです。
目的を設定する際は、検証したい内容や機能を具体化しましょう。
加えて目標とする数値を設定すると、検証に必要な実証実験やデータを決定でき、検証の道筋を定めやすくなります。
2.検証方法の策定
検証方法は、正しく評価ができるようにプロダクトに合わせて策定しましょう。
検証方法はあくまで検証したい内容や機能に絞って設定する必要があります。
無駄に検証方法を増やすと、検証に必要なコストや工数が過度に増加するので注意してみてください。
また、検証方法の策定と並行して検証項目の設定や必要な人材の確保なども行い、プロセスをより具体化しましょう。
なお、企業によっては複数の部署が横断的にPoCに関わる場合があります。
もし複数の部署でPoCを実施する際は、それぞれの部署の役割を明確にするとスムーズに進められます。
3.検証の実施
検証を実施するフェーズでは、検証項目を遵守しながら、必要なデータを集めます。
実験で得たデータだけでなく、従業員やテストユーザーなど、検証に関わった人間の意見や指摘も積極的に取り入れれば、より検証の効果が高まります。
検証で得られるデータや発生した事象は、すべてその後の評価や改善につながるものです。
想定外のトラブルが発生しても記録を欠かさず行い、関係各所へ必ず共有しましょう。
4.検証結果の評価
検証が完了したら、検証効果の評価に移ります。
検証効果の評価は新規事業の実現の可否を決める重要な場面です。
収集したデータを徹底的に精査し、客観的な視点に則った正確な評価を出しましょう。
5.機能改善と要件定義
検証結果の評価が完了したら、機能改善と要件定義を行いましょう。
まずは発見された改善点やリスクを踏まえて改善策やリスク対策を策定します。
プロダクトの適切な機能改善ができれば、より実現性が高い要件定義を作成できます。
なお、プロジェクトの実施が不可能となったとしても、検証結果は無駄になりません。
貴重なデータとして蓄積すれば、次に立案される新規事業の足がかりにできる可能性があります。
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PoCの検証項目例
PoCでは実施に際して、必ず検証項目を設定しなければなりません。
検証項目は新規事業の内容によって異なりますが、代表的なものは以下の5点です。
- 実現可能性
- ユーザーエクスペリエンス
- 投資対効果
- スケーラビリティ
- 社会的受容性
本章ではそれぞれの項目の内容や、検証すべきポイントについて順番に解説します。
実現可能性
PoCにおいて、まず検証しなければならない項目が新規事業の実現可能性です。
この項目では、「新規事業に活用する技術やアイデアが実現できるものか」「自社のノウハウで開発を実現できるか」を具体的に検証します。
実現可能性を検証する際は、開発に携わる技術者を交え、実際の開発を想定して実施しましょう。
さらに技術的視点だけでなく、開発に必要なリソースや発生するコストも算出すれば、リスク対策に必要なデータを集められます。
ユーザーエクスペリエンス
ユーザーエクスペリエンスとは、実際にユーザーがプロダクトを手にした際の使用感を検証する項目です。
あらかじめユーザーエクスペリエンスを検証すれば、よりユーザーが使いやすく、魅力的に感じられるプロダクトやサービスを実現できます。
ユーザーエクスペリエンスはMVPやプロトタイプを製造し、テストユーザーを招いて検証すると効果的です。
より具体的な検証効果が得られるように、実際に使用する環境を再現して検証を行いましょう。
投資対効果
PoCでは、新規事業の投資対効果の検証も欠かせません。
新規事業は失敗すれば投資した資金がすべて無駄になるため、プロジェクトが実現した際に得られるリターンは徹底的に精査しなければなりません。
投資対効果は内部収益率を示すIRRや、正味現在価値を示すNPVのような評価指標を使った方法でも算出できます。
しかし、机上での算出だけでなく、他の検証項目と合わせてコスト構造や価格設定などを具体的に検証すれば、より具体的な投資対効果を導き出せるでしょう。
もし投資対効果が十分でないと判断された場合は、新規事業の撤退も選択肢に入ります。
本格的な開発の前に撤退ができれば、失敗したリスクを回避できます。
スケーラビリティ
スケーラビリティとは事業の拡大性を検証する項目です。
新規事業が始動した後でも、サービスや収益を拡大できるかを測ります。
スケーラビリティを検証する際は、新規事業の運用面や体制などに問題がないか精査しましょう。
十分に成長できる余地がある新規事業であれば、マーケットの変化にも対応しやすいと判断できます。
社会的受容性
社会的受容性の検証では、新規事業が法的・倫理的な問題がないかをチェックします。
どれだけ優れた内容の新規事業でも、法規制や倫理道徳に抵触する内容であれば実現できません。
実際、ライドシェアのように日本の法律上解禁されていない事業は、たとえどれだけ優れた事業内容でも実現はできません。
同様に、最先端の医療技術でも倫理的な問題がある限り実現は不可能でしょう。
法的・倫理的な懸念がある新規事業は、万が一トラブルが発生すると企業への信頼性に大きな損害を与えます。
そのため、問題になり得る懸念は確実に解消しなければいけません。
PoCを実施する際の注意点
PoCは、実施する際にいくつかの注意点を把握しなければなりません。
PoCを実施する際の重要な注意点は以下の通りです。
- スピーディーな実施を心がける
- 導入環境と同じ条件で実施する
- 検証回数を増やしすぎない
いずれの注意点もより効果的なPoCを実施するうえで無視できないものです。
スピーディーな実施を心がける
PoCはなるべくスピーディーに実施するように心がけましょう。
そもそもPoCは短期間で実施できるからこそ意味があるプロセスであり、時間をかけると本来のメリットを得られません。
確かに検証は重要ですが、時間をかけすぎるとマーケットに参入する機会を失う恐れがあります。
PoCを実施するなら検証する対象を明確にし、対象に限定したプロセスを組んだ方が効率的に進められます。
導入環境と同じ条件で実施する
PoCでテストユーザーを招いた実証実験を行うなら、導入環境と同じ条件での実施が重要です。
もし導入環境と異なる条件で検証すると、結果の確実性が低下します。
その結果、実際に開発を実施すると想定外の結果が出やすくなり、手戻りや軌道修正を行う原因になります。
PoCにおける検証は、開発をスムーズに進めるうえで重要なプロセスです。
決して安易な妥協はせず、厳格な検証を心がけましょう。
検証回数を増やしすぎない
PoCを実施するなら、検証回数を増やしすぎないようにしましょう。
過剰に検証回数を増やすと、それだけコストがかかり、投資対効果が悪化するリスクがあります。
また、検証回数が多いと関係各所への交渉やテストユーザーの確保など、各プロセスに時間がかかりやすくなり、検証工程が非効率化します。
PoCは工程が煩雑化すると、検証にかけられる時間が減るため、満足な結果を得られなくなります。
新規事業を成功させるうえでPoCは重要
新規事業は不確実性が高く、内容によっては実現する可能性が低い場合があります。
そのため、新規事業の開発において、実現可能性・投資対効果・ユーザーエクスペリエンスなどを多角的に分析するPoCは重要です。
PoCは目的の設定・検証方法の策定など、さまざまなプロセスで構築されています。
いずれのプロセスでも安易に妥協せず、徹底的な精査を心がければ、正確な検証効果を得られるだけでなく、リスクの最小化を実現できるでしょう。
他方で、PoCは「スピーディーな実施を心がける」「検証回数の数を増やさない」など、成功させるうえでの注意点もあります。
PoCを行う際は、注意点を確認し、適切な環境で実践するように心がけましょう。
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