製造業でベトナムに進出する際の注意点とポイントを解説

最終更新日:2026.03.24
ベトナム情報
Wakka Inc. メディア編集部
製造業でベトナムに進出する際の注意点とポイントを解説
SHARE ON
  • FaceBook
  • Twitter
  • LINE
  • Note

ベトナムは、日本と比較すると労働コスト面で競争力があり、若く意欲的な人材が豊富なことから、日本企業の進出先として注目されてきました。

しかし、近年では経済環境や貿易制度の変化により、企業には柔軟な対応力や持続的な運営体制の構築が求められています。

実際、私たちWakka Inc.でも「現在の状況下でもベトナム進出をすべきなのか?」と検討中の企業さまからのご相談をよくいただきます。

そこで、本記事ではベトナムの製造業の現状と進出時の注意点を解説します。

後半ではベトナムに進出した製造業の事例も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

WaGAZINE読者さま限定!

ベトナム法人設立マニュアル基本STEPや人材採用の基本手法を紹介

ベトナムにグローバル開発拠点設立を予定している方や、手順を知りたい方にオススメ

ベトナム製造業の最新動向

ベトナムは人口約1億30万人を抱える東南アジアの社会主義国です。(参考:外務省「ベトナム社会主義共和国基礎データ」)

近年は、アジアを代表する製造拠点の一つとして急速に存在感を高めています。
日本とは文化やビジネス慣習が異なるため、海外進出を検討する際には、現地の経済状況や産業構造を十分に理解しておきましょう。

なお、ベトナムでは、政府の産業政策や外国直接投資(FDI)の流入によって製造業が発展しています。
ベトナムへの進出を成功させるには、現地の産業構造や日系企業の動向を把握したうえで、戦略的に事業計画を立てる必要があります。

ベトナム製造業の最新動向を把握するために、次のポイントを確認しておきましょう。

  • ベトナムにおける製造業の現状
  • 日本企業の進出状況

ベトナムにおける製造業の現状

近年、ベトナム経済は安定した成長を続けています。
2023年のGDPは約4,300億ドルに達し、製造業はGDPの約24%を占める基幹産業となりました。

また、製造業は輸出や雇用を支える重要な産業であり、政府は2030年までに、GDPに占める製造業の割合を約30%まで引き上げる目標を掲げています。

近年は特に以下の分野で成長が目立っています。

  • 電子機器・半導体関連
  • 自動車・自動車部品
  • 繊維・アパレル
  • 食品加工
  • 家電製造

さらに、多国籍企業による投資も活発です。
2023〜2024年には、製造業への外国直接投資が年間200億ドル規模に達し、ベトナムはグローバル企業の生産拠点として重要性を高めています。

近年は「チャイナ+1戦略」の影響もあり、企業が中国以外の生産拠点としてベトナムを選ぶケースが増えてきました。
これにより、ベトナムは東南アジアにおける主要な製造ハブとして発展を続けています。

また、ベトナム経済は2024年に実質GDP成長率7.1%と高い成長を示しました。
一方で、JETROは2025年について、製造業が世界経済の減速や外需の低迷、米国の関税政策の影響を受けやすい点を指摘しています。

そのため、製造業でベトナム進出を検討する際は、成長期待だけでなく、輸出先構成やサプライチェーンの脆弱性なども踏まえて判断することが重要です。

参照:
JETRO「ベトナムの貿易投資年報
JETRO「ベトナムGDP成長率分析
JICA「ベトナム国別分析ペーパー

日本企業の進出状況

ベトナムは、日本企業にとっても重要な海外生産拠点です。
2024年10月1日時点の調査で、製造業・非製造業を含めて、ベトナムにおける日本企業拠点数は約2,543にも達しており、製造業の割合が大きいことが特徴です。(参考:外務省「海外進出日系企業拠点数調査」)

進出企業の多くは、以下の分野に集中しています。

  • 電子部品・精密機器
  • 自動車部品
  • 機械・金属加工
  • 繊維・アパレル

近年では、サプライチェーン分散の流れを背景に、ベトナムでの生産拡大を検討する企業も増えています。
特に電子機器やIT関連の製造では、グローバル企業の大規模投資が進み、ベトナムの産業高度化を後押ししているのです。

一方で、ベトナム進出には、下記のような課題が挙げられます。

  • 原材料・部品価格の上昇
  • 物流コストの増加
  • 人件費の上昇
  • サプライチェーンの整備不足

こうした課題はあるものの、多くの企業はベトナム市場に高い成長性を見込んでいます。
実際に日系企業の多くが今後もベトナム事業を拡大する意向を示しており、同国は日本企業にとって重要な製造拠点であり続けると考えられます。

WaGAZINE読者さま限定!

ベトナム法人設立マニュアル基本STEPや人材採用の基本手法を紹介

ベトナムにグローバル開発拠点設立を予定している方や、手順を知りたい方にオススメ

製造業の進出先としてベトナムが注目される理由

前項の調査結果から分かる通り、ベトナムは日本企業の製造業の進出先として注目されています。
ここでは、なぜそれほどまでにベトナムが注目されているのか、その理由について解説します。

若くて優秀な人材が豊富

引用:JETRO「ベトナム 教育(EdTech)産業 調査

ベトナムは平均年齢が31歳と若く、労働力の中心となる20代〜40代の人口が多いことが特徴です。
また、ベトナムは教育に力を入れており、科学や数学的な思考を持っている人が多い傾向があります。

例えば、政府の方針で小学校3年生から英語教育やIT教育を実施しています。

ホーチミン市では、統合的な英語プログラムを導入しており、教師が英語で科学・数学・英語を教えています。
このように若いときから英語や科学・ITなどを学ぶ機会があるため、優秀な人材が豊富です。
なお、新しい知識や専門的なスキルを自主的に学び続けるような、勤勉な国民性もあります。

参考:JETRO「ベトナム 教育(EdTech)産業 調査

市場の成長性がある

国民1人あたりの所得や支出が年々増加し、市場規模も拡大しています。
ベトナムの人口は年々増加しており、平均年齢も若いため今後も経済や市場の発展が見込まれます。

また、外国からの直接投資・輸出が増えていることも市場が成長している要因の1つです。
2023年上半期における出資・株式投資を除いた対内直接投資(2023年6月時点)は、1,925件で認可額が94億1,811万ドルでした。

貿易面では、2022年の後半以降は貿易収支が黒字で推移しています。

参考:JETRO『上半期の外国企業の直接投資、件数は55%増も金額は20%減

優遇税制がある

ベトナムにおける法人税の標準税率は20%ですが、優遇税制が適用されれば法人税が安くなります。
優遇税制は優遇税率と減免税に分けられ、いずれも事業内容や設立地域の性質に応じて、税率が適用されます。

※表は、横にスクロールできます

優遇税率事業内容・設立地域によって10%もしくは20%の優遇税率が、10年か15年もしくは活動期間中に優遇税率が適用される
減免税事業内容・設立地域に応じて、4年間免税、その後9年間50%減税、6年間免税その後13年間50%減税

減免税の期間は単年度で課税所得が発生した課税対象期間から起算されます。
ベトナムの税制について、以下の記事で詳しく解説していますのでぜひご覧ください。

ベトナム進出における注意点

ベトナム進出には、若く優秀な人材の確保や利益拡大などさまざまなメリットがありますが、注意点もあります。
製造業でベトナムに進出する際の注意点を把握して、準備を進めましょう。

具体的には下記が挙げられます。

  • 労働コストが上昇している
  • 法律の深い理解が必要
  • 渋滞などの交通インフラへの対応

労働コストが上昇している

ベトナムの賃金は、タイやインドネシアと比較すると依然として競争力のある水準にありますが、近年は着実に上昇傾向を示しています。

実際にベトナムは、2017年は7.3%、2018年6.5%、2019年は5.3%、2020年に5.2%、2022年7月から6%と最低賃金の引き上げを続けています。

また、2024年7月以降の地域別最低賃金も引き上げられています。
進出時は単純な賃金水準だけでなく、地域ごとの採用競争や離職率、技能人材の確保難易度まで含めて判断することが重要です。

賃金が増加していく中、人材を長期的に確保できるかが、進出後の重要なポイントです。

参考:株式会社国際協力銀行『ベトナムの投資環境

法律の深い理解が必要

これはベトナムに限らない話ではありますが、海外は法律や制度が日本とは異なるため、制度変更を迅速に把握する必要があります。
法制度が変われば、当然それに対応しなければならないため、ビジネスの負担になる恐れがあります。

ベトナムの法制度変更に対応できるよう、常に最新の情報をキャッチアップし、変更があった際は迅速に対応できるように体制を整えておきましょう。

渋滞などの交通インフラへの対応

ベトナムは、経済発展とともにインフラ整備が進んでいますが、大都市圏では渋滞が発生しやすい傾向にあります。

製造業の場合、部品の仕入れや製品の納品に影響が出る可能性も考えられるため注意が必要です。

現地で起こりやすいリスクを把握しておくと対策を考えられるでしょう。
ベトナムで法人を設立する際によくあるトラブルを次の記事で解説しています。

ベトナムに進出した製造業の事例

ここからはベトナムに進出した製造業の事例を紹介します。

遠州工業株式会社

遠州工業株式会社はベトナムにENSHU SANKO VIETNAM CO., LTD.を設立しています。
亜鉛めっきや電気ニッケルめっきなどの表面処理、機械加工を行っている製造企業です。

設立当時、日本の最新ノウハウや技術を生かして、ベトナムで信頼を獲得してきました。
また、ベトナムでトップレベルの品質保証施設・機械・システムと最先端の実験室分析機器を備えており、品質管理を徹底しています。
品質の高い製品を安定的に供給することで顧客満足度を高め、事業を拡大した事例です。

参考:ベトナム北中部日系製造業・関連商社サプライヤーダイレクトリー|JETRO

パナソニック ホールディングス株式会社

パナソニック ホールディングス株式会社は、ベトナムで電設資材事業や配線器具・照明器具・IAQ(Indoor Air Quality:室内空気質)関連機器などの製造・販売を行う「パナソニックエレクトリックワークスベトナム」を運営しています。

同社は、次の3つの戦略を軸に事業を拡大する目標を掲げました。

  • 現地商品開発体制の構築
  • 配線器具及びIAQ機器の現地生産体制強化
  • 現地企業との共創による商品カテゴリー横断のソリューション提案

具体的には、日本国内の基準に則した品質管理部門を設け、現地サプライヤーへ品質管理基準やノウハウを共有しています。
また、ベトナムのデベロッパーと共創関係を構築し、現地のニーズを把握し、ソリューションを提供しています。
そして、ホーチミン市内で建築関連の企業を対象とした展示会を実施し、認知の拡大に成功しました。

参考:『ベトナムにおける電設資材事業の拡大を加速』|パナソニック ホールディングス株式会社

製造業でベトナム進出する際の4つのポイント

ベトナムは近年、製造拠点として多くの企業から注目されています。
しかし、日本とは制度・文化・ビジネス慣習が異なるため、十分な事前準備が必要です。

製造業の場合、工業団地の選定やサプライチェーンの構築、人材確保など、進出前に検討すべき事項が多く存在します。
これらを十分に理解しないまま進出すると、コスト増加や事業計画の遅延につながる可能性があります。

製造業でベトナムに進出する際は、以下の4つのポイントを押さえておきましょう。

  1. ベトナムをよく理解する
  2. 目的に応じて立地を選ぶ(北部・中部・南部)
  3. 信頼できる現地パートナーを選ぶ
  4. 変化に柔軟に対応する

1.ベトナムをよく理解する

ベトナムに進出する際は、まず現地の政治・経済・文化・法制度を理解することが重要です。

ベトナムは社会主義国であり、政府の政策や規制がビジネス環境にも影響します。
また、日本とは商習慣や意思決定のプロセスが異なるため、現地のビジネス文化を理解することも欠かせません。

さらに、製造業の場合は、以下のポイントを事前に調査しておきましょう。

  • 外資規制や投資制度
  • 工業団地の整備状況
  • 労働力の確保
  • 原材料や部品の調達環境

これらを把握しておくことで、進出戦略や事業計画をより現実的に設計できます。

2.目的に応じて立地を選ぶ(北部・中部・南部)

ベトナムで製造拠点を設立する際は、立地選定が事業成功の重要なポイントです。
ベトナムは大きく北部・中部・南部の3つの地域に分かれており、それぞれ産業構造やビジネス環境が異なります。

※表は、横にスクロールできます

エリア北部エリア(ハノイ・ハイフォンなど)中部エリア(ダナンなど)南部エリア(ホーチミン・ビンズオンなど)
特徴・中国に近くサプライチェーン構築に有利
・電子機器・精密機械などの産業が集積
・外資系メーカーの工場が多い
・人件費や土地コストが比較的低い
・新興工業エリアとして発展中
・港湾インフラが整備されつつある
・ベトナム最大の経済圏
・日系企業の進出が多い
・サプライチェーンや物流が比較的整備されている

製造業では、人件費・物流・部品調達・輸出入の利便性などを総合的に考慮して、拠点を設置する場所を選びましょう。

3.信頼できる現地パートナーを選ぶ

ベトナムで事業を展開する際は、信頼できる現地パートナーの存在が成功を左右します。
製造業の場合、以下のような場面で現地企業や専門家の支援が必要です。

  • 法人設立手続き
  • 工業団地の選定
  • 人材採用
  • サプライヤー開拓
  • 行政対応

現地事情に詳しいパートナーがいれば、制度や商習慣の違いによるトラブルを回避しやすくなります。

一方で、パートナー選定を誤ると、品質トラブルや契約問題などのリスクにつながる可能性もあります。
そのため、実績や信頼性を十分に確認してから、現地パートナーを選びましょう。

4.変化に柔軟に対応する

ベトナムのビジネス環境は、経済成長に伴い急速に変化しています。
製造業で事業を効果的に進めるには、時代や国の変化に対応し続ける必要があります。

成長段階にある国では、法律が改正されたり、急成長するスタートアップがビジネスモデルを転換したり、ビジネス環境が大きく変化したりする場合があるのです。

近年は、世界的なサプライチェーンの再構築により、ベトナムの製造業を取り巻く環境にも、以下のような変化が見られます。

  • 人件費の上昇
  • 法制度の変更
  • サプライチェーンの再編
  • 外資企業の増加

そのため、進出後も市場環境や政策の変化を定期的に分析し、事業戦略を柔軟に見直す姿勢が重要です。

長期的な視点で事業運営を行い、変化に対応できる体制を整えることで、ベトナムでの製造事業を安定して成長させられます。

変化に適応し続けるためには、絶えず周囲の状況を観察し、最新情報を継続的に収集することが重要です。

事前準備と柔軟性を持ってベトナム進出を成功させよう

製造業においてベトナムへの進出は、さまざまなメリットが得られますが、事業の拡大は簡単ではありません。
ベトナムで何を達成したいのかを明確にして、十分な事前準備を行ったうえでベトナム進出を進める必要があります。

ベトナムのビジネス環境や事業に必要な情報を、現地に詳しい専門家に聞けばより効果的に情報を集められます。
進出を検討されている方は専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

WaGAZINE読者さま限定!

ベトナム法人設立マニュアル基本STEPや人材採用の基本手法を紹介

ベトナムにグローバル開発拠点設立を予定している方や、手順を知りたい方にオススメ

この記事を書いた人
Wakka Inc. メディア編集部
  • ホーム
  • ブログ
  • 製造業でベトナムに進出する際の注意点とポイントを解説