MVP開発とは?他の開発手法との違いや成功させるポイントを解説
こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
新しいプロダクトを開発するうえで、開発手法は重要なファクターです。
どのような開発手法を導入するかによって、開発期間や必要なリソースが大きく変わります。
プロダクトの開発手法は多種多様ですが、なかでもMVP開発はユーザーのニーズを取り入れやすい手法として、多くの企業で実際に導入されています。
他方で、「MVP開発のメリット・デメリット」「他の開発手法との違い」などを知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事ではMVP開発の基本的な概要や、メリット・デメリット、他の開発手法との違いなどを解説します。
MVP開発について深く知れば、新規プロダクトの開発手法を検討する際に役立てられます。
ぜひ参考にしてください。
●開発リソースの不足にお悩みなら●
>>>Wakka.Inc独自の海外子会社設立サービスがおすすめ!
無料でサービス資料をダウンロードできますのでぜひご覧ください。
【基礎知識】MVP開発の意味とは?
まずはMVP開発の基礎知識について、以下の事柄について解説します。
- MVP開発とは?
- MVP開発が注目される理由
MVP開発の概要だけでなく、多くの企業で採用されている理由を知れば、昨今のビジネス環境についても理解できるので、それぞれ順番に説明します。
MVP開発とは?
MVP開発とは、必要最小限の機能でプロダクトを開発・リリースしたうえで、ユーザーのニーズを元に改善を繰り返して完成度を高める手法です。
MVPは「Minimum Viable Product」の略称であり、「必要最小限の実現可能な製品」を意味します。
一般的にプロダクト開発は完成された製品の提供をゴールとしていますが、どれだけリソースや時間をかけたプロダクトでも売上が伸びないリスクはつきものです。
しかし、MVP開発は必要最小限の状態でリリースするため、リソースや時間が限られていても実行できるうえに、売上が伸びなかった際の損失を抑えられます。
また、フィードバックを得ながら改善を進めるので、よりユーザーのニーズにマッチしたプロダクトを開発できる可能性が高まります。
MVP開発が注目される理由
MVP開発が注目される背景には、昨今のビジネス環境が影響しています。
昨今はマーケットの変化が目まぐるしく、ユーザーのニーズも多様化しているため、新規事業の成功が難しい状況です。
そのため、リスクを避けつつ、確実にユーザーのニーズを取り入れるうえでも、MVP開発は有効的な手法です。
そもそもMVP開発はスタートアップ企業で使用されていた開発手法であり、国内外を問わず、成功事例が多くあります。世界中で使用されているFacebookやX(旧Twitter)もMVP開発で開発されたものです。
成功事例が多い点から、今では大企業でも積極的に実践されています。
MVP開発とアジャイル開発の違い
MVP開発とよく似た開発手法にアジャイル開発がありますが、その違いはわかりにくいものです。
アジャイル開発は顧客やステークホルダーからのフィードバックを得つつ、短期間で反復的な開発を繰り返す開発手法です。
短いスパンで開発を行う共通点もあるため、一見するとアジャイル開発はMVP開発と酷似しています。
ただし、MVP開発とアジャイル開発には以下のような違いがあります。
- 開発の目的の違い
- 開発プロセスの違い
- 開発期間の違い
両者を混同していると適切なプロセスを組めなくなる恐れがあるので注意しましょう。
それぞれの違いについて、詳しく解説します。
開発の目的の違い
MVP開発とアジャイル開発はいずれもニーズを踏まえた改善を行いつつ、スピーディーに開発する手法です。
MVP開発は、マーケットへの適合性を調査し、ニーズを集めてプロダクトを改善していくことが目的です。
一方、アジャイル開発は、機能単位ごとに計画〜リリースを繰り返し、短期間でプラダクトを開発するのが目的です。
MVPは主に、新規サービス・システム開発時の効果検証時に使用され、アジャイル開発はプロダクトのリリースに向け使用されます。
双方の違いをまとめると、以下のようになります。
- MVP開発:効果検証
- アジャイル開発:短期間でのプロダクトリリース
開発プロセスの違い
MVP開発とアジャイル開発は開発プロセスも異なります。
MVP開発は必要最小限のプロダクトをリリースし、ユーザーのレスポンスを見ながら改善を繰り返して品質を向上させます。
つまりリリースした時点では最小限の機能しかなく、リリース後の改善で残りの機能を実装していく流れです。
一方のアジャイル開発は機能ごとにプロセスを分け、優先順位の高い機能から開発・リリースを繰り返す点が特徴です。
また、機能ごとにスプリントと呼ばれる2週間~1カ月程度の開発期間を設け、開発と検証を繰り返しながら完成を目指します。
MVP開発もアジャイル開発も、スモールスタートで実行する点が共通している手法です。
しかし前者がリリースしたプロダクトを検証・改善していくのに対し、後者は機能ごとにプロセスを小分けにして開発と検証を行う点が違います。
開発期間の違い
MVP開発もアジャイル開発も開発期間を短縮できる開発手法です。
ただし、アジャイル開発はMVP開発より開発期間が長くなる傾向があります。
アジャイル開発は個々に機能を開発するので、進捗状況によっては特定の機能の開発が間に合わないために他のプロセスが停止するリスクがあります。
また、ユーザーのニーズを積極的に取り込む過程で機能の開発が長引けば、それだけプロダクトの完成が遅れかねません。
一方でMVP開発は必要最小限の状態でリリースを目指すなど、最短最速でのプロダクトの完成を目的にしています。
そのため、アジャイル開発より早くユーザーにプロダクトが届きやすく、マーケットの反応をスピーディーに確認できます。
MVP開発のメリット
MVP開発は実践するとさまざまなメリットを得られます。
MVP開発のメリットは以下の通りです。
- 開発から提供までの期間が短い
- ユーザーのニーズを正確に把握できる
- 少ないコスト・リソースで開発できる
- 委託会社のスキルを確認しやすい
メリットを知れば、自分のプロジェクトにMVP開発がどのように役立つかが理解できます。
開発から提供までの期間が短い
MVP開発は、市場への適合性を図るための開発手法なので、リリースまでの期間は非常に短いです。
必要最小限のプロダクトの完成を目指すため、開発から提供までの期間を短縮できます。
プロダクトの迅速な提供は競合他社より早く市場へ参入できるだけでなく、ユーザーの支持を得られれば先行者利益を獲得可能です。
また、MVP開発はフィードバックを受ける度に改善に取り組むため、PDCAサイクルもスピーディーに回せます。
そのためプロダクトに問題があっても迅速に修正しやすく、ユーザーからの信頼も守れます。
ユーザーのニーズを正確に把握できる
MVP開発は開発過程でニーズを正確に把握できる点も特徴です。
通常の開発手法では、いくらコストをかけてプロダクトを完成させても、ユーザーのニーズとマッチしていなければ売上は伸びません。
加えてユーザーのニーズを取り込む機会が少ないと改善のタイミングが遅れるリスクがあります。
対してMVP開発は開発過程でユーザーのニーズを積極的に取り入れるため、ユーザー目線での開発を実現できます。
それにより、ユーザーが満足できる品質のプロダクトの提供が可能です。
少ないコスト・リソースで開発できる
機能を最小限にした状態でプロダクトを開発するので、MVP開発は少ないコストやリソースでも実行が可能です。
そのため、MVP開発はスタートアップ企業のようにリソースが限られている環境でも実践できます。
それだけでなく、MVP開発なら万が一プロジェクトが失敗した際でも、企業に与えるダメージを最小限に抑えられます。
また、未完成のプロダクトなら完成品ほど修正にコストを必要としません。
だから開発方針を変更せざるを得ない場面でも容易に対応できます。
委託会社のスキルを確認しやすい
プロダクト開発を外部に委託する際、MVP開発は委託先が持つスキルを確認するうえで最適です。
どんな開発手法でも携わるチームのスキルは重要ですが、一般的な開発手法だと完成に至るまでの期間が長いため、実際のスキルを確認するまでに時間がかかります。
MVP開発はスピーディーに開発と提供を実行する開発手法なので、委託会社のスキルを早い段階で確認できます。
そのため、委託会社との契約を継続するか判断したいときに有効です。
MVP開発のデメリット
MVP開発はメリットが多い開発手法ですが、少なからずデメリットも存在します。
注意すべきデメリットは以下の通りです。
- 工数が多い長期的な開発には不向き
- 開始当初のコンセプトとズレる可能性がある
- 管理者とエンジニアにすれ違いが生じやすい
デメリットを踏まえておけば、いざMVP開発を実施した際にアクシデントを予期しやすくなります。
それぞれのデメリットについて詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
工数が多い長期的な開発には不向き
MVP開発は工数が多い長期的な開発には向いていません。
そもそもMVP開発は開発・リリース・検証のサイクルをスピーディーに繰り返す開発手法であり、開発期間は1週間~1カ月程度の短期間が望ましいとされています。
そのため、最小限の機能のみでも成立する簡単なプロダクトの開発に用いられます。
しかし、複雑な機能を持つプロダクトは長期的な開発プロセスが求められるため、スピーディーな効果検証を前提とするMVP開発との相性はよくありません。
もし3カ月以上の開発期間を要するプロダクトを開発するなら、MVP開発以外の開発手法を選びましょう。
開始当初のコンセプトとズレる可能性がある
MVP開発はユーザーのフィードバックを得やすい点がメリットですが、ニーズを取り入れすぎると開始当初のコンセプトとズレる可能性があります。
ユーザーのニーズは重要ですが、他の意見に振り回されるとコンセプトを見失い、目指していたゴールへたどり着けなくなります。
場合によっては開発当初のコンセプトに立ち返った方がプロダクトの発展につながることも珍しくありません。
ユーザーからのフィードバックはただ鵜呑みにするのではなく、事業のコンセプトを参照しながら吟味しましょう。
管理者とエンジニアにすれ違いが生じやすい
管理者とエンジニアにすれ違いが生じやすい点も、MVP開発を行ううえで無視できないデメリットです。
MVP開発は必要最小限の状態でもプロダクトのリリースを目指しますが、一般的に管理者サイドは完成されたプロダクトを求めるものです。
そのため、管理者がなかなか認めてくれない場合があります。
また、完成後のビジョンも共有しづらいため、管理者と開発を手がけるエンジニアの間に認識の齟齬が生じやすくなります。
とりわけフィードバックを得て改善を繰り返すフェーズに入ると、計画方針が変わりやすくなるため、ますます認識の齟齬が大きくなりかねません。
とりわけ大企業になるとMVP開発は管理者サイトに認められにくく、関係各所からの協力も得にくい場合もあります。
そのため、MVP開発を行うなら、ビジョンや進捗状況を共有するうえでも、管理者や関係各所との綿密なコミュニケーションが欠かせません。
MVP開発の進め方
MVP開発は以下の手順で実施されます。
- 仮説を立てる
- プロダクトを開発しリリースする
- フィードバックを収集する
- フィードバックの検証を元に改善・再リリースする
手順を知っておけば、開発計画を組みやすくなります。
それぞれの手順について、詳しく見ていきましょう。
1. 仮説を立てる
MVP開発を実施するなら、まずはゴールを明確にするうえでも仮説を立てる必要があります。
開発するMVPが「どのような課題を解決するのか」「どのような価値を提供するか」を決めておけば、目指すプロダクトの実像が見えてくるでしょう。
なお、並行して「最低限のプロセスでどのように仮説を検証するか」を考えておくと、プロセスを設計しやすくなります。
MVP開発は工数が多いプロセスだとメリットが得られないので、最短最速で開発するプロセスを目指しましょう。
2. プロダクトを開発しリリースする
仮説を立てたら、いよいよプロダクトを開発し、リリースを行います。
この際、プロダクトは必要最小限な機能のみを搭載させ、余計な機能は追加しないように心がけましょう。
MVP開発を実施するなら、検証を通じてユーザーからフィードバックを得たい機能に絞って開発しなければなりません。
無駄な機能の追加はいたずらに時間やコストをかける恐れがあるので、必ず避けましょう。
3. フィードバックを収集する
プロダクトをリリースしたら、ユーザーからのフィードバックを収集しましょう。
テスターを募集する・身近な人間に試してもらうなど、フィードバックを得る方法はさまざまです。
また、SNSやメールなどのコミュニケーションツールを活用すれば、より効率的にフィードバックを収集できます。
4. フィードバックの検証を元に改善・再リリースする
フィードバックを得たら、その内容を検証し、得られた知見を元に改善・再リリースを行います。
開発方針の転換や追加機能の実装などを改善が完了したら、再度リリースし、改めてユーザーからのフィードバックを収集しましょう。
なお、MVP開発はここまでの手順を完了させて終了するものではありません。
マーケットの傾向やユーザーのニーズと合致するまで、このサイクルを何度も回す必要があります。
MVP開発を成功させるポイント
MVP開発を成功させるなら、以下のポイントを押さえましょう。
- 開発者と意見をすり合わせる
- フィードバックの品質を高める
- 完璧にこだわりすぎない
どのポイントもMVP開発を成功させるうえで欠かせないものです。実際にMVP開発を実践するなら、必ずチェックしておきましょう。
開発者と意見をすり合わせる
方針の変更や認識の齟齬による後戻りは、MVP開発のメリットを失わせる要因になりかねません。
そのため、後戻りを防ぐうえでも、開発者と管理者の意見のすり合わせは不可欠です。
搭載する機能や検証の目的など、MVP開発における重要な決定は、必ず開発者と管理者で共有しましょう。
プロセスに対する理解が深まるほど、無駄な工程が発生するリスクが減り、MVP開発がスムーズに進みやすくなります。
フィードバックの品質を高める
MVP開発ではフィードバックの品質がプロダクトの品質に大きく作用します。
ユーザーからフィードバックを集める際は、より具体的な回答が得られるよう準備する必要があります。
これは、質問が具体的であるほどユーザーの抱えている課題やニーズが明確になり、次回の開発に活かせるためです。なお、ユーザーからのフィードバックは取捨選択も不可欠です。
あまりにユーザーの意見を取り入れすぎるとコンセプトを見失いやすくなり、かえってプロダクトの質を低下させる恐れがあります。
何もかも聞き入れるのではなく、優先度の高いものだけを取り入れてプロダクトを改善しましょう。
完璧にこだわりすぎない
MVP開発はあえて必要最小限の状態でプロダクトをリリースするため、完璧にこだわりすぎないことが肝心です。
あくまでフィードバックを得たい状態でリリースしなければならないため、完璧な状態を目指すとかえってプロセスの停滞を招きます。
それではスピーディーな検証と改善を目指すMVP開発のメリットが損なわれます。
MVP開発の本質はリリースしたプロダクトの改善や軌道修正にあり、完璧なプロダクトのリリースではありません。
むしろユーザーのフィードバックによる機能の検証こそ、プロダクトを完成させる重要なファクターです。
MVP開発をする際は、あくまで検証に必要な機能の実装に留ましょう。
MVP開発でよりクオリティの高いプロダクトを実現しよう
MVP開発は必要最小限の機能を持ったプロダクトをリリースし、ユーザーのフィードバックを得ながらスピーディーに改善を実施する開発手法です。
重要な仮説検証ポイント以外は、あえて未完成の状態でリリースするため、MVP開発は開発期間を短くし、少ないリソースでの開発を実現できます。
ただし、MVP開発は管理者と現場側の認識が合致していなかったり、ユーザーのニーズを取り入れすぎたりすると失敗する確率が高まります。
MVP開発を実施するなら、適切なフィードバックを心がけ、開発者と管理者の意見のすり合わせを意識しましょう。
最適なプロセスでMVP開発を成功させれば、よりクオリティの高いプロダクトを実現できます。
【あわせて読みたい】おすすめ関連資料
●すぐに使えるRFPテンプレート|システム開発用
>システム開発のRFPについて、情報を埋めるだけで簡単に作成ができるテンプレートです。
●すぐに使えるRFPテンプレート|サイトリニューアル用
>サイトリニューアルの際に、テンプレートの情報を埋めるだけで簡単にRFPが作成できます。
●DX進め方ガイドブック
>DXプロジェクトを検討している担当者の方に向けて、失敗しない社内体制の構築から開発リソース確保までを網羅して解説しています。