製造業のDXに必要なことは?進める手順や関連システム、事例を紹介
こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
昨今、製造業においてDXに取り組む企業が増えています。
DXへの取り組みは業界・業種を問わずさまざまな企業で実践されており、生産性の向上やコストの削減に成功した事例も多くあります。
一方で、実際にDXに取り組もうしても、「DXでどのような効果があるかイメージできない」「どのような手順で進めればいいかわからない」と思っている方も多いでしょう。
本記事では製造業のDXについて、以下のことをお伝えします。
- 製造業のDXの意味や実践する目的
- 製造業でDXを実現した際のメリット
- 製造業のDXを進める際に解決すべき課題や進める手順
- 製造業のDXを成功させるポイントや成功事例
ぜひ、製造業でDXをスムーズに進める際の参考にしてください。
Wakka.IncではDXプロジェクトを検討している担当者の方に向けて、失敗しない社内体制の構築から開発リソース確保までを網羅して解説しているDX進め方ガイドブックを無料で配布しています。ぜひご確認ください。
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製造業のDXとは
DXとは「デジタル・トランスフォーメーション」の略称であり、最先端のIT技術を導入し、デジタル化によってビジネスの変革や業績の向上を目指す取り組みです。
DXは業界・業種を問わず積極的に取り組まれており、近年では経済産業省も企業のDXを積極的に支援しています。
製造業において、DXは以下の目標を達成するために取り組まれます。
- 製造工程や管理業務の効率化
- 情報やノウハウの共有
- コストの削減
- 生産性の向上
いずれも製造業において重要な課題であり、変動する経済情勢に対応できる企業体制を作るうえで欠かせないものです。企業が成長し、高い優位性を確立するためにも、DXは不可欠な要素として注目されています。
製造業がDXを推進する目的
製造業がDXを推進する目的は、ITの発展によるデジタル化や社会情勢の変化に企業が対応していくためです。
昨今はあらゆる業界・業種でDXが進んでいますが、製造業はいまだに属人性が高いアナログな企業体制を維持している傾向にあります。
しかし、従来の企業体制のままだと、新たな技術開発や人員不足の解消が難しく、デジタル化が普及する社会で競争力を維持できなくなります。
また、不確実な社会情勢の変化への対応も重要な課題です。
昨今は災害やコロナ禍など、社会情勢が大きく変化するケースが増加しており、企業が損害を受けるリスクが高まっています。そのため、予測が難しい社会情勢の変化に対応できる企業体制の構築もDXの役割です。
製造業のDXにおける3つの課題
製造業でDXを進める際、解決しなければならない課題に直面します。
製造業のDXにおける重要な課題は以下の3点です。
- 現場主義の体制によりIT技術の導入が進まない
- IT・デジタル化の遅れ
- DX推進に必要な人材の不足
いずれの課題も多くの製造業で見られるものなので、ぜひチェックしてください。
現場主義の体制によりIT技術の導入が進まない
日本の製造業は「現地・現物・現実」を重視する三現主義を掲げるなど現場主義が強い傾向があります。
現場で生まれるアイデアやノウハウは、製造業を営む企業にとって価値が高いものです。
ただ、過剰な現場主義の体制は、DXのような抜本的改革の障害になる恐れがあります。DXはデジタル技術を取り入れ、現場の業務フローを抜本的に改革する取り組みです。
当然、現場の従業員には多くの負担がかかるため、過剰なボトムアップの体制では、施策が定着しない恐れがあります。DXを推進するには、現場の意見も柔軟に取り入れられるトップダウンの推進体制を構築することが大切です。
IT・デジタル化の遅れ
経済産業省によるDXの支援があっても、依然として製造業のIT・デジタル化は遅れています。
IT・デジタル化の遅れの原因のひとつは、製造業の設備投資です。
多くの製造業は設備投資を老朽化した既存の設備のメンテナンスに割いていることが多く、新しいテクノロジーの導入を実践していないケースが多くあります。
IT・デジタル化への投資が進まない状況を放置すると、企業のDX化が進みません。それだけでなく、旧式の設備を維持するためだけに過剰なコストをかけつづけることになります。
DX推進に必要な人材の不足
DX推進において、ITの技術やノウハウを持つ人材は不可欠ですが、多くの製造業ではDXに対応できる人材が不足している傾向があります。
DXはツールやデジタル機器だけでなく、適切にシステムを設計し、運用できる人材も欠かせません。
そのため、企業によってはDXを推進する前にまず人材の確保から始めなければならないケースも多くあります。また、デジタル技術に慣れるために現場の従業員への研修を実施するなど、DXでは既存の従業員の教育も重要です。
製造業がDXを実現するメリット4つ
製造業がDXを実現すると、さまざまなメリットを得られます。
代表的なメリットは以下の4つです。
- 人員不足への対応
- BCPの充実
- 生産性の向上
- レガシーシステムからの脱却
製造業のDXがもたらすメリットを理解すれば、実際に導入した際のイメージが具体的になります。以下ではそれぞれのメリットの詳細を解説していきます。
人員不足への対応
多くの企業を悩ませる人員不足を解決するうえでも、DXは有効な解決策になりえます。
DXによって製造工程を自動化したり、無駄な工数を減らして最適化したりすれば、人員が少なくても生産性の維持が可能です。
また、DXによる効率的な業務の実現は従業員の負担を減らし、モチベーションを維持しつつコア業務へ集中できる環境も実現できます。働きやすい環境になれば従業員が定着しやすくなるため、人員不足に陥るリスクを減らせます。
BCPの充実
BCPとは「事業継続計画」を意味しており、不確実な外的要因が発生した際の事業の早期復旧や業務の持続方法をまとめたものです。
そして、より充実したBCPを実現するうえでDXは欠かせない要素です。
DXはコア業務を効率化し、バイタルレコードのような情報を電子化するなど、不測の事態に対応しやすい企業体制を実現します。
企業体制を改善すれば最適なBCPを実施しやすくなり、不確実な外的要因が発生しても事業を維持できる可能性が高まります。
生産性の向上
DXによってロボット・IoT・AIなどを導入すれば、業務の効率化ができるだけでなく、ヒューマンエラーや生産ロスを削減し、生産性の向上を実現できます。
それだけでなく、DXを推進すれば、少ない人員でも製造ラインを運営できるため、人件費や無駄なコストの削減が可能です。
コストの抑制に成功すれば、新規事業の立ち上げや人材確保に充てる余裕が生まれ、企業のさらなる発展につなげられます。
レガシーシステムからの脱却
レガシーシステムとは旧来の技術や仕組みによって構築されたシステムを指しており、老朽化が課題となっています。
例えば、最新技術が適用しにくいうえに、重要なノウハウがブラックボックス化するなど。
レガシーシステムを放置すると、企業や従業員の成長を遅滞させる恐れがあるものです。
ただし、DXを通じてノウハウを従業員にシェアし、複雑化したシステムの再構築に成功すれば、レガシーシステムから脱却できる可能性が高まります。
脱却に成功すれば、人員不足や不確実な外的要因にも耐えられる企業体制の構築が可能です。
製造業がDXを進める際の手順
製造業のDXは以下のような手順で進められます。
- 現状把握による課題の設定
- DX戦略の策定と推進体制の構築
- 必要なデジタル技術の検討・導入
- PCDAを回しDXを推進
それぞれの手順を理解すれば、DXのプロセスを構築しやすくなるでしょう。
現状把握による課題の設定
DXを行うなら、まずは現状を把握し、解決すべき課題を設定しましょう。
最初に社内の問題や状況を調査し、優先して対応する課題を発見すれば、DXの方向性を定めやすくなります。
方向性が定まるとDXの過程で不必要なツールを導入したり、過剰なコストが発生したりするリスクを避けられます。
この際、同業他社がDXを実施した事例を調べておくと、より明確なビジョンを持ちやすくなるのでおすすめです。
DX戦略の策定と推進体制の構築
課題を設定したら、DX戦略の策定と推進体制の構築を行います。
DXの戦略は課題を解決するうえで必要な施策をピックアップし、優先順位を決めながら策定します。
この際、無理なくDXを進められるように、ゴールから逆算して余裕のあるスケジュールを設定しましょう。
また、DX戦略の策定をするなら、部署を横断した推進体制の構築が不可欠です。DXは、一部の部署だけでなく、全社が一丸となって取り組むことで高い効果を発揮します。
専門的な知識を持った者だけでなく、経営陣や現場の管理者など、さまざまな立場の従業員が相互的に関われるような体制作りを心がけましょう。
必要なデジタル技術の検討・導入
DXで導入されるデジタル技術は多種多様であり、課題を解決するうえでどれが必要かは慎重に検討しなければなりません。
闇雲にデジタル技術を導入するとコストが想定以上に発生したり、現場で運用できずにかえって業務を停滞させたりする恐れがあります。
DX化をスムーズに実現するなら、適正なコストを意識しつつ、現場との相性を踏まえたうえで導入するデジタル技術を決定しましょう。
PDCAを回しDXを推進
新たなデジタル技術を導入するだけでは、DXは実現できません。
導入後の現場のリアクションを確認しつつ、PDCAを回すこともDXを推進するうえで不可欠なプロセスです。
DXは従来の課題を解決する一方、以下のような新たな課題が生じる可能性があります。
- 新たに導入したシステムやツールを現場が使いこなせていない
- プロセスの変更によって現場や経営陣とあつれきが生じる
- 特定の部署がDXについていけていない
いずれの課題も常にPDCAを回し、対応策を講じなければ解決しないものです。せっかくの取り組みが無駄にならないように、さまざまな部署と意見を交わしながら新たなアクションを実施していきましょう。
DX進め方ガイドブック
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製造業がDXを成功させるためのポイント
製造業のDXを成功させたいなら、いくつかのポイントを押さえる必要があります。DXを実施するうえで押さえておきたいポイントは、以下の通りです。
- 攻守の観点からDX戦略を策定
- 経営層がリーダーシップを発揮しDXを推進
- 中長期的な視点で段階的に取り組む
いずれもDXの成否を左右するものなので、ぜひ参考にしてください。
攻守の観点からDX戦略を策定
DX戦略を策定するなら、「攻めのDX」と「守りのDX」を意識しましょう。
「攻めのDX」とは新規事業の創出や新しい付加価値の実現など、会社の構造や製品の変革を積極的に進めるモデルです。
一方「守りのDX」はコスト削減や業務の効率化などを優先する、企業体制や業務の改善を重視するモデルです。
それぞれの観点を取り入れれば、より自社の状況にマッチしたDX戦略を策定しやすくなります。
経営層がリーダーシップを発揮しDXを推進
DXを成功させるうえで欠かせない要素が経営層のリーダーシップです。
DXは企業体制を大きく変化させ、新たなビジネスモデルを創造する可能性を秘めた取り組みです。
しかし、先頭に立って推進するリーダーがいないと、なかなか前進しません。そのため、経営層がリーダーシップを発揮して積極的に変革を進める必要があります。
また、組織全体を俯瞰し、さまざまな部署が相互的に意見やアイデアを出す環境の実現も経営層の役割です。すべての従業員が主体的に取り組めるようになれば、DX化が成功する可能性がより高まります。
中長期的な視点で段階的に取り組む
DXは中長期的な視点で段階的に取り組むべきプロジェクトです。
DXにおいてデジタル化は短期的な取り組みに過ぎず、本来は中長期的な視点に立って企業の継続的な成長や利益の最大化を目指すものです。
そのため、目先のデジタル化だけに固執すると、かえってDXが失敗するリスクが高まります。
DXの失敗を避けるなら、中長期的な視点で戦略を策定しつつ、身近な課題から取り組むスモールスタートで進めていく方法がおすすめです。
身近な課題から解決していけば、ノウハウや経験値を蓄積できるだけでなく、成功体験によって従業員のモチベーションを高められます。
また、スモールスタートなら万が一失敗しても戦略の軌道修正が容易にできます。
製造業のDX化成功事例3つ
DXを実践する際、同業他社の成功事例は参考として役立ちます。本記事では以下3つの成功事例を解説します。
- 富士通株式会社
- トヨタ自動車株式会社
- 株式会社フジワラテクノアート
いずれの企業も製造業におけるDXのモデルケースです。ぜひ参考にしてください。
富士通株式会社 :リアルタイムでのノウハウの共有を実現した
大手パソコンメーカーである富士通はノウハウの継承や納期の短縮化など、さまざまな課題を解決するうえで積極的なDXを推進していました。
その一環でFTCPを導入し、仮想大部屋で従業員同士がリアルタイムでノウハウを共有できる体制を構築しています。
FTCPの導入により、富士通は製造プロセスの効率化に成功し、品質向上や納期短縮を達成しました。
さらにFTCPの提供や導入に際した支援を実施する新たなサービスも開始するなど、ビジネスへの発展にも成功しています。
トヨタ自動車株式会社:工場IoTで費用対効果を向上
世界的な自動車メーカーであるトヨタは、製造過程や顧客で得たデータの有効的なフィードバックの実現を課題としていました。
課題解決のために、トヨタは「工場IoT」として、デジタルデータの一元管理を行う情報共有基盤の構築に取り組んでいます。
工場IoTを実現する過程で、トヨタは設備投資を進めるだけでなく、従業員の育成のために組織的な教育支援や使いやすいツールの提供を実施しています。
また、DX戦略にトヨタ自動車ならではのジャストインタイムを取り入れ、施策の費用対効果を向上させました。
株式会社フジワラテクノアート:DXセレクション2023グランプリ受賞
醸造機械や食品機械などの開発を行うフジワラテクノアートは、受注・発注システムへのデジタル技術投入や基幹システムの変更など、積極的なDXを実施しました。
フジワラテクノアートは協力会社を巻き込みつつ、全社一丸となってDXに取り組んだため、わずか3年でDXの達成に成功しています。
製造工程の刷新や従業員のDX意識向上などを実現した同社の取り組みは高く評価されており、2023年のDXセレクションでグランプリを受賞しています。
参照:フジワラテクノアートのDX推進について|株式会社フジワラテクノアート
製造業のDXは企業の未来を左右する
製造業のDXは不確実な外的要因への対応・人員不足・レガシーシステムからの脱却など、さまざまな課題の解決に役立ちます。DXは、達成すれば生産性の向上やBCPの充実などさまざまなメリットを得られるものです。
しかし、DXを成功させるには戦略の策定や、全従業員を巻き込む経営層のリーダーシップが欠かせません。
それだけでなく、同業他社の成功事例を参照しつつ、中長期的な視点に立った取り組みも必要です。
デジタル技術の導入で満足せず、常に現場や従業員のリアクションを注視しながら目標達成を目指しましょう。
ぜひ本記事で解説したことを参考に、理想的な企業体制の構築を実現してください。