なぜDX人材不足は深刻なのか?原因から人手を確保する対策まで解説
こんにちは。Wakka Inc.のベトナムラボマネージャーの中垣です。
正しい取り組みでDX人材を確保できれば、DX推進が軌道に乗り、企業活動を有利に進められます。
しかしDX人材不足は深刻であり、「DX人材が不足している根本的な原因がわからない」「どうすれば優秀なDX人材を採用できるのか?」こういった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか?
本記事では、日本のDX推進の現状から、人材が不足している原因と対策まで詳しく解説します。
人材不足の原因を理解して適切な対策を講じたい方は、ぜひ最後までご覧になってください。
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DXとは?日本のDX推進の現状
DXとは、IT技術の活用で業務やビジネスモデルを改革し、企業活動の質を向上させることです。DXはやや抽象的な概念ですが、経済産業省では次のように定義しています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること 出典:経済産業省『DX ガイドライン』
インターネットの発達により市場のニーズやトレンドの変化も早く、企業においてもDXの重要性が増しているでしょう。日本のDX推進の現状を知れば、導入の重要性をさらに理解できます。
DX推進の現状は次のとおりです。
- 日本はDX後進国
- DX遅れによる経済損失は年間12兆円
- DX推進の課題は人材不足
順番に説明します。
日本はDX後進国
日本は世界的に見ても、DX後進国と言えます。スイスの国際経営開発研究所が2021年に発表したデジタル競争ランキングでは、日本は63か国中27位です。
出典:総務省『国際指標におけるポジション』
欧米だけでなく、シンガポールや韓国よりも順位が低く、アジア諸国でもデジタル競争力は劣っています。同ランキングの指標の中でもビッグデータの分析と活用、企業の俊敏さの項目は日本が最下位であり、デジタル先進国に差を付けられているの現状です。
企業にデジタル技術を導入することで、生産性の向上や競合との差別化を図れるメリットもあり、日本企業のDX化が急がれています。
DX遅れによる経済損失は年間12兆円
経済産業省のレポートでは、企業のDX遅れによる経済損失は、年間12兆円にまで及ぶとの報告があります。
出典:経済産業省『DXレポート ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開』
主な理由として、2025年の崖問題が挙げられます。
- 老朽化や複雑化して扱わなくなった既存システムの維持管理費の高騰
- システムの運用、保守の担い手不足による技術的負債
- 人材不足による業務基盤の維持・継承が困難
これらの理由により、2025年以降に年間12兆円の経済損失が見込まれるのが、2025年の崖と呼ばれる問題。
企業のDX遅れが大きな損失を生むと認識はされているものの、実際にはDX化がほとんど進んでいないのが実情なのです。DX化が進まない原因を理解して、しっかりと対策を取らなければなりません。
DX推進の課題は人材不足
企業のDX推進が遅れている理由の一つは、人材不足です。2021年7月に総務省が発表した令和3年版情報通信白書では、企業のDX化が進まない理由として、人材不足が53%で最多でした。
次いで費用対効果が不明の32%や、資金不足の26%が挙げられます。
出典:総務省『情報通信に関する現状報告(令和3年版情報通信白書)』
市場のニーズやトレンドの変化が激しい状況の中、多くの企業でDX化が求められており、デジタル人材の需要は増え続けています。DXの課題を認識して対策を講じなければ、IT人材の需給ギャップは今後も広がるでしょう。
DX人材不足の現状
前述の通り、日本企業の5割以上がDX推進において人材不足を感じているのに対し、米国とドイツでは3割程度です。他国と比較すれば、いかに日本企業が突出して人材不足を感じているかが理解できるでしょう。
さらに詳しく、DX人材不足の現状を見ていきましょう。具体的には次のとおりです。
- 2030年には79万人のIT人材が不足
- DXの主導者が特に不足傾向
- DX人材の確保や育成への現状
一つずつ解説します。
2030年には79万人のIT人材が不足
経済産業省は2019年に、「2030年にIT人材は最大で約79万人不足する」という調査報告をしています。ITの需要により不足数の予想は異なり、需要の伸びが高い場合は約79万人で、中程度でも約45万人が不足すると推計されています。
IT関連産業の採用拡大により、IT人材数は増加傾向にありますが、需要の伸びが早いため需給ギャップは今後も広がるでしょう。
DXの主導者が特に不足傾向
DX人材では、特に主導者が不足傾向にあります。
DX推進では多くの関係者が長期間に渡り作業を行うため、ITスキルだけでなく、プロジェクトを統括する主導者が必要です。主導者には幅広いITスキルや知識に加え、DXメンバーを管理するマネジメント能力、社内全体を巻き込む調整力も求められます。
IT人材が不足する日本企業において、多くのスキルや知識を備えたDX主導者は貴重な存在と言えます。
DX人材の確保や育成への現状
DX人材の確保や育成に関して、多くの企業では社内・社外研修の充実を図っています。
出典:総務省『令和3年版情報通信白書』
総務省の調査では、人材の確保や育成に向けての取り組みは「社内・社外育成の充実」との回答がもっとも多く、次いで「中途採用」の結果となりました。
「特に何も行っていない」との回答も18%あり、米国やドイツと比較すれば、日本はDX人材の採用に消極的です。
人材を求める企業に対して供給が足りず、逆にDX人材側には多くの選択肢があります。DX人材がより良い労働環境を求めて流動的になっていることも、人材不足に拍車をかけていると言えるでしょう。
DX人材不足の原因
DX人材の不足は、複数の原因が重なり合って深刻化しているとい言えます。複数の原因とは、具体的に次の通りです。
- 少子高齢化
- DX人材の需要の伸び
- IT業界のマイナスなイメージ
- ベンダー企業にIT人材が集中
- DX人材の採用や育成に消極的
- デジタル技術の発達の早さ
順番に見ていきましょう。
少子高齢化
少子高齢化は、DX人材が不足している大きな原因の一つです。少子高齢化は日本全体の課題であり、その影響はIT業界にも及んでいます。
IT人材は全体的に増加傾向にあるものの、高齢化で定年退職する方も多く、需要の伸びに対して供給が間に合っていません。今後も少子高齢化の影響で、長期的に需給ギャップは広がり続けるでしょう。
DX人材の需要の伸び
DX人材の需要の伸びも、人材が不足している要因と言えます。感染症の流行による影響や事業拡大により、DXを推進する企業が増加しているものの、担い手が足りていない状況です。
システムのクラウド化やサブスクリプションモデルの浸透など、多くの企業でビジネス構造が変化しています。DX人材はITスキルに加えて、企画力やマネジメントスキルなどの能力も求められる貴重な人材です。
DX推進を行う企業は増加傾向にあるため、人材不足は今後も続くでしょう。
IT業界のマイナスなイメージ
IT業界のマイナスなイメージも、DX人材不足の一因です。マイナスなイメージが定着することで、IT業界を志望する人材が少なくなります。
- きつい
- 厳しい
- 帰れない
3Kなどと揶揄されるネガティブなイメージで人材不足が深刻化し、労働環境が悪化する悪循環に陥っている状況です。ネガティブなイメージを払拭することが、一つの課題と言えるでしょう。
一部のIT企業にIT人材が集中
一部のIT企業にIT人材が集中していることも、DX人材の不足と深い因果関係があります。一部のIT企業にIT人材が集中することで、その他企業への流動性が低くなり、獲得競争もより激しくなるのです。
DXに積極的なユーザー企業が人材の獲得競争に巻き込まれ、不足感が増しています。
出典:IPA『IT人材白書2017』
ユーザー企業のIT人材が6割以上を占める米国やドイツなどと比べると、DX推進が難しい環境と言えるでしょう。
DX人材の採用や育成に消極的
企業が採用や育成に消極的なことも、DX人材の不足が加速する要因の一つです。
DX人材は市場価値が高く、獲得競争も厳しい傾向にあります。企業が消極的な姿勢であれば、獲得は困難を極めるでしょう。
出典:総務省『令和3年版情報通信白書』
デジタル人材の確保や育成に関する総務省の調査では、「特に何も行っていない」と回答した日本企業は18%と高い水準であるのに対して、米国企業が1%、ドイツ企業は4%です。
他国と比較しても、日本企業のIT人材獲得への姿勢は消極的と言えるでしょう。
デジタル技術の発達の早さ
デジタル技術の発達の早さも、DX人材不足の一因として挙げられます。進化するIT技術を使いこなすには、専門性の高いスキルや知識が求められ、育成環境を整備する必要があります。
前述のとおり、日本企業はIT人材の確保や育成に消極的であり、先端技術に関しても育成環境が整っていない企業も多いといえるでしょう。
例えば、ビッグデータの分析結果は、課題解決における合理的な意思決定に役立ちます。
DXにおいて先端技術の存在感は日々増しているのです。先端IT市場は拡大しており、今後さらに獲得が困難になることも予測できます。
DX人材不足への対策
多くの企業ではIT人材不足を避けられない状況です。取るべき対策には、どのようなものがあるでしょうか。
具体的には、次の通りです。
- 業務の効率化、自動化
- 外部委託
- DX化に適した企業文化
- DX人材の採用
- DX人材の育成
- 補助金の活用
一つずつ解説します。
業務の効率化・自動化
業務の効率化・自動化はIT人材不足への対策として有効でしょう。
業務の効率化や自動化が人員削減につながり、確保できる予算をDX人材の獲得や育成に充てられます。
例えば、AIチャットの導入で顧客サポートを自動化したり、ロボットの導入(RPA*)で事務作業や反復作業を任せたりできるでしょう。業務の効率化・自動化を進め、DX人材獲得・育成への予算を確保しましょう。
※RPA……=ロボティック・プロセス・オートメーション。AIや機会学習を活用して人間の作業を代替する取り組み。
外部委託
IT人材不足への対策として、外部委託も有効です。
外部委託を活用すれば、採用や育成よりも迅速に、最小限のコストで高い専門性を持った人材も確保できます。時間や予算が限られている場合でも、外部委託は良い選択でしょう。
海外でのラボ型開発を活用すれば、自社に開発のノウハウを残しながら、低コストでDX化を進められます。
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DX化に適した企業文化
DX人材不足への対策として、DX化に適した企業文化を育てる必要があります。
DXを担うIT人材が、能力を発揮して活躍できる企業文化でなければ、企業に定着しません。仮にIT人材を獲得できても、企業文化や他の従業員と価値観が合わず、離れていくケースもあるでしょう。
企業全体がDXやデジタル技術の必要性を理解し、IT人材のスキルに見合った待遇を用意するなど、働きやすい環境作りが大切です。
DX人材の採用
DX人材不足への対策として、採用も視野に入れておきましょう。優秀なDX人材は引く手数多であり、より良い労働環境を求めて流動的になっています。
そのような人材を獲得するためには、魅力的な条件や就業環境を用意しなければなりません。一般的な採用市場だけにこだわらず、ヘッドハンティングやDX人材に特化した転職サービスなどの活用も検討しましょう。
DX人材の育成
DX人材不足への対策として、人材の育成も必要でしょう。
DX人材は専門知識だけでなく、企業文化やサービスについての理解が必要です。自社の人材であれば、より正確に効果的な判断ができます。具体的な育成方法としては、
- 座学でのスキル学習
- 社外でのDX研修
- 先輩社員とのOJT
などが挙げられます。
採用と比較して、育成には時間と労力がかかるものの、継続的にDX人材を確保する手段として有効です。
補助金の活用
補助金の活用も、DX人材の獲得に効果的です。金銭的な理由で人材の獲得やDX推進に取り組めない企業も少なくありません。
例えば、中小企業庁の監督のもとで運用されるIT導入補助金2022(サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金)は、中小企業や個人事業主のITツール導入に活用できます。
対象は認可を受けたITツールに限られますが、申請や手続きのサポートもあり、誰でも活用しやすいシステムです。補助金を活用すれば、DX導入の金銭的なハードルが下がるため、気になる方はぜひご検討ください。
適切に人材不足を解消し、DX化を進めよう
DX人材が不足している現状や、人材獲得のために取るべき行動はご理解いただけたでしょうか。
DX人材の採用市場は流動的であり、IT人材の視点に立って適切に対策をすれば、効果的な獲得に繋がる可能性も高くなります。
採用だけでなく、育成や補助金の活用など、自社にとって適切な選択を見極めて、DX人材の獲得に繋げましょう。自社に合った選択を見誤らないために、まずはDX推進に精通した専門家に相談してみるのもおすすめです。
弊社でもDXに関するご相談を随時受付しております。DX化やDX人材の不足でお困りの際は、ぜひ一度お問い合わせページからお気軽にご連絡ください。
▼参考記事
WebメディアでPGから管理職まで幅広く経験し、Wakka Inc.に参画。Wakka Inc.のオフショア開発拠点でラボマネジャーを担当し、2013年よりベトナムホーチミンシティに駐在中。最近では自粛生活のなかでベトナム語の勉強にハマっています。