ヘッドレスCMSとは?従来CMSとの違いや導入のメリット・デメリットをわかりやすく解説
次世代型のCMSとも呼ばれているヘッドレスCMSが、徐々に市場に浸透してきました。
「ヘッドレスCMSについて興味がある」「Webサイトの立ち上げでヘッドレスCMSを利用したい」と考えている企業の担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、ヘッドレスCMSに関する以下の内容を解説します。
- ヘッドレスCMSの概要
- ヘッドレスCMSの種類
- ヘッドレスCMSのメリット・デメリット
- ヘッドレスCMSがおすすめの人・企業
- おすすめのヘッドレスCMSと比較ポイント
ヘッドレスCMSの特徴を確認して利用を検討している方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
ヘッドレスCMSとは?
そもそもCMSとは「Contents Management System」を略した言葉で、Webサイトのコンテンツを作成できるシステムです。
コンテンツを入力するバックエンドと、コンテンツを表示するフロントエンドが一体化しているものが一般的です。
対してヘッドレスCMSとは、フロントエンド部分を内包せず、バックエンドの管理に特化したCMSです。
フロントエンドのことをヘッドとも呼ぶため、ヘッドレスCMSと呼ばれています。
ヘッドレスCMSはバックエンドの役割のみを果たすこととなり、フロントエンドの役割を果たすシステムは別途構築する必要があります。
ヘッドレスCMSの導入を検討している方は、以下のポイントを確認しておきましょう。
- ヘッドレスCMSの特徴と仕組み
- 従来のCMSとの違い
- ヘッドレスCMSが登場した背景
ヘッドレスCMSの特徴と仕組み
ヘッドレスCMSとは、名前の通りヘッド(フロントエンド)がないCMSです。
CMSとは「Contents Management System」を略した言葉で、Webサイトのコンテンツ作成を支援するシステムです。
CMSは、コンテンツを入力・管理するバックエンドと、ユーザーサイドに表示させるフロントエンドに分類されます。
ヘッドレスCMSは、バックエンドに特化したシステムであり、コンテンツ入力と管理の機能のみ搭載しています。
そのため、ヘッドレスCMSにはフロントエンドの役割を果たすシステムが備わっておらず、別途構築しなければなりません。
従来のCMSとの違い
従来のCMSとヘッドレスCMSの違いは、次の通りです。
項目 | 従来のCMS | ヘッドレスCMS |
フロントエンドの有無 | 有 | 無 |
バックエンドの有無 | 有 | 有 |
表示画面の自由度 | 低い | 高い |
セキュリティ | 低い | 高い |
従来のCMSは、フロントエンドとバックエンドをセットで取り扱うことで、コンテンツを表示しながら入稿作業を行います。
対してヘッドレスCMSは、バックエンドのみで構成されており、表示画面の自由度が高いのが特徴です。
また、コンテンツ表示・入稿の機能が分かれており、サイバー攻撃を受けるリスクを下げる効果も期待できます。
ただし、ヘッドレスCMSを活用して、デバイスにフロントエンドを表示させるには専門的な知識とスキルが必要です。
従来のCMSは専門知識がないユーザーでも簡単にWebサイトを構築・管理できますが、ヘッドレスCMSは専門知識・スキルがなければ、コンテンツを表示できません。
なお、世界で最も普及しているCMSであるWordPressを、ヘッドレス化して利用することも可能です。
プラグインを利用してヘッドレス化するのが一般的で、WordPressに標準搭載されているWordPress REST APIを利用する方法もあります。
WordPressのヘッドレス化に関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。
ヘッドレスCMSが登場した背景
ヘッドレスCMSは、2018年ころから注目され始めました。
必要とされた背景には、以下のような事情があります。
- スマートフォンやパソコン、タブレットなど情報を得られるデバイスが多様化し、あらゆるデバイスに対応する必要性が増した
- ユーザーが画面表示の遅さにストレスを感じやすくなった
- Webコンテンツが多様化し、集客のためにより質の高いUIやUX(ユーザー体験)が求められた
スマートフォンやタブレットなどデバイスが多様化したことにより、SEO・マーケティング・分析などさまざまな機能が求められるようになりました。
現在は、複雑化するWebサイトにおいて表示速度が重視され、画面表示が遅い場合にはユーザーにストレスを与えないための工夫が必須です。
シェアNo.1のWordPressなど従来のCMSでは、表示速度に重要なCDNとの相性が悪く、画面表示が遅延する課題があります。
そこで、豊富な機能性と膨大なデータ処理能力を備えたヘッドレスCMSが、従来のCMSに代わるものとして注目を集めています。
ヘッドレスCMSの種類
ヘッドレスCMSは、以下の2種類に分けられます。
- Self-Hosted(セルフ・ホステッド)型
- CaaS(カース)型
Self-Hosted型は、自社でサーバーを用意する必要がありますが、自由度が高くコストを抑えられます。
対して、CaaS型はCMSの運用会社がサーバーやデータベースを用意するため、手軽に利用できる点がメリットです。
しかし、運用会社にサービス利用料を支払う必要があり、コストが高くつくデメリットもあります。
それぞれの特徴を理解し、ヘッドレスCMSを利用する際の参考にしてください。
Self-Hosted(セルフ・ホステッド)型
Self-Hosted型は、自社でサーバーを用意してヘッドレスCMSを設置するタイプです。
自由に構築でき、CaaS型と比べてコストを抑えられるメリットがあります。
一方で、システムの整備やセキュリティ対策は自身で行う必要があるため、専門的な知識を持つ人材のリソース確保が必須。
サーバーやデータベースの利用料金は発生しますが、無料で利用できるオープンソース型のCMSを採用すればコストを削減できます。
ただし、Self-Hosted型は自社でサーバーやデータベースを用意する必要があるため、システム構築にはエンジニアの確保が不可欠です。
CaaS(カース)型
CaaS型は、CMSの運用会社が提供するサーバーやデータベースを利用するタイプです。
サービスとしてヘッドレスCMSが提供されているため、アクセスするだけで利用できます。
システムの構築やセキュリティ対策を任せることができ、トラブルが発生した際はサポートも受けられます。
一方、サービスの利用料がかかるため、Self-Hosted型と比べるとコストが高くつく点がデメリットです。
また、CMSの運用会社がサービスを終了するリスクも存在します。
ヘッドレスCMSのメリット
ヘッドレスCMSにはさまざまなメリットが存在します。
本記事で紹介するメリットは、以下の6つです。
- 表示速度が速い
- マルチデバイスに対応できる
- 開発の自由度が高い
- サーバーコストを抑えられる
- セキュリティ性が高い
- 他のシステムと連携しやすい
メリットを理解することでより効果的にヘッドレスCMSを利用できるため、導入を検討している方は確認しておきましょう。
表示速度が速い
従来のCMSは、Webサイトを表示するために、バックエンドからフロントエンドで表示するための動的ファイルを生成する必要がありました。
対して、ヘッドレスCMSは静的ファイルをそのまま表示できるため、データを処理する工程がありません。
データのやりとりも必要としないので、従来のCMSより表示速度が早いです。
表示速度の速さはSEO対策にもつながるため、Webコンテンツの露出度を高めて集客力を高められます。
Webサイトの表示速度が改善すれば、ユーザーのストレスを軽減と離脱率低下にも有効です。
また、Webサイトの滞在時間を増やし、コンバージョンにつなげれば企業の利益アップの効果も期待できます。
マルチデバイスに対応できる
ヘッドレスCMSはバックエンドのみの役割を果たし、フロントエンドとは切り離されています。
そのためデバイスに合わせて複数のフロントエンドを独自に構築でき、マルチデバイスに対応可能です。
従来のCMSでは、表示する画面の大きさに合わせてデザインを多少変更する程度でした。
ヘッドレスCMSと独自のフロントエンドを利用することで、デバイスごとに優れたUIを提供できます。
ヘッドレスCMSは、マルチデバイスに対応できるため、ユーザーの環境にあわせて最適なサービスを実現できます。
開発の自由度が高い
従来のCMSは、バックエンドとフロントエンドが連動しています。
そのためフロントエンドの改修を行う場合、バックエンドへの影響を確認する必要があります。
一方、ヘッドレスCMSはバックエンドが独立しているため、フロントエンドの改修を自由に行えます。
バックエンドへの影響を気にせず、フロントエンドの改修を行えるため開発の自由度が高いです。
例えば、ホームページの作成後でも、ユーザーに表示する画面へ影響を与えずコンテンツの編集や追加が可能です。
変更したい箇所だけコンテンツ管理機能を適用できるため、Webサイトの構築・運用をスムーズに行えます。
ヘッドレスCMSを活用すれば、Webサイトの情報・コンテンツを最適化し、運用にかかるリソースを削減できます。
サーバーコストを抑えられる
先に説明した通り、ヘッドレスCMSは動的ファイルを生成する必要がなく、静的ファイルのまま表示できる仕組みです。
そのため、サーバーの処理や負担が減ります。
また、スペックの高いサーバーを必要としないため、コスト削減にもつながります。
バックエンドとフロントエンドをそれぞれ別でシステム構築できるため、効率的に作業が進めば人件費を削減することが可能です。
サーバーコストを抑えられるだけでなく人件費の削減にもつながります。
セキュリティ性が高い
サイバー攻撃の多くは動的ファイルを狙ったものです。
ヘッドレスCMSはフロントエンドに動的ファイルを使用しないため、セキュリティ性が高い特徴があります。
フロントエンドに静的ファイルのみを置くため、脆弱性を大きく減らせます。
ただし、API部分は外部と接続しており、リスクがまったくないわけではありません。
ヘッドレスCMSを使用する際にも、独自のセキュリティ対策を実施しておくことが大切です。
他のシステムと連携しやすい
ヘッドレスCMSは、APIによってCRMやMAなどさまざまな外部システムと連携できるのがメリットです。
APIとは、Webサービス同士をつなげるインターフェースのことを指します。
CRMやMAのデータを取り込んだり、Webコンテンツを他のシステムで活用したりできるため、コンテンツの幅が広がります。
また、他システムとの連携は業務効率や生産性の向上にも有用です。
ヘッドレスCMSのデメリット
ヘッドレスCMSにはさまざまなメリットが存在する一方、デメリットも存在します。
ヘッドレスCMSのデメリットは、以下の2点です。
- フロントエンドを開発するスキルが必要となる
- プレビュー表示ができない
- 動的ページを使うには外部ツールが必要となる
それぞれ解説します。
フロントエンド開発のスキルが必要となる
ヘッドレスCMSは従来のCMSとは異なり、フロントエンドを独自に開発する必要があります。
自由に開発できる分、開発するためのスキルが必要となる点がデメリットです。
ヘッドレスCMSからフロントエンドへはAPIを使って連携させるため、APIの知識も必要となります。
コンテンツは作成して終わりではなく、管理や運用を行う必要もあります。
メリットとエンジニアにかかる人的コストを比較してヘッドレスCMSの利用を検討しましょう。
プレビュー表示ができない
ヘッドレスCMSにプレビューを表示する機能はありません。
プレビューを表示するためにはAPIを通じてプレビューサイトを用意する必要があります。
公開前にサイトのプレビューを表示する難易度が高い点が、ヘッドレスCMSのデメリットです。
プレビューを表示できないと、プレビュー機能を構築する手間とスキルが必要となり、構造が複雑化します。
操作が複雑化すれば、業務効率が低下するリスクがあります。
動的ページを使うには外部ツールが必要となる
ヘッドレスCMSを使用して動的ページを構築するには、外部ツールが必要です。
ヘッドレスCMSは静的ページのみを表示させるため、動的ページは扱えません。
Webサイトで問い合わせフォームやデータベースを配置したい場合は、外部ツールを利用する必要があります。
また、書き込むたびに内容が増えていく掲示板サイトや、ユーザーによっておすすめ商品が変わるショッピングサイトなど、動的ページを扱う場合にも外部ツールが必要です。
従来のCMRであれば、フロントエンドとバックエンド開発を一つのシステムで完結できますが、ヘッドレスCMSは外部ツールが必要となるケースがあります。
ヘッドレスCMSの導入を検討している方は、デメリットを理解した上で導入するべきか検討しましょう。
ヘッドレスCMSはこんな人・企業におすすめ
ヘッドレスCMSは、以下のような方におすすめです。
- 複数のサイトで共通のコンテンツを管理したい
- スマートフォンアプリやIoTなどのWebサイト以外でもCMSを利用したい
- 独自開発の比率が高い
従来のCMSでは異なるサイトごとにコンテンツを作成する必要がありますが、ヘッドレスCMSであればバックエンドをAPI連携によって複数のサイトに利用できます。
特に、複数サイトを運営する企業は、ヘッドレスCMSの利用が有効です。
ヘッドレスCMS導入後のWeb制作の進め方
下記のお役立ち資料では、ヘッドレスCMS導入後のWeb制作の進め方を確認できます。
ヘッドレスCMSと従来CMSの違いや、開発するための基本フローなどを記載しており、Web制作の提案準備や事前準備に利用できます。
下記の特徴に当てはまる方は、特におすすめです。
- 従来のCMSからヘッドレスCMSの移行を計画しているの方
- クライアントにヘッドレスCMSを提案する制作会社の方
- ヘッドレスCMS開発における基本のフローを知りたい方
ヘッドレスCMSの導入を検討している方は、下記のお役立ち資料をチェックしておきましょう。
【無料DL】制作会社向け|ヘッドレスCMSWeb制作進め方ガイド
おすすめのヘッドレスCMSサービス5選
ヘッドレスCMSのサービスは数多く存在します。
中でも本記事でおすすめするのは、以下の5つです。
Contentful | MicroCMS | GraphCMS | Kuroco | Newt | |
コンテンツの自動保存 | 〇 | × | × | × | × |
プレビュー表示 | 〇 | 〇 | × | × | 〇 |
予約投稿 | 〇 | 〇 | × | 〇 | 〇 |
編集履歴の管理 | 〇 | 〇 | × | 〇 | 〇 |
対応言語 | 言語 | 日本語 | 日本語 | 日本語 | 日本 |
料金 | Free:無料Basic:300ドル/月 | Hobby:0円Team:4,900円~/月Business:63,000円~/月Advanced:150,000円~/月 | Community:無料Professional:399ドル/月Scale:899/月 | 無料 | Free:無料Small:3,980円/月Professional:49,800円/月Enterprise:298¥9,800円/月 |
それぞれに特徴があるので、比較して自社に適したサービスを選ぶと良いでしょう。
Contentful
「Contentful」は、ドイツに本社を置くcontentful社が提供しているヘッドレスCMSです。
世界で最も有名なヘッドレスCMSとも言われ、Spotifyをはじめとする数多くの企業が利用しています。
スマートフォンやパソコン以外のプラットフォームにも配信できるAPIを使用しているのが特徴です。
画像サイズを自動で変更する機能が搭載されており、markdown記法にも対応しています。
ただし、日本語には対応していないため、海外のシステムを使い慣れていないエンジニアには難易度が高いサービスと言えるでしょう。
参照:Contentful
MicroCMS
「MicroCMS」は、株式会社microCMSが提供している国産のヘッドレスCMSです。
ホットペッパービューティーやZOZOTOWN、クラウドワークスなど、日本の大手企業でも利用されています。
操作が簡単で、コードを使わずに更新できるためエンジニアでない社員も扱える仕組みになっています。
会社の規模や機能によって4つのプランから選べるのも魅力です。
参照:MicroCMS
GraphCMS
「GraphCMS」は、Facebook社が開発したAPIであるGraphQLを活用したヘッドレスCMSです。
シンプルで扱いやすいシステムですが、動画を使った複雑な設定は苦手としています。
GraphQLを扱い慣れたエンジニアがいる場合は、GraphCMSの利用を検討すると良いでしょう。
参照:GraphCMS
Kuroco
「Kuroco」は、株式会社ディバーダが2021年から提供しているヘッドレスCMSです。
株式会社ディバーダは4,000社以上で導入されている国産の従来型CMS「RCMS」を運営している企業でもあり、ノウハウを活かしたシステムとなっています。
特に、外部システムやデータとの連携のしやすさが特徴です。
機能も充実しており、CRM機能を活用すれば顧客情報の管理も同時に行えます。
参照:Kuroco
Newt
「Newt」は、Appテンプレートとスターターが用意されており、数分でサイトを立ち上げられるのが特徴のヘッドレスCMSです。
また、サイトやプロジェクトごとにメンバーを入れ替えて管理できます。
App単位でメンバーを招待したり参加や退会が自由なため、チームでのコンテンツ運営がしやすいでしょう。
参照:Newt
ヘッドレスCMSについての理解を深めてうまく活用しよう
ヘッドレスCMSはフロントエンド部分がないCMSです。
フロントエンドを独自に開発できる技術があれば、マルチデバイスに対応できるなどのメリットがあるため便利です。
自社コンテンツを作成する企業は、ヘッドレスCMSの利用を検討するとよいでしょう。