スタートアップの成功に欠かせないPMFとは?手順や検証方法も解説
こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
スタートアップの事業に関するキーワードとして、PMFの視点に注目が集まっています。
「PMFとは何か知りたい」「PMFを達成する方法が知りたい」と考えている担当の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、PMFに関して以下の内容をまとめています。
- PMFの基礎知識
- PMFを達成するメリット
- PMFを達成する手順
- PMFの達成度を測る方法
- PMFを達成するために注意すべきポイント
PMFに関して興味がある方、スタートアップの経営を成功させたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
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PMFとは
PMFとは、「Product(製品)」「Market(市場)」「Fit(適合)」の頭文字を組み合わせた言葉です。
商品やサービスが特定の市場に受け入れられている状態を表します。
特にスタートアップのビジネスを成功させるためには、PMFを達成する必要があるとして注目されている考え方です。
PMFは、アメリカの実業家マーク・アンドリーセン氏が提唱した考え方です。
以下2つの条件を同時に満たすことが重要であるといった考え方であり、スタートアップの成功に必要な要素として日本以外の多くの国においても重要視されています。
- 顧客の課題を解決する商品・サービスであること
- 適切な市場を選択し、受け入れられていること
まずはPMFの基礎知識として、以下の3つを解説します。
- PMFが注目されている背景
- PMFとPSFの違い
- PMF達成に役立つフレームワーク「フィットジャーニー」について
PMFが注目されている背景
PMFが注目されるようになった背景には、2022年に日本政府が掲げた「スタートアップ育成5か年計画」と経団連が掲げた「スタートアップ推進ビジョン」があります。
どちらも日本経済の成長にはスタートアップの事業が重要であるとし、投資や支援を行うとしました。
官民を挙げてスタートアップの推進を図るには、事業を成功させるためのノウハウを共有する必要があります。
その中で、重要な指標になり得るPMFにも注目が集まりました。
参照:「スタートアップ育成5か年計画」「スタートアップ推進ビジョン」
PMFとPSFの違い
PSFとは、「Problem(課題)」「Solution(課題)」「Fit(適合)」の頭文字を組み合わせた言葉です。
顧客が抱えている課題を解決する方法を提供している状態を表します。
顧客の立場からすると、課題を解決する商品・サービスはこれしかないと思っている状態です。
どちらも顧客の獲得や売り上げの増加を目的とした考え方ではありますが、PSFはPMFの前段階に位置しています。
課題の解決策を探ることでPSFを達成し、課題の解決策が市場と適合するかを探ることでPMFが達成されるといった流れです。
PMF達成のプロセスにはPSFの達成が含まれるとも言えるでしょう。
PMF達成に役立つフレームワーク「フィットジャーニー」
フィットジャーニーとは、PMFの達成だけでなく事業を成功させるプロセスを明確にするフレームワークです。
以下6つのフェーズを順に達成することで、能率的に事業を進められるでしょう。
CPF(Customer Problem Fit) | 顧客の課題を検証する |
PSF(Problem Solution Fit) | 提供する課題の解決策を顧客が求めるかどうかを検証する |
SPF(Solution Product Fit) | 課題の解決策を商品・サービスとして提供できるかどうかを検証する |
PMF(Product Market Fit) | 商品やサービスが市場に受け入れられているかどうかを検証する |
GTM(Go-to-Market) | 商品やサービスをどのような方法で顧客に届けるかを検証する |
Growth | 売り上げや顧客数を増やして事業を成長させる |
PMFを達成するメリット
PMFを達成することで、スタートアップビジネスで成果を上げやすくなります。
また、さまざまな業務の効率化にもつながるでしょう。
PMFを達成するメリットは、以下の3つです。
- ビジネスが成功するプロセスが明確になる
- マーケティングに投資しやすくなる
- 事業撤退の基準が明確になる
それぞれ解説します。
ビジネスが成功するプロセスが明確になる
PMFを達成すると、どの市場に商品・サービスを供給すべきかが明確になります。
また、PMFの達成度合いを検証することにより、顧客の課題を解決できる商品・サービスであるかが明確になりやすいでしょう。
近年では、生活スタイルや価値観の多様化により市場が細分化されているため、特にスタートアップの事業ではPMFの視点で分析することが重要です。
また、PMFの活用により投資家に対して戦略を説明しやすくなるといったメリットもあります。
顧客の課題をどのように解決できるのか、どのような市場に受け入れられるのかを説明することで、スタートアップの事業が成功する道のりが明確になるでしょう。
マーケティングに投資しやすくなる
PMFの達成により、どのような市場に受け入れられるかが明確になります。
顧客のニーズを調査・分析して広告や宣伝を行うマーケティングの方向性がはっきりするため、投資しやすくなるでしょう。
PMFを達成していることで、より納得感を持って投資できるといった側面もあります。
逆に、PMFの視点を持っていないビジネスはいくらマーケティングに投資しても売り上げにつながらず、顧客の満足度も低くなりやすいと言えます。
事業撤退の基準が明確になる
PMFの視点で事業を分析することで、撤退の基準が明確になる点もメリットのひとつです。
顧客数や満足度の低下でPMFの達成度も下がるため、撤退すべきかどうかの判断材料として活用できます。
PMFを達成する見込みのない事業を長く継続すると、企業にとって深刻な損害を出す恐れがあります。
PMFの達成度合いを基準にして撤退できれば、リスクを最小限に抑えられるでしょう。
スタートアップの事業に失敗したとしても企業を継続できれば、経験を活かして次の事業に取り組めます。
PMFを達成する手順
PMFを達成するには、その前段階であるPSFを達成する必要があります。
PSFの達成後に商品やサービスを試作し、想定する顧客に使ってもらうことでPMFの達成に近づけるでしょう。
PMFを達成するための手順は、以下の4ステップです。
- PSFを達成する
- MVPを構築する
- MVPを想定顧客に使用してもらい評価を測定する
- MVPの改善を繰り返す
それぞれ詳しく解説します。
PSFを達成する
PSFを達成するにはまず市場を調査し、顧客が抱える課題を発見する必要があります。
アンケートやヒアリングなどを通して顧客の意見を具体的に調査するとよいでしょう。
次に、顧客が抱える課題の解決法を検討します。
商品・サービスを試作し、再度アンケートやヒアリングを通して顧客の意見を取り入れながら改良を重ねる必要があります。
商品・サービスは課題を本質的に解決できるのか、顧客の理解を得られるかどうかなどを繰り返し検討すべきです。
市場調査を行う際は、課題の解決を望む協力者を確保するとより効率的にヒアリングが進められるでしょう。
協力者が多ければより多面的に検証できます。
MVPを構築する
MVPはMinimum Viable Productの略で、実用最小限の製品を表す言葉です。
PSFの検証結果を参考にし、最小限の解決策を持つ試作品を開発しましょう。
ただし、単に機能が少ない商品やサービスがMVPとなるわけではありません。
機能を最小限に絞った上で、競合にはない優位性や価値を提案できる必要があります。
MVPには以下のような種類があります。
プロトタイプ | 商品・サービスの原型や試作品を開発する |
コンシェルジュ | 機能を自動化せず、手作業でサービスを提供する 直接フィードバックをもらえる点が特徴 |
ランディングページ | 試作品の概要をまとめたWebページを作成する |
オズの魔法使い | 開発リソースを抑えてユーザーの反応や需要を検証する |
MVPを想定顧客に使用してもらい評価を測定する
次に、MVPを想定顧客に使用してもらって評価を測定します。
PSFの調査と同様に、いかに多くの顧客から意見を集められるかが重要です。
以下のような点に注意しながら情報を収集しましょう。
- ポジティブな意見だけでなく、ネガティブな意見や改善点を集める
- 定量的に回答できる質問を用意して分析ツールを活用する
- 可能な限り生の声を聞いて本音を拾い上げる
MVPの目的は、商品やサービスを競合他社よりも早く市場に投入してユーザーの反応を得ることです。
多くのフィードバックを獲得できれば、商品やサービス、機能が市場に受け入れられるかを検証しやすくなるでしょう。
MVPの改善を繰り返す
PMFが達成できない場合は、上記のプロセスを再度実行してMVPを改善する必要があります。
試作品のリリースとフィードバックの集計を繰り返して仮説を立てることで、市場に受け入れられる商品・サービスに近づくでしょう。
分析結果を比較する必要があるため、検証のデータをまとめるのがおすすめです。
また、PMFは一度達成したところで終わりではありません。
市場の変化に伴って環境は変化するため、常にMVPを改善し続ける必要があります。
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PMF達成度の測り方・検証方法
事業を成功させるには、PMFが達成できているかを検証して商品・サービスを改善し続けることが大切です。
PMFの達成度を検証する方法として、本記事では以下の4つを紹介します。
- Product / Market Fit Survey
- NPS
- リテンションカーブ
- エンゲージメント
これらの検証方法を適切に活用し、PMFを達成してスタートアップの事業を成功させましょう。
Product / Market Fit Survey
Product / Market Fit Surveyは、起業家であるショーン・エリス氏が考案したアンケート式の検証方法です。
「もしも製品が使えなくなったとしたら、どのように感じるか」といった趣旨の質問に対して、4つの中から選択してもらいます。
- 非常に残念
- やや残念
- 残念ではない
- 該当しない(製品を使用していない)
40%以上の顧客が「非常に残念」と回答すればPMF達成の基準を満たし、今後も顧客を獲得できる可能性が高いと言えるでしょう。
「残念ではない」と回答した人にはその理由をヒアリングし、改善につなげられます。
Product / Market Fit Surveyは顧客満足度を定量的に測れる調査であり、立ち上げたばかりの事業で活用できる先行指標でもあります。
NPS
NPSはNet Promoter Scoreの略で、顧客のロイヤリティ、つまり愛着を測るアンケート調査です。
ビジネス戦略家であるフレッド・ライクヘルド氏が考案しました。
「企業や製品を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいあるか」といった趣旨の質問に対して、0から10までの11段階で回答してもらいます。
回答結果を以下の3つに分けて集計し、推奨者の割合から批判者の割合を引いてNPSスコアを算出する方法です。
0~6 | 批判者 |
7~8 | 中立者 |
9~10 | 推奨者 |
NPSは事業との相関性が高い指標です。
先行指標でもあるため、スタートアップの事業でも活用しやすいでしょう。
リテンションカーブ
マーケティングの分野におけるリテンションとは、維持や継続を表す言葉です。
また、顧客が製品を継続して使用する割合をリテンション率として表します。
リテンションカーブとは、リテンション率、製品をリリースしてからの期間をそれぞれ縦軸と横軸に設定してグラフで表す指標です。
これにより、製品がどの程度の顧客に継続して使用されているかが可視化できます。
リテンションカーブが横ばいの状態になれば、顧客を維持できていることがわかる仕組みです。
逆にリテンションカーブが下降する場合は離脱している顧客が多いため、改善が必要でしょう。
リテンションカーブは遅行指標のため、半年や1年以上の期間に渡って事業を継続している場合に役立つ手法です。
エンゲージメント
エンゲージメントとは、ユーザーが商品やサービスをどの程度利用しているかを調査したデータを指す言葉です。
提供する商品・サービスに応じて以下のようなデータを集計し、定量的に分析します。
- ユーザー数
- ユーザーの利用率
- ユーザーの購入頻度
- 継続期間や継続率
- 購入・契約しているユーザーの属性
事業内容や検証するデータに合わせて適切な期間を設定すれば、エンゲージメントの高さが分析できるでしょう。
先行指標のため、スタートアップの事業でも活用しやすい方法です。
PMFを達成するために注意すべきポイント
PMFを達成するためには、以下のポイントに注意しましょう。
- PMFの測定期間に留意する
- 商品のリリースまでに時間をかけすぎない
- 営業やマーケティングへの投資を急がない
優秀な人材をそろえて事業に取り組んだとしても、成功するとは限りません。
注意すべきポイントを抑えて、スタートアップの事業を成功に近づけましょう。
PMFの測定期間に留意する
PMFが達成できているかどうかを検証する方法は数多く存在します。
測定・検証する際は、事業の内容や検証項目などに応じて適切な期間を設けることが大切です。
例えばBtoCで商品を販売する場合は、短期間で成果が出ます。
先行指標と呼ばれるProduct / Market Fit SurveyやNPSでもPMFの達成度合いが検証しやすいでしょう。
逆にBtoBでサービスを提供する事業の場合、遅行指標を活用するとPMFの達成度合いを検証しやすくなります。
適切な期間を設定した上でPMFを測定しましょう。
商品のリリースまでに時間をかけすぎない
PMFを達成するには、試作品を開発して顧客に使ってもらい、評価を測定するプロセスが必要です。
特にスタートアップの事業であれば、顧客や市場に関する情報を集めることが重要なため、できるだけ早く商品をリリースしましょう。
商品やサービスが完成していない状態でも、顧客の評価に合わせて改善を重ねることでPMFを達成しやすくなります。
ただし、顧客のニーズを検証せずに商品をリリースすると、開発費が無駄になる恐れがあります。
PMFを達成するにはPSFの達成を前提とし、市場が存在することを確認した上で評価を検証するようにしましょう。
営業やマーケティングへの投資を急がない
PMFを達成していない状態で営業やマーケティングに投資しても、成果は上がりません。
逆に、Webサイトの設計や広告が不十分な状態だとしても、PMFを達成できていれば売り上げが上がる可能性は高いと言えるでしょう。
また、事業がうまくいかない場合は、営業やマーケティングへの投資を増やす前にPMFの達成度合いを見直すとよいでしょう。
PMFを達成してスタートアップを成功させよう
スタートアップの事業を成功させるためには、PMFを達成することが重要であり、定期的に評価を検証し続ける必要があります。
PMFの重要性を理解し、スタートアップの成功に向けて事業を進めていきましょう。
新規事業やスタートアップでのプロダクト開発を検討している方は、ぜひ本記事を参考にしてPMFを達成してください。