ベトナムオフショア開発がおすすめな理由|最新動向とよくある失敗事例を解説
こんにちは。Wakka Inc.のWebディレクターの中垣です。
近年、オフショア開発拠点の第一候補として優秀なIT人材が豊富な「ベトナム」が注目されています。ベトナムでは国を挙げてIT人材・産業の育成に力を入れており、2019年の調査ではIT産業に従事する人材は約35万人もいると言われています。
そのため、人材不足や国内の人件費の高騰に悩む日本企業も開発拠点として、ベトナムに進出するケースが増えてきているようです。
そこで本記事では日本企業の開発拠点として注目される、ベトナムのIT市場の特徴と魅力について解説していきます。
参考リンク:『statista.com Number of employed people in Vietnam in 2019, by industry』
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ベトナムオフショア開発の現状
ベトナムはオフショア開発の拠点として、多くの企業から選択されています。
ベトナムのオフショア開発の現状を理解して、準備を進めましょう。
①ベトナムIT市場は拡大傾向
ベトナム通信省の白書によると、2019年のIT市場は約88億円で、2017年・2018年と比較すると増加しているのがわかります。
そしてICT全体の売上を別のデータで見ると、2020年は1240億ドル(兆円)、2021年は1360億ドル(19兆円)と収益も増えているのです。
ベトナム政府はICT市場を支援するために、国家デジタル変革プログラムやAIの研究開発アプリケーションに関する投資を国家戦略としています。
国を挙げての投資や外国企業の参入がベトナムIT市場の拡大に成功している要因です。
参考:『VIETNAM IT MARKET REPOT TECH HIRING 2022』
②ベトナムはIT教育に注力
ベトナムは、教育法で「教育の発展が国の最優先政策」と掲げ、熱心な人材教育をしている国家です。
義務教育の期間も日本と同様に10年間あり、加えてSTEM教育(科学・技術・工学・数学の教育モデル)にも熱心に取り組んでいます。
OECDの調査では、ベトナムの科学的リテラシーは70ヵ国中8位というスコアまで上昇しています。
また、経産省白書によるとベトナムの平均年齢が30歳、人口は約1億人で労働人口が年々増加しているのです。
識字率の高さに加えて、科学技術に対するリテラシーも高い人材が多く、IT産業従事者も約35万人まで増加してきています。
ベトナムはポテンシャルが高く、若く優秀なエンジニアが多い市場と言えます。
参考:『JETRO ベトナム教育産業調査』
③優秀で勤勉な国民性
国民性については一概に言い切れない部分はありますが、独立行政法人労働政策研究・研修機構の海外労働情報のレポートでは、ベトナムの労働者は勤勉で専門性を大切にする傾向があるという調査結果が出ています。
ベトナムのIT人材の週あたりの平均勉強時間は3.5時間で、日本人の1.9時間と比較すると約2倍です。
また柔軟な思考な人が多く、AIやIOT、NFTなど最先端の技術にも敏感で積極的に、キャッチアップする人が多いようです。
日本の国民性においても、統計数理研究所調査では日本人の長所として挙げられる性質として「勤勉」の評価が高いため、真面目に一生懸命働く姿勢はベトナムと日本は似ていると言えるでしょう。
ベトナムオフショア開発がおすすめな理由
ベトナムがオフショア開発の拠点として、多くの企業から選択されていると説明しました。
実際にベトナムは開発拠点として優れています。
ベトナムがオフショア開発の拠点として、おすすめな理由を解説します。
1.開発リソースが確保しやすい
ベトナムの人口は増加傾向で生産年齢人口は2021年時点で、7,500万人います。
加えて若くて優秀なエンジニアが多い市場のため、国内開発に比べると開発のリソースが確保しやすいです。
さらに、Vietnam IT Market Reportsによると、ベトナムのIT人材の人口は2021年時点で90万人とされています。
90万人のIT人材のうち約55%が20代、26%が30代と若い人材が豊富です。
参考:statista「Working age population in Vietnam from 2010 to 2021」
参考:Vietnam IT Market Reports
2.コストパフォーマンスが良い
ベトナムは開発コストが抑えられるとして、世界のアウトソーシング先として常に上位にランクインされています。
日本では平均年齢や市場ニーズの高まりでエンジニアの平均人件費は、おおよそ600万円と言われています。
一方ベトナムでは、同じ開発スキルのエンジニアが年21,300ドル(298万円・2023年6月レート)程度で、日本の人件費の1/2程で確保可能です。
ソフトウェア開発をベトナムにアウトソーシングすることにより、先進国の現地市場でITエンジニアを雇用する場合と比較して人件費を抑えられます。
オフショア開発では日本とベトナム拠点の橋渡しを行うブリッジSEなど、コミュニケーションを取るための専門人材が必要です。
しかしそれを勘案しても国内開発に比べて年間数百万円から数千万円程度コストを削減できます。
3.投資優遇制度
ベトナム政府は情報通信技術の産業育成に力を入れており、2020年までに数百億円の投資を行い、加えて外資の誘致のために優遇税率制度などを設けています。
例えば、設立後4年間の税控除とその後9年間の50%減税措置などです。
一方で、対象になるためには現地の官公庁とのやりとりの手間や現地法人運営のノウハウ蓄積など、初めての企業にとっては非常にハードルが高い作業が発生します。
そのため、オフショア開発を進める場合には信頼できる現地のパートナーを探すことをお勧めします。
参考:JETRO『ベトナム 外資に関する奨励』
4.時差が少なくコミュニケーションをとりやすい
ベトナムと日本の時差は2時間で、日本の方が2時間進んでいます。
ベトナム企業の営業時間は朝8時から夕方5時までが一般的です。
一方日本では朝9時から夕方6時までの企業も多く、ベトナム企業の営業時間と一致します。
このように時差が少ないため、コミュニケーションも比較的タイムリーに行えて、開発もスムーズに進められるでしょう。
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ベトナムオフショア開発で起こりがちな失敗例
多くのコストを投入して行うため、オフショア開発で失敗はしたくないものです。
ベトナムでオフショアをする際に起こりやすい失敗は以下の通りです。
- プロジェクトの予算をオーバー
- コミュニケーションギャップによる仕様のミスマッチ
- 品質トラブルの発生
プロジェクトの予算をオーバー
オフショア開発では見積もりの段階では予算に収まっていても、開発を進めるうちに予算をオーバーしてしまうケースが少なくありません。
予算をオーバーしてしまう原因として考えられるものは以下の4つです。
- 為替変動を考慮した計画になっていない
- 進捗管理がうまくできず、納期遅れによるプロジェクト延期
- 仕様が伝わっておらず、想定以上の工数がかかった
- 成果品の品質が低いため、追加作業が発生する
為替変動や作業の進捗は常に把握し、予算を超えないように管理する必要があります。
また委託先に要件がきちんと伝わっているかの確認し、対策をしましょう。
コミュニケーションギャップによる仕様のミスマッチ
ベトナムとは言語や文化の違いからコミュニケーションギャップが生じ、仕様のミスマッチにつながります。
仕様のミスマッチとは、仕様を明確にして伝えたが、相手が間違って認識し想定に達しない開発をしてしまうことです。
プロジェクトの目的や真意が伝わっているか、仕様からズレた開発をしていないか定期的に確認する必要があるでしょう。
品質トラブルの発生
品質トラブルの発生もオフショア開発で起こりやすい失敗例の1つです。
また若くて優秀なエンジニアであっても、自己流で可読性の悪いコードを書いてしまうなど、チーム開発の経験不足やスキル不足による小さなエラーなどが発生しがちです。
上記のようにコード規約が守られないと、品質トラブルにつながります。
しかしながら品質トラブルは、単にコスト削減のみを求めて仕事を丸投げするときに起こりやすいです。
コーディング規約を品質テスト項目に入れたり、目的を明示したりすると品質トラブルを未然に防げます。
ベトナムオフショア開発を成功させるためのポイント
ベトナムでオフショア開発を成功させるためのポイントは次の3つが挙げられます。
- 依頼したい分野の実績がある会社を選ぶ
- コミュニケーションの機会を増やす
- マネジメント体制と指揮系統を明確にする
順番に詳しく解説します。
依頼したい分野の実績がある会社を選ぶ
たとえ優秀なエンジニアでも依頼したい分野の実績がない場合は、細かな仕様に対応できなかったり、期待している品質に達しなかったりすることがあります。
ベンダーによって得意な開発プロジェクトが違うため、自社が開発したいものと近い開発実績があるか確認します。
可能であれば、依頼先のエンジニアのレベルを知るために、過去に開発したプロジェクトのソースコードをサンプルで入手しておきましょう。
また依頼先を選ぶ際は自社の課題が解決できるか、開発の目的に合っているかなどを確認しておくと良いです。
コミュニケーションの機会を増やす
ベトナムと日本とでは商習慣や文化が違うため、認識の問題が起こりやすいです。
例えば時間感覚の違いによる、納期スケジュールの遅れなどがあります。
前述した仕様のミスマッチもコミュニケーション不足によって発生します。
そのため現地の管理者と定期的にWebミーティングを行い、コミュニケーションの機会を増やして、認識の相違をなくしましょう。
またリソースの関係上、密にコミュニケーションを取るのが難しい場合は、ブリッジSEや管理を任せられる現地経験が豊富なパートナーを確保するのも有効です。
マネジメント体制と指揮系統を明確にする
オフショア開発では、仕様のミスマッチやその他の認識の相違をなくすために、意思表示や指示を明確にする必要があります。
しかし依頼先との窓口が複数あったり、ブリッジSEやマネジメント会社と自社の指示に相違があったりすると現場は混乱してしまうでしょう。
その結果、品質トラブルや納期遅れなどにつながります。
開発を進める前に、どのようなマネジメント体制で行うのかを明確にし、スムーズにできるようにしましょう。
ベトナムオフショア開発まとめ
ベトナムをオフショア開発拠点とするのは、さまざまなメリットがあります。
一方で、言語や価値観の違いから認識の相違が生まれ、品質トラブルや予算オーバーなどの問題につながる恐れがあります。
オフショア開発を行うには、開発体制を整え指揮系統を明確にすることが必要です。
自社にオフショア開発の体制を整えるノウハウがない場合は、ベトナムのオフショア開発に詳しいパートナーを見つけるのも有効です。
ベトナムにグローバル開発拠点設立を予定している方へ。
日本のIT企業さまにご利用いただけるベトナムでの現地法人設立マニュアルです。
ベトナム法人設立における基本STEPや人材採用の基本手法について解説しています。ベトナムでの法人設立手法、スケジュール感を知りたい方はぜひダウンロードしてみてください。
WebメディアでPGから管理職まで幅広く経験し、Wakka Inc.に参画。Wakka Inc.のオフショア開発拠点でラボマネジャーを担当し、2013年よりベトナムホーチミンシティに駐在中。最近では自粛生活のなかでベトナム語の勉強にハマっています。