MVP開発とアジャイル開発の違いとは？進め方や向いているケースを解説
こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
MVP開発とアジャイル開発は新規事業開発で採用されることが多く、混同されやすいですが、それぞれメリットとデメリットが異なります。
どちらを選択するべきか悩んでいる方は、それぞれの特徴を把握し、プロジェクトの目的に合った手法が選択できるよう比較検討しましょう。
本記事では、MVP開発とアジャイル開発の違いを詳しく解説します。
それぞれのメリットとデメリットや進め方をあわせて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
MVP開発とは
MVP（Minimum Viable Product）の定義は、ユーザーに必要最低限の価値を提供するプロダクトのことです。
MVP開発は、開発したMVPを市場に投下し、ユーザーの反応を得て改良を繰り返すことを目的としています。
一般的に、目的を達成できる最低限の機能を備えた製品を開発し、試作品として市場へ投下しフィードバックを得る開発手法をMVP開発と呼びます。
MVP開発の重要性は、不要なコストや時間をかけずに市場からフィードバックを得られることです。
大規模な失敗を避けて市場のニーズに沿った製品へと改良を繰り返せるため、競争力の高い製品を開発できます。
またMVPは、リーンスタートアップを構成する要素の1つとして重要な役割を担っています。
リーンスタートアップとは、可能な限り無駄を省き事業を効率的に成長させるためのマネジメント手法です。
スタートアップ企業や新規事業で活用されるケースが多く、低コスト・短期間で作成した試作品を作り、ユーザーの使用感をフィードバックしてもらうことで、プロダクトを改善します。
リーンスタートアップにおける「最低限の機能を持った試作品を作る」工程がMVP開発です。
新規事業を始める際に、リーンスタートアップを取り入れるためにMVP開発が必要です。
以下の記事では、リーンスタートアップを実施するためのフレームワークや事例などを詳しく解説しています。
新規事業を効率的に進めたい方は、ぜひ参考にしてください。
アジャイル開発とは
MVP開発と混同されやすい言葉として、アジャイル開発があります。
アジャイル開発とは、開発工程ごとの小単位で実装やテストを繰り返す開発手法です。
システム開発の主流になっているウォーターフォール開発では、下記の開発工程を段階的に進めます。
- 計画
- 設計
- 実装
- テスト
対してアジャイル開発は、要件ごとに上記の開発工程を進め、開発した機能を集合させて1つのシステムを作り上げます。
優先度の高い要件から開発を進め、機能単位の小さなサイクルで開発を繰り返す点が、アジャイル開発の特徴です。
アジャイル開発は、従来型のソフトウェア開発とは異なる手法を実践していた17名の開発者が、それぞれの主義や手法について議論した「アジャイルソフトウェア開発宣言」から始まりました。
下記のアジャイルソフトウェア開発宣言は、2001年に公開されました。
| 私たちは、ソフトウェア開発の実践あるいは実践を手助けをする活動を通じて、よりよい開発方法を見つけだそうとしている。この活動を通して、私たちは以下の価値に至った。 プロセスやツールよりも個人と対話を、 包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを、 契約交渉よりも顧客との協調を、 計画に従うことよりも変化への対応を、 価値とする。すなわち、左記のことがらに価値があることを認めながらも、私たちは右記のことがらにより価値をおく。 |
上記はアジャイル開発の基本概念となる宣言であり、ソフトウェア開発において何を重要視するべきかを明記しています。
MVP開発とアジャイル開発の違いと関係性
MVP開発とアジャイル開発は、それぞれ小単位で開発を繰り返す点が一致していますが、次のポイントが異なります。
- 開発の流れ
- 開発の目的
- 開発の期間
- 開発にかかるコスト
それぞれの違いを確認しておけば、アジャイル開発におけるMVPの重要性を把握することが可能です。
MVP開発とアジャイル開発の関係性を把握するために、理解を深めておきましょう。
開発の流れ
MVP開発とアジャイル開発は、開発の流れが違います。
MVP開発は、製品の本質となる機能を備えた試作品を制作し、ユーザーからのフィードバックを得る開発手法です。
フィードバックを参考にMVPを改善し、製品を完成させます。
対してアジャイル開発は、開発を小単位に分割し、完成した機能はすぐにリリースします。
リリース後のフィードバックをもとに改善を繰り返し、小単位の機能が完成したら次の開発へと進む流れです。
MVP開発は、早期の市場投入と検証を重視する開発手順であるのに対して、アジャイル開発では反復的な流れを繰り返す点が異なります。
開発の目的
自社に合った開発手法を選ぶためには、開発の目的を明確化しておく必要があります。
MVP開発とアジャイル開発の目的は、次の通りです。
| 開発手法 | 開発の目的 |
| MVP開発 | 製品を市場に早く投下し、ユーザーの反応を得ること |
| アジャイル開発 | ユーザーニーズの変化に素早く適応すること |
MVP開発は、試作品であるMVPをできるだけ早く市場へ投下し、ユーザーのフィードバックを得ることが目的です。
対してアジャイル開発は、小規模なサイクルで開発を進めることで、ユーザーニーズの変化に素早く適応する目的で実施されます。
それぞれの開発手法によって目的が異なるため、MVP開発とアジャイル開発のどちらが自社に適しているか見極めましょう。
開発の期間
MVP開発とアジャイル開発では、開発にかかる時間が違います。
アジャイル開発は1～4週間程度のスプリントを繰り返し、製品を開発するため、完成までに数カ月単位の期間が必要です。
対してMVP開発は、早期の市場投下を目的としているため、数週間から2カ月程度で製品をリリースします。
リリース後にユーザーのフィードバックを基に改良し、短時間で本リリースへつなげます。
一般的にMVP開発はアジャイル開発より開発にかかる期間が短いため、早めに製品をリリースしたい場合はMVP開発を採用しましょう。
開発にかかるコスト
MVP開発とアジャイル開発では、開発にかかるコストが異なります。
アジャイル開発は、段階的に開発を進め、スプリントごとにリソースがかかります。
対してMVP開発は、時間とコストを最低限まで抑えて開発を進めるため、トータルコストを大幅に削減することが可能です。
ただしMVPリリース後のフィードバックによっては、改良コストがかかります。
一般的にMVP開発は、無駄を省いて早期のリリースを目的とした開発手法になるため、アジャイル開発よりトータルコストを抑えられます。
MVP開発のメリット
MVP開発のメリットは、次の通りです。
- 開発にかかるコストや時間を削減できる
- 顧客ニーズに合わせた開発ができる
- 失敗した際のリスクを抑えられる
- 先行者利益を得られる
それぞれのメリットを確認して、MVP開発の強みを把握しましょう。
開発にかかるコストや時間を削減できる
MVP開発は、開発にかかるコストや時間を削減する手法です。
最低限の機能を有したMVPの制作・市場投下により、コストや時間を抑えた開発を実現します。
また、ユーザーの反応を見ながら方向性を変更できるため、手直しなどにかかる時間とコストのロスを抑えられます。
顧客ニーズに合わせた開発ができる
MVP開発は、試作品であるMVPを市場に投下して、ユーザーのフィードバックを基に改良する手法です。
そのため、顧客ニーズに合わせた開発ができる点が、MVP開発のメリットです。
ユーザー視点での反応を早期から得られるため、市場のニーズに沿った製品・サービスを開発できます。
失敗した際のリスクを抑えられる
MVP開発のメリットは、失敗した際のリスクを抑えられることです。
最低限の機能だけを備えたMVPによって、ユーザーの反応を見るため、失敗した際の損失を少なく抑えられます。
ユーザーのニーズに適していないMVPだった場合、早めに方向性を変更できます。
先行者利益を得られる
MVP開発は、できるだけ早く市場に製品を投下するため、先行者利益を得やすいです。
市場に競合がいない状態で新製品・サービスをリリースすれば、大きな市場シェアを獲得できます。
MVP開発のデメリット
MVP開発のデメリットは、次の通りです。
- 長期的・大規模なプロジェクトに向いていない
- エンジニアのスキルに依存する
メリットだけでなくデメリットも確認して、MVP開発を採用するべきか検討しましょう。
長期的・大規模なプロジェクトに向いていない
MVP開発は、長期的・大規模なプロジェクトに向いていません。
MVP開発は、コストや時間を抑えて最低限の機能だけを有した試作品を作成するため、大規模でリリースまで時間がかかるプロジェクトに不向きです。
複雑な機能を備えたプロダクトでは、検証と改善を繰り返すために長い期間が必要です。
目安として2カ月以上の期間がかかる長期的・大規模なプロジェクトの場合は、MVP開発を避けましょう。
エンジニアのスキルに依存する
MVP開発のデメリットは、エンジニアのスキルに依存することです。
MVP開発は、短期間で限られた予算内に開発を進める必要があるため、エンジニアに高いスキルが求められます。
エンジニアのスキルが不足している場合、予算や期間をオーバーしてしまう可能性があるため要注意です。
アジャイル開発のメリット
アジャイル開発のメリットは、次の通りです。
- 仕様変更に柔軟な対応ができる
- 開発スピードを短縮できる
- ユーザビリティが向上する
アジャイル開発を採用するべきか悩んでいる方は、それぞれのメリットを確認しておきましょう。
仕様変更に柔軟な対応ができる
アジャイル開発は、開発途中に仕様が変更されても、柔軟に対応できます。
機能ごとに開発を進めるため、仕様変更に対応しやすく、時間やコストを無駄にしません。
開発スピードを短縮できる
アジャイル開発のメリットは、開発スピードを短縮できることです。
従来のソフトウェア開発手法であったウォーターフォール開発では、要件定義書や詳細設計書など多くの書類を作成する手間がかかっていました。
しかしアジャイル開発では、ウォーターフォール開発ほど書類を用意する必要がなく、開発スピードが速い傾向にあります。
さらに、すべての機能が揃っていなくとも、プロダクトオーナーの判断で作成済みの機能をリリースできるため、短時間でシステムを使用できます。
ユーザビリティが向上する
アジャイル開発は、開発段階で何度も検証や改善を繰り返すため、ユーザビリティが向上します。
ソフトウェアにユーザーの意見を反映できるため、ユーザビリティの高いシステム開発が期待できるのです。
アジャイル開発のデメリット
アジャイル開発のデメリットは、次の通りです。
- スケジュール管理が難しい
- 方向性を定めにくい
MVP開発とアジャイル開発それぞれのメリット・デメリットを確認した上で、自社に合う開発手法を見極めましょう。
スケジュール管理が難しい
アジャイル開発は、仕様変更に柔軟な対応ができる反面、スケジュール管理が難しい開発手法です。
何度も仕様が変更された場合、想定していたスケジュールより完成が遅れてしまいます。
日々の進捗状況を確認すれば、スプリントごとのスケジュールを管理できますが、プロダクト全体の管理は難しいです。
方向性を定めにくい
アジャイル開発は、細かな仕様変更を繰り返すため、方向性を定めにくいです。
開発の目的を意識しても、全体的な設計や方向性が変わる可能性があります。
開発の方向性を定めるために、定期的な振り返りが必要です。
MVP開発かアジャイル開発を選択する判断ポイント
MVP開発かアジャイル開発のどちらを選択するべきか悩んだ際は、自社がどちらの開発手法が向いているか見極める必要があります。
それぞれの開発手法が向いているケースを3つずつ紹介しますので、ソフトウェア開発を進める参考にしてください。
MVP開発が向いているケース
MVP開発が向いているケースは、次の通りです。
- 小規模なプロジェクト
- 顧客ニーズが曖昧なプロジェクト
- 開発環境がシンプルなプロジェクト
MVP開発は、時間とコストを削減して開発を進める手法なので、大規模・長期的なプロジェクトに向いていません。
反対に小規模なプロジェクトであれば、時間とコストを削減してスムーズに開発を進められます。
同様に、MVP開発は開発にかけるコストや時間が限られているため、複雑な設計より開発環境がシンプルなプロジェクトが向いています。
また顧客ニーズが曖昧なプロジェクトでも、MVP開発であればMVPを通じてユーザーのフィードバックを得られるため、ニーズに沿った製品へ改善することが可能です。
アジャイル開発が向いているケース
アジャイル開発が向いているケースは、次の通りです。
- 大規模なプロジェクト
- 顧客ニーズの変化が予測されるプロジェクト
- 開発環境が複雑なプロジェクト
アジャイル開発は、開発途中の仕様変更に対応できるため、大規模なプロジェクトや顧客ニーズの変化が予測されるプロジェクトに向いています。
またMVP開発では実現が難しいような開発環境が複雑なプロジェクトでも、小単位のスプリントごとに進捗を確認し、必要に応じて計画を微調整しながら開発を進められます。
MVP開発の進め方
MVP開発の進め方は、次の通りです。
- 目標設定を明確化する
- 仮説を設定する
- MVPを作成する
- フィードバックを分析する
- 改善を繰り返す
MVP開発を採用する場合は、上記の手順に沿ってソフトウェア開発を進めましょう。
目標設定を明確化する
まずMVP開発は、目標設定を明確化することが大切です。
解決するべき課題やシステム開発の目的などを明確化し、ターゲット層や市場のニーズを調査しましょう。
初めの目標設定が曖昧な状態では、開発を進める過程で方向性がブレてしまう可能性があります。
MVP開発を始める際に、目標設定を明確化してターゲット層とユーザーニーズを調査する必要があります。
仮説を設定する
次は要件定義とも呼ばれる、仮説を設定する工程です。
「ユーザーニーズを満たす機能は何か」「現状の課題を解決するにはどのような製品が必要か」など、課題を解消し目的達成につながる仮説を設定しましょう。
仮説を明確化しておくことで、作成するMVPの機能や仕様を定められます。
MVPを作成する
仮説に基づいてMVPを作成しましょう。
MVPを作成する際には、ユーザーが求める機能を見極め、コストと時間を最低限に抑えることが大切です。
MVPは完成形に近づけるのではなく、いち早く市場に投下してユーザーのフィードバックを得ることが目的です。
フィードバックを分析する
MVPが完成したら、市場に投下してユーザーからフィードバックを得ます。
フィードバックを分析して、MVPの改善点や追加する機能を見極めましょう。
またMVPがユーザーのニーズを満たせない場合は、フィードバックを基にニーズに沿った製品を開発できるよう方向性を修正してください。
改善を繰り返す
MVP開発は、一度のフィードバックを基に完成形を決めるのではなく、必要があれば何度もテストを繰り返し改善していきます。
初めは小さな市場でテストを実施し、徐々に対応できる範囲を広げて、市場に適応できる製品を開発します。
継続的な改善を繰り返し、ユーザーニーズを満たすクオリティまでMVPを昇華させることが、MVP開発のゴールです。
アジャイル開発の進め方
アジャイル開発の進め方は、次の通りです。
- リリース計画を立てる
- イテレーションの長さを設定する
- イテレーションを実施する
- 次のテーマを選定する
アジャイル開発を採用する際は、上記の手順に沿って開発を進めてください。
リリース計画を立てる
アジャイル開発は、まずいつまでにどの機能を開発するのかリリース計画を立てる必要があります。
具体的には、次のようなポイントについて計画を立てましょう。
- プロジェクトのゴール
- イテレーションの優先順位
- 開発チームの編成
- ユーザーニーズとストーリー
イテレーションとは、アジャイル開発における小単位での開発サイクルを指します。
イテレーションの長さを設定する
リリース計画を立てたら、イテレーションの長さを設定しましょう。
リリース計画に基づき、優先順位の高いイテレーションから開発を進める必要があります。
しかし、イテレーションの長さが決まっていないと、プロジェクト全体のスケジュールを管理できません。
開発する機能や要件に沿って、イテレーションの長さを設定し、スケジュール管理ができる体制を整えてください。
イテレーションを実施する
アジャイル開発は、イテレーションごとに「計画・設計・実装・テスト」のステップを繰り返すことで、システム開発を進める手法です。
イテレーションの長さを設定した後は、実際にイテレーションを実施して開発を進めましょう。
テストの結果をふまえて改善を繰り返し、問題ない段階まで到達したら、次のイテレーションへ移ってください。
次のテーマを選定する
イテレーションを完成させたら、次のテーマを選定します。
このようにすべてのイテレーションを実施していけば、システムを完成させられます。
MVP開発とアジャイル開発の事例
MVP開発とアジャイル開発は、身近で利用している製品・サービスの開発にも使用されてきました。
例えば、次のようなものがMVP開発やアジャイル開発で開発されています。
| MVP開発の事例 | アジャイル開発の事例 |
| イネサス（福利厚生サービスアプリ） | JTB旅行検索（旅行予約アプリ） |
| Loogia（配車システム） | 日産レンタカー（レンタカー予約アプリ） |
| Airbnb（民泊サービス） | elgana（ビジネスチャットツール） |
| Dropbox（ストレージサービス） | Retty（グルメサービス） |
成功事例を参考に、自社が求める開発手法を見極めることが大切です。
下記の記事では、MVP開発の成功事例を詳しく解説しているため、ぜひチェックしておきましょう。
MVP開発とアジャイル開発の違いを理解して自社に合った開発手法を選択しよう
システム開発を効率的に進めるため、自社に合った開発手法を選択することが大切です。
MVP開発とアジャイル開発の違いを理解すれば、自社に合った開発手法を選択できます。
MVP開発とアジャイル開発が向いているケースは、次の通りです。
| MVP開発が向いているケース | アジャイル開発が向いているケース |
| 小規模なプロジェクト | 大規模なプロジェクト |
| 顧客ニーズが曖昧なプロジェクト | 顧客ニーズの変化が予測されるプロジェクト |
| 開発環境がシンプルなプロジェクト | 開発環境が複雑なプロジェクト |
それぞれのメリットとデメリットを理解した上で、最適な方法で開発を進めましょう。
なお、下記のボタンからMVP開発に向いているプロジェクトや成功事例を確認できます。
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