プロジェクト計画書における体制図のポイント|役割と責任を定義する
こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
システム開発プロジェクトを立ち上げる際には、必ずプロジェクト計画書を作成します。
計画書の中で重要なのが、プロジェクト体制図です。
体制図を正しく作成することで、プロジェクトの進行がよりスムーズになります。
本記事では、体制図を作成するメリット、体制図に記載すべき役割、体制図を作成する際のポイントについて解説します。
プロジェクトをスムーズに進めるために、ぜひ本記事を参考にしてください。
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プロジェクト計画書における体制図の概要
本章では、プロジェクト計画書に記載する主な内容と、中でも必須で作成すべき体制図について概要を解説します。
プロジェクト計画書とは
システム開発のプロジェクトが立ち上がったら、まずプロジェクト計画書を作成します。
プロジェクト計画書とは、プロジェクトを進めていくうえでこれから必要になる情報をまとめたものです。
プロジェクト計画書に記載すべき内容には、プロジェクトの概要や目的、開発範囲、予算、スケジュール、体制、コミュニケーション計画などがあります。
プロジェクトの前提となる情報を明確にしておくと、利害関係者とのコミュニケーションがスムーズになります。
結果的に、開発の生産性向上が期待でき、プロジェクトを成功に導きやすくなるでしょう。
体制図とは
プロジェクト計画書に記載すべき重要な項目のひとつが体制図です。
体制図とは、プロジェクトに参加するメンバーの役割や指揮命令系統を明確にするための図表です。
プロジェクトを進める中で進捗や品質の管理を効率的に行うためには、役割や指揮命令系統を関係者全員が把握している必要があります。
体制図を共有しておくことでプロジェクトの関係者と関係性を把握しやすくなり、誰に確認すべきかわからないといった混乱が避けられ、プロジェクトの推進がスムーズになるでしょう。
体制図の目的
体制図には大きく2つの目的があります。
- プロジェクトメンバーの役割を明確にする
- 指揮命令系統を明確にする
まず、メンバーは自分自身に求められている役割を把握しておくことが重要です。
SE、プログラマーなのか、チームリーダーなのかによってプロジェクトで果たす役割や仕事の内容が変わってくるため、人によって解釈が変わらないよう明確にしておく必要があります。
また、体制図で指揮命令系統を明確にしておけば、誰から作業指示を受け、誰に進捗を報告するかが明確になります。
体制図が必要な理由
プロジェクトを進めるうえでは、さまざまなリスクを考慮する必要があります。
例えば、進捗遅れや品質の問題が発生していないか、予兆を見逃さないように常に管理をしておくのが重要で、そのためには進捗や品質を管理するための体制が必要です。
そして、誰が管理の役割を担うかを明確にしておくためには体制図が欠かせません。
また、指示が正しく伝わらず、必要なタスクが実施されないといったリスクを防ぐためには、指揮命令系統を明確にして複数の人から指示が出ないようにすべきでしょう。
このように、プロジェクトのリスクを軽減するためには、役割や指揮命令系統が明確になった体制図が必要です。
体制図を作成するメリット
本章では、体制図を作成することでどのようなメリットが得られるか解説します。
プロジェクトの説明がしやすい
プロジェクトを開始する際はまず、プロジェクトメンバーを招集してキックオフが開催されます。
キックオフのときにプロジェクトの体制についても説明が必要ですが、ここで体制図があるとプロジェクトの説明が容易になるでしょう。
規模の大きなプロジェクトになると、複数の業務チームが編成されることもあります。
そのため、体制図を使って説明すれば、誰がどのチームに所属してどの業務を担当するか、メンバーが各自の役割を明確に把握できます。
作業指示を受ける人、進捗を報告する人も明確になるため、その後のプロジェクト推進がやりやすくなるでしょう。
また、業務部門のユーザーに対してプロジェクトの説明をする際も、体制図があれば業務ごとの問合せや、仕様変更などの相談を誰にすれば良いかが把握してもらいやすくなります。
プロジェクトメンバーの認識が一致する
体制図があれば誰が何を担当するか、誰の指示で動くかが明確になります。
そのため、誰もが同じ認識を持ってプロジェクトを進められるでしょう。
しかし、もし体制図が共有されていなかったらどうでしょうか。
キックオフのときには口頭で体制が説明され、一応は役割や指揮命令系統を理解しますが、体制図として明示されていないとプロジェクトを進めているうちに認識がずれていく恐れがあります。
いつの間にかメンバーによって作業範囲の認識が異なっていたり、作業指示を受ける相手が複数になっていたり、プロジェクトの推進に混乱をきたす可能性が高いでしょう。
体制図を全員で共有し、いつも参照できる状態になっていることで、常にプロジェクトメンバーの認識が一致して無用な混乱を避けられます。
指揮命令系統が統一できる
プロジェクトの規模が大きくなると多くのチームが編成されます。
すると、多くのチームを管理するために管理層の階層が深くなり、体制が複雑になりがちです。
このような状況では指揮命令系統を明確に定義して統一しておくのが重要です。
なぜなら、指揮命令系統が明確になっていないと、メンバーの認識が徐々に曖昧になっていくからです。
体制図を正しく作成しておけば指揮命令系統が統一でき、プロジェクトの推進がスムーズになるでしょう。
プロジェクトのリスクを軽減できる
プロジェクトを進めていくうえでは、さまざまなリスクがあります。
進捗が遅延する、作業指示が正しく伝わらない、担当が不明確で放置されたタスクがある、などです。
体制図を正しく作成していれば、役割や指揮命令系統が明確になります。
そうすると、プロジェクトで発生しがちなリスクを軽減できる可能性が高くなるでしょう。
プロジェクト体制図に記載する役割
一般的にプロジェクト体制図に記載される役割には、次のようなものがあります。
- プロジェクトオーナー
- プロジェクトマネージャー
- チームリーダー
- 開発担当者
それぞれの役割を見ておきましょう。
プロジェクトオーナー
体制図の階層で一番上に書かれるのがプロジェクトオーナーです。
プロジェクトオーナーは、プロジェクトの最終意思決定を行う責任者の役割を担います。
システムの投資責任も負うことになるため、多くの場合、役員や上級管理職が任命されます。
プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネージャーは、プロジェクトオーナーのもと、プロジェクトの実行責任を負う立場です。
プロジェクト計画を作成し、予算やスケジュール、要員計画を立案してプロジェクトを立ち上げます。
体制図を作成するのも、もちろんプロジェクトマネージャーの重要な仕事のひとつです。
プロジェクトを開始したあとは、進捗や品質、課題、リスクなどを適切に管理してプロジェクトの成功を目指します。
プロジェクトマネージャーの主な業務は次の通りです。
- プロジェクト計画の作成とプロジェクト立ち上げ
- プロジェクト全体の状況把握
- プロジェクトオーナーへの状況報告と意思決定の相談
- チームリーダーから上がってくる情報のとりまとめ
チームリーダー
プロジェクトの規模が大きくなると、複数のチームが編成されます。
チームリーダーは、編成された各チームのリーダーで、プロジェクトマネージャーの下に配置されます。
チームの編成は企業や案件の内容などによって変わりますが、業務ごとにチームを分けたり、開発で担当する技術ごとにチームを分けたりすることが多いようです。
例えば業務別チームであれば、受注出荷チーム、配送チーム、在庫管理チーム、売上管理チームなどのチームが編成され、各業務チームのリーダーが配置されます。
チームリーダーの主な業務は次の通りです。
- チームメンバーのタスク割り当て
- 自身のチームが担当する業務の進捗や課題管理
- プロジェクトマネージャーへの状況報告
- チームメンバーとの情報共有
開発担当者
各チームのリーダーの下には、実際に開発を担当する技術者が配置されます。
担当する技術者は主に、システムエンジニア、プログラマー、デザイナーです。
システムエンジニア
システムエンジニアは、業務部門の担当者などから要件をヒアリングし、システムの要件定義を担当します。
また、要件をシステムとして実現するための設計もシステムエンジニアの担当です。
さらに、プログラマーが作成したプログラムの結合テストやシステムテストの設計、実施も担当します。
プログラマー
システムエンジニアが設計工程で作成した設計書をもとに、プログラムを作成するのがプログラマーの担当です。
プログラマーは作成したプログラムの単体テストも実施します。
また、システムエンジニアのサポートとして、結合テストやシステムテストを担当することもあります。
デザイナー
開発するシステムによりますが、システムを操作する画面を開発する場合はUIの構築をデザイナーが担当する場合があります。
デザイナーは、システムエンジニアが作成した要件定義書や設計書をもとにUIの設計を行い、画面のUIを作成します。
また、テストではユーザーのフィードバックを反映してUIのチューニングを行います。
体制図を作成するポイント
正しく体制図を作成するためには、下記のポイントを意識しておくべきです。
- プロジェクトに必要な役割を定義する
- 曖昧な表現を避けて役割を明確にする
- 指揮命令系統を一本化する
本章では、体制図を作成する上で意識しておきたいポイントを解説します。
プロジェクトに必要な役割を定義する
プロジェクトの規模や性質によって、体制図は変わります。
なぜなら、プロジェクトによって必要とされる役割が変わるからです。
したがって、常に一律で機械的に、同じような体制図を作成すれば良いわけではありません。
体制図を作成する前に、まずはプロジェクトに必要な役割を洗い出しましょう。
大規模なプロジェクトであればチーム数が増えるため、チームの数だけチームリーダーも増えるでしょう。
プロジェクトマネージャーひとりではプロジェクトを遂行できないため、PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィサー)を数名任命してプロジェクトマネジメントチームを編成するケースも出てきます。
あるいは、新しい技術を利用した開発を進めるために、技術支援チームを置かなければならないことも考えられます。
逆に、プロジェクトが小規模だとコストをあまりかけられないため、思い切って体制を縮小することも必要でしょう。
このように、プロジェクトの規模や性質によって必要な体制は変わるため、体制図を作る前にまずは、必要な役割を洗い出しておくのがおすすめです。
曖昧な表現を避けて役割を明確にする
体制図を作成する目的のひとつは役割を明確に定義することです。
したがって、表現する役割が明確になるように曖昧な表現は避けるべきでしょう。
避けるべき表現方法には、例えば次のようなことが挙げられます。
- 異なる役割が同じ階層に並べられている
- 似たような名称の役割が複数あって役割がはっきりしない
- 体制が省略されすぎて異なる役割があるのに統合されてしまっている
同じ階層に異なる役割を並べる場合や、似たような名称の役割がある場合は簡単にでも補足説明をつけるべきでしょう。
簡単な補足で説明しきれない場合は体制図と別に、役割分担表を準備するのがおすすめです。
役割分担表とは、役割ごとに担当する仕事内容を定義したものです。
また、体制を省略する場合であっても、異なる役割が含まれる部分については省略してしまわず、きちんと分けて記載するのが良いでしょう。
指揮命令系統を一本化する
指揮命令系統を明確にするのも、体制図の大きな目的のひとつです。
したがって、指揮命令系統が曖昧に見える線の引き方は避けましょう。
体制図は通常、ひとつの箱に役割(役職)を記載し、複数の箱を線でつなぐことによって指揮命令系統を表現します。
指揮命令系統を曖昧に見せないためには、次のような点に注意しましょう。
- 線や矢印は必ず上から下へ向かって引き、逆の流れを作らない
- 複数の線が合流するような書き方にしない
- 横から出たり入ったりするような線は引かない
- 無関係な線を交差させたり重ねたりしない
線や矢印の向きが統一されていなかったり、線が交差したりすると、役割間の関係が理解しづらく、誤解されかねません。
また、複数の線が合流していると、指揮命令系統が複数あることになるため、実際にこのような線にしたがって運用すると指揮命令系統が混乱します。
このような誤解されやすい表現はなるべく避け、統一感のあるシンプルな図を目指しましょう。
適切な体制図を作成してスムーズなプロジェクト推進を
プロジェクトの計画段階で適切な体制図が準備できると、プロジェクトの推進がスムーズになり、混乱するリスクを避けられます。
体制図の大きな目的は、プロジェクトメンバーの役割を明確に定義し、指揮命令系統を明確にすることです。
したがって、曖昧な表現を避け、目的を果たせるようシンプルで明確な表現を心がけましょう。
本記事を参考に、ポイントを押さえた適切な体制図を作成し、スムーズなプロジェクトの推進を目指してください。