R&Dエンジニアとは|必要なスキルや人材獲得するコツを徹底解説
研究開発を検討しているなかで、R&Dという言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。
R&Dは事業開発における重要な役割であり、優秀なエンジニアを採用することで新しい技術や価値を企業に付与できます。
自社の技術革新・DX化を促進させたい企業は、R&Dエンジニアを採用するメリットとデメリットを確認しておきましょう。
本記事では、R&Dエンジニアとはどのような職種なのか詳しく解説します。
R&Dエンジニアに必要なスキルや、採用するメリットや注意点をあわせて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
R&Dエンジニアとは
R&Dは「Research and Development」の略称で、「研究開発」の意味を持ちます。
つまりR&Dエンジニアとは、新技術の開発や既存技術の改良を行う職種のことです。
企業のDX化や新事業・サービスの開発を検討している過程で、「R&Dエンジニア」という言葉を耳にした方もいるでしょう。
R&Dエンジニアについて理解を深めるためにも、次のポイントを確認しておいてください。
- R&Dの歴史
- R&Dの種類
- R&Dエンジニアが必要な業界
それぞれのポイントを確認して、R&Dエンジニアの採用を検討しましょう。
R&Dの歴史
研究開発自体は古くから進められてきましたが、企業や国が研究開発に注力し始めたのは、第一次世界大戦以降と言われています。
多くの先進国における大企業が、研究開発を行う研究所を設置し、戦争とともに技術を向上させました。
戦争における軍事的な研究開発だけでなく、民事的な技術向上に力が入れられ、製造業における飛躍的な技術革新が行われました。
なお、日本でR&Dが注目された時期は1980年代であり、1980年代後半から1990年代初頭にかけてのバブル期の少し前にあたります。
製造業を中心に研究所が設置され始めましたが、研究から開発までを自社内で完結してしまうため、技術開発が閉鎖的になる課題が生じました。
閉鎖的な研究開発における課題を解消するために、2010年代ごろから企業の一部門として研究所が設置され、オープンイノベーションによるR&Dが主流になりました。
オープンイノベーションとは、社内外を問わずにさまざまな技術やノウハウを活用し、自社内で開発した技術・イノベーションを社内外に展開することです。
現在では、各研究所で開発された技術が連携され、競合と切磋琢磨しながら技術を向上させるR&Dの取り組みが拡大しています。
R&Dの種類
R&Dの種類は、次の通りです。
- 基礎研究
- 応用研究
- 開発研究
それぞれの違いを確認して、R&Dの役割を理解しましょう。
基礎研究
R&Dの一種として、基礎研究があります。
基礎研究とは、新たな技術を発見し将来の知的財産として蓄積することです。
基礎研究の成果が、直接利益や製品へ結びつかず、企業のサービス開発へ直結する領域ではありません。
しかしすべての研究において基礎となる領域であり、5年・10年後の将来を見越して、技術を開発します。
応用研究
応用研究とは、基礎研究で発見・立証された技術を応用して、実用化に向けて研究することです。
特定の目標に向けて実用化を目指し、基礎研究を製品化させるために研究を深堀します。
またすでに実用化されている技術に関しては、他の使い道がないかを模索し、新しい技術開発へとつなげます。
開発研究
開発研究は、基礎研究や応用研究で得た技術を複数組み合わせて、新たな技術・サービスを生み出すことです。
新しい材料や装置を導入したり、既存技術を改良したりして、より利便性が高くニーズに沿った技術を開発します。
開発研究は、既存システムの改良や新サービスの開発などを目的とした、R&Dの一種です。
R&Dエンジニアが必要な業界
R&Dエンジニアが必要な業界は、次の通りです。
- 製造業界
- IT業界
研究開発はさまざまな分野で活用されることが多いですが、主に上記の業界でR&Dの部署が設けられています。
R&Dエンジニアの導入を検討している企業は、自社が上記の業界に含まれているか確認しておきましょう。
製造業界
製造業界では、R&Dを活用した新商品の開発が行われています。
製造業界では、自動運転や人工知能・新素材の開発など、R&Dによる技術・サービスの開発が欠かせません。
また製造業界におけるR&Dは、新商品の開発だけでなく既存技術を組み合わせ、商品を改良することも目的の一つです。
製造業界においてどこかの企業が新技術を開発した後に、競合他社が同様の技術を用いた新商品を開発するケースは珍しくありません。
IT業界
IT業界は、パソコンなどのハードウェアやプログラミング言語など、新技術をR&Dによって生み出しています。
既存のIT技術やサービスなどを活用して、新サービスを生み出すために、R&Dエンジニアによる技術開発が必要です。
IT業界では製造業界より、多種多様な技術・サービスを活用して新技術を開発するため、R&Dエンジニアにおける役割は重要です。
R&Dエンジニアの役割と目的
R&Dエンジニアを採用する前に、「どのような効果を企業に付与するのか」役割と目的を確認しておきましょう。
R&Dエンジニアの役割と目的は、次の通りです。
R&Dエンジニアの役割 | 新しい技術や価値を企業に付与する |
R&Dエンジニアの目的 | 事業開発により企業を発展させる |
役割と目的をそれぞれ確認して、自社におけるR&Dエンジニアの必要性を検討しましょう。
【役割】新しい技術や価値を企業に付与する
R&Dエンジニアの役割は、新しい技術や価値を企業に付与することです。
研究開発によって既存技術を改良し、新技術を開発すれば、競合他社にはないアドバンテージを自社に付与できます。
研究によって得られた理論や方法・知見をもとに、新しい技術やサービスを生み出す役割を担います。
そのためR&Dエンジニアは、目先の結果を求めずに、根気強く研究に取り組む探求心と粘り強さが必要です。
【目的】事業開発により企業を発展させる
R&Dエンジニアの目的は、事業開発によって企業を発展させることです。
新しい技術やサービスを生み出すことが目的ではなく、事業開発を通して企業のサービスや商品の質を向上させる目的で、研究開発に取り組みます。
そのためR&Dエンジニアは、事業開発に留まらず商品やサービスなど実用化できる段階まで、技術を昇華させる必要があります。
R&Dエンジニアに必要なスキル
R&Dエンジニアに必要なスキルは、次の通りです。
- データエンジニアの基礎力
- 先端技術に関する知見
- 英語力
R&Dエンジニアの採用を検討している企業は、上記のスキルを兼ね備えた優秀な人材を探しましょう。
データエンジニアの基礎力
R&Dエンジニアには、データエンジニアの基礎力が求められます。
データエンジニアには、データベース管理(SQLやNoSQL)、データパイプラインの構築、分散ストレージシステムの使用といった能力が不可欠です。
研究開発においては、このようにデータを適切に扱うスキルが欠かせません。
また、収集・処理をしたデータを効率的に解析する、データ解析ツールの使用経験も重視しましょう。
さらに、これらを元にシステム開発を行うためのプログラミングスキル(Python, Java, Scala)が必要です。基本的な技術はもちろん、プログラミング言語の開発やAIの使用など、高度な専門スキルを持っていることがR&Dにおいては重要といえます。
先端技術に関する知見
R&Dエンジニアには、最新技術に関する知見が必要です。
R&Dの分野において、AIやIoTなどの先端技術を活用する企業が増えており、次世代の新技術を開発するためには競合に負けない最新技術に関する知見が必要です。
R&Dエンジニアには、過去の技術を用いた研究開発だけでなく、次世代の先端技術を活用できる知識とスキルが求められます。
新しい技術を学ぶことに抵抗がない、好奇心旺盛で勉強家な人材がR&Dエンジニアに向いています。
英語力
R&Dエンジニアには、システム開発のスキルや先端技術に関する知見だけでなく、高い英語力が必要です。
例えば、日本国内では普及していない技術でも、海外のサイトや論文から情報を確認できる可能性があります。
海外で開発された先端技術であれば、論文を読み解いて自社技術へ活用するために、高い英語力が必要です。
また海外にR&Dの研究所を設置するケースも多く、プロジェクトによっては英語圏のスタッフとコミュニケーションを取りながら仕事を進めることも珍しくありません。
R&Dエンジニアには、読み書きだけでなくリスニングやスピーキング力が求められるため、TOEICのスコアなどを参考に一定の英語力を兼ね備えた人材を募集しましょう。
R&Dエンジニアを採用するメリット
R&Dエンジニアを採用するメリットは、次の通りです。
- 技術資産を蓄積できる
- 製品開発スピードを向上できる
- 企業競争力を強化できる
それぞれのメリットから、R&Dエンジニアの採用活動に注力するべき理由を確認しましょう。
技術資産を蓄積できる
R&Dエンジニアを採用するメリットは、技術資産を蓄積できることです。
従来の設備や工場など有形固定資産における資産形成だけでなく、新技術や特許技術などの技術資産を蓄積することで、企業価値を高められます。
特にR&Dエンジニアが必要になる製造業界やIT業界においては、競合他社と差別化できる技術資産は重要です。
競合にはない付加価値を商品やサービスに付与することで、自社にしかない強みを市場にアピールできます。
製品開発スピードを向上できる
R&Dエンジニアを採用するメリットは、製品開発スピードを向上できることです。
R&Dの部署を設けることで、専門分野におけるスペシャリストが集まり、よりスピーディーな製品開発を実現できます。
R&Dによって技術資産が蓄積され、より高精度な技術へとアップデートされることで、製品開発や既存技術の改良にかかるスピードを向上できます。
特許を申請するような技術であれば、競合を出し抜くスピーディーな研究開発が求められるため、R&Dエンジニアによる製品開発スピードの向上が重要です。
企業競争力を強化できる
R&Dエンジニアを採用すれば、企業競争力の強化ができます。
競合他社にはない技術資産を蓄積することで、自社の優位性を確立することが可能です。
例えば、自社にしかない特許技術を用いた製品・サービスは、競合にはない付加価値を提供し、企業競争を勝ち抜く武器として扱えます。
R&Dエンジニアを採用して技術資産を蓄積すれば、競合他社と差別化し優位性を確立できるため、企業の業績向上に貢献できます。
優秀なR&Dエンジニアを獲得する方法
R&Dエンジニアの必要性と採用するメリットを確認した後は、優秀なエンジニアを獲得するため採用計画を立てましょう。
優秀なR&Dエンジニアを獲得する方法は、次の通りです。
- 柔軟な働き方ができる体制を整える
- 評価制度を確立する
- 採用の幅を広げる
- 成長できる環境を用意する
- 必要なスキルや採用する目的を明確化する
それぞれの方法を押さえておくことで、優秀なR&Dエンジニアを獲得できます。
技術資産を蓄積し企業競争力を向上させるために、優秀なR&Dエンジニアを獲得する方法を実践しましょう。
柔軟な働き方ができる体制を整える
優秀なR&Dエンジニアを獲得するために、柔軟な働き方ができる体制を整えることが大切です。
例えばリモートワークやフレックスタイム制を導入することで、遠方に住む人材や育児や介護に追われてフルタイムで働くことが難しい人材も、採用領域へ組み込めます。
勤務時間や場所を縛らずに柔軟な働き方ができる体制を整えることで、採用の幅を広げて優秀な人材からの応募率を向上できます。
評価制度を確立する
優秀なR&Dエンジニアを獲得する方法として、評価制度を確立することが大切です。
技術職であるエンジニアにとって、自身のスキルや技術を適切に評価されない職場は、やりがいを感じられず離職へとつながります。
優秀なR&Dエンジニアを獲得するためには、技術やスキルを適切に評価する体制が必要です。
給与面や役職などで成果を評価する制度を確立することで、優秀なエンジニアからの応募率を向上できます。
採用の幅を広げる
優秀なエンジニアがなかなか見つからない場合は、採用の幅を広げてください。
年齢層や雇用形態など制限を設けず、優秀な人材であれば受け入れる体制を整えることで、R&Dエンジニアの獲得につなげられます。
従来の価値観に捉われず、外国人やミドル層・業務委託など幅広く人材募集をかけることが大切です。
成長できる環境を用意する
エンジニアは常に自身のスキルや知識を向上できる職場を望むため、成長できる環境を用意することでR&Dエンジニアを獲得できます。
先端技術を学べる環境やスキルアップやキャリア形成につながる環境は、エンジニアにとって働きたい好条件の職場です。
社内に高度な技術を持ったエンジニアがいたりスキルアップできる制度が整っていたりと、成長できる環境を用意している旨を募集要項に記載して、R&Dエンジニアからの応募を集めましょう。
必要なスキルや採用する目的を明確化する
優秀なR&Dエンジニアの獲得が難航している場合は、必要なスキルや採用する目的を明確化してください。
ただ「R&Dエンジニア募集」を求人媒体に掲載しても、自社が求めるプロジェクトに不要なスキルや経歴のエンジニアから応募があっても、選考する手間や時間がかかるだけです。
「なぜR&Dエンジニアを獲得したいのか」自社の課題や目的を明確化して、「どのようなスキルを備えた人材が欲しいのか」を募集要項に明記しましょう。
必要なスキル・人物像を明確化することで、応募者とのミスマッチを防ぎ、選考フローを効率化できます。
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R&Dエンジニアを獲得する際の注意点
R&Dエンジニアを獲得する際の注意点は、次の通りです。
- 人材の確保が難しい
- 研究開発から実用化まで時間がかかる
- 開発費用などコストがかかる
それぞれの注意点を確認して、R&Dエンジニアを獲得する際の参考にしてください。
人材の確保が難しい
R&Dエンジニアを獲得する際の注意点として、人材の確保が難しいことを覚えておきましょう。
現在は少子高齢化に伴う労働人口減少により、優秀な人材の獲得が困難です。
さらにR&Dエンジニアは、システム開発のスキルや先端技術における知見、高い英語力などが求められる貴重な人材です。
ただでされ人材獲得が難しい現在の採用市場において、優秀なR&Dエンジニアを獲得することは難しく、競合より魅力的な条件を提示しなければなりません。
R&Dエンジニアが求める条件や職場環境をリサーチして、優秀な人材を獲得できる体制を整えましょう。
研究開発から実用化まで時間がかかる
R&Dエンジニアを獲得するには、研究開発から実用化まで時間がかかります。
基礎研究においては当面の実用化に向けた研究ではなく、将来に活用できる技術資産を蓄積することが目的です。
R&Dエンジニアを獲得しても、研究開発から実用化までは時間がかかるため、すぐに成果を挙げられません。
そのため直近での企業イメージアップや新商品の開発を行いたい場合は、他の施策も平行して実施しましょう。
開発費用などコストがかかる
R&Dエンジニアを獲得すると、開発費用などコストがかかるため注意しましょう。
特に基礎研究は、すぐに売上へと結びつかないため、予算を十分に確保してから取り組む必要があります。
また優秀なR&Dエンジニアを獲得するには、広告費や人件費などの採用費もかかるため、開発費用と合わせて予算を算出しておくことが大切です。
企業にとってより高い利益をもたらすために、費用対効果の高い研究分野を見極めて、開発予算を割り当てましょう。
R&Dエンジニアを採用して企業競争力を強化しよう
R&Dエンジニアを獲得すれば、企業競争力を強化して売上増加につなげられます。
製造業界やIT業界で求められるケースが多いR&Dエンジニアですが、競合他社と差別化し自社の優位性を確立するために、R&Dによる技術開発が必要です。
技術資産を蓄積し製品開発スピードを向上するために、優秀なR&Dエンジニアを獲得する体制を整えることが大切です。
リモートワークやフレックスタイム制など柔軟な働き方を採用したり、評価制度や成長できる環境を用意したりと、優秀なR&Dエンジニアの募集を集める体制を整えてください。
ただし労働人口が減少している採用市場では、優秀なR&Dエンジニアを獲得することが難しく、競合他社に負けない魅力的なアプローチが必要です。
競合にはない魅力的な条件と環境を提示して、優秀なR&Dエンジニアを獲得しましょう。