HTML/CSSコーディング規約(ガイドライン)とは?サンプルDL有り
こんにちは、Wakka Inc.ラボマネージャーの中垣です。
当社ではシステム開発だけではなく、Web制作会社さまからのご依頼でエンジニアチームの提供をすることもあるのですが、その際によくコーディング規約(ガイドライン)があれば提出してください、とご依頼を受けることがあります。
本日は、当社で利用しているHTML/CSSコーディング規約について、他企業さまでもご利用いただけるよう編集が可能なサンプルファイルの配布とともに、規約作成について解説していきます。
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コーディング規約とは何か?
コーディング規約とその意義
コーディング規約とは、制作会社内や開発者間でコードの書式や形式を統一するためのルールやガイドラインのことを指します。これは一見すると単なるスタイルに過ぎないように思えますが、実際にはプロジェクトの成功やクオリティに寄与する重要な要素です。
最も重要な効力としては、コーディング規約がコードの「一貫性」を保つことにあります。一貫性が保たれたコードは、他の開発者が読んだり理解することが容易になります。大規模なプロジェクトやチームであれば、すべての開発者が同じスタイルでコードを書くことで、互いのコードを理解しやすくなることはもちろん、コードの修正やデバッグが必要な場合に統一された規約があることで作業の効率が大幅に向上します。
また、コーディング規約は新しい開発者がプロジェクトに参加する際の敷居を下げる役割も果たします。エンジニアが既存のコードを速やかに理解し、プロジェクトによりはやく貢献できるようになります。
規約によるメリットとデメリット
コーディング規約には多くのメリットがあります。先述の通り、コードの一貫性を保つことで読みやすさやメンテナンス性が向上します。また、バグの発見と修正が容易になり、全体の開発効率が向上します。特に、規模の大きなプロジェクトや多くの開発者が関与するプロジェクトでは、コーディング規約の存在が欠かせません。
しかしながら、デメリットも存在します。例えばすべての開発者が規約に従うようにするためには、規約を学ぶ時間や労力が必要です。また、新たな規約を導入する際には、その規約が開発者にとって理解しやすいものであるか、実際のコーディング作業において適切に機能するかなどを検証する時間が必要です。
一部の開発者が規約に従わない場合には、結果的にコードの一貫性が損なわれ、規約の存在意義が失われてしまいます。こうした規約の適用と維持には、一定の管理が必要になるため、コーディング規約の導入と維持のコスト増といったところが主なデメリットになります。
しかしながらこれらのデメリットは規約を導入するメリットと比較すると小さなものとも考えることができます。良いコーディング規約は、コードの品質を向上させるのはもちろん、プロジェクトの効率と成果に確実に寄与していくためです。
優れたHTML/CSSコーディング規約の共通点
優れたHTML/CSSコーディング規約には、次のような共通点があります。
- 可読性が高い
- メンテナンスしやすい
- 一貫性がある
- トレンドに合わせている
- W3C勧告に準拠して作成している
各共通点を確認して、HTML/CSSコーディング規約の利用を検討しましょう。
可読性が高い
コーディング規約の重要な利点は、コードの可読性を向上させることです。特にHTML/CSSのように、構造やスタイルを扱う言語では、一貫したスタイルと整然としたフォーマットを設定しておくことは非常に重要です。
命名規則、インデント、空白の使用、コメントの位置などが一貫していれば、コードを初めて見た人でもその構造と目的をすぐに理解できます。これにより、新しいメンバーがプロジェクトに参加したときや、他の開発者があなたのコードをレビューするときに、効率的に作業を進めることができます。
メンテナンスしやすい
コーディング規約の設定はコードのメンテナンス性を確実に向上させます。一貫したコーディングスタイルと明確な命名規則は、バグの特定や修正を比較的容易にします。
HTML/CSSの場合、特に重要なのは要素のクラス名やID名に一貫性と意味を持たせることが重要です。規約に従った命名は、コードを修正または更新する際にどの部分が何を表しているのかをすぐに理解するのに役立ちます。
一貫性がある
ガイドラインの作成は一貫性を保つのに重要です。すべての開発者が同じスタイルと規則に従ってコードを書くと、全体のコードベースが一貫した状態を維持できます。
チーム内の一貫性は、新しいメンバーがチームに参加したときや、プロジェクトを移管する必要があるときに大きく業務効率に影響します。これらのように、HTML/CSSコーディング規約の設定は、コードの可読性とメンテナンス性を向上させ、チーム内の一貫性を保つことで、開発の効率性と品質を向上させます。
トレンドに合わせている
IT業界は年々進化を遂げており、プログラミング言語やコーディング規約のトレンドも常に変化し続けています。
トレンドを把握しなければ、技術的な遅れやユーザー体験の悪化を招く結果となり、競争力の低下につながります。
優れたHTML/CSSコーディング規約は、トレンドに沿って作成されているため、時代の変化に合わせた柔軟な対応が可能です。
W3C勧告に準拠して作成している
W3Cとは、World Wide Web技術の標準化を行っている非営利団体「World Wide Web Consortium」の略称です。
IT関連企業を中心に400近い団体が加入し、Webの標準化を進めています。
このW3Cが定めた標準規格を基に、ブラウザ側がW3C勧告に準拠しています。そのためWebサイトもW3C勧告に準拠していなければ、不具合が発生するリスクが高いです。
優れたHTML/CSSコーディング規約は、W3C勧告に準拠して作成されているため、ブラウザとの高い互換性を持ちます。
これにより、不具合の発生を防止しながら、安定したWebサイトを構築できます。
主なHTML/CSSコーディング規約
主なHTML/CSSコーディング規約は、次のとおりです。
- 命名規則
- コードフォーマット
- コメントの使用
- HTMLとCSSのセマンティックな使い方
これらの規約に準拠することで、一貫性のあるコード設定を実現し、クオリティの高い納品物を制作できます。
主なHTML/CSSコーディング規約を確認して、プロジェクトを成功させるために活用しましょう。
命名規則
HTML/CSSの命名規則は、コードの可読性とメンテナンス性に直接影響を与えます。具体的な規則はプロジェクトやチームによりますが、一般的には、クラス名やID名は意味のあるものにする、ケバブケース(kebab-case)やキャメルケース(camelCase)を用いる、モジュラーな設計(BEMなど)を採用することが一般的に推奨されています。
コードフォーマット
コードフォーマットは、コードが一貫した見た目を保つことを保証します。インデントの種類(タブまたはスペース)と数、空白の使用ルール、ブラケットの位置、行の長さなどを定義します。これらのルールに従うことで、コードがきれいに整形され、読みやすくなります。
コメントの使用
良いコメントはコードの理解を助けます。しかし、コメントは適切に管理されなければなりません。必要以上にコメントを書くと、コードが雑然とし、読みにくくなります。一方、必要なところにコメントがないと、コードの目的が理解しにくくなる可能性があります。コメントの規則は、何をコメントすべきか(関数、クラス、複雑なロジック等)、コメントの形式(行コメント、ブロックコメント等)、そしてコメントの内容(必要な情報を含む、明確で簡潔な言葉で書く等)を指定することが重要です。
HTMLとCSSのセマンティックな使い方
HTMLとCSSのセマンティック(意味論的)な使用は、アクセシビリティを向上させ、SEOを強化し、メンテナンスを容易にします。具体的には、HTML5のセマンティックな要素(<header>、<footer>、<article>など)を適切に使用する、意味のある順序でコードを配置する、視覚的なプレゼンテーションに依存せずにコンテンツを理解できるようにする、などが含まれます。
これらの基本的なHTML/CSSコーディング規約を適用することで、コードの一貫性と可読性が向上し、メンテナンスが容易になります。
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よく使用されるHTML/CSSコーディング規約
HTML/CSSコーディング規約は、さまざまな企業が提供しているため、どの規約を使用するべきか悩んでしまう方もいるのではないでしょうか。
数多くある規約の中でも、よく使用される有名なHTML/CSSコーディング規約は次のとおりです。
- GoogleのHTML/CSSスタイルガイド
- AirbnbのCSS/Sassガイドライン
- GitHubのコーディング規約
- Javascriptのコーディング規約
各規約の詳細を確認して、HTML/CSSコーディング規約を利用する際の参考にしてください。
GoogleのHTML/CSSスタイルガイド
GoogleのHTML/CSSスタイルガイドは、Web業界で広く参照される規約の一つです。Google自体が大規模なWeb開発を行っているため、その経験と知識をまとめたこのスタイルガイドは非常に信頼性が高いとされています。命名規則、フォーマット、コメントの使用、セマンティックなマークアップなど、多くの重要なトピックがカバーされています。
AirbnbのCSS/Sassガイドライン
AirbnbのCSS/Sassガイドラインは、CSSとSassの書き方に焦点を当てた規約で、業界内で非常に評価が高いです。これは、AirbnbがWeb開発において一貫性のあるスタイルと高品質なコードを維持するための具体的なルールとベストプラクティスを提供しているからです。特に、Sassの使用において詳細なガイドラインを提供している点が大きな特徴です。
GitHubのコーディング規約
GitHubもまた、HTML/CSSガイドラインを公開しています。これは、GitHub自身が使用する規約であり、その内容を外部の開発者と共有する目的で作成されました。GoogleやAirbnbのガイドラインと同様に、GitHubのガイドラインも命名規則、フォーマット、コメントの使用、セマンティックなマークアップなど、主要なトピックを網羅しています。
これらの規約はそれぞれ異なる焦点を持ちながらも、全体的に一貫性のあるコーディングスタイルと高品質なコードの維持を強調しています。これらのガイドラインを参照することで、自社のプロジェクトに最適なコーディング規約を設定する助けにすることできます。
Javascriptのコーディング規約
Javascriptのコーディング規約は、変数宣言や関数定義、文末のセミコロンなど、一般的なJavaScriptのベストプラクティスを定めた規約です。
他にもインデントやスペース、文字列リテラル、中括弧のスタイルなど、主要なコーディング規約を網羅しています。
Reactのベストプラクティスとコンポーネントベース、Reactフックのベストプラクティスをサポートする規約も備わっているため、Reactを活用した開発に効果的です。
また、Prettierなどを使用してコードフォーマットを一貫させられるため、開発業務を効率化できます。
HTML/CSSコーディング規約の実践
前述の通り、すでに数多くの優れたコーディング規約が存在しますが、自社のプロジェクトやチームに合わせた規約を作成することが非常に重要です。これは、プロジェクトやチームの具体的な要件、作業フロー、技術スタックによって最適な規約が変わってしまうためです。
自社の規約を作るときは、まず既存の規約やガイドを参照し、それらから適用可能な内容を取り入れることが非常に有効です。その上で自身のニーズに合わせて規約をカスタマイズし、必要に応じて新しいルールを追加していきましょう。
チームに新たな規約を導入する方法
新たなコーディング規約をチームに導入するには、次のようなステップを踏むと良いでしょう。
- 規約の作成
- 規約の共有
- 実装
- レビューと改善
新たなコーディング規約の導入時は、まず具体的な要件に基づいて規約を作成またはカスタマイズします。関係者が意見を出し合い、合意できる形にすることが大切です。
次に作成した規約をチームや社全体と共有しましょう。規約を共有することで、メンバーが新しい規約を理解し、それに準拠するための準備を始められます。
規約を共有した後は、チーム全体が新しい規約を利用してコーディングを実装します。新たな規約の導入後、チーム内で定期的にレビューを行い、必要に応じて規約を改善しましょう。
規約は固定的なものではなく、トレンドやプロジェクト、チームの進化に合わせて変わるべきです。定期的に評価と改善を繰り返して、トレンドやプロジェクトに適した内容へと見直しましょう。
このように規約を構築し、それを効果的にチームに導入することで、より一貫性のあるコードベースと高品質な開発を実現することができます。
ツールを使ったコーディング規約の適用
HTML/CSSのコーディング規約を適用していくには、フォーマッターとリンターを利用しましょう。
これらのツールは、自動的にコードを整形したり、規約違反を検出したりします。
フォーマッターは、定義したルールに従ってコードのスタイルを自動的に整えます。たとえば、インデントの深さや種類、行の長さ、ブラケットの位置などを調整します。これにより、コードの見た目が一貫し、読みやすくなります。
一方、リンターは、コードの品質と潜在的なエラーをチェックします。命名規則や未使用の変数、未定義の変数、潜在的なバグなどを検出します。これにより、エラーを事前に防ぎ、コーディング規約を強制することが可能になります。
HTML/CSSコーディング規約の活用
HTML/CSSコーディング規約を活用する際は、次のポイントを確認しておいてください。
- 規約を適用しない例外事例
- 規約がチームの生産性に与える影響
- HTML/CSSコーディング規約サンプルのダウンロードリンク
上記のポイントを押さえて、プロジェクトを円滑
規約を適用しない例外事例
コーディング規約は一般的には厳守すべきですが、場合によっては規約を変更することが適切な場合もあります。このような例外事例は当然ながら理由が必要です。
一例としては、特定のブラウザや環境でのみ問題が発生し、その問題を解決するためには規約に反するコードを書く必要がある場合などが考えられます。このようなケースは多々発生することが考えられるため、チームでもこうした例外処理についてのルールを決めておくことを推奨しています。コード中に該当箇所とその理由を明記するコメントを書くなどといった対応がそうしたルールにあたります。
規約がチームの生産性に与える影響
HTML/CSSのコーディング規約は、チームの生産性にある程度影響を与えます。これまでお伝えしてきた通り規約に沿ったコーディングスタイルは、新しいメンバーがプロジェクトに参加しやすくすると同時に、既存のメンバーが他者のコードを理解しやすくなります。また、規約に従ったコードはバグを見つけやすく、デバッグも容易になります。
また、ツールを活用することで、規約の遵守を自動化し、開発者がより複雑な問題に集中できるようになります。これは生産性を向上させるだけでなく、開発者の満足度を高めることにも寄与します。
HTML/CSSのコーディング規約をしっかりと準備しておくことは、品質の高いWeb制作を実現するための重要な道具であるといえます。
HTML/CSSコーディング規約サンプルのダウンロードリンク
この記事で紹介したHTML/CSSコーディング規約の具体的な適用を後押しするために、当社で利用しているHTML/CSSのコーディングガイドラインサンプルを無料配布しています。編集可能なファイルでダウンロードが可能なので、ぜひ自社のルールや体制にあわせてオリジナルのコーディング規約の参考としてご利用ください。
HTML/CSSコーディング規約を活用してプロジェクトを成功へ導こう
HTML/CSSコーディング規約は、コードの書式や形式を統一するためのルールやガイドラインです。
可読性が高くメンテナンス性を担保したコード生成ができ、チーム内の一貫性を確保するのに役立ちます。
日々成長するプログラミング言語やIT技術のトレンドに合わせた規約を活用すれば、新しい技術に対応した開発が実現できます。
優れたHTML/CSSコーディング規約は、W3C勧告に準拠して作成しており、ブラウザとの互換性が高いです。
プロジェクトやチームの具体的な要件・作業フロー・技術スタックによって最適な規約は異なるため、自社に適した仕様へカスタマイズしましょう。
必要に応じて新しいルールを追加することで、トレンドやニーズに合わせた柔軟な開発を進められます。
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このサンプルはWeb制作用のコーディングガイドラインとして、自由に編集してご利用いただけます。各社のルールにあわせて編集してご利用ください。
以下のような方にオススメです。
・HTML/CSSのコーディングガイドラインを手間なく作りたい方
・既存のコーディングガイドラインをブラッシュアップしたい方
WebメディアでPGから管理職まで幅広く経験し、Wakka Inc.に参画。Wakka Inc.のオフショア開発拠点でラボマネジャーを担当し、2013年よりベトナムホーチミンシティに駐在中。最近では自粛生活のなかでベトナム語の勉強にハマっています。