ECサイトと実店舗の連携手順|成功事例や注意点を解説
こんにちは。Wakka Inc.のWebディレクターの安藤です。
近年では、ECサイトと実店舗を連携して売上を伸ばしている事業者が増えています。
しかし「連携のやり方がわからない」と、お悩みの方も多いのではないでしょうか。
そこで当記事では、ECサイトと実店舗を連携する方法や成功事例・注意点のほか、オムニチャネル化してさらなる収益を上げる方法まで解説します。
ECサイトと実店舗の連携を検討している事業者の方は、ぜひ最後までお読みください。
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ECサイトと実店舗それぞれの特徴とは
連携を検討する前に、ECサイトと実店舗について、それぞれの特徴を整理しましょう。
ECサイトと実店舗を項目別に比較して、表形式にまとめました。
比較項目 | ECサイト | 実店舗 |
営業時間 | 休日も無く24時間いつでも購入可能 | 営業日かつ営業時間に来店できる客に限り購入可能 ※ 機会損失の恐れがある |
商圏 | インターネットにつながる全世界が対象 | 店舗に来店が可能な範囲に限られる |
店舗費用・運営費 | 低コスト:無料のECを利用すれば費用をかけずに出店も可能 | 高コスト:店舗物件の家賃・人件費・光熱費などの維持管理費が発生(固定費) |
集客 | リスティング・SNSなどのオンライン広告が中心 ※ SEOなどの専門的なスキルを必要とする | 基本はチラシやDM、ブログやSNSも利用するがターゲットは近隣の住民が中心 |
接客・購入方法 | 商品写真や説明・口コミを参考にする | 実物を見て試着可能・スタッフのアドバイスがもらえる |
配送方法 | 送料と配送の待ち時間が発生する | 現地渡しのため配送は基本的に不要 |
利益率 | 一度構築してしまえば固定費が抑えられる分高め | 店舗の賃貸料などの固定費が発生するため利益率は低い |
場所や時間を問わずに営業できる点は、ECサイトの大きなメリットです。
対して実店舗では、営業時間が限られるため機会損失の恐れがあります。
ただし、ECサイトの集客には専門的なスキルが必要となるため、24時間営業できるからといって簡単に収益が上がるわけではありません。
出店から運営にかかる費用や利益率に関しても、ECサイトの方が実店舗に比べると有利といえます。
ECサイトの方が実店舗よりも固定費が安いからです。
実店舗の大きなメリットは、商品の魅力が伝わりやすいことでしょう。
実際に商品を見て触って、試着できるからです。
一方ECサイトでは、写真や口コミで判断するしかなく「思っていた商品と違った」ということも少なくありません。
ECサイトと実店舗を連携すると実現できる5つのこと
ECサイトと実店舗が持つ特徴については、理解していただけたでしょうか。
ここでは、ECサイトと実店舗を連携すると実現できる5つのことを紹介します。
- ECサイトで注文した商品を実店舗で受け取る
- 在庫管理が最適化される
- 相互で顧客を誘導可能
- 実店舗で商品の試着が可能
- 顧客データの収集や分析が可能
1つずつ説明します。
ECサイトで注文した商品を実店舗で受け取る
1つ目は、ECサイトで注文した商品を実店舗で受け取れることです。
ECサイトで購入した商品は、通常は自宅で受け取りますが、以下のような不都合を感じる場合もあります。
- 配送料がかかる
- 不在時には商品が受け取れない
ECサイトの商品の受取方法に「自宅配送」だけでなく「店舗受取」を追加することで、商品の受け取りを自宅ではなく実店舗で受け取れるようになります。
顧客がいつでもどこでも買い物できるECサイトのメリットと、自分のタイミングで商品を持ち帰れる実店舗のメリット、その両方の恩恵を受けられるのです。
在庫管理が最適化される
2つ目は、在庫管理が最適化されることです。
ECサイトと実店舗をシステム連携するためには、在庫情報の一元管理が必要になります。
ECサイトと実店舗で別々に在庫管理した場合、ECサイトで在庫切れになったときに実店舗に在庫があったとしても、ECサイト側で新規発注する流れになるでしょう。
これは、在庫管理の観点からすると、非常に無駄です。
システム連携によって在庫管理が一元化されると、ECサイトの在庫切れを実店舗分で補うことも容易になります。
在庫ロスや販売機会損失を減らせますので、店全体としての利益向上にもつながるでしょう。
相互で顧客を誘導可能
3つ目は、「ECサイトから実店舗への誘導」と「実店舗からECサイトへの誘導」が可能になることです。
まずは、ECサイトから実店舗への誘導です。
ECサイトからクーポンやセールの案内メールを送信することで、顧客を実店舗へ誘導します。
実際に店舗に足を運ぶと、お目当て以外の商品の購入にもつながるため、非常に効果的です。
次はその逆で、実店舗からECサイトへの誘導です。
具体的には、米・シャンプー・サプリメントなどの定期的な購入が期待できる商品を、ECサイトで受けつけるように案内します。
こちらも、申し込みにつながれば長期的な購入が確約されるため、有効です。
ECサイトでも実店舗でも購入できることを顧客に案内できる体制を目指しましょう。
実店舗で商品の試着が可能
4つ目は、ECサイトで見つけた商品の実店舗での試着が可能になることです。
顧客が商品を実際に手に取って確認することで、商品の魅力もより伝わりやすく、ECサイトでよくある「サイズの失敗」も回避できます。
また、ECサイトで購入した商品の返品や交換を実店舗で行うことも可能です。
これによって顧客側は、返品や交換の際に発生する郵送のストレスからも解放されます。
ECサイトのデメリットである「商品を試せない」を、実店舗の「商品を試せる・その場で返品や交換できる」メリットで補うことに成功しているのです。
顧客データの収集や分析が可能
5つ目は、顧客データの収集や分析が可能になることです。
顧客が実店舗で購入した商品や、実店舗での受取サービスの利用状況などを分析すると、顧客のニーズが見えてきます。
この分析結果を利用して顧客ごとにおすすめの商品を案内したり、季節のニーズに合わせたメルマガ配信を行ったりと、マーケティングの幅が広がるでしょう。
また顧客自身も、実店舗で購入した商品の履歴をECサイト側で確認できるようになると、再購入の促進にもつながります。
システム連携することで得られる大きなメリットです。
ECサイトと実店舗を連携する手順
では、ECサイトと実店舗は、どのような流れで連携すればよいのでしょうか。
ここでは、以下に示す5つのステップで連携の手順を解説します。
- 最終的な成果物と成果指標の設定
- 自社戦略におけるカスタマージャーニーの策定
- 組織の体制を整備
- 在庫・顧客データの統合
- PDCAを回す
1つずつ詳細を説明するので、ご覧ください。
1.最終的な成果物と成果指標の設定
まずは、最終的な成果物と成果指標を設定しましょう。
現在、自社を取り巻いている環境や競合の調査を行います。
そのうえで、自社が最終的にどのような成果を目指しているかを「いつ・誰が・何を・どのように」を意識した内容で設定しましょう。
ECサイトと実店舗の連携は、会社全体で行う大規模なプロジェクトで複雑になりやすいため、具体的な行動がわかるレベルにまで落とし込む必要があります。
この後の工程の進捗にも影響する内容ですので、しっかり設定しましょう。
2.自社戦略におけるカスタマージャーニーの策定
次は、自社戦略におけるカスタマージャーニーの策定を行います。
「カスタマージャーニー」とは、顧客が商品やサービスに出会ってから、購入に至るまでのプロセスのことです。
自社の顧客を検討するさいには「ペルソナ」と呼ばれる具体的な顧客像を設定します。
ペルソナのニーズをしっかり分析して、具体的にどのような経緯で商品の購入に至るのかを明確にしましょう。
ペルソナにとって最適なアプローチになるように、カスタマージャーニーを策定することが重要です。
3.組織の体制を整備
成果指標やカスタマージャーニーが定まったら、組織の体制を整備しましょう。
詳しくは後述しますが、ECサイトと実店舗を連携すると、在庫や顧客データを一元管理することになります。
個別に管理されていたデータを1カ所で管理するため、新たな管理者を置いた方がうまくいく場合もあるでしょう。
また、システム化するときに重要なのは、情報の共有です。
情報の共有がうまくいかないままで連携を推し進めてしまうと、運用を開始したあとで各所からの苦情や、運用がうまく回らないなどの問題につながります。
ECサイトと実店舗を連携する前に、組織全体に対して、しっかり認識の共有を行いましょう。
4.在庫・顧客データの統合
ここまでくると、いよいよ連携に向けた作業が開始されます。
具体的には、在庫と顧客データのシステム統合です。
ECサイトと実店舗を連携するためには、在庫や顧客データを一元管理して、どちらからでも閲覧や更新が行える状態にしておく必要があります。
今後は、どちらで商品を購入しても在庫や顧客情報を把握できるようになるため、細かいマーケティングも可能になるでしょう。
在庫切れによる機会損失も減らせるはずです。
システム統合が終われば、実際の運用が開始できます。
5.PDCAを回す
ECサイトと実店舗を連携する手順の最後に説明するのは、PDCAを回すことです。
PDCAとは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の頭文字を集めて名付けられた業務改善のフレームワークを表します。
ECサイトと実店舗の連携に成功して運用を開始したあとも、常に改善点を見つけて修正していきましょう。
特に、顧客のニーズは時代に合わせて変化するものです。
顧客のニーズをしっかり押さえて、定期的な戦略の見直しを行いましょう。
収益を延ばすためオムニチャネル戦略を導入しよう
さらに収益を延ばすためには、オムニチャネル戦略を導入すると効果的です。
ECサイトと実店舗だけでなくスマホアプリやSNSなどとも連携して、どれを利用しても一貫したサービスが提供できるシステムを、オムニチャネルと呼びます。
マーケティングで使用される「チャネル」とは、顧客との接点を意味していて、ECサイト・実店舗・スマホアプリ・SNSはそれぞれがチャネルです。
ここまで話題にしてきたECサイトと実店舗の連携は、正確にはクロスチャネルと呼ばれる施策でした。
それぞれのチャネルが持つデータを連携させて一元管理することで、在庫の適正化を実現したものです。
クロスチャネルをもう一歩進めた施策が、オムニチャネルです。
スマホアプリやSNSなども連携され、顧客がどのチャネルを利用したとしても、一貫したサービスが提供されます。
ここからは、クロスチャネルからオムニチャネルへの移行に関する理解を深めていきましょう。
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オムニチャネル戦略の成功事例3選
それでは、オムニチャネルを導入した企業の成功事例を3つ紹介します。
- ユニクロの成功事例|アパレル系
- 無印良品の成功事例|雑貨系
- イオンの成功事例|食品系
順に説明します。
ユニクロの成功事例|アパレル系
1つ目の成功事例は、ユニクロです。
ユニクロは、スマホアプリやECサイトを通じた通販を行っていますが、実店舗とうまく連携しています。
特にユニクロのアプリに入っている「UNIQLO IQ」は、AIチャットボットを搭載しており、以下のようなサービスの提供が可能です。
- アプリ上で気になった商品の在庫が実店舗にあるか確認できる
- 欲しい商品を探すのをAIが手伝ってくれる
- コーディネートやサイズの相談に対してAIが回答してくれる
- 注文した商品の配送状況の確認や、キャンセルが可能
また、アプリから取得した顧客データや購入データを分析することで、在庫管理や新たな商品開発にも役立っています。
無印良品の成功事例|雑貨系
2つ目の成功事例は、無印良品です。
無印良品の場合も、オムニチャネル化の肝は、スマホアプリにあります。
「MUJI passport」と呼ばれるアプリを提供しており、基本機能は以下の通りです。
- お知らせやお得情報が通知される
- ECサイトと実店舗のどちらで購入しても「MUJIマイル」というポイントがもらえる
購入する場所は、ECサイトと実店舗のどちらでも関係なくポイントが付与される点は、オムニチャネル化の恩恵です。
また無印良品の場合、アプリを介して蓄積したデータをBIツールで解析しています。
BIツールを導入することによって、ITの専門家ではない現場のマネージャーでも分析が可能になりました。
イオンの成功事例|食品系
3つ目の成功事例は、イオンです。
イオンのオムニチャネル化もスマホアプリを活用していますが、その使い方に特徴があります。
実店舗内の売り場にある商品のPOPやチラシをアプリから読み込むと、その食材を使った料理のレシピが表示されるというものです。
実店舗への誘導や、お目当ての商品から別の商品へと複数商品の購入につなげています。
また店舗で在庫切れの商品があれば、店舗内に設置されたタブレットを使用した取り寄せまたは購入から清算、配送の手続きまで可能です。
これらすべてが、オムニチャネル化の利点といえるでしょう。
ECサイトと実店舗をシステム連携する際の注意点
ここでは、ECサイトと実店舗をシステム連携する際に、注意すべきポイントを3つ紹介します。
- 顧客情報の保護|セキュリティ対策
- 実店舗スタッフのモチベーションの維持
- 連携システムのリリースはフェーズを分けて少しずつ行う
ぜひ連携する際の参考にしてください。
顧客情報の保護|セキュリティ対策
注意点の1つ目は、顧客情報の保護についてです。
ECサイトと連携する前は、少なくとも実店舗側の顧客情報は、閉じた環境に保存されているのではないでしょうか。
それが、ECサイトと連携されることによって、クラウド上などに保存されます。
サイバー攻撃の標的にもなりますので、連携と同時にセキュリティを強化することも忘れないようにしましょう。
実店舗スタッフのモチベーションの維持
注意点の2つ目は、実店舗スタッフのモチベーション維持に気を配ることです。
売上がECサイトにばかり流れてしまうようでは、実店舗で働くスタッフのモチベーションは上がらず、連携することに対しても消極的になってしまいます。
システム連携のメリットを最大化するためには、実店舗スタッフの協力は不可欠です。
実店舗からECサイトへの誘導施策をとる場合もあると思いますが、その場合には実店舗スタッフが不利にならないように気を配る必要があります。
連携システムのリリースはフェーズを分けて少しずつ行う
注意点の3つ目は、連携システムのリリースはフェーズを分けて少しずつ行うことです。
利用しているシステムの規模にもよりますが、ECシステムと実店舗側で運営している基幹となるシステムの連携は、大規模な作業になります。
全ての機能を完全に連携させるには、開発期間が1年を超えることもあるでしょう。
開発期間が1年を超えるような大型案件は、いくつかのフェーズに分けて少しずつリリースした方が安全です。
フェーズに分けてリリースすることで、「早期に運用が開始できる」「運用しながらバグの修正ができる」などのメリットがあります。
連携システムを構築する際には、ぜひご検討ください。
ECサイトと実店舗を連携して売り上げアップを図りましょう
この記事では、ECサイトと実店舗を連携する手順、成功事例や注意点について解説しました。
ECサイトと実店舗を連携させることで、それぞれの強みを活かした多くの成果をあげることができます。
さらにオムニチャネル化することで、売上を伸ばす企業も増えていて、今後ますます注目される手法です。
売上アップを目指して、ECサイトと実店舗の連携を検討してみませんか?
●料金目安もわかるECサイト構築ガイド
>新規事業などでECサイトを構築する場合のガイドを作成しました。目的や売上規模に応じたEC種別選定や最適な構築手法についての診断を受けることができます。
学生時代にWebサイトを自作したことがきっかけでWebの世界に。制作会社でデザイン、WordPressテーマ開発の実務を経て、テクニカル・ディレクターとして大規模サイト構築のディレクションを経験。2021年からWakka Inc.の日本拠点でWebディレクターとして参画。最近はブロックエディタになったWordPressをもう一度、勉強しています。