オフショア開発はインドが最適解か?メリット・デメリット費用相場まで徹底解説


こんにちは。Wakka Inc.メディア編集部です。
近年、IT人材の不足や開発コスト増大といった課題を解決するため、インドでのオフショア開発に注目が集まっています。
インドは、数あるオフショア開発拠点の中でも、世界的なIT大国として確固たる地位を築き多くの企業から選ばれています。
また、膨大な数の優秀なIT人材を輩出し、世界中のITイノベーションを牽引する存在です。
一方で、言葉や文化の違い、時差など日本企業がオフショア開発を進める上での課題も存在します。
本記事では、オフショア開発におけるインドのメリット・デメリット、費用相場や企業選定のポイントまで詳しく解説します。
インドでオフショア開発を検討している、企業の担当者や経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

インドのオフショア開発が注目される理由

オフショア開発と言えば、以前は中国、最近ではベトナムが主流と感じる方もいるのではないでしょうか。
しかし今では多くのグローバル企業が、戦略的な開発パートナーとしてインド企業を選んでいます。
単なるコスト削減だけでなく、AIや機械学習など最先端分野で圧倒的な強みがあるためです。
豊富に存在するIT人材はもちろん、特にAIや機械学習といった最先端技術分野での強みは、他国を圧倒しています。
実際に、PayPayやメルカリといった日本を代表するIT企業も開発拠点をインドに設け、高い技術力を事業成長のエンジンとしています。
インドはもはや単なる委託先ではなく、企業の競争力を左右する戦略的パートナーとして認識され始めているのです。
では、インドでのオフショア開発が注目されている理由は、いったい何なのでしょうか。
ここでは、3つの理由を解説します。
プロジェクト管理の柔軟性と実行力
インドのIT企業は、1980年代以降、欧米グローバル企業と協業し多数の大規模プロジェクト達成に導いてきました。
特にSAPをはじめとした複雑なエンタープライズシステムの構築や、大規模なITインフラ整備、レガシーシステムのモダナイゼーションなどを数多く手掛けた経験があります。
いずれも、高度なプロジェクト管理能力が求められる領域で、豊富な実績は大きな強みです。
こうした経験を通じて、アジャイル開発をはじめとする現代的な開発手法にも柔軟に対応できる体制が整っています。
そのため、要件が複雑なプロジェクトや、開発途中で仕様変更が想定される案件においても高い実行力で対応できます。
イノベーションを促進する人材と環境
インドがIT大国と呼ばれる背景には、優秀な人材を継続的に輩出する高度な教育体制の存在があります。
中でも、世界的に評価の高い理系大学群であるインド工科大学(IIT)は、グローバルIT企業が熱視線を送る人材の供給源として広く知られています。
AIやビッグデータ、ブロックチェーンなどの最先端技術に精通した人材を多数輩出しているのが、インドの教育機関です。
彼らの持つ高度なスキルは、世界中のIT企業から高く評価されています。
日本国内では人材の確保が難航する領域においても、インドに目を向ければ比較的スムーズに優秀な人材と出会える可能性が高く、IT人材不足への現実的な解決策として注目されています。
スタートアップとの連携によるスピードと柔軟性
インド南部の都市ベンガルールは、”インドのシリコンバレー”として世界的に知られている都市です。
こちらの地域には数多くの技術系スタートアップやIT企業が集まり、常に新たな技術や革新的なアイデアが生まれる、活気に満ちた環境となっています。
こうしたスタートアップは、機動力や柔軟性に優れている点が特徴で、PoC(概念実証)やアジャイル開発のようなスピード感のあるプロジェクトにおいて頼れる存在です。
また、大手企業だけでなく、少人数ながら尖った技術を持つ専門チームと直接やり取りができるのもインド特有の強みです。
プロジェクトの目的や課題に応じて、最適なパートナーを柔軟に選べる点も大きな魅力と言えます。
インドでのオフショア開発のメリット5つ

オフショア開発をインドで進める上で、どのような強みが得られるのか把握しておくことは不可欠です。
本章では、開発の成功率を高めるために押さえておきたい5つのメリットを詳しくご紹介します。
優秀なIT人材が豊富
インドでオフショア開発を依頼する大きなメリットは、質・量ともに豊富なIT人材が揃っている点です。
毎年多数のIT系学部卒業生が輩出され、中には世界トップレベルのスキルを持つエンジニアも多く存在します。
特にAIやデータサイエンス、クラウドコンピューティングといった先端技術分野に精通した人材が多いことは、日本のIT人材不足を補う上で大きなアドバンテージです。
国内では採用競争が激化している専門分野のエンジニアも、インドであれば比較的スムーズに確保できる可能性があります。
そのため、多くの企業がオフショア開発のパートナーとして注目しています。
コストを抑えて高品質な開発を実現できる
近年、インドのIT人材にかかる人件費は上昇傾向ですが、日本人エンジニアと比較すれば依然として大幅なコストメリットを享受できます。
特に、同等のスキルを持つシニアエンジニアやプロジェクトマネージャーを国内で採用する場合と比較すると、開発コストを大幅に削減できるのが魅力です。
こうしたコスト削減によって浮いた予算は、マーケティングや新機能の追加にも充てられます。
さらに、海外展開やサービス改善、社員教育や最新技術の導入など多方面にわたる戦略的投資にも活用可能です。
結果として、事業全体の成長を促進し、競争力を高める重要な要素となり得ます。
英語でのコミュニケーションが容易
インドでは準公用語として英語が広く使われており、特にビジネスやIT業界では英語でのコミュニケーションが基本です。
そのため、言語の壁を感じることなくプロジェクトをスムーズに進められる点は大きなメリットと言えます。
グローバルなプロジェクトや将来的な海外展開を視野に入れたサービス開発において、英語でやり取りできる開発チームを持つことは重要です。
インド英語特有のアクセントや表現には若干の慣れが必要ですが、大抵は問題なく意思疎通が可能なため、円滑な連携が期待できます。
さらに、技術関連の文書を英語で作成できる点も、情報共有を円滑にする上での大きな利点です。
豊富なオフショア開発の実績がある
インドのIT企業は、長年にわたり欧米グローバル企業から、受託した大規模の開発案件を数多く手掛けてきました。
そうした経験から、多様な業種・業界のシステム開発に関する豊富なノウハウを蓄積し、プロジェクト管理能力も高いレベルを誇っています。
こうした豊富な実績は、開発パートナーとしての信頼性の高さを如実に物語っており、複雑な要件や大規模なシステム開発であっても安心して任せられます。
さらに、品質管理や納期遵守の面でも厳格な基準を持っているため、安定した成果を期待できるのも大きな強みです。
長期的な開発パートナーシップが可能
インドとのオフショア開発は、単発のプロジェクト委託に留まりません。
“ラボ型開発”と呼ばれる契約形態を選択すれば、自社専属の開発チームをインドに確保し、継続的な開発拠点として活用できます。
ラボ型開発の採用によって、中長期的な視点でのプロダクト開発や、事業戦略に応じた柔軟なリソース調整ができるようになります。
変化の激しい市場環境においても、俊敏かつ安定した開発体制を維持できる点が大きな利点です。
さらに、優秀な開発チームと長期的な関係を築くことで、単なる外注先ではなく自社とともに成長する戦略的パートナーシップも構築できます。
また、意思疎通や業務理解の深化によって、開発スピードと品質の両面で高い成果が期待できます。
インドでのオフショア開発の注意点3つ

さまざまなメリットがある一方で、インドでのオフショア開発には特有の課題や注意点も存在します。
こうしたリスクを事前に理解し、対策を講じることが、プロジェクト達成に導くために不可欠です。
本章では、特に注意すべき3つのポイントについて解説します。
日本語が通じにくい
英語でのコミュニケーションが主流である反面、日本語に対応できるエンジニアはベトナムなど他のアジア諸国に比べて少ないのが現状です。
そのため、日本とインドの開発チーム間に立ち、円滑なコミュニケーションを仲介する(ブリッジSE)の役割が重要です。
ブリッジSEには、単なる語学力だけでなく両国の文化やビジネス習慣を深く理解し、仕様や要件の意図を正確に伝える能力が求められます。
優秀なブリッジSEを確保できるかどうかが、プロジェクトの成否を大きく左右すると言っても過言ではありません。
仕事に対する考え方が日本人と異なる
文化や価値観の違いにより、仕事に対する考え方や進め方に戸惑うことがあります。
例えば、日本のような「空気を読む」「行間を読む」といったコミュニケーションは、インドではあまり一般的ではありません。
そのため、指示は具体的かつ明確に伝えることが必要です。
また、時間に対する感覚や、仕事とプライベートのバランスに関する価値観も日本とは異なることが多々あります。
こうした文化的な違いを”問題”として扱うのではなく、多様性として受け入れる姿勢が重要です。
相互理解を深める努力を続けることで、信頼関係を築き、より良い協業につなげられます。
時差や距離があるため品質管理が難しい
日本とインドの間には3時間半の時差があり、物理的な距離も離れています。
そのため、リアルタイムでの密なコミュニケーションや、問題が発生した際の迅速な対応が難しい場合があります。
また、開発企業やエンジニアによってスキルのバラつきが大きいのも事実です。
品質を担保するためには、まず明確なコーディング規約の設定や定期的なコードレビューを通じて、開発段階でのミスやバラつきを防ぐことが重要です。
さらに、厳格なテストプロセスを導入し運用前の段階で不具合を徹底的に洗い出すなど、能動的な品質管理の体制を整える必要があります。

インドオフショア開発の費用相場

オフショア開発を検討する上で、費用はもっとも気になる要素の一つです。
インドのオフショア開発におけるエンジニアの人月単価は、近年上昇傾向です。
しかし、日本の開発コストと比較すると依然として優位性があります。
現時点での推定費用の相場を、下記表でしっかりと確認しましょう。
(※表は、横にスクロールできます)
職種 | 人月単価(万円) | 備考 |
---|---|---|
プログラマー | 56〜59万円 | スキルレベルや経験年数によって変動する |
シニアエンジニア | 65〜68万円 | スキルレベルや経験年数によって変動する |
ブリッジSE | 73〜76万円 | 日本語能力やコミュニケーション能力によって変動する |
プロジェクトマネージャー | 81〜100万円 | プロジェクトの規模や複雑さによって変動する |
ただし、上記の費用はあくまで目安です。
実際の費用は、プロジェクトの具体的な要件や必要な技術スタックによって左右されます。
さらに、委託先の企業規模や契約形態(ラボ型か請負型か)といった要因によっても、大きく変動します。
正確なコストを把握するためには、複数の開発企業から見積もりを取得し、サービス内容と合わせて比較検討することが不可欠です。
参照
【2024年最新版】インドオフショア開発の人月単価相場はいくら? | オフショア開発.com
インドでオフショア開発する際の企業選定のポイント

オフショア開発の成功は、パートナーとなる開発企業の選定でほぼ決まると言っても過言ではありません。
単にコストの安さだけで判断するのではなく、自社のプロジェクト達成に導く”信頼できるパートナー”を見極めることが非常に重要です。
本章では、実際の成功事例から導き出された、本当に価値あるパートナーを選ぶためのポイントを解説します。
専門分野と実績
まず確認すべきは、開発企業が持つ技術的な専門分野と、過去の開発実績です。
自社が開発したいシステムやサービスに必要な技術(例:AI、クラウド、特定のプログラミング言語)に強みを持っているかを確認しましょう。
また、同じ業界や事業モデルでの実績がある場合、業務理解がスムーズになり精度の高い提案が期待できます。
ポートフォリオや具体的な事例を提示してもらい、提示内容を詳しくヒアリングすることが大切です。
コミュニケーション能力と文化適合性
円滑なプロジェクト進行のためには、コミュニケーション能力が欠かせません。
特に、日本とインドの橋渡し役となるブリッジSEのスキルは慎重に見極める必要があります。
語学力はもちろん、日本のビジネス文化をどれだけ理解しているか、要件を正確に開発チームに伝えられるかを確認しましょう。
また、企業全体の文化が自社と適合するかどうかも大切なポイントです。
定期的な報告や課題共有の仕組みが整っているか、柔軟な対応力があるかなど、契約前に担当者と面談を重ねて見極めましょう。
セキュリティ体制と品質管理
海外に開発を委託する上で、情報セキュリティ体制と品質管理プロセスは必ず確認すべき項目です。
ISO27001(ISMS)のような国際的なセキュリティ認証を取得しているか、具体的なセキュリティ対策(アクセス管理、脆弱性診断など)について明確な説明を求めましょう。
品質管理については、どういったテストプロセス(単体テストや結合テストなど)を実施しているか、コードレビューは誰がどのように行うのかなど具体的な体制を確認することが重要です。
品質に対する意識の高さが、最終的な成果物のクオリティに直結します。
契約形態と運用体制(ラボ型、請負型など)
オフショア開発には、主に「請負契約」と「ラボ型開発」の2つの契約形態があります。
要件が完全に固まっている短期的なプロジェクトであれば請負契約、仕様変更が想定される長期的なプロジェクトや、継続的な開発が必要な場合はラボ型開発が適しています。
自社プロジェクトの特性を理解し、最適な契約形態を提案してくれるかどうかも、パートナーを見極める上での重要な判断材料です。
柔軟な運用体制を構築できる企業を選びましょう。
(※表は、横にスクロールできます)
契約形態 | 特徴 | メリット | デメリット | 適したプロジェクト |
---|---|---|---|---|
請負契約 | ・要件定義が明確 ・期間が短い ・成果物に対して報酬を支払う | ・初期費用が明確 ・短期間で完了しやすい | ・仕様変更に弱い ・追加費用が発生しやすい | 要件が完全に固まっている短期的なプロジェクト |
ラボ型開発 | ・柔軟な開発体制 ・長期的な契約 ・仕様変更に強い | ・仕様変更に柔軟に対応可能 ・継続的な開発に適している ・長期的にコストを抑えられる可能性がある | ・初期費用が不透明な場合がある ・コミュニケーションコストがかかる場合がある | 仕様変更が想定される長期的なプロジェクト 継続的な開発が必要な場合 |
インドオフショア開発の成功事例

理論だけでなく、実際の成功事例を知ることは、自社でオフショア開発を成功させるための大きなヒントです。
日本企業がインドの高い技術力を活用して、事業を大きく成長させた事例を紹介します。
日本企業がインド開発チームと連携し成功した事例
日本企業がインドに開発拠点を設立する動きが活発になっています。
代表的な事例として、メルカリ、PayPay、カインズの3社の例をご紹介します。
株式会社メルカリ
フリマアプリで知られるメルカリは、グローバルなプロダクト開発を加速させるため、インドに開発拠点を設立しました。
インドの優秀なエンジニアリング能力を取り入れることで、開発スピードと品質を向上させ、世界市場での競争力を高めています。
参照:メルカリ
PayPay株式会社
キャッシュレス決済サービスのPayPayも、インドに開発拠点を持ち、決済システムの高度化を進めています。
インドのエンジニアが持つ最先端の技術力を活用し、ユーザーにとってより便利で安全なサービスを提供し続けています。
参照:PayPay
株式会社カインズ
ホームセンター大手のカインズは、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略を強化するため、インドに専門拠点を設立しました。
顧客体験の向上や業務効率化を実現するデジタル施策を、インドの技術力で支えています。
参照:カインズ
スタートアップ企業によるインド活用の先進事例
大企業に限らず、スタートアップ企業もインドのオフショア開発を積極的に活用しています。
例えば、ある日本のAIスタートアップは、画像認識による技術を用いた新規サービス(PoC開発)をインドの専門チームに依頼しました。
現地のスタートアップと連携することで、わずか3カ月の短期間でプロトタイプを完成させ、競合他社に先駆けて市場投入を実現しています。
こうしたスピード感と開発の柔軟性は、限られたリソースの中で成果を求められるスタートアップにとって、非常に大きな武器と言えます。
まとめ:インドのオフショア開発では特性を理解して、自社に合ったパートナーを選ぼう

インドでのオフショア開発は、優秀なIT人材の確保や開発コスト削減など、さまざまなメリットを享受できます。
一方で、文化の違いや時差、日本語の通じにくさなど事前に理解しておくべき課題もあります。
プロジェクトを達成させる鍵は、インドの特性を正しく理解し、自社の開発ニーズや体制にフィットするパートナーを見極めることです。
信頼できる実績と明確な契約体制、スムーズなコミュニケーションが確保できれば、コストパフォーマンスに優れた長期的な開発体制が構築できます。
インドのオフショア開発を成功させるためのヒントとして、本記事が少しでもお役に立てば幸いです。

